2026年08月25日更新
会社分割の債権者保護手続きとは?流れ・費用・省略方法・不要なケースを解説【2026年最新】
会社分割の債権者保護手続きを専門家が解説。官報公告+個別催告の手続きの流れ、費用(1行3,947円・公告全体で約4〜6万円)、個別催告の省略方法(ダブル公告方式)、吸収分割と新設分割の違い、不要なケース、異議が出た場合の対処法まで網羅。【2026年最新】
【この記事の要点】
・会社分割の債権者保護手続きとは、分割によって不利益を被る可能性がある債権者に異議申立の機会を与える手続き
・手続きの流れ:官報公告+知れたる債権者への個別催告 → 異議申述期間(最低1ヶ月)→ 異議なし→効力発生 / 異議あり→弁済等
・官報公告の費用は1行あたり3,947円(2026年4月時点)。公告全体で約4〜6万円が目安
・定款で電子公告を定めている場合、個別催告を省略可能(ダブル公告方式)
・吸収分割では承継会社側の債権者保護も必要だが、新設分割では新設会社側は不要
目次
1. 会社分割における債権者保護手続きとは
会社分割を行うことで債権者に不利益が生じる可能性がある場合、当事会社は債権者保護を行わなければなりません。これを債権者保護手続き、または債権者異議手続きと呼びます。
ここでいう債権者とは、例えば融資してもらっている銀行や、まだ支払いが済んでいない取引先などが該当します。
債権者保護手続きが持つ意味・必要性
会社分割では事業を包括的に承継するため、債権者から個別に同意を得る必要はありません。しかし、会社分割によって会社の資産や負債が変動した場合、債権者に返済できなくなる恐れがあるでしょう。
そうした事態を防ぐため、会社分割を行う会社は自社の債権者に対して、債権者保護手続き・債権者異議手続きを行うことが法令で定められています。
債権者保護手続きの期間・タイミング
会社分割の当事会社は、債権者に1カ月以上の異議申立期間を作らなければなりません。債権者への公告・通知は1カ月以上前に行う必要があります。1カ月に該当するのは、公告掲載日の翌日から会社分割の効力発生日前日までなので、注意が必要です。
官報公告と個別通知の準備は時間がかかります。特に官報公告は、申し込みから実際に掲載されるまで時間がかかるので、余裕を持って手続きを行わなければなりません。
債権者保護手続きの対象
基本的に、会社分割の際に債権者保護手続きの対象となるのは、会社分割によって分割前の債務履行請求ができなくなる債権者です。例えば、分社型分割で承継会社に移転する債権の債権者がこれに該当します。さらに、分割型分割の場合は、分割会社の資産が大幅に変動する可能性があるため、すべての債権者が保護手続きの対象となります。
一方、会社分割による影響がなく、債務履行を引き続き請求できる債権者については、債権者保護手続きを通じた保護は不要とされています。例えば、分社型分割によっても分割会社に残る債権の債権者がこれに該当します。
2. 会社分割における債権者保護手続きは省略できるか?
会社分割の際、債権者保護手続きが必要なわけではなく、債権者保護手続きを省略できる場合と省略できない場合があります。
債権者保護手続きが省略できる場合
債権者保護手続きが省略できるのは、分割する事業に負債が含まれていない場合です。分割事業に負債が含まれている場合でも、会社分割後も債権者が分割会社に支払いを請求できる場合は、債権者保護手続きを省略できます。
例えば、承継した債務に対して分割会社が連帯保証している場合、債権者は分割後も分割会社に請求できるので債権者保護手続きを省略できます。具体的には、引受人と債務者が連帯債務を負う形式の「重畳的債務引受」を会社分割の契約で設定している場合においても、債権者保護手続きを省略可能ということです。
債権者保護手続きが省略できない場合
負債の移動がない場合でも、承継会社は債権者保護手続きが必要です。
承継会社は会社分割の対価を分割会社に渡すことにより、債権者への支払い能力が落ちる可能性があります。承継会社は債権者保護手続きを行います。
債権者保護手続きが不要になるケース
会社分割のすべてのケースで債権者保護手続きが必要なわけではありません。具体的には、以下の場合は不要です。
- 物的分割(分社型分割)で、分割会社に対して債務の履行を請求できる債権者のみの場合:分割後も分割会社に債務の履行を請求でき、債権者の不利益が限定的な場合は、分割会社側での債権者保護手続きが不要
- 新設分割における新設会社側:新設会社には設立前に既存の債権者が存在しないため、新設会社側の債権者保護手続きは不要
ただし、人的分割(分割型分割)の場合は分割会社の財産状態が変動するため、すべての債権者が異議を述べることができます。
3. 会社分割における債権者保護手続きの流れ
会社分割における債権者保護手続きは、以下の流れで行いましょう。
- 官報公告の掲載手続きをする
- 知れたる債権者へ個別催告をする
- 異議の申立を受け付ける
吸収分割と新設分割で異なる債権者保護手続き
| 比較項目 | 吸収分割 | 新設分割 |
| 分割会社の債権者保護 | 必要(分割会社に残る債権者が不利益を被る可能性) | 必要(同左) |
| 承継会社/新設会社の債権者保護 | 必要(承継会社の既存債権者に影響) | 不要(新設会社に既存の債権者はいない) |
| 人的分割(分割型分割)の場合 | 全ての債権者が異議を述べられる | 全ての債権者が異議を述べられる |
| 根拠条文 | 会社法789条・799条 | 会社法810条 |
①官報公告の掲載手続きをする
会社分割の当事会社は、官報公告と個別通知によって、会社分割を行う旨と異議申立を受け付ける旨を知らせます。
官報に公告する内容
官報公告には、以下の事項を記載してください。
- 会社分割を行う旨
- 債権者から異議申立を受け付ける旨
- 資本金と負債の変動額
- 計算書類
- 当事会社の社名と所在地
なお、官報公告には掲載料金が発生します。2026年4月30日時点の掲載料金は1行あたり3,947円(税込)です。会社分割の債権者保護手続きに関する公告は、通常10〜15行程度になるため、費用は約4万〜6万円が目安です。
②知れたる債権者へ個別催告をする
知れたる債権者とは、会社分割によって不利益を被る可能性のある債権者をさします。
例えば、分割会社が分割する事業にかかわる債権を保有していて、会社分割によって債務者が分割会社から承継会社に変わる場合は、知れたる債権者に該当します。
この知れたる債権者に対して、個別に通知する手続き(個別催告)を行います。この催告の方法には特別な規定がないため、自由に決められます。また、催告の内容についても、官報公告と同様のもので問題ありません。
個別通知は省略できる?
会社分割の当事会社は官報公告と個別通知によって、該当する債権者に知らせることが原則定められています。定款で日刊の新聞上や電子公告によって公告を行うと定めている場合は、個別通知を省略できます。
公告方法を官報公告と定めている場合は、個別通知の省略はできません。つまり、個別通知は省略できますが、官報公告だけの省略はできません。
③異議の申立を受け付ける
会社分割の当事会社は、異議申立期間内に債権者からの異議申立を受け付けます。
債権者から異議申立がなかった場合、当事会社は債権者の賛同を得られたものとして会社分割を進め、債権者から異議申立があった場合は、債権者に対して支払いを行います。
債権者保護手続きの実務スケジュール例
会社分割の効力発生日から逆算したスケジュール例を示します。
| 時期 | 手続き内容 |
| 効力発生日の2ヶ月前 | 官報公告の申し込み(掲載まで1〜2週間) |
| 効力発生日の1.5ヶ月前 | 官報公告の掲載・個別催告の発送 |
| 効力発生日の1.5ヶ月前〜効力発生日 | 異議申述期間(最低1ヶ月) |
| 効力発生日 | 異議なし→効力発生 / 異議あり→弁済等の対応後に効力発生 |
| 効力発生後2週間以内 | 変更登記申請 |
実務上の注意点:官報公告は申し込みから掲載まで1〜2週間かかるため、余裕を持ったスケジュールが不可欠です。予定した効力発生日までに債権者保護手続きが完了しない場合、効力発生が遅れます。
4. 会社分割における債権者保護手続きの注意点
会社分割の際は、以下の点に注意しなければ、債権者保護手続きの効果が得られません。
- 債権者保護手続きの不備
- 個別催告の失念
- 異議を申述していない債権者
- 登記する際の注意
- 官報公告掲載までの日数に注意
- 労働契約承継法が定める7条措置も求められる
債権者保護手続きの不備
債権者保護手続きに不備があるまま期限を迎えると、会社分割の手続き自体が認められなくなってしまいます。会社分割手続きのやり直しは大きな負担となるので、よく確認しながら行いましょう。
個別催告の失念
債権者保護に該当する債権者に個別催告をしていなかった場合、債権者は当事会社に対して裁判を起こし、債務の支払いを請求できます。故意に債権者保護手続きを行わなかったなど、悪質とみなされた場合には会社分割自体の効力が失われるので注意が必要です。
異議を申述していない債権者
期限内に異議申立を行わなかった場合、その債権者は会社分割を承認したものとみなされます。
当事会社側に何かしらの瑕疵があった場合でなければ、期限が過ぎた後に異議を申し立てても効力はないので、期限内に異議申立を行わなければなりません。
登記する際の注意
債権者保護手続きは、会社分割の効力発生日前日までに済ます必要があります。登記の際は債権者保護手続きを行った証明となる書類の提出が必要です。
これらを済ませなければ会社分割は無効となるので、登記の際も注意しましょう。
官報公告掲載までの日数に注意
官報に掲載の依頼を行って掲載されるまでに、約1、2週間かかります。官報公告は少なくとも1カ月は掲載しなければならないため、予定の登記申請日から日数を逆算してスケジュールを組む必要があります。
個別催告は分割会社が定款で定めれば、日刊新聞紙での公告あるいは電子公告に変更可能です。個別催告の手間を省ければ、官報公告を準備する負担が少なくなります。
労働契約承継法が定める7条措置も求められる
会社の債権者には、従業員など給与を受け取る労働者も含まれます。そのため、債権者の権利保護の観点からは、労働契約承継法第7条に基づく手続きもあわせて実施する必要があります。
この手続きでは、一定の期間内に労働者の理解と協力を得るため、会社分割に関わる各社が、それぞれ債務の履行見込みについて説明し、話し合いの機会を設けなければなりません。
こうした対応も含め、会社分割にあたって債権者の理解を得るための手続きは複雑で時間を要します。円滑に進めるためには、事前に余裕のあるスケジュールを立て、慎重に準備を進めることが重要です。
5. 会社分割の債権者保護手続きに関する相談先
会社分割を行う際には、債権者の権利を守るために「債権者保護手続き」が法律で義務づけられており、これは分割の効力を発生させるための前提条件となっています。この手続きをスムーズに完了させるには、官報公告や個別通知に必要な準備期間をあらかじめ見込んで計画的に進めることが大切です。
また、会社分割などの組織再編には、債権者対応以外にもさまざまなリスクや課題が複雑に絡み合うため、慎重な対応が求められます。想定外のトラブルを避けるためにも、事前にM&A仲介会社などM&Aに精通した専門家に相談し、万全の体制で進めることをおすすめします。
M&A仲介会社は、M&Aを専門に扱う企業で、幅広い知識と実績を活かしてスムーズな取引を支援します。初期相談からアフターフォローまで対応可能で、M&Aのプロセス全体をサポートします。
業界動向やM&Aの費用相場に精通しており、専門的なアドバイスを受けられます。また、豊富なネットワークを活用して、希望条件に合う相手企業を見つけやすい点も強みです。金融機関と比較すると成功報酬が低めのケースが多いのも利点です。
一方で、相談料や着手金が発生する場合があり、成功報酬は売却金額の5〜10%、最低でも約300万円かかることが一般的です。さらに、一部の仲介会社では手数料収益を優先し、十分なサポートを提供しないケースもあるため、慎重に選ぶ必要があります。
6. FAQ
Q. 債権者保護手続きにはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 異議申述期間は最低1ヶ月。官報公告の準備期間(1〜2週間)を含めると、効力発生日の2ヶ月前から手続きを開始するのが安全です。
Q. 官報公告の費用はいくらですか?
A. 2026年4月時点で1行あたり3,947円(税込)。会社分割の公告は通常10〜15行程度のため、約4万〜6万円が目安です。
Q. 個別催告を省略する方法はありますか?
A. 定款で「日刊新聞への掲載」または「電子公告」を公告方法と定めている場合、官報公告に加えてその方法で公告すれば、個別催告を省略できます(ダブル公告方式)。ただし官報公告のみの場合は省略できません。
Q. 債権者から異議が出た場合はどうなりますか?
A. 弁済、相当の担保の提供、または信託会社等への相当財産の信託のいずれかで対応します。適切な対応を行えば、会社分割を進めることは可能です。
7. 会社分割における債権者保護手続きまとめ
本記事では、会社分割の債権者保護手続きについて解説しました。会社分割の手続きや債権者保護手続きの流れを把握し、注意点にも気を付けましょう。
会社分割の手続きをスムーズに行うためには、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けながら進めることをおすすめします。
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