譲渡企業
税理士法人井村アンドパートナーズ
代表社員 井村 幸男様 インタビュー
時代に合わせた経営と73年の歴史
ーまず、御社の創業の経緯について教えてください。
当法人は、先代が1952年に創業した個人事務所を私が引き継ぎ、税理士法人化しました。今年で創業73年を迎え、福岡県でも歴史ある事務所の一つです。創業以来、地域に根差した伴走型のコンサルティングを主体に、お客様のよろず相談をワンストップで受けることで事業を継続してきました。
―御社の事業内容と強みについて教えてください。
当法人の強みは、創業から73年にわたり地域に密着し、経営者に寄り添う伴走型のコンサルティングを提供してきたことです。お客様からの紹介や金融機関からの紹介で事業を拡大し、法人・個人合わせて約300件のクライアントと深く信頼関係を築いてきました。長年のお付き合いの中で人生相談まで受けることもあり、付加価値の高い仕事だと実感しています。
―どのように事業を展開・拡大されてきたのでしょうか。
福岡市と筑紫野市の2拠点で、来社型と訪問型でコンサルティングを中心に事業を展開してきました。口コミや金融機関からの紹介で、優良なお客様を増やしてきました。
組織内の問題と今後の選択
―譲渡をお考えになったきっかけや背景を教えてください。
順調に拡大していましたが、社内で人間関係の問題が発生し、昨年9月には若手中心の部署の従業員が一斉に退職するという事態が起こりました。若手が成長し期待していた部署だっただけに、大きなショックでした。このままでは税理士法人として事業継続が難しいと感じ、M&Aを検討し始めました。
規模感・継続性・DX化の3条件
―検討を進められる上で、希望や大事にされた条件を教えてください。
大きく三点ございました。第一に、これから価格競争になっていく業界で生き残るには、100名規模の組織化された税理士法人であること。第二に、個人が集まった組織ではなく、事業の継続性が見込めること。第三に、IT・DX化が進んでおり、専門の技術者が常駐していること。また、福岡県や近隣エリア県では面が割れてしまっているため、他県で面識のない税理士法人のお相手であることも重要な条件でした。

―最終的にイデア総研様への譲渡をご決断されましたが、印象や決め手を教えてください。
イデア総研様は親子で経営されているため、事業継続性の観点から非常に安心することができました。また、大分ナンバーワンの事務所として資金力があり、DX化も進んでいる点も決め手となりました。さらに、私の社会貢献事業(民泊コンサルティング)への理解があり、二足のわらじを履くことを許していただけたことも大きかったです。
―今回のM&Aで期待することや今後のビジョンを教えてください。
私にとって今回のM&Aは3回目となります。過去の経験から、M&Aは過疎や後継者問題など、多くの課題を解決するインフラだと考えています。単なる仲介業ではなく、日本を再生させる使命感を持って取り組むべき事業です。イデア総研様と統合することで、まずは九州ナンバーワンの事務所を目指したいと考えております。また、現在取り組んでいる民泊コンサルティング事業にも今後注力していきたいです。
M&Aを検討されている税理士オーナー様へメッセージをお願いいたします。
税理士事務所の経営は多岐にわたりますが、今後の事業継続を考えた際、一定の規模感や専門性が不可欠となる時代を迎えています。小規模な事務所が家業として継続する道もあれば、M&Aを活用し、産業として更なる発展を目指す道もあります。
未来を見据えた経営者として、自らの税理士事務所のあり方を見つめ直し、時代の変化を先取りする『気づき』 を得ることが重要だと考えます。経営環境の変化が不可避である今、その先の未来を見据えた戦略として、M&Aも視野に入れておくことが重要であると思います。
最後に、M&A総合研究所にお任せいただいた理由を教えてください。
M&Aを検討し始めた当初は、お付き合いのあった別のM&A仲介会社に相談をしていました。しかし、私自身、M&Aを進める上で何よりも重視していたのは『スピード感』でした。過去の経験からも、時間をかけることのリスクを痛感していたからです。そこで、セカンドオピニオンとして信頼できるパートナーを探していたところ、M&A総合研究所の坂本さんと出会う機会をいただきました。
坂本さんは、私の多様な要望を一つひとつ丁寧にヒアリングし、期待以上の成果に繋げてくれました。その真摯な姿勢は、M&Aアドバイザーとしての信頼を確固たるものにしてくれました。特に、わずか4ヶ月という短期間で、理想的なお相手を探し出し、成約まで導いてくれたその『スピード感』には、本当に感謝しかありません。まさに、私の信念を体現してくれた最高のパートナーでした。
―今回M&A総合研究所にご依頼いただきましたが、M&A業界全体について、井村先生のご意見をお聞かせください。
M&A仲介会社の真価は、その会社の規模だけではなく、ひとえに「アドバイザーの資質」によって決まると考えています。アドバイザーの実力は、座学だけでは決して身につきません。現場での豊富な経験を積み重ねることで、初めて真の実力が養われます。
M&A業務のすべてを機械化することは困難です。顧客管理などの一部はDX化が進みますが、クロージングには人間同士の信頼とつながりが不可欠であり、これがM&Aの本質だと考えます。今後、M&A業界全体の信頼性を高めるためには、国が保証するような公的な資格制度を確立し、それに伴う保険制度も併せて整備すべきだと私は考えています。
譲受企業
イデア総研税理士法人
副所長 南 彰悟様 インタビュー
九州ナンバーワンを目指すためのM&A
―まず、御社についてご紹介いただけますでしょうか。
弊社は父が創業して27年目の税理士法人です。これまでは大分を中心に事業を展開してまいりました。
―M&Aを検討されたきっかけを教えてください。
昨年後半から事務所としての本格的な拡大フェーズに入り、次の成長戦略を模索していたタイミングで、井村先生とのM&Aというご縁をいただきました。福岡に拠点を持ち、当事務所が目指す規模感に合致していたため、九州ナンバーワン事務所を目指すための絶好の足がかりになると確信しています。
73年の歴史と人脈の獲得
―最終的に井村アンドパートナーズ様を譲り受けされた理由を教えてください。
一番の理由は、井村先生の事務所が70年以上の歴史と確固たる人脈を持っていたからです。弊社は27年と業界ではまだ歴史が浅く、福岡での実績も4年です。井村先生の事務所との統合により、長年の歴史とつながりを持つ大口のクライアントと関係を築けることは、イデア総研の認知度向上と成長に大きく貢献すると考えました。

―今回のM&Aで期待することや今後のビジョンを教えてください。
井村先生の事務所との統合を通じて、九州ナンバーワンの税理士法人を目指します。井村先生に選んでいただいたことに感謝し、井村先生が譲渡してよかったと思えるような税理士法人にしていきたいと考えています。
―今後、事業展開の一つとしてM&Aを活用されることはありますか?
今回M&Aを経験し、その面白さややりがいを実感しました。新しいことの連続で、当法人としても大きく成長できると感じています。今後は、福岡県や近隣エリア県の税理士法人の譲受を積極的に検討し、九州全体に支店を広げていきたいです。優秀な税理士先生とのご縁があれば、場所を問わず、鹿児島県や長崎県などへの展開も積極的に検討してまいります。
M&Aをご検討されている経営者様にメッセージをお願いいたします。
譲渡を検討されている経営者様には、廃業手前ではなく「できるだけ早く」行動してほしいと考えています。M&Aの認知度は高まっていますが、従業員やクライアントの将来を考えるなら、早めに動く覚悟が重要です。また、譲受企業様には、人材の確保という観点からもM&Aを積極的に活用することをお勧めします。従業員がいることは大きな魅力であり、一生働ける会社を作ってあげることが大切です。
最後に、M&A総合研究所にお任せいただいた理由を教えてください。
初期的な情報提供から、ほぼ3ヶ月という短期間で成約まで進めていただいたスピード感は非常に助かりました。資料の収集や質問への対応など作業量は多かったですが、迅速な対応のおかげでスムーズに進めることができました。従業員の待遇などの不安も解消してくれたので良かったです。
70年以上の歴史を持つ老舗事務所と、九州ナンバーワンを目指す成長企業のM&A。この出会いは、井村代表の事業継続と従業員への深い想い、そしてイデア総研の明確なビジョンが見事に合致した結果と言える。特に、親子を中心に経営しているイデア総研の「将来的な事業継続性」が、井村代表の最大の懸念を払拭したことは大きな決め手となった。両社の強みと想いが重なり合うことで、福岡県と大分県を拠点に、九州の未来を担う新たな税理士法人グループが誕生した。このM&Aは、まさに「M&Aはインフラである」という井村代表の言葉を体現するものであり、両社の今後のさらなる発展に期待が高まる。
担当者からのコメント
この度、井村アンドパートナーズ様とイデア総研様の「税理士法人のM&A」をご支援させていただきました。70年を超える歴史を持つ同事務所の事業承継ニーズと、九州ナンバーワンを目指すイデア総研様の成長戦略が見事に合致した、素晴らしいM&Aとなりました。
特に、譲渡オーナーである井村先生からは、「スピード感を持ってM&Aに取り組みたい」という強いご要望を頂戴しました。その期待に応え、結果としてディール期間をコンパクトに収めることができ、短期間で最良のお相手とのご縁を繋げることができた点は、当社の強みである「スピード感」を最大限に発揮できた事例だと確信しております。
現在、当社では全国の会計事務所様とアライアンスを組み、顧問先様のM&A支援を連携しながら進めております。一方で、井村先生のように、後継者不在に伴う自社の事業承継課題に悩まれる税理士先生方が年々増加していると実感しております。今後も、税理士の先生方との連携をより一層強化し、顧問先様への支援はもちろん、税理士法人様自身の事業承継においても、最良のソリューションを提供できるよう尽力してまいります。
(会計提携第一部 シニアマネージャー 坂本 章紘)
