2022年09月14日更新
新型コロナウイルスの影響による廃業支援とは?活用できる制度、注意点などポイントを解説
新型コロナウイルスの影響により、飲食業・観光業を中心に廃業数が増えています。廃業はつらい決断ですが、廃業支援を受けることで負担を軽くできる場合があります。本記事では、新型コロナウイルスの影響による廃業や廃業支援を受ける際の注意点を解説しました。
1. 新型コロナウイルスによる廃業
2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により、控えていた東京オリンピックが延期となり、経済活動にも大きな打撃を受けることになりました。
緊急事態宣言の発令や自粛ムードの強まりによって、業種次第では営業形態を大きく変えなければならないこともあり、経営状態が悪化している企業・事業者が増えています。
度重なる緊急事態宣言やコロナ終息が見えないなか、廃業を決断する経営者も少なくありません。この章では、新型コロナウイルスの影響や廃業数が多い業種を解説します。
新型コロナウイルスの影響による廃業
2021年1月、東京商工リサーチは2020年の休廃業・解散した企業数は49,698件(19年比14%増)であったと公表しました。コロナで先行きの不透明感から、事業の存続が難しいと判断する経営者が増えたことがうかがえます。
一方、2020年の倒産件数は7773件(19年比7.2%減)と大きく減少したことも公表されました。これは政府や民間金融機関の廃業支援が功を奏して、コロナによる倒産ではなく無事に廃業できたためと考えられています。
新型コロナの影響で廃業数の多い業種とは
東京商工リサーチによると、新型コロナの影響で廃業数の多い業種はサービス業(飲食業・観光業等)の15,624件です。
特にサービス業は店舗型の接客が中心のため、コロナの影響を大きく受けています。飲食業はテイクアウトやデリバリーで対応する店舗も増えましたが、初期投資に一定の費用が必要になることもあり、対応に追われる経営者が多いのが現状となっています。
観光業はインバウンド需要の高まりから景気の良い年が続いていましたが、コロナで海外観光客が激減したことで急激に売上が落ちました。GoToトラベルなどの政策も打ち出されましたが、コロナ感染拡大の影響次第で一時停止になることもありつらい状況です。
他業種も調査対象となった10産業全てで廃業が前年比増となっており、あらゆる業種が新型コロナの影響を受けていることが分かります。
産業別 | 2020年 | 2019年 | ||
件数 | 構成比 | 前年比 | 件数 | |
農・林・漁・鉱業 | 591 | 1.2% | 9.04% | 542 |
建設業 | 8,211 | 16.5% | 16.85% | 7,027 |
製造業 | 5,518 | 11.1% | 10.45% | 4,996 |
卸売業 | 4,735 | 9.5% | 9.68% | 4,317 |
小売業 | 6,168 | 12.4% | 7.29% | 5,749 |
金融・保険業 | 1,817 | 3.7% | 41.62% | 1,283 |
不動産業 | 3,744 | 7.5% | 17.15% | 3,196 |
運輸業 | 837 | 1.7% | 15.45% | 725 |
情報通信業 | 2,453 | 4.9% | 8.16% | 2,268 |
サービス業他 | 15,624 | 31.4% | 17.96% | 13,245 |
後継者不在企業が新型コロナの影響で廃業
新型コロナウイルスの影響によって、後継者不在企業の廃業も相次いでいます。主な理由としては倒産リスクが高まることや投資回収が難しくなるなどがあり、最終的に廃業支援を受けながら廃業手続きを進めることが多くなっています。
新型コロナの影響で倒産する可能性がある
後継者不在企業はただでさえ後継者問題の経営課題を抱えていますが、新型コロナの影響で業績悪化の追い打ちを受けて、さらに事業継続が難しくなる可能性が懸念されています。
経営支援の融資や廃業支援を行う日本政策金融公庫の調査では、60歳以上の経営者のうち50%以上が将来的な廃業を予定です。このうち「後継者不在」を理由とする廃業が全体の約3割に相当していることが明らかになっています。
新型コロナ対策の投資回収が難しいと判断
新型コロナの影響を受けた企業・事業者は、補助金制度や廃業支援などの政策を利用できます。しかし、対策を施しても投資回収が難しいと判断されると、支援政策が打ち切られる可能性もあるでしょう。
飲食業の場合は、テイクアウトやデリバリー対応、ビニールシートの徹底などがありますが、大規模な設備投資を伴うものは融資が必要不可欠です。
後継者がいれば投資回収する見込みも立ちやすいですが、後継者不在の場合は長期的な返済計画を立てづらくなるため債権者も融資しづらくなる問題があります。
結果として、後継者不在企業はコロナの影響による倒産を回避するために、廃業を決意するケースが増加中です。その際にはコロナの影響による廃業支援を活用して、廃業費用の融資や補助を受けています。
2. 新型コロナウイルスの影響による廃業支援の紹介
新型コロナウイルスの影響で、やむなく事業を廃業した事業者は廃業支援を受けられます。廃業支援には融資や補助金などがあり、有効活用することで廃業負担を軽くできます。
【新型コロナウイルスの影響による廃業支援】
- 事業承継推進事業による廃業支援
- 自主廃業支援保証による廃業支援
- 国税の納付猶予制度による廃業支援
- 廃業経費補助金制度による廃業支援(地方公共団体独自)
- 住居確保給付金による廃業支援
①事業承継推進事業による廃業支援
事業承継を契機とする新たな取り組みや廃業に係る費用の補助を受けられる廃業支援です。
令和4年度当初予算 事業承継・引継ぎ補助金での廃業・再チャレンジ事業があります。中小企業者が、事業承継やM&Aに伴う廃業、経営者の交代あるいはM&A後に承継者が行う経営革新などによる廃業(併用申請)、中小企業もしくは個人事業主が新たなチャレンジをするため に行う既存事業の廃業(再チャレンジ申請)などが補助対象です。
令和4年度当初予算 事業承継・引継ぎ補助金での廃業・再チャレンジ事業は、廃業・再チャレンジ事業単独で申請を行う「再チャレンジ申請」、あるいは経営革新事業・専門家活用事業とあわせて実施する「併用申請」があります。
申請方法は、対象者や補助事業の要件、補助率や補助上限額などが変わっています。事業承継やM&Aなど、状況に合わせた廃業支援を受けられるでしょう。
②自主廃業支援保証による廃業支援
経営者が廃業を決断する際に必要な廃業費用を円滑に調達できることを目的とした廃業支援です。要件を全て満たす中小企業者は、3,000万円以内の支援保証を受けられます。
【自主廃業支援保証による廃業支援の要件】
- M&Aや事業承継等による事業継続が見込めず、自ら廃業を選択するもの
- 直近決算が実質的に債務超過でなく、事業清算により完済が見込めるもの
- バンクミーティング等(全ての債権者が同一の情報開示を行い、今後の再生について合意を得る場)により合意に至った廃業計画書に従って計画の実行及び進捗の報告を行うもの
③国税の納付猶予制度による廃業支援
新型コロナウイルスの影響で国税の納付が難しい場合、一時的な猶予措置を受けられる廃業支援です。廃業以外にも要件が定められており、次のいずれかに該当する事業者は原則1年間の猶予措置を受けられます。
【国税の納付猶予制度による廃業支援の要件】
- 新型コロナウイルス感染症の患者が発生した施設で消毒作業が行われた備品や棚卸資産を廃棄した場合
- 経営者本人または家族が病気にかかった場合
- 事業を廃業または休止した場合
- 事業に著しい損失を受けた場合
④廃業経費補助金制度による廃業支援(地方公共団体独自)
地方公共団体が独自で廃業経費などの補助金を支給する制度があります。例えば、2020年に実施された廃業経費補助金制度による廃業支援(東京都杉並区)を見てみましょう。
廃業経費補助金は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、廃業した個人事業者に向けた制度であり、廃業後に発生した店舗の家賃相当分の費用を補助する制度を実施しました。
補助金を受ける要件は、主に以下です。
- 新型コロナウイルス感染症の影響により廃業した個人事業者などであること
- 東京信用保証協会の保証対象業種であったこと
- 申込日までに納付すべき住民税および事業税を滞納していないこと
2020年に実施された補助金制度であり、現在は利用できません。今後再び公募を行う可能性はゼロではないためホームページなどを確認するのがおすすめです。
⑤住居確保給付金による廃業支援
住居確保給付金とは、新型コロナウイルス感染症によって廃業し経済的に困窮となってしまい、住居を失うあるいは失う可能性がある人に対して、家賃相当額を支給する制度です。
支給対象者は、以下が対象となります。
- 離職・廃業後2年以内
- 新型コロナウイルス感染症の影響による休業によって収入が減少し、離職などの状況にある
補助上限額は、世帯人数・収入により違いますので、住居確保給付金による廃業支援を希望する場合は、事前に「生活困窮者自立支援窓口」に相談して必要な手続きを行いましょう。
3. 廃業支援を受ける際の注意点
新型コロナの影響による廃業支援は、要件を満たさなければ利用できません。確実性のないまま廃業して廃業支援を受けられないとなれば手遅れです。コロナ禍で余裕がなくても、要件確認などを慎重に行う必要があります。
補助金は基本的に後から支給されます。実際に廃業あるいはM&A・事業承継を実施した後、関連書類を作成して審査を受ける形なので、廃業やM&A・事業承継の実施タイミングから補助金を受け取るまでに一定の期間が空くことにも注意しなくてはなりません。
新型コロナで廃業を検討する際の相談先
さまざまな注意点を押さえつつ、新型コロナの影響による廃業支援を活用するなら、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。
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廃業以外の選択肢としてM&Aの検討もできるでしょう。コロナ禍でも積極的に攻め姿勢をみせる企業も多いので、買い手が見つかって廃業を回避できる可能性もあります。
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4. 新型コロナウイルスに伴う廃業支援まとめ
新型コロナの感染拡大で経済活動に大きな変化が起きているのが現状です。先行きが不透明なため廃業を決意する経営者も多くなっており、廃業を円滑にする廃業支援が充実してきています。
補助金支給には要件を満たしたうえで厳格な審査を受ける必要があります。経営者は新型コロナの対応で余裕がない場合も多いので、M&Aの専門家に相談すると手続きの負担を軽くできるでしょう。
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