2024年06月26日更新
商工会議所にM&Aを相談するメリットとは?手数料や注意点、その他の相談先一覧も解説
商工会議所とは、商工業の改善・発展を目的とする非営利の公益経済団体を指します。地域の個人事業者や中小企業に対してM&Aの無料相談などを行っています。この記事では、商工会議所にM&Aを相談・加入するメリットや手数料、注意点などについて解説します。
目次
1. 商工会議所へのM&Aの相談
近年、中小企業を中心に後継者問題が深刻化している状況です。後継者不在のままでは廃業リスクが高いので、回避手段としてM&Aを検討するケースが増加しています。
M&Aを検討するためには相応の知識が必要ですが、中小企業におけるM&Aの相談先として選ばれることが多いのは商工会議所です。多くの企業が集中している東京都の東京商工会議所では、M&Aの相談件数や成約案件数が年々伸びており、M&Aの需要が高まっていることが伺えます。
この章では、商工会議所の概要やM&Aとの関係性、相談するメリット・デメリットについて解説します。
商工会議所とは
商工会議所とは、商工会議所法に基づき、地域企業の支援を目的に組織された非営利の経済団体です。全国で515(2020年4月時点)の商工会議所が活動しています。
各地の商工会議所は、地域における商工業の総合的な発展を図り、地域における商工業者の意見を集約して、政策提言・経営支援・地域振興などのさまざまな活動を行っています。
【商工会議所の特徴】
- 地域性:地域を基盤とする
- 総合性:会員はあらゆる業種・業態の商工業者から構成
- 公共性:商工会議所法に基づき設立される民間団体で公共性を保つ
- 国際性:世界各国に商工会議所を組織
商工会議所とM&Aの関係性
商工会議所では、経営課題を抱える中小企業に対してM&A・事業承継支援を行っています。無料相談や専門家の紹介などをとおして、中小企業のM&A・事業承継を円滑化する狙いです。
中小企業の世代交代は親族への承継で行われることが多くみられます。しかし、全ての企業が余裕をもって事業承継の準備を進められるわけではないのです。
後継者や引き継ぎ準備不足などの問題を抱えていることも珍しくありません。後継者不在のまま経営者の高齢化が進むと、企業の選択肢が狭まっていくため、M&A・事業承継支援の重要性が高まっています。
こうした背景もあり、商工会議所は「M&A・事業承継の準備における必要性の認識」や「経営状況・経営課題の可視化」などが重要として、積極的に支援・促進を図っています。
2. 商工会議所にM&Aの相談をするメリット
商工会議所にM&Aの相談をするメリットは以下の通りです。
無料で相談できる
M&Aの相談を無料で行える点は最も大きなメリットでしょう。商工会議所は、会費や補助金などの収入源があるので、M&A・事業承継支援を無料で行っているのです。
経営改善普及事業を活用できる
経営改善普及事業を活用できるのがメリットとして挙げられます。経営改善普及事業とは、経営をしていて困ったことを専門家に相談しアドバイスをもらえる制度をいいます。商工会議所では無料で経営改善普及事業を活用でき、定期的にセミナーなども開催されていますので経営の助けになってくれます。
他企業の経営者と交流できる
他企業の経営者と交流できるのもメリットです。商工会議所は多種多様な会社が会員となっており、異業種交流会などの実施により他企業の経営者と気軽に交流できます。人脈を広げるという意味でも商工会議所は加入しておいて損はありません。
創業希望者へのサポートを受けられる
商工会議所は、創業希望者へのサポートも行っています。
創業希望者専用の窓口も設置されており、基礎知識の共有や創業手法の精査などあらゆる面からのサポートが受けられます。利用は原則無料であり、創業者向けの融資も実施されています。
会員限定のサービスが受けられる
会員限定のサービスが受けられるのもメリットです。商工会議所は会員制なので、事業に真剣に向き合っている会員同士でつながりを持てます。
定期的に開催される交流会に参加すれば、新しいM&A相手との出会いも期待できます。それ以外にも、業務提携や情報共有の相手を探す際に活用することも可能です。
3. 商工会議所にM&Aを相談する際の注意点
商工会議所にM&Aを相談する際はいくつかの注意点があります。相談の前に把握しておきたい注意点は以下の2点です。
【商工会議所にM&Aを相談する際の注意点】
- 納得のいく回答が得られるとは限らない
- M&A先が限られている
①納得のいく回答が得られるとは限らない
M&Aの相談は、抱えている経営課題の解決を期待して行うことが多いです。しかし、商工会議所の回答が納得のいくものになるとは限りません。
M&Aの目的や条件次第では、M&Aの可能性を否定されることもあります。解決を期待するのではなく、選択肢の幅を増やすくらいの心構えで相談するとよいでしょう。
②M&A先が限られている
商工会議所は、民間のM&A仲介機関と比較すると圧倒的に支援実績が少ないです。商工会議所は地域に根差していることもあり、M&A先が該当地域に限定されやすいといった問題もあります。
商工会議所にM&Aを相談した場合、M&A先の選定は商工会議所や提携先における専門家のネットワークで行われます。紹介される専門家次第では、M&A先の選択肢の幅が狭まってしまう恐れもあるでしょう。
4. 商工会議所にM&Aを相談する際の手数料
商工会議所へのM&A相談は無料です。商工会議所に在籍するアドバイザーから、M&Aの必要性や全体の流れに関してアドバイスを受けられます。
相談の結果、実際にM&Aを実施する場合は、商工会議所から紹介される専門家と連携して進められます。その際には、依頼する専門家に応じたM&A仲介手数料が発生するので注意しましょう。
商工会議所によっては、一律料金を提示している所もあります。例えば、大阪商工会議所の「M&A市場」では、提携先におけるどの仲介機関が担当になっても、一律の料金体系が適用されています。
5. 商工会議所以外にM&Aを相談できる場所
商工会議所以外にも、M&Aの相談先はたくさんあります。この章では、M&Aを相談できる主な場所を見ていきましょう。
【商工会議所以外にM&Aを相談できる場所】
- M&A仲介会社
- FA会社
- 地元の金融機関
- 顧問税理士
- 地元の士業
- マッチングサイト
- 知り合いの経営者
- 事業承継・引継ぎ支援センター
①M&A仲介会社
M&A仲介会社は、M&A・事業承継サポートに特化した専門家です。独自に培った経験・ノウハウやネットワークを武器としてM&A先の選定・交渉を行えるのが特徴です。
M&A仲介会社によって、ネットワーク範囲や料金体系に大きな違いがあります。M&Aの相談先にM&A仲介会社を選ぶ際は、慎重に検討したうえで相談することをおすすめします。
②FA会社
FA会社は、売り手側あるいは買い手側のどちらかと契約し、契約先の利益が最大となるようアドバイザーとして業務を実施します。専業なので、高い専門性とネットワークがあります。M&A仲介会社と同じく手数料などが生じるので、FA会社の選定が重要です。
親族内承継・従業員承継とM&Aではプロセスが違うので、事業承継が課題のケースでは、どこまでの対応となるのか確認しましょう。
③地元の金融機関
銀行や証券会社などの金融機関もM&A・事業承継の支援を行っています。特に、地方銀行は地域における中小企業の支援に注力しているので、相談先の候補に挙げられることも多いでしょう。
ただし、売り手の場合は注意が必要です。リピーターになる可能性が高い買い手を優遇することがあるので、不利な条件のままM&A成約まで進められる恐れもあります。
④顧問税理士
自社の財務状況を把握しているため、日頃から付き合いのある顧問税理士にM&Aを相談するのもよいでしょう。ただし、税理士がM&Aに詳しいとは限りません。M&Aには、経営や財務以外の専門性の高い知識や交渉力などが必要です。
税理士以外の専門家を紹介してくれることもあるので、M&Aの相談先としては、顧問税理士は選択肢に入れられるでしょう。
⑤地元の士業
M&Aは法務・税務などの知識が必要になります。これらの知識は弁護士や税理士などの専門分野なので、M&A支援事業を手掛けている士業も珍しくありません。
小規模の士業事務所では、一貫したM&A支援が難しいケースもあります。他の士業やM&A仲介会社との連携を前提としていることも多いでしょう。
⑥マッチングサイト
マッチングサイトは、インターネット上でM&Aの売買案件を閲覧できるサイトです。売り手・買い手の双方が自由に登録できるので、多数の売買案件が掲載されている特徴があります。
マッチングサイトによっては専門家の仲介サポートが一切なく、直接交渉しなければならないところもあります。M&Aの経験がない場合は、専門家のサポートがあるマッチングサイトを選びましょう。
⑦知り合いの経営者
「実際に会社を売却した知り合いの経営者に、M&Aの相談をした」ケースもあります。経営者同士のネットワークにより、情報を集める経営者も少なくありません。
M&Aの実施後に従業員や取引先がどうなったかなど、経営者からのリアルな話が聞けるでしょう。
⑧事業承継・引継ぎ支援センター
公的な機関で利用料がかからないので、気軽に相談しやすいのが事業承継・引継ぎ支援センターです。全国47都道府県に設置されています。公的な支援制度の情報があり、専門家とのネットワークも有しています。
ただし、規模の大きい案件や複雑なスキームの提案などは、あまり得意とはいえません。
6. M&Aの相談先を選ぶ8つのポイント
M&Aの相談先を選ぶポイントとして、以下のようなものが挙げられます。
- コミュニケーションの気軽さ
- 信頼度
- M&Aの実績
- 相談内容に関する専門性
- 手数料の明快さ
- 報酬の水準
- 情報提供の的確さ
- 素早い対応
コミュニケーションの気軽さ
M&Aの相談先を選ぶ際には、担当となる人物と気軽にコミュニケーションを取れるかどうかが重要なカギをにぎることになるでしょう。M&Aは、通常、半年~1年ほどかかるものです。
その長期間にもおよぶ相談からクロージングまでのなかで、担当者と密に連絡を取り合い、気軽に何でも話し合える関係を築かなくては、M&Aを成功に導くことは難しいといえます。
信頼度
M&Aの相談先の担当者と、気軽にコミュニケーションが取れるかどうかが重要ですが、何より、その担当者を信頼できるかどうかも、M&Aの相談先を選ぶポイントとして重要な要素といえます。
長期間の付き合いになるわけですから、信頼に足る人物ではないと感じた場合、担当者を変えてもらうように話してみるとよいでしょう。
M&Aの実績
M&Aの相談先を選ぶ際は、まず、どのようなM&Aの実績があるのかを確認してみましょう。相談先のホームページには、具体的なM&Aの成約事例や実績数・相談件数などが掲載されていることがほとんどです。
自社と同業種の実績があれば、候補先に選ぶとよいでしょう。実績豊富なところであれば、安心して相談できます。
相談内容に関する専門性
M&Aには、法務・税務・財務・人事・経営などの専門的な知識が必要です。相手企業の価値を知るために、さまざまな視点から調査するデューデリジェンスを実施するときに、これらの専門的な知識が必要となるのです。
M&Aの相談先を選ぶ際は、相談内容にすぐに対応できる、これらの専門性が高いところを選びましょう。先述したM&Aの相談先のなかでも、総合的に専門性が高いといえるのは、M&A仲介会社でしょう。
手数料の明快さ
M&Aの相談先を選ぶ際には、相談先に支払う手数料がいくらになるのか気になるところでしょう。月額報酬(リテイナーフィー)制の場合、相談料・着手金・中間金の設定がある場合、完全成功報酬制など、さまざまです。
成功報酬は、M&Aが成約した場合に支払うものですが、一般的に「レーマン方式」と呼ばれる方法で算出することが多いでしょう。相談先のホームページに手数料に関する情報を載せているところもあります。
M&Aの相談先を選ぶ際には、この手数料を明快に説明してくれるかどうかもポイントの一つといえます。
報酬の水準
M&Aにかかる手数料は、成約した後に支払う成功報酬だけではない場合があります。デューデリジェンスを実施する際に発生する、専門家への報酬などは決して安いものではありません。
この実務にかかる報酬の水準が適正であるかどうかを見極めるのは困難です。実務を依頼する際に費用が発生するかどうか、相談の際に担当者に聞いてみるとよいでしょう。
情報提供の的確さ
M&Aの相談先を選ぶポイントの一つに、必要な情報を必要なタイミングで誠実に伝えてくれる担当者であるかどうかを見極めることが挙げられます。初回から、専門性の高い情報を持っているか、確認しながら相談してみるとよいでしょう。
素早い対応
M&Aを実施するには、スケジュールと戦略を策定するところから始まります。M&Aにかかる期間はおおむね半年~1年ほどですが、依頼する企業によっては、いつまでにM&Aを完了させたいという要望がある場合もあります。
特に、時間に制約がある場合には、スケジュールどおりに進行させるよう調整しながら、素早い対応が迫られることがあるでしょう。その要望に応えられるような担当者のいる相談先を選定しましょう。
7. 商工会議所にM&Aを相談するメリットまとめ
商工会議所はM&A支援を行っており、無料で利用できるので、後継者問題を抱えM&Aの必要に迫られている企業にとって有力な相談先です。
しかし、M&Aにおける選択肢の幅を広げるためには、他の専門家に相談することも大切です。特にM&A仲介会社からは、一貫したM&A支援を受けられます。
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