タイ企業をM&A・買収するポイント6選!【事例あり】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

現在日本企業によるタイ企業とのM&Aは堅調に推移しています。しかしタイの企業をM&Aによって買収する場合は、タイ独自の規制、サービス業や製造業など業界ごとの規制を考慮する必要があります。本記事ではタイ企業を買収するポイントについて、事例と共に解説します。

目次

  1. タイ企業のM&A動向
  2. タイ企業に関する基本情報
  3. タイ企業をM&A・買収するポイント5選
  4. タイ企業のM&A・買収事例6選
  5. 今後のタイのM&Aトレンド
  6. タイ企業のM&A・買収まとめ
  • 今すぐ買収ニーズを登録する
  • 経験豊富なM&AアドバイザーがM&Aをフルサポート まずは無料相談

1. タイ企業のM&A動向

まずはタイ企業のM&Aに関するこれまでの動向と現在の状況を解説します。

日本企業によるM&A件数は堅調

日本企業によるタイ企業のM&A件数は順調に伸びています。新興国バブルでタイ経済も伸びていた時期がありましたが、今はバブルが終わってタイ経済の伸び自体は落ち着いています。

しかしタイの企業は堅調に成長を続けているので、現在タイ企業へM&Aを行う場合は、割安な金額で買収できます。

また、タイは、急激に経済成長している周辺東南アジアの国と陸で接しています。タイを拠点として、東南アジアでのビジネスを展開している日本企業が増えています。

さらに、タイはインフラが整っていて国民性も穏やかなので、日本人駐在員が住みやすいことも、東南アジアの中でタイ企業をM&Aによって手に入れる大きな要因となっています。

政情不安・自然災害の影響

タイでは2006年頃から、タクシン派、反タクシン派による対立によって、長い間政治情勢の不安定な時期が続きました。

政治情勢が深刻化する中で、日本からタイへの渡航が一時制限されたり、タイ国内での行動が制限されたりするなど、政治情勢の影響が日本にも及びました。政治情勢の不安定さが原因で、タイでのM&A件数は大きく落ち込みました。

タイの政治情勢が不安定なまま長引く中、さらに2011年には洪水が発生し、タイ経済に大打撃を与えました。

タイには日本の製造業社が多く進出していて、当時3,000社以上あった日本の製造業社の多くが工場の稼働縮小や稼働停止に追い込まれました。

政治情勢や自然災害が重なったことで地政学的リスクが意識され、日本のM&A熱は大きく下がってしまいます。

同じく2011年、今度は日本で東日本大震災が発生し、日本企業は大打撃を受け、タイへ進出していた製造業社も厳しい経営を余儀なくされました。

しかしその後タイ経済は順調に回復し、政治情勢もかなり落ち着いています。現在では政治情勢や自然災害のリスクが下がったことで、再び製造業を中心に日本企業のM&Aは増加しています。

【関連】M&Aを失敗する理由・事例25選【海外・日本企業】

2. タイ企業に関する基本情報

続いては、タイ企業に関する基本的な情報をご紹介します。

資本金・株主

タイで外国企業が事業を行うには、最低200万バーツ、日本円にして約700万円の資本金が必要です。

また、タイの外国人事業法で規制業種に該当する場合は、約300万バーツ、日本円にして約1,050万円の資本金が必要です。

また、外国企業が事業を行う場合に必要な株主は、非公開会社であれば最低3名、公開会社であれば最低15名が必要です。つまり、タイの企業を外国の会社が完全子会社化することは基本的には不可能となっています。

会社組織

タイでは主に、身内のみが株式を分け合う非公開株式会社と、一般公募を行う公開株式会社があります。大半が非公開株式会社で、日本の企業も非公開株式会社が多いです。

非公開株式会社では、株式譲渡制限は日本と同じく利用できますが、第3者割当増資を行なったり社債を発行したりすることはできません。非公開株式会社に適用される法律は緩めですが、公開株式会社の法律は厳しめになっています。

規制

タイには外資規制や言語規制、土地所有規制などがあります。タイで外国人が事業を行う場合は、外国人事業法に従わなければいけません。

規制は事業形態や事業内容によって細かく違いがあるので、タイでM&Aを行う前にしっかりと専門家に確認することが必要です。個々の規制についてはこの後説明していきます。

3. タイ企業をM&A・買収するポイント5選

タイ企業をM&Aによって買収する際は、必ず確認しておかなければならないポイントがあります。タイ企業を買収する際の注意点を一つずつ解説します。

①外資規制の対象範囲

タイ企業をM&Aによって買収する場合、業界によって外資規制の厳しさが変わってくるので注意が必要です。

サービス業は規制が厳しい

外国人がタイでサービス業を営む場合は、厳しい外資規制があります。タイは経済成長が進み、製造業は外国とも戦っていく力をつけています。一方サービス業は今後大きな成長が見込める分野で、多くの外資企業がタイでのビジネスを計画しています。

しかしまだタイ国内のサービス業の力は十分ではありません。そのため、厳しい外資規制が敷かれています。タイのサービス業をM&Aによって買収する場合は、事前に入念な確認が必要です。

製造業は比較的規制が緩い

製造業は他業種に比べて規制が緩いため、日本からも多くの製造業関連会社が進出しています。しかし製造業としてタイに進出したつもりが、タイではサービス業として扱われてしまい、サービス業の規制を受けてしまうことがあります。

例えば、製品の企画設計と販売は自社で行なっているものの、製造は他者に委託している場合、サービス業として規制対象になります。

逆に、製造はしているものの企画設計はしていない場合もサービス業に該当します。M&Aによって買収するタイ企業が製造業に該当するか確認しなければなりません。

②土地所有規制

外資規制の他にも、タイには土地所有規制があります。外国人がタイに土地を保有するには、BOI(タイ投資委員会)か工業団地公社から許可を得る必要があります。

または、土地法上の外国人に該当しないように、M&Aによって買収しようとしているタイ企業の持ち株比率を49%に抑え(外国資本規正)、外国人株主の人数が過半数を超えないようにすることが必要です。しかし例外として、BOIが奨励する一部業種では規制が緩和されます。

③日本の会社法との違い

タイの会社法には、日本の会社法とは違う部分もあります。前述したように、最低3名の株主が必要なので、完全子会社化はできません。他にも株主を見つけておく必要があります。

また、非公開会社は登録資本金の全額を支払わなくても、発行株式の25%以上の支払いで成立します。残りの支払いがない状態の企業が存在するので、あらかじめ支払いの確認と実行を促さなければいけません

他にも、公認会計士はタイの公認会計士資格を持っている人を探す必要があります。

④日本の労働法との違い

タイで外国人労働者が働く場合には、労働許可を取得しなければいけません。タイ人労働者の雇用を守るための規制がいくつかあります。

まず外国人労働者1人につき、200万バーツ以上(約700万円)の払込済資本金が求められます。また、外国人労働者のビザ延長には、1人につき最低4人のタイ人雇用が求められます。

他にも、労働許可が下りる外国人労働者は10人までという規制もあります。ただし外国人労働者の人数に関しては、緩和条件もあります。

⑤BOI恩典の有無確認&取得

ポイント②でも少し触れたように、タイではBOIが定めるBOI恩典に該当する事業に関しては規制が緩和されます。タイ国の発展に寄与する事業は許可申請が下りやすい、減免される、といったメリットがあります。

対象業種は現在
・農業や農作物に関する業種が22種類
・鉱業やセラミックス、基礎金属に関する業種が17種類
・軽工業に関する業種が11種類
・金属製品や機械、運輸機器に関する業種が18種類
・電子・電気機械産業に関する業種が9種類
・化学、紙、プラスチックに関する業種が17種類
・サービスおよび公共施設に関する業種が26種類
・技術・イノベーション開発に関する業種が1種類
となっています。

対象業種は現在製造業を中心に120種類以上あり、今後増えることが予想されているので、M&Aによって現地企業を買収する際はしっかりと確認する必要があります。

4. タイ企業のM&A・買収事例6選

最後に、日本企業によるタイ企業のM&Aでの買収事例を、6つピックアップしてご紹介します。

①NTTデータ

①NTTデータ

出典:https://www.nttdata.com/jp/ja/

2011年に、NTTデータはタイのカード決済会社をM&Aによって買収しました。タイではNTT DATA Thailandが、EC決済事業や会社の業務を自動化する事業など、ITインフラの整備を進めています。

これにより、タイに進出している日系企業は、人件費の高騰や仕事の人的ミスを減らすことができます。

また、タイでは国主導でキャッシュレス社会の実現を目指しています。今後EC決済事業が急激に伸びることが予想されています。

②アドウェイズ

②アドウェイズ

出典:https://www.adways.net/

広告配信サービスを展開するアドウェイズ は、2012年にタイのネット広告会社をM&Aによって買収しました。

タイでもスマートフォンが急速に普及しています。スマホの普及率は高く、それによりスマホでのショッピングが急激な伸びを見せています。そこにいち早く目をつけたアドウェイズは、タイでのアフィリエイト広告事業を展開しています。

③電通

③電通

出典:https://www.dentsu.co.jp/

2013年、電通の子会社である電通タイランドが、タイのコンサルティング会社をM&Aによって買収しました。経済成長が著しいタイでは、富裕層の増加によって、ブランド品の購入や体験型サービスにお金を出す人が増えています。

それに伴って、タイでの店舗開発やイベントプロモーションの需要も急激に高まっています。そこにビジネスチャンスを見出した電通が、子会社を通じてタイでプロモーション事業を展開しています。

④NTTコミュニケーションズ

④NTTコミュニケーションズ

出典:https://www.ntt.com/index.html

NTTコミュニケーションズは、2013年と2015年にタイのデータセンター運用会社を買収しました。タイに進出するグローバル企業やIT企業が増える中で、タイの政治情勢や自然災害に左右されることのない安全なデータセンターの需要が高まっています。

NTTコミュニケーションズは、立地や設備を万全にすることによって、政治情勢や自然災害に強いデータセンターを用意しています。それにより、金融機関やグローバル企業からの高い信頼を獲得しています。

⑤三菱UFJフィナンシャルグループ

⑤三菱UFJフィナンシャルグループ

出典:https://www.mufg.jp/

三菱UFJフィナンシャルグループは2013年に、タイのアユタヤ銀行を買収し子会社化しました。これによって、タイに進出している日本企業がスムーズに融資などを受けられるようになりました。

また、国内での成長に限界がきている銀行業界とは違い、今後大きな成長が見込める東南アジアへ投資することで収益の拡大を目指しています。

⑥ユニ・チャーム

日本を代表するグローバル企業でもあるユニ・チャームは、2018年に同業大手であるタイのDSGTを買収しています。DSGTの親会社から全株式を約5億3,000万ドル(約600億円)で取得しました。

ユニ・チャームは現地でベビー用紙の自社ブランドを展開し、すでにトップを築いています。今回の買収は、中低価格帯の商品拡充やマーケットポジションの強化、物流機能統合から生じるコストの低減など、シナジー効果を想定して行われました。

【関連】M&A成功事例25選!【2020年最新版】

5. 今後のタイのM&Aトレンド

タイのこれまでのM&A動向を事例と共にご紹介しましたが、これからタイのM&Aはどのように変わっていくのかを解説します。

地方都市M&Aの活発化

これまでタイでのM&Aは、バンコクの企業に対する案件が大半でした。しかし近年はバンコク以外の地方都市も急激に経済成長しています。それに伴って、インフラや各種サービスの需要も高まっています。

バンコクと地方都市をつなぐ道路や鉄道が整備され、地方都市内の交通網も充実してきています。また、地方都市にも大型商業施設が建設されるようになり、今後も大型商業施設の建設が次々と計画されています。

このような状況から、今後は地方都市企業への買収も視野に入れる必要があります。

IT・スマホの普及

事例でもご紹介したように、現在タイでは大半の国民がインターネットを利用するようになりました。スマートフォンも大半の国民が利用しています。それにより、IT関連ビジネスも活気を帯びています。

また、国がキャッシュレスを推進していることから、キャッシュレス決済に関わるビジネスも中国などから流入しています。今後タイに進出するIT企業はさらに増加すると推測されています。

健康関連ビジネスの増加

タイでも富裕層が増えたことから、健康志向の人が増加しています。日本と同じく健康食品やヘルシーな料理店が人気となり、日用品や化粧品にもこだわる若者が増えています。また、スポーツの習慣も変化し、スポーツウエアやスポーツシューズの売り上げが伸びています。

健康食品やスポーツウエアをパソコンやスマートフォンからネットショップで購入する人も増えていて、ネットショッピング関連のビジネスも盛り上がりを見せています。

高齢者の増加

タイでも平均寿命が延びることによって、高齢化が始まっています。しかし国による福祉政策がまだ十分ではないため、今後高齢化問題が深刻化していくことが予想されています。

すでに日本の介護関連企業が数社進出している事例はありますが、これから日本の介護関連企業がタイへ進出する数はさらに増えていくと考えられます。

最近のM&Aニュース・事例35選!

タイ企業のM&A仲介会社なら

ここまでご紹介してきた内容からもわかるように、タイなど海外でM&Aによる買収を行う際には、言語や政治情勢、外国の法律など、海外M&Aに精通したスペシャリストの協力が不可欠です。

M&A総合研究所では経験豊富なM&Aアドバイザーが相手との交渉や契約、クロージングに至るまでM&Aをフルサポートいたします。

完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

【関連】M&A・事業承継ならM&A総合研究所
電話で無料相談
0120-401-970
WEBから無料相談
M&Aのプロに相談する

6. タイ企業のM&A・買収まとめ

急激な経済成長を続けている東南アジアの活動拠点として、タイでのM&Aによる買収は世界中の企業が注目しています。

日本と文化が似ていて親日派が多く、インフラも整っているタイは、日本企業がM&Aによって買収するのに適した環境です。政治情勢や外国人規制の動向もしっかりと確認しながら、投資チャンスをうかがいましょう!

M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所

M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。

M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴

  1. 譲渡企業様完全成功報酬!
  2. 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
  3. 上場の信頼感と豊富な実績
  4. 譲受企業専門部署による強いマッチング力
>>M&A総合研究所の強みの詳細はこちら

M&A総合研究所は、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。

>>完全成功報酬制のM&A仲介サービスはこちら(※譲渡企業様のみ)

関連する記事

新着一覧

最近公開された記事