事業デューデリジェンス(ビジネスDD)とは?目的や調査・分析の流れを解説!

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

事業デューデリジェンスとは、売却側企業の事業の収益性などについて調査することです。M&Aを実施する上ではデューデリジェンスは欠かせません。この記事では、事業デューデリジェンスの調査項目や分析方法、流れなどについて解説します。

目次

  1. 事業デューデリジェンス(ビジネスDD)とは?
  2. 事業デューデリジェンスの流れ
  3. 事業デューデリジェンスで用いられる分析手法
  4. 事業デューデリジェンスの費用相場
  5. 事業デューデリジェンス成功のポイントと注意点
  6. 事業デューデリジェンスまとめ
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1. 事業デューデリジェンス(ビジネスDD)とは?

M&Aを実施する上では、デューデリジェンスは欠かせません。デューデリジェンスにはいくつかの種類がありますが、この記事では事業デューデリジェンス(ビジネスDD)について解説します。

デューデリジェンスの意味

最初にデューデリジェンスの意味についてみておきましょう。デューデリジェンスとは、英語で「Due(期限・当然の)」と「Diligence(注意義務)」と書きます。略して「DD」と書くこともあります。

M&Aでのデューデリジェンスとは、買収側の企業が売却側の企業を調査することです。

買収側が徹底的に注意を払って調査をした結果、買収に問題がないと判断してM&Aを成立させた後で、何らかの問題が発生しても、売却側が意図して隠していたものでなければ売却側の責任にはならないのがデューデリジェンスの意味です。

M&Aにおけるデューデリジェンスには、事業デューデリジェンスの他に、財務DD、法務DD、人事DDなどがあり、必要に応じて実施するデューデリジェンスの種類を決定していきます。

事業デューデリジェンスの目的や必要性

M&Aにおける事業デューデリジェンスは、売却側の企業の事業性を評価することを目的として実施します。ビジネスを継続する上での事業性を評価するのが事業デューデリジェンス、ビジネスDDです。

それでは、事業デューデリジェンスでは具体的にどのような観点で調査を実施するのかみていきましょう。

事業を継続する上での懸念点の調査

買収側が事業デューデリジェンスで調査する項目の1つが、企業の買収後に事業を継続する上で懸念点となる点がないかどうかです。

経理、営業、キーマン、属人化されている技術やノウハウ、システム、独禁法などの規制についてなどを調査して、買収後の統合過程において問題が発生する可能性や、想定よりもコストがかかる可能性がないかを調べて、スムーズな統合を実施するための対応を検討します。

取引上のリスクの洗い出し

買収側が事業デューデリジェンスで調査する項目には、取引上のリスクについての調査もあります。売却側の企業の事業規模、業種、販路、技術力などが、買収側が想定している範囲内に収まっているかどうか、といったことの数量的な調査です。

さらに、売却側と顧客との関係性などの質的な面の調査も行います。このときに、権限、組織図、業務分掌などを整理して、買収後の統合の進め方を具体化していきます。

収益性・生産性・シナジー効果の調査

事業デューデリジェンスでの調査項目には、買収する企業の事業における収益性や生産性、買収側の企業とのシナジー効果についての分析もあります。

特に、他事業へ新規参入する場合には、売却側の企業の価値を見定めるのに、この項目をよく確認することが重要です。市場価値が高く、シナジー効果を得やすい企業か判断するためには、売却側企業の次の点についてよく調査しましょう。

  • 市場評価
  • 将来性
  • 希少性
  • 人材
  • 売上推移
  • 模倣性

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2. 事業デューデリジェンスの流れ

事業デューデリジェンスはどのように進めるのでしょうか。事業デューデリジェンスの流れについてみていきましょう。

調査チームの結成

M&Aでデューデリジェンスを実施する場合には、買収側の企業が独自の調査チームを結成して調査にあたります。

買収側の企業にM&A専門チームがある場合には、内部の人員だけで調査を実施することもありますが、内部チームだけでは客観性に欠けるおそれがあるので、外部のM&Aの知見が高い弁護士、税理士、会計士もチームに入ってもらうのがおすすめです。

デューデリジェンスを実施できる専門家は、M&Aを専門に取り扱う会社に依頼するのもいいでしょう。

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M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。

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秘密保持契約の締結

事業デューデリジェンスを実施する上では、売却側企業の財務、税務、法務、経営、取引、ノウハウ、人事などの機密情報の開示を求めます。万が一、機密情報が流出すると大問題に発展するので、情報の適切な取り扱いを定めた秘密保持契約を締結しましょう。

秘密保持契約では、開示する資料の種類、利用目的、返却期限、返却方法、万が一の場合の罰則などを定めます。

調査方針の決定

買収側の企業では、事業デューデリジェンスを実施する上での期限と予算を定めたら、事業デューデリジェンスを実施する範囲や方針などを決定します。

売却側企業の隅々までを調べ尽くすのは期限と予算の都合上不可能なので、買収の可否についての判断に欠かせない情報を漏れなく把握するために調査する方向性や調査範囲を、最初に設計しておくことが重要です。

調査対象企業の実態分析

現在、把握できている情報を整理して、売却側企業の実態を分析しておきましょう。機密情報の開示を求めなくても、登記簿謄本、定款、株主構成、決算書、事業計画書、販売実績など、入手できる資料から分析しておくことで、今後の調査がスムーズに進めやすくなります。

メンバー間の打ち合わせ

具体的な調査に入る前に調査チームのメンバーで打ち合わせを実施しておきましょう。

特に、外部のメンバーがチームに入っている場合には、事前の打ち合わせで、売却側企業の概要、M&Aの方針、デューデリジェンスの実施方針、これまでに把握できている情報などについてこの段階で共有しておくことが重要です。

事業デューデリジェンス以外に、法務DDや財務DDなども実施する場合には、担当者感での連携も重要なので、調査メンバー全員が必要な情報を共有できる体勢を構築しておきましょう。

請求資料リストの作成

ここまで、買収側企業で事業デューデリジェンスを実施するための事前準備が完了したら、売却側企業に対して開示を請求する資料をリストにまとめます。

売却側企業の財務、税務、経営、顧客、事業内容、ノウハウ、人事など、事業デューデリジェンスを実施する上で必要な資料をリスト化して、売却側企業に開示を依頼します。

調査・分析

売却側企業に請求した資料が提供されたら、具体的な調査に入り、分析していきましょう。調査、分析の流れは次のとおりです。

経営者からの聞き取り調査

事前に調査した情報や提供された資料だけではすべてを把握することはできないでしょう。資料の数字からは見えない部分については、直接経営者に聞き取りを行います。

なお、このときにM&Aの実施について外部に漏れないように、実施方法などについてはよく注意することが重要です。

事業性評価

事業デューデリジェンスでは、まず、売却側企業の事業性についての評価を行います。市場分析を行った上で、売却側企業の強みと課題を確認します。

また、市場動向が変化した場合の、売却側企業の対応能力についても検証して、今後の企業価値向上のポテンシャルやコスト削減の可能性について分析を実施しましょう。

想定されるシナジーの抽出

M&Aを実施することで想定されるシナジーを項目として抽出します。可能であれば定量化できる項目はできる限り数値化してみましょう。

なお、シナジーには売上増加や市場規模の拡大といったプラスに働くものだけではなく、取引先の重複などによるリスクの発生など、マイナスに働くものもある点はよく理解しておくことが重要です。

人材面でのシナジーを得たい場合には、売却側企業の経営者からマネジメントについての考え方をよく聞き取り、経営統合後の価値向上のためのポテンシャル分析を行いましょう。

事業計画の作成

以上の調査、分析が完了したらM&A後の事業計画を作成します。すでに、売却側企業が作成した事業計画がある場合は、そちらを分析して実行可能性が高いものか判断しましょう。

売却側企業が作成した事業計画は、希望的観測が盛り込まれていることが多く、実効性に疑問符が付く場合も多いので、買収側企業が事業デューデリジェンスの結果に基づいて作成し直す必要がある場合も多いものです。

事業計画を作成後、シナジーの可能性についても検討します。事業計画書が完成したら、PL(損益計算書)、BS(貸借対照表)、CF(キャッシュフロー)を作成して、企業価値評価とPMI(統合プロセス)における課題抽出に役立てます。

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3. 事業デューデリジェンスで用いられる分析手法

事業デューデリジェンスでは、複数の分析手法が用いられます。どのような分析手法で実施するのか解説します。

SWOT分析

SWOT分析とは、分析する企業の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Oppotunity)、脅威(Threat)を分析する手法です。

分析対象企業の外部環境と内部環境について、4つの要因で分析することで、経営課題を具体化して、戦略策定や経営資源の最適化などに役立てます。

既存事業の改善点の発見と、将来的なリスクを発見することができる手法です。

ビジネスモデル分析

事業デューデリジェンスでもっとも重要な分析が、売却側企業のビジネスモデルの分析です。

売却側企業のビジネスモデルを正しく理解するために実施します。ビジネスモデル分析では、売却側企業の経営者や事業部門の責任者へのインタビューが必要です。事業を深く理解している人物に、実際にビジネスモデルを説明してもらいます。

このインタビューを通して、経営者や事業部門の責任者の脂質と適性を判断することも可能です。

競合他社分析

事業デューデリジェンスの実施においては、競合他社の分析も行います。売却側企業と競合する企業を分析して比較することで、売却側企業の強み、弱み、課題を洗い出し、業界内での位置づけを明確化します。

競合他社分析を行うときには、市場におけるKPI(重要業績評価指標)を比較することが重要です。

マーケット分析

マーケット分析とは、売却企業が属する業界の市場の状況の把握と、自社製品の商品力の分析を行うことです。

市場分析は証券会社やシンクタンクなどから発表されている業界別のアナリスト・レポートや、行政機関から発表されている統計情報の分析、業界の有識者への聞き取り調査等で実施します。

複数の観点から市場の現況、過去の状況を分析して、傾向の把握と今後の見通しの分析を行いましょう。

収益性分析

SWOT分析、ビジネスモデル分析、競合他社分析、マーケット分析の結果と、財務デューデリジェンスの結果からわかる過去の営業成績についての情報から、売却側企業の各事業の収益性について分析を行います。

収益性を分析することで、売却側の企業が収益を上げられているかどうかを判断できます。

事業ポートフォリオ

事業デューデリジェンスの最後に事業ポートフォリオの作成と分析を行います。事業ポートフォリオとは、企業の事業を一覧化したものです。

事業ポートフォリオを作成したら、今まで行ってきた各種分析の結果に基づいて、経営資源を投入するべき事業を検討します。

売却側企業にとっても、事前に事業ポートフォリオを作成できているかどうかが、最適な売却先を見つけるのに重要です。

適切な事業ポートフォリオによって、自社の強みと課題、市場動向を把握して、今後の見通しの分析ができていれば、買収側企業との交渉にも大いに役立てることができるでしょう。

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4. 事業デューデリジェンスの費用相場

事業デューデリジェンスにかかる費用は、M&A案件の規模と実施するデューデリジェンスの種類によって大幅に異なります。中小企業を対象としたデューデリジェンスを実施する場合でも、数十万円から数百万円かかるでしょう。

大企業や海外企業の案件の場合には、デューデリジェンスの実施だけでも数千万円かかることも珍しくありません。

国内でのM&Aでの場合、デューデリジェンスの費用を日割りすると、1日2万円から10万円程度、総額で50万円から100万円程度が相場です。

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5. 事業デューデリジェンス成功のポイントと注意点

事業デューデリジェンスを成功させるためのポイントと注意点です。

買収規模に相当するデューデリジェンスを実施する

事業デューデリジェンスには多額の費用が必要で、M&Aの実施規模が大きくなればなるほど必要なコストも膨れ上がります。しかし、買収規模に見合った事業デューデリジェンスを実施することが重要です。

もしも、費用と時間を抑えるために、買収規模よりも規模を抑えた事業デューデリジェンスを実施してしまうと、必要な項目の調査を実施できずに、経営統合後に重大な問題が発覚する恐れが高まるでしょう。

M&Aの規模に見合った事業デューデリジェンスを実施するように注意しましょう。

調査項目に優先順位を付けてチェックリストを作成する

事業デューデリジェンスで実施するべき項目は多岐に渡るので、すべての項目を完璧に調査しつくすことは難しい可能性があります。

事業デューデリジェンスで調査したい項目には優先順位を付けることが重要です。優先順位を付けてチェックリストを作成した上で、優先度の高い項目から調査を進めるようにしましょう。

情報管理方法の徹底

デューデリジェンスは、売却側企業から提供された機密資料をもとに実施します。デューデリジェンスで使用する機密情報の扱いには最大限の注意が必要です。

デューデリジェンスは複数人のチームで実施するので、メンバー間で情報の管理方法の共有と秘密保持契約に基づいての秘密保持を徹底するようにしましょう。

情報を開示する売却側は、秘密保持契約の内容について、M&Aの専門家に助言を求めることをおすすめします。

協力姿勢での対応

売却側企業にとっては、デューデリジェンスは自社や経営者自身の粗探しをされるような気分になることもあり、機密資料の提出を求められても期限までに提出しないこともあります。

しかし、会社を売却するためには、デューデリジェンスは必ず通るべきものです。協力する姿勢を見せないと、最悪の場合、M&Aの破談の可能性もあります。

積極的に資料開示に応じることと、粉飾決済などの不都合な真実やリスクについても包み隠さず前もって伝えることが重要です。

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6. 事業デューデリジェンスまとめ

M&Aで会社を売却するときには、事業デューデリジェンスは必ず実施されます。機密情報を開示して、社内についてくまなく調査されることは、売却側としては気持ちのいいものではないでしょう。

しかし、買収側にとってはM&Aの可否を判断するための重要な調査であるので、売却側としては協力的な姿勢を見せることが重要です。

事業デューデリジェンスにどのように対処したらいいのかわからない、どこまでを買収側に伝えるべきなのか、判断に迷う場合には、M&Aの専門家の助言を仰ぎましょう。M&Aの専門家なら、デューデリジェンスへの対応もしっかりとサポートできます。

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