2024年06月26日更新
廃業手続きを株式会社と個人事業主ごとに解説!かかる費用や有限会社・合同会社・休眠会社の場合も
廃業に必要な手続きは、株式会社と個人事業主で異なるため、その違いを理解しておくことが重要です。本記事では、株式会社と個人事業主の廃業手続きや必要な費用、有限会社・合同会社・休眠会社が廃業する際の注意点を解説します。
目次
1. 廃業手続きに入る前の準備
廃業は会社設立よりも重い決断であり、手続きもより煩雑です。まずは、廃業手続きに入る前段階での準備を確認しましょう。
廃業する必要性の分析
経営者が廃業する理由はケースバイケースですが、一般的には以下のような理由が考えられます。
- 経営者が引退時期を迎えるが後継者がいない
- 経営者の健康問題
- 経営の先細り
- 今後の事業発展に望みがない
- 業績悪化・債務超過
- 主要取引先の倒産や廃業
上記のうちのいずれかの状況であれば、廃業はやむを得ない決断とも考えられます。しかし、廃業してしまえば後には何も残りません。廃業を決める前に、廃業以外の選択肢を取れないかどうか十分に検討すべきでしょう。
具体的には、会社や事業をM&Aで売却することで、経営者が一定の現金を得られる可能性があります。廃業を検討する場合は、M&Aでの売却ができないかM&A仲介会社などの専門家に相談してみましょう。
赤字企業でも廃業ではなく事業譲渡・M&Aできるケースもある
廃業するためには、費用だけでなく、売却先の選定や見積もりなどに想定以上の時間がかかる点にも注意しなければなりません。
廃業しようと会社の資産を査定したところ、想像以上に高い評価額が算出されることもあります。
赤字の会社であっても事業譲渡・M&Aできるケースがあるため、廃業を決める前にM&A仲介会社に相談しましょう。
利用できる廃業支援のリサーチ
廃業を行おうとする経営者・個人事業主に対し、金融機関などから廃業支援サービスが提供されています。以下はその一例ですが、各廃業支援を受けるには細かな条件があるので、詳細はそれぞれ確認してください。
- 信用保証協会:自主廃業支援保証(廃業のために必要となる事業資金の保証)
- 新生銀行:廃業支援型バイアウト(会社の株式を銀行が買い取り、他者への売却を試みる)
- 大垣共立銀行:事業整理支援ローン(カーテンコール融資:廃業までの事業資金の融資)
- 経営コンサルタント会社:廃業手続きの支援やその代行
単なる廃業ではなく、新たな事業にチャレンジするために現在の事業を廃業する場合には、中小企業庁が実施している「事業承継・引継ぎ補助金」のうちの「廃業・再チャレンジ事業」に申請し認められれば廃業費用の一部について補助金が得られます。
廃業に必要な書類収集
廃業手続きにあたっては、必要な書類が数多くあります。例として個人事業主の場合に最低限、必要な書類は以下のとおりです。
- 廃業届
- 各都道府県の税務署へ提出する廃業の届出書類
- 給与支払事務所などの開設・移転・廃止の届出書
- 所得税および復興特別所得税の予定納税額の減額申請書
- 所得税の青色申告の取りやめ届出書
- 事業廃止届出書
- 本人確認書類
- マイナンバー
法人の場合、さらに必要書類が増えます。手続きにあたっては、士業などの専門家に相談して進めるべきでしょう。
2. 廃業手続きに必要な費用
廃業手続きでは、主に以下の費用が発生します。
- 登記・手続きの費用
- 士業専門家の報酬費用
- 設備処分の費用
- 建造物の原状回復費用
それぞれの具体額を紹介しますが、中には個別のケースで金額が変動するものもあります。
登記・手続きの費用
廃業に関する登記や手続きに要する費用額は、以下のとおりです。合計で約7万2,500~8万2,500円になります。
- 官報公告掲載費用:約3万~4万円
- 解散登記:3万円
- 清算人登記:9千円
- 清算結了登記:2千円
- 登記事項証明書の郵送代:約1,500円
士業専門家の報酬費用
廃業手続きの相談先として、弁護士や税理士、司法書士などがあります。法的に不可もなく廃業手続きを行うために、その代行業務を士業専門家に依頼すれば報酬が発生しますが、目安額は以下のとおりです。ただし、各士業事務所により金額は変動します。
- 約60万~70万円
設備処分の費用
廃業では各種設備を処分しなければなりません。それぞれが持つ設備は内容が違いますから、ここで一概に金額を明示できません。大規模な設備であれば、高額の処分費用となることもあり得ます。引き取り手を見つけられれば、売却処理をして利益を得ることも可能です。
建造物の原状回復費用
事業者や店舗が賃貸物件であれば、賃貸契約に原状復帰工事が義務付けられているはずです。これも各社により面積が異なるので、金額は明示できませんが、工事費用の坪単価あたりの目安額は以下の金額になります。
- 数万~10万円
3. 株式会社と個人事業主の廃業手続き・流れ
廃業手続きは、株式会社か個人事業主かで大きく変わるものです。この章では、廃業の手続きを株式会社と個人事業主とに分けて、手順を解説します。
株式会社の廃業手続き・流れ
まずは、株式会社の廃業手続きを解説します。株式会社の廃業手続きは、債務を全て弁済可能かどうか、債権者や株主からの異議が出ないかなどによって必要な手続きが変わるものです。債務が弁済できて債権者や株主からの反対もなければ、おおむね以下のような手続きで進めます。
- 営業終了日を決定する
- 関係者に廃業を知らせる
- 株主総会の解散決議と清算人選任
- 解散登記と清算人登記
- 債権者への官報公告・通知
- 決算書類の作成と株主総会での承認
- 解散確定申告
- 資産と負債の清算
- 残余財産の分配
- 株主総会での決算報告書の承認
- 清算結了登記
①営業終了日を決定する
株式会社を廃業するためには、まず営業終了日を決定することが必要です。営業終了日の決め方は自由ですが、在庫が残り過ぎないように調整したり、取引先に迷惑がかかったりしないように日程をすり合わせます。
②関係者に廃業を知らせる
営業終了日が決定したら、顧客・取引先・従業員などの関係者に、速やかに廃業の旨を通知します。通知の仕方は、「廃業のお知らせ」などと題したあいさつ状を送付するのが一般的です。
③株主総会の解散決議と清算人選任
株式会社を廃業するには会社を解散しなければなりません。会社を解散するためには株主総会の特別決議が必要であることが会社法で定められています。株主総会の解散決議は、株主の過半数が出席したうえで3分の2以上の賛成が必要です。その際に清算人の選任も同時に行います。
④解散登記と清算人登記
解散決議が承認されたら、次は法務局で解散登記と清算人選任登記です。登記は解散日から2週間以内に行い、併せて税務署への解散の届出も行います。
⑤債権者への官報公告・通知
登記が完了したら、次は債権者へ解散の事実を伝えるために、官報での公告または書面による個別通知です。官報での公告期間は2カ月以上と定められています。個別通知は義務ではありませんが、官報公告と両方を行っておくと万全です。
⑥決算書類の作成と株主総会での承認
株式会社の廃業手続きでは、清算手続きに入る前に、解散時の決算書類を作成します。決算書類とは財産目録と賃貸対照表のことで、作成後は株主総会を開催して承認を得ることが必要です。
⑦解散確定申告
決算書類の作成と承認が終わったら、次は解散確定申告の手続きです。解散確定申告は、事業年度の区切り方など普通の確定申告とは違う点があるので、専門家のサポートのもとで慎重に作成する必要があります。
⑧資産と負債の清算
解散確定申告までで解散手続きは完了となり、次は資産・負債の清算手続きに入ります。資産と負債の清算は、債務が全て弁済可能か、債務超過かどうかによって必要な手続きが変わるものです。
なお、債務超過の場合は、裁判所の監督のもとで特別清算あるいは破産手続きを行うことになります。
⑨残余財産の分配
債務超過でない場合は、負債を全て弁済した後に、残った残余財産を株主へ分配します。残余財産の分配は、官報公告の期間が終了した後で行い、債権者間で不公平が生じないようにしなければなりません。
⑩株主総会での決算報告書の承認
清算手続きが完了したら、株主総会を開催して決算報告書の承認手続きが必要です。この株主総会の承認をもって、会社の法人格が正式に消滅します。
⑪清算結了登記
株主総会での承認を得たら、その日から2週間以内に法務局で清算結了登記の手続きを行います。清算結了登記の終了をもって、株式会社の廃業手続きは完了です。
個人事業主の廃業手続き
続いて、個人事業主の廃業手続きを解説します。個人事業主の廃業手続きは、株主総会での承認や各種登記などが不要なため、株式会社の廃業手続きに比べて簡単です。主な手続きは、事業終了日の決定・関係者への廃業の通知など、以下の4つのステップがあります。
- 事業終了日の決定
- 関係者への廃業の通知
- 廃業届を含む各種書類の提出
- 資産・負債の整理
①事業終了日の決定
個人事業主の廃業手続きも株式会社の場合と同様、まずは事業終了日の決定です。株式会社の場合と同じく、在庫や取引先との状況を見ながら適切な終了日を決めます。
②関係者への廃業の通知
事業終了日が決まったら、できるだけ速やかに従業員・顧客・取引先などの関係者へその旨を通知します。
特に従業員への通知は重要であり、なぜ廃業するのかを納得のいくように説明し、月の途中で事業を終了する場合は給与をどうするかなどを説明しなければなりません。従業員の再就職への支援が可能である場合は、できるだけサポートするなどの配慮も必要です。
③廃業届を含む各種書類の提出
個人事業主の廃業手続きでは、廃業届を含むいくつかの書類を提出する必要があります。主な提出書類は、個人事業の開業・廃業等届出書、所得税の青色申告の取りやめ届出書などの5つです。
これらの書類全てを提出するかどうかは、消費税の課税事業者かどうか、予定納税をしているかどうかなどの条件で変わります。
- 個人事業の開業・廃業等届出書
- 所得税の青色申告の取りやめ届出書
- 事業廃止届出書
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書
- 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書
個人事業の開業・廃業等届出書
廃業した日から1カ月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」を税務署へ提出します。廃業の届出は、税務署以外に都道府県にも提出が必要です。ただし、都道府県に提出する書類は各都道府県によって名前が違うことがあり、提出期限も都道府県ごとに設定されているので注意しましょう。
所得税の青色申告の取りやめ届出書
ほとんどの個人事業主は青色申告をしているはずなので、「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を提出する必要があります。提出期限は廃業した年度の翌年3月15日です。
事業廃止届出書
消費税の課税事業者の場合は「事業廃止届出書」を提出する必要があります。提出期限は決められていませんが、事業終了日からできるだけ早く、できれば1カ月以内に提出しましょう。
給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書
従業員を雇って給与を支払っている場合は、税務署へ「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」を提出する必要があります。提出期限は廃業した日から1カ月以内です。
所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書
予定納税をしている場合は、「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」を提出することで予定納税を減額できます。廃業により納税額が大きく減少する場合は、忘れずに提出しましょう。
④資産・負債の整理
個人事業主が廃業する場合でも株式会社と同様に、資産・負債の整理が必要です。ただし、個人事業主の場合は、株式会社の場合のように法律にのっとった清算手続きはないので、個人的に資産を売却して負債を返済します。
4. 廃業手続きを選ぶメリット・デメリット
廃業はマイナスイメージが強いですが、決してデメリットばかりではなくメリットもあります。廃業を選択する際は、メリットとデメリットを理解したうえで適切なタイミングで決断することが大切です。
廃業手続きを選ぶメリット
まずは、廃業するメリットを解説します。主なメリットは以下の3点です。
- 倒産のような不名誉はない
- 経営のプレッシャーから解放される
- 資産を残せる可能性がある
倒産のような不名誉はない
倒産と廃業は混同されることがありますが、倒産は経営が立ち行かなくなって会社がつぶれることなのに対し、廃業は単に会社や事業をたたむことを意味します。
廃業は経営が順調な会社でも行うことがあり、会社がつぶれたことを意味しません。したがって、将来的に倒産しそうな会社を早めに廃業すれば、倒産に比べて社会的な不名誉を軽減できます。
経営のプレッシャーから解放される
経営のプレッシャーから解放されるのも、廃業の大きなメリットの1つです。プレッシャーは精神的なもののみならず、個人保証や担保といった金銭的なものから解放されるのも大きいでしょう。
M&Aで会社を売却しても経営のプレッシャーからは解放されますが、会社自体は存続するため、売却後も会社のことが心配になってしまう場合もあります。プレッシャーからの解放という点では、会社や事業を完全に消滅させる廃業のほうがメリットが大きいでしょう。
資産を残せる可能性がある
廃業ではM&Aのような株式の売却益は得られませんが、残余財産がある場合はそれが株主に分配されるので、ある程度、資産を残せる可能性もあります。特に有効なのは、赤字が続いて回復の見込みがない会社の場合です。倒産してしまう前に早めに廃業することで、失われていく資産を守れます。
廃業手続きを選ぶデメリット
次は、廃業するデメリットを解説します。主なデメリットは、以下の4点です。
- 従業員の雇用ができなくなる
- 仕入先に迷惑がかかる
- 経営者の仕事がなくなる
- 資産売却などで不利益をこうむる可能性がある
従業員の雇用ができなくなる
廃業すると会社や個人事業は消滅するので、そこで働いていた従業員は解雇となります。M&Aで会社を売却した場合は雇用を維持できるので、それに対して雇用を維持できない廃業はデメリットといえるでしょう。
廃業する場合は従業員の再就職がスムーズに行えるよう、サポートできる部分はできるだけサポートすることが大切です。
仕入先に迷惑がかかる
廃業すると材料などを仕入れていた仕入先との関係がなくなるので、仕入先にとっては売上が減ってしまうことになります。廃業するときは、仕入先にできるだけ迷惑がかからないように、徐々に取引を減らすなどの配慮が必要です。
経営者の仕事がなくなる
会社や個人事業を廃業すると、経営者としての仕事はなくなります。もともと引退するつもりなら問題ありませんが、今後の生活のために仕事が必要な場合は、新しい仕事を探さなければなりません。
資産売却などで不利益をこうむる可能性がある
廃業すると事業に関連する資産を売却しますが、廃業による資産の売却は、M&Aの売却に比べて金額が低くなりがちであるのが注意点です。
M&Aの事業譲渡で資産を売却する場合、買い手はその事業で将来どれくらいの利益が得られるか予想して、大きな利益が得られそうな場合は高値でも買い取ろうとします。
一方で廃業による資産の処分の場合、いわゆる「のれん」が評価されることはないので、その分、売却額を低く見積もられることになるでしょう。
5. 有限会社の廃業手続き
有限会社の廃業手続きは、基本的に株式会社の廃業手続きと同じですが、細かい点で違うところもあるので注意が必要です。この章では、有限会社の廃業手続きについて、株式会社の廃業手続きとの違いを解説します。
- 株主総会における特別決議の要件の違い
- 清算人会が設置できない
- 清算人の登記事項の違い
株主総会における特別決議の要件の違い
有限会社の廃業手続きでも、株式会社と同様に株主総会を開催する必要がありますが、特別決議の要件が株式会社とは異なります。
株式会社の特別決議は、株主総会に出席した株主の議決権3分の2以上の賛成で可決されますが、有限会社の株主総会の特別決議では、総株主の4分の3以上の賛成が必要と定められています。
会社の形態 | 定足数 | 決議要件 |
---|---|---|
株式会社 | 議決権の過半数 | 出席株主の議決権の3分の2以上 |
有限会社 | 総株主の半数以上 | 総株主の議決権の4分の3以上 |
清算人会が設置できない
株式会社の廃業手続きでは、清算中は清算株式会社となり、取締役会の代わりに清算人会を設置できます。それに対して、有限会社の廃業手続きでは清算人会を設置できず、清算人が主導して清算手続きを行う決まりです。
清算人の登記事項の違い
有限会社の廃業手続きでも、株式会社と同様に清算人を選任し、その氏名・住所を登記します。しかし、有限会社の清算人登記は、株式会社の場合と登記事項がやや異なるのが注意点です。
株式会社の場合、清算人が1人の場合はその清算人が代表清算人となり、清算人かつ代表清算人として登記します。一方で有限会社の場合は、清算人が1人の場合は清算人としてのみ登記し、別途、代表清算人を選任したときのみ代表清算人の氏名を登記する決まりです。
会社の形態 | 登記事項 |
---|---|
株式会社 | 清算人:氏名 代表清算人:住所・氏名 |
有限会社 | 清算人:住所・氏名 代表清算人:氏名(選任した場合のみ) |
6. 合同会社の廃業手続き
合同会社は株式会社に比べると今のところ数は多くないですが、年々設立数が増えてきているので、今後は合同会社の廃業事例も増加すると考えられます。合同会社の廃業手続きは基本的に株式会社と同じです。
ただし、一部注意しておきたい点もあり、特に総社員の同意による解散は、合同会社独自の制度なので注意しておく必要があります。なお、合同会社における「社員」とは、出資者兼役員のことです。
総社員の同意による解散
株式会社では議決権の3分の2以上の賛成による特別決議で解散を承認できますが、合同会社では総社員の同意が必要になるのが大きな違いです。
合同会社の解散では、総社員の同意を得たうえで「総社員の同意書」という書面を作成します。これは、株式会社の廃業における株主総会の決議書にあたるもので、後に清算結了登記をするときなどに必要になる重要な書面です。
7. 休眠会社の廃業手続き
休眠会社とは、法人格は存在しているものの、事実上、営業を行っていない会社のことです。異動届出書で休眠状態にすることを届け出ることで、会社を休眠会社にできます。12年間、会社に関する登記が何も行われていない会社は、自動的に休眠会社とみなされます。
休眠会社の廃業手続きは、基本的に株式会社の廃業手続きと同じです。ただし、休眠会社には独自の制度として「みなし解散」があるので注意する必要があります。
みなし解散
みなし解散とは、12年間、何の登記もなく休眠会社扱いになった会社を、法務局の判断で解散させる制度です。12年間、登記のない会社に対しては法務局から通知が来ますが、その後2カ月間、会社側から何の連絡もなければ、法務局側の判断で会社を解散できます。
8. 廃業手続きをしない場合の手続きや注意点
廃業手続きをしない場合・廃業手続きができない場合に必要な手続きや注意点を会社・個人事業主それぞれについてお伝えします。
会社が廃業手続きをできない場合
会社を廃業するには費用と時間がかかるため、廃業手続きをできないというケースもあります。例えば下記のような費用が残っていて支払いが難しい場合には、廃業したくてもできないことが多いです。
- 賃貸店舗などの原状回復費用
- 取引先や契約業者との違約金・解約金
- 廃業までの運転資金
- 借入金
廃業をすると決まればすぐにできるわけではなく、今までの契約を解除するための資金や、廃業までにかかる運転費用が必要になります。そして債務超過に陥った場合は、解散ができても通常通りの清算ができません。
廃業には解散と清算が必要であり、解散をしたからといって廃業になるわけではありません。つまり清算ができないままの状態でいると、廃業ができないということになります。
廃業ができない場合に必要になるのが、破産や特別清算の手続きです。債権者の協力が得られる場合は特別清算が可能ですが、協力を得られない場合には破産手続きを行うことになります。
個人事業主が廃業手続きをしない場合
廃業届の提出は所得税法で定められている義務です。とはいえ、個人事業主は廃業届を出さず廃業手続きをしないままでいても、直接的なペナルティや罰則がありません。
ただ、廃業届を出さないことで税務署に事業を継続しているとみなされるため、確定申告の案内がきたり必要以上に税金が課されたりする恐れがあります。
廃業及び案内を無視することで追徴課税の対象となり、税務調査が入ってしまうリスクもあります。法律上の罰則がなくとも、廃業届および廃業にまつわる各書類については、忘れず提出するようにしましょう。
9. 新型コロナの影響により廃業件数が増加
2020(令和2)年より猛威を振るっている新型コロナウイルスは、ほぼ全ての業種に多大な影響を及ぼしています。実際、新型コロナによる経営不振で廃業した会社はすでに多くあり、その数は今後さらに増えてくるとの予想です。
廃業件数の推移
新型コロナによる廃業がよく話題になりますが、廃業件数自体は新型コロナが発生する以前から増加傾向にありました。帝国データバンクの「全国企業「休廃業・解散」動向調査(2023)」によると、2023年に全国で休業・廃業、解散を行った企業は59,105件でした。休廃業した企業のうち、「資産超過型休廃業」は 62.3%でした。
2023年の休廃業動向は、政府からの支援策が縮小されたことに加え、電気代などエネルギー価格などの高騰、人手不足問題や人件費負担の増加などにより、直近の損益が大幅に悪化した企業が多いとされています。
黒字廃業も多い
廃業は単に会社や個人事業をたたむことなので、黒字でも行えます。実際、中小企業庁の調査では、廃業した会社の約40%が黒字だったとのことです。黒字廃業する主な理由は、もともと自分の代でやめようと思っていた、後継者がいない、事業に将来性が見いだせないなどがあります。
他の要因として、経営者の高齢化や健康上の問題、家族や個人的な事情、ビジネス環境の変化、競争激化、労働力不足、人材確保の困難さ、技術革新による市場変化、コロナウイルスの影響なども挙げられます。
特に中小企業では、後継者問題が深刻で、事業承継の支援策が重要です。また、黒字廃業時には従業員の再就職支援や取引先への事前通知などの対策も必要です。
これらの理由から、黒字でも廃業を選ぶケースが増えていますが、適切な準備と対応が求められます。
新型コロナの影響による廃業
新型コロナによる廃業件数が最終的にどれくらいになるかはまだわかりませんが、東京商工リサーチの調査によると、約27万社が廃業の危機にあるというアンケート結果も出ています。新型コロナによる影響は、特に零細企業への被害は甚大なものになるとの予想です。
10. 廃業予定の株式会社や個人事業主こそM&Aを検討すべき
廃業とM&Aはそれぞれメリットとデメリットがあるので、両者を慎重に比較したうえで廃業のメリットが大きいと判断したならば、廃業するのはもちろんよい選択となります。
しかし、明らかにM&Aのメリットが大きいと思われるにもかかわらず、M&Aがよくわからない、またはそもそもM&Aを知らないなどの理由で、廃業を選択してしまうケースも多いのが実情です。
株式会社や個人事業主の廃業を予定している場合は、まずM&Aの専門家に相談して、M&Aの可能性も検討してみるべきでしょう。
11. M&Aを検討する際におすすめの相談先
廃業を予定しているがM&Aも検討してみたい経営者の方は、ぜひ一度、M&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、M&Aの経験豊富なアドバイザーが親身になってサポートするM&A仲介会社です。
積極的にM&Aを検討している経営者様だけでなく、まだM&Aの意思が固まっていない方や、赤字だけれどM&Aは可能なのか知りたい方など、幅広い相談を受け付けています。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。着手金は譲渡企業様・譲受企業様とも完全無料です。
無料相談は随時受け付けていますので、廃業を予定しているがM&Aも検討してみたい場合には、お気軽に電話またはメールでお問い合わせください。
12. 株式会社と個人事業主の廃業手続きまとめ
廃業の手続きは、株式会社の場合と個人事業主の場合で全く違うので、その違いを理解しておくことが重要です。自分の会社がM&Aなどできるわけないと思い込まず、M&Aの可能性も検討していくことで、最適な戦略を選択できるようになります。本記事の概要は以下のとおりです。
・株式会社の廃業手続き
→営業終了日を決定する
→関係者に廃業を知らせる
→株主総会の解散決議と清算人選任
→解散登記と清算人登記
→債権者への官報公告・通知
→決算書類の作成と株主総会での承認
→解散確定申告
→資産と負債の清算
→残余財産の分配
→株主総会での決算報告書の承認
→清算結了登記
・個人事業主の廃業手続き
→事業終了日の決定、関係者への廃業の通知、廃業届を含む各種書類の提出、資産・負債の整理
・個人事業主の廃業に伴う提出書類
→個人事業の開業・廃業等届出書
→所得税の青色申告の取りやめ届出書
→事業廃止届出書
→給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書
→所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書
・廃業するメリット
→倒産のような不名誉はない、経営のプレシャーから解放される、資産を残せる可能性がある
・廃業するデメリット
→従業員の雇用ができなくなる、仕入先に迷惑がかかる、経営者の仕事がなくなる、資産売却などで不利益をこうむる可能性がある
・有限会社と株式会社の廃業手続きの違い
→株主総会における特別決議の要件の違い、清算人会が設置できない、清算人の登記事項の違い
・株主総会における特別決議の要件の違い
会社の形態 | 定足数 | 決議要件 |
株式会社 | 議決権の過半数 | 出席株主の議決権の3分の2以上 |
有限会社 | 総株主の半数以上 | 総株主の議決権の4分の3以上 |
・清算人登記の登記事項の違い
会社の形態 | 登記事項 |
株式会社 | 清算人:氏名 代表清算人:住所・氏名 |
有限会社 | 清算人:住所・氏名 代表清算人:氏名(選任した場合のみ) |
M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
- 上場の信頼感と豊富な実績
- 譲受企業専門部署による強いマッチング力
M&A総合研究所は、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。