2024年07月29日更新
スーパーマーケットのM&A・売却・買収!業界動向、事例、ポイントを解説【2024年最新】
本記事では、スーパーマーケット業界の市場動向やM&A動向のほか、売却側と買収側に分けてM&AのメリットやM&Aを成功させるポイントなどを解説します。あわせて、スーパーマーケット業界のM&A・売却・買収・異業種M&A事例もまとめました。
目次
1. スーパーマーケット業界の特徴・動向
スーパーマーケットとは、食料品や日用品などを客がレジで精算する、セルフサービス式の小売店のことです。スーパーマーケット業界には、主に食料品を販売している食品スーパーのほか、食料品だけでなく日常生活に必要な幅広い商品をそろえている総合スーパーも含まれます。
スーパーマーケット業界の特徴
スーパーマーケット業界は、外部要因から影響を受けやすく市場トレンドの変化や業界再編が起こりやすい業界です。近年のスーパーマーケット業界に対しては、主に以下の要因が影響を与えています。
- 少子高齢化
- 人手不足
- 人件費の高騰
- 自然災害・気候変動
- TPP(Trans-Pacific Partnership=環太平洋パートナーシップ協定)
- EPA(Economic Partnership Agreement=経済連携協定)
- キャッシュレス化
- 消費税率引き上げ
上記の要因に対応すべく、大手スーパーや中小スーパーは、それぞれの規模に応じた対策を講じています。その結果として、スーパーマーケット業界の市場動向やM&A動向は急速に変化している状況です。
スーパーマーケット業界の市場環境
一般社団法人全国スーパーマーケット協会の「2022年版スーパーマーケット白書」によると、2021(令和3)年のスーパーマーケット業界にまつわる情報は以下のとおりです。
- 総販売額:約25兆2千億円
- 総店舗数:22,762店
- 総従業員数:約109万人
- 企業数:約950社
- 新規開店:730店舗
- 閉店:486店舗
ここ5年間のスーパーマーケット業界の売上高の前年比は、以下のように推移しています(全店ベース)。
- 2017(平成29)年:101.0%
- 2018(平成30)年:101.1%
- 2019(平成31・令和元)年:99.9%
- 2020(令和2)年:106.3%
- 2021年:99.6%
2020年は、新型コロナウイルス感染拡大問題による外食の自粛や巣ごもり需要が要因となり、売上高比率が上昇しているのがわかります。2021年はほぼ横ばいであり、2020年と同様の状況が継続していることを示しています。
スーパーマーケットで購入される商品のジャンル別の構成比率は、以下のとおりです(合計が100%になりませんが、資料のまま掲載しています)。
- 一般食品:23.8%(調味料、缶詰、ペットボトル飲料、酒、菓子、乾物など)
- 日配品:18.3%(牛乳、乳製品、パン、豆腐など)
- 青果物:17.4%
- 畜産品:14.4%(肉類、卵など)
- 水産品:12.8%
- 惣菜:8.9%
- 非食品:4.3%
参考:一般社団法人全国スーパーマーケット協会「2022年版スーパーマーケット白書」
スーパーマーケット業界の動向
経済産業省の「2021年 小売業販売を振り返る」によると、2021年のスーパー販売額は前年(2020年)比0.3%減少しました。事業所数は増加していますが、1事業所当たりの販売額が減少しているなどの傾向が見られました。そのため、スーパーマーケット業界ではさまざまな対策がとられています。
現在のスーパーマーケット業界で目立つ動向として、以下のようなものがあります。
- 過剰な価格競争がある
- プライベートブランド商品の開発も増加している
- ネットスーパーへの参入が見られる
- ディスカウント業界の躍進が目立つ
- 地方スーパーの提携が進んでいる
- 物流コストの高騰
過剰な価格競争がある
スーパーマーケット業界では商品価格そのものが他店との差別化要因となるため、過剰な価格競争が生じやすいのが特徴です。この過剰な価格競争は、業界自体を苦しめる結果をもたらしています。
近年では、コンビニエンスストアのように、サービスを付加価値として乗せて価格競争を回避する計画が業界内で進められている状況です。
プライベートブランド商品の開発も増加している
スーパーマーケットの大手各社では、プライベートブランドの開発を進めています。なぜなら、プライベートブランドであれば低価格かつ高品質な商品を提供可能となり、他社との差別化を図れるためです。
これにより、プライベートブランドの企画・開発部門の強化や、M&Aによるプライベートブランド事業の強化など、大手各社によるプライベートブランド競争が激しく繰り広げられています。
ネットスーパーへの参入が見られる
最近では、高齢者や富裕層などの需要を見込んで、ネットスーパーへの参入も増えています。しかしながら、多くの消費者は日常の食料品を現物で購入することを当然と捉えているため、ネットスーパーの市場規模は現状それほど伸びていません。
したがって、消費者の消費行動をいかにネットスーパーに向けさせるかが今後の課題です。
ディスカウント業界の躍進が目立つ
近年は、ディスカウントストアやドラッグストアとの競合が激しいです。ディスカウントストアやドラッグストアでは、食料品はあくまでも顧客を呼ぶための商品であるため、強気な安売りを仕掛けています。
スーパーマーケット業界では、特に地方の中小企業を中心に厳しい競争を強いられている状況です。
地方スーパーの提携が進んでいる
最近では生き残りをかけて、地方の有力スーパーマーケットによる提携が進んでいます。
具体例としては、スーパーマーケットを展開する大手企業「イオン」の勢いに対抗する形で、2018年にアークス、バローホールディングス、リテールパートナーズが3社間で資本業務提携を締結しました。
本件M&A(資本の移動を伴う資本提携は広義のM&Aとされています)により、地方を拠点とするスーパーマーケットの3社は、戦略的なプラットフォームを構築し提携の強化を目指しています。
物流コストの高騰
ネット通販の拡大により、宅配需要が急増し、多品種・小ロット輸送の増加によりトラック積載効率が低下しています。そのため、物流コストがこれまでよりも高騰しているのが現状です。
物流コストの高騰が続くと企業にとって大きな負担となるだけでなく、産業全体を圧迫する恐れが高いことから国も対策に乗り出しています。
スーパーマーケット業界の課題と展望
スーパーマーケット業界の課題は、何といっても人手不足の改善です。どのようにして人材を集めるか、スーパーマーケット業界各社には、単に給与額のアップだけでなく、働きやすい環境作りや働き続けやすい社内制度の改善などが求められます。
それと並行して取り組む必要があるのが、ITの活用による必要な人手の低減化です。IT推進化のための専門部署を設けスーパーマーケット内の仕事のIT化を進めることで、今までよりも少ない人数・オペレーションで運営が可能になります。
2. スーパーマーケット業界のM&A・売却・買収の現状
現在のスーパーマーケット業界では、主に以下のようなM&A・売却・買収動向が見られます。
- 最大手による買収の継続
- 資本業務提携も比較的多い
- 異業種からの参入も増えつつある
- 地域性の強い中小企業もM&A対象とされる
①最大手による買収の継続
スーパーマーケット業界では、最大手のイオンやセブン&アイ・ホールディングスを中心に、積極的な買収が続けられています。そのほかの大手企業もM&Aなどで規模を拡大していますが、上記2社の規模拡大には追いつけていない状況です。
②資本業務提携も比較的多い
スーパーマーケット業界では、資本業務提携も多く行われています。特に中小スーパーマーケットは、大手スーパーマーケット、ディスカウントストア、ドラッグストアに対抗するために、資本業務提携による協業を進めている状況です。
③異業種からの参入も増えつつある
近年は、異業種からスーパーマーケット業界に参入するケースも相次いでいます。異業種から参入する場合には、企業の得意分野を生かしたビジネスモデルが多く見られ、特に精肉・鮮魚・惣菜部門などで差別化を図るケースが多いです。
異業種から参入することで、食品取り扱いに関する専門知識を身につけることと、さまざまな業種の店舗を組み合わせたり、異なる業態を融合させたりすることによって、事業の拡大と安定化を図れます。
また、複合出店や融合業態の推進によって、事業の多様化や拡張を目指すことも可能です。
④地域性の強い中小企業もM&A対象とされる
消費者は、自宅から近くて普段、通い慣れたスーパーマーケットを利用する傾向が強いです。大手企業を中心に、地域に根ざした中小スーパーマーケットをM&Aで獲得する戦略が行われています。
これに対して、地域の中小企業は資本業務提携などで協業しながら、大手の買収に対抗している状況です。
また、特定の地域内で多くの店舗を持つことにより、一つのスーパーマーケットチェーンが支配的な地位(ドミナント)を構築できます。これにより、そのチェーンの認知度が高まり、競争力が向上します。
また、共同での商品仕入れや配送を行うことで、コスト削減が可能になります。これは経営管理や戦略の立案と実行の効率化にもつながります。ドミナント戦略を加速するためには、同じ地域で活動する競合チェーンや、これまで展開が少なかった地域のチェーンとのM&Aが有効な手段です。
3. スーパーマーケット業界のM&A・売却・買収の事例
ここでは、スーパーマーケット業界の企業が関わった実際のM&A・売却・買収事例を紹介します。
- クスリのアオキHDによる木村屋の買収
- エコスによるココスナカムラの子会社化
- セブン&アイ・ホールディングスとエービーシー・マートのM&A
- クスリのアオキとホーマス・キリンヤ、フードパワーセンター・バリューのM&A
- カメイとDaiei Trading Co., Inc.のM&A
- アトラグループとエイチ・ツー・オー リテイリングのM&A
- エア・ウォーターとプラスのM&A
- 丸の内キャピタルといなげやのM&A
- PPIHとGRCY HoldingsのM&A
- ハークスレイと万代のM&A
- アークスと伊藤チェーンのM&A
- 相鉄ホールディングスと相鉄ローゼンのM&A
- エイチ・ツー・オー リテイリングとSRSホールディングスの資本業務提携
- ダイユー・リックホールディングスとホームセンターバローのM&A
- アルビスとオレンジマートのM&A
- バローホールディングスと三幸のM&A
- オイシックス・ラ・大地とウェルカムの資本業務提携
- マックスバリュ西日本と広電ストアのM&A
- ドンキホーテホールディングスと QSI, Inc.のM&A
- オイシックス・ラ・大地ととくし丸のM&A
①クスリのアオキHDによる木村屋の買収
2024年7月、クスリのアオキHDは、木村屋の全ての株式を取得すると発表しました。
クスリのアオキHDは、ドラッグストアおよび調剤薬局、スーパーマーケットの運営を全国に展開しています。木村屋は、千葉県に拠点置き食品スーパーを4店舗展開しています。
今回のM&Aにより、ドラッグストアと食品スーパーの持つ新鮮な食材の品揃えを幅広く組み合わせることで、顧客への利便性拡大を目指します。
②エコスによるココスナカムラの子会社化
2024年6月、エコスはココスナカムラの株式を全て取得すると発表しました。
エコスは、食品スーパーマーケット事業を行っています。対象会社のココスナカムラは、東京23区内にて食品スーパーマーケットとベーカリーショップを展開している企業です。
今回のM&Aにより、両社の経営資源とノウハウを統合し有効活用することで、企業の成長を目指します。
③セブン&アイ・ホールディングスとエービーシー・マートのM&A
2022(令和4)年3月、セブン&アイ・ホールディングスは完全子会社であるオッシュマンズ・ジャパンの全株式をエービーシー・マートに譲渡しました。譲渡価額は公表されていません。
セブン&アイ・ホールディングスは、コンビニエンスストア、総合スーパー、食品スーパー、百貨店、専門店、フードサービス、金融サービス、ITサービスなどを行うグループの持株会社です。
オッシュマンズ・ジャパンは、アメリカンスポーツを中心とした総合スポーツ用品の販売を行っています。エービーシー・マートは、靴・衣料・雑貨などの小売、靴の商品企画・製造・販売を行っている企業です。
グループ内の事業の選択と集中を図りたいセブン&アイ・ホールディングスと、スポーツグッズ事業への参入を検討していたエービーシー・マートの思惑が一致して、M&Aが実現しました。
④クスリのアオキとホーマス・キリンヤ、フードパワーセンター・バリューのM&A
2022年3月、クスリのアオキはホーマス・キリンヤ、フードパワーセンター・バリューの2社と吸収合併を行いました。クスリのアオキが存続会社、ホーマス・キリンヤとフードパワーセンター・バリューは消滅会社です。合併対価は現金ですが金額は公表されていません。
クスリのアオキホールディングスの完全子会社であるクスリのアオキは、ドラッグストアと調剤薬局を北信越、東北、関東、東海、関西エリアで展開しています。ホーマス・キリンヤとフードパワーセンター・バリューの代表者は同一人物です。
ホーマス・キリンヤは、岩手県・宮城県で食品スーパー(6店)、衣料品店(2店)を運営しています。フードパワーセンター・バリューは、ホーマス・ キリンヤが販売する飲食料品や日用雑貨の仕入業務を行っている企業です。
クスリのアオキホールディングスとしては、岩手県・宮城県エリアにおいて、食品スーパーの持つ新鮮な食材の品ぞろえをドラッグストアに取り込むことを目的としています。
⑤カメイとDaiei Trading Co., Inc.のM&A
2021年12月、カメイはアメリカの連結子会社Kamei North America Co., Ltd.を通じて、同国のDaiei Trading Co., Inc.の全株式を取得し完全子会社化しました。取得価額は公表されていません。
カメイは、エネルギー事業、食料事業、建設関連事業、 自動車関連事業、海外・貿易事業、ペット関連事業、ファーマシー事業、その他の事業などを行っており、アメリカでは日系スーパーマーケットの「Mitsuwa Marketplace」を展開しています。
Daiei Trading Co., Inc.とその子会社Daiei Trading-Chicago-Co., Inc.は、日本食料品輸入卸販売の大手企業です。カメイとしては、アメリカでの食料事業拡大を目的としています。
⑥アトラグループとエイチ・ツー・オー リテイリングのM&A
2021年12月、アトラグループはエイチ・ツー・オー リテイリングの完全子会社ビーユーの全株式を取得し完全子会社化しました。最終取得価額は公表されていません。アトラグループは、鍼灸院・接骨院の支援事業を行っている企業です。
エイチ・ツー・オー リテイリングは百貨店、食品スーパー、商業施設、専門店やコンビニエンスストアなどを関西エリア中心に展開しています。ビーユーは、「ペリカン」ブランドで、玩具・文具などの販売店を展開している企業です。
アトラグループとしては、新規事業への参入としてビーユーの子会社化を決めています。
⑦エア・ウォーターとプラスのM&A
2021年11月、エア・ウォーターはプラスの株式51%を取得して子会社化しました。取得価額は公表されていません。
エア・ウォーターは産業ガス関連事業、ケミカル関連事業、医療関連事業、エネルギー関連事業 、農業・食品関連事業、物流関連事業、海水関連事業、その他の事業を行っている企業です。
プラスは、農産物の直売所「産直市場よってって」を、和歌山県、大阪府、奈良県で28店舗、運営しているほか、業務スーパーの経営、不動産の賃貸・管理、スポーツクラブの経営、地下タンクの点検なども行っています。
エア・ウォーターとしては、プラスのグループ入りを契機に、産直事業、食品物流・食品加工事業を積極的に推進する考えです。
⑧丸の内キャピタルといなげやのM&A
2021年6月、丸の内キャピタルは自社が管理・運営する丸の内キャピタル第二号投資事業有限責任組合を通じて、いなげやの保有する三浦屋株式すべてを取得すると発表しました。本件M&Aの取得価額は非公開です。
買収側は、三菱商事と三菱UFJフィナンシャル・グループのバイアウト投資会社です。対する売却側は、中央線・西武新宿線沿線を中心に高質系スーパーマーケット事業・外販事業を展開しています。
本件M&Aにより、買収側では、ファンド運営で培った経営改善手法や高質系食品小売業に対する知見やノウハウを生かし、従業員を中心とした潜在力の発揮・さらなる成長に向けた支援を提供すると発表しています。
⑨PPIHとGRCY HoldingsのM&A
2021年2月、PPIH(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)はGRCY Holdingsの株式すべてを取得すると発表しました。本件M&Aの取得価額は非公開です。
買収側は、主に総合ディスカウントストアなどの企業集団を展開する持株会社です。本社は東京都目黒区青葉台に所在しており、 連結子会社にドン・キホーテ、ユニー、長崎屋などが挙げられます。
対する売却側は、米国カリフォルニア州においてプレミアムスーパーマーケットチェーンを運営する企業グループの持株会社です。
本件M&Aにより、買収側では、海外事業を、ディスカウントストア事業・総合スーパー事業に続く買収側グループの新たな収益の柱にすると発表しています。
⑩ハークスレイと万代のM&A
2021年2月、ハークスレイは万代に対して、子会社であるアルヘイムの事業すべてを譲渡すると発表しました。本件M&Aの取得価額は非公開です。
売却側はほっかほっか亭総本部、店舗流通ネットグループ、アサヒL&Cなどを傘下に持つ持株会社です。対する買収側は、近畿圏を中心にスーパーマーケットを155店舗展開している企業です。
本件M&Aにより、売却側では、さらなる財務基盤の安定化を図るほか、新型コロナウイルスの影響を最小限に抑えるとともに、コロナウイルス収束後に成長を見込める事業領域に重点的に経営資源を投入し、事業の選択と集中を進めてグループ全体の競争力の強化に注力すると発表しています。
⑪アークスと伊藤チェーンのM&A
2019年9月、北海道・東北でスーパーマーケットを展開するアークスは、東北でスーパーマーケットを展開する伊藤チェーンを株式交換により完全子会社化しました。これにより、アークスは東北での店舗網を強化し、大手企業に対抗できる受け皿の構築を図っています。
⑫相鉄ホールディングスと相鉄ローゼンのM&A
2019年6月、相鉄ホールディングスの子会社で食品スーパーを展開する相鉄ローゼンは、丸紅が保有する20%の自己株式を取得し、相鉄ホールディングスの完全子会社となりました。
相鉄ホールディングスは、スーパーマーケット事業に強い丸紅と資本業務提携を締結して一定の成果を得てきましたが、本件で相鉄ローゼンを完全子会社化し、グループ内の連携を深めながら、さらなる業績向上を図っています。
⑬エイチ・ツー・オー リテイリングとSRSホールディングスの資本業務提携
2019年5月、関西圏でスーパーマーケットなどを展開するエイチ・ツー・ オー リテイリングは、関西圏で外食チェーンを展開するSRSホールディングスと資本業務提携を締結しました。
両社は業務提携による関係を強固にすべく、エイチ・ツー・オー リテイリングがSRSの株式を約3%保有する形で出資しています。
⑭ダイユー・リックホールディングスとホームセンターバローのM&A
2019年4月、ホームセンター運営などを行うダイユー・リックホールディングス(現アレンザホールディングス)は、スーパーマーケットなどを展開するバローホールディングスの子会社「ホームセンターバロー」を株式交換により子会社化しました。
同時に、ダイユー・リックホールディングスとバローホールディングスは、資本業務提携を締結しています。これにより、両社は攻めの経営戦略を構築し、持続的な成長をともに実現する狙いです。
⑮アルビスとオレンジマートのM&A
2019年4月、北陸を中心にスーパーマーケットを展開するアルビスは、富山県内でスーパーマーケットを営むオレンジマートを株式譲渡により買収しました。譲渡価額は非公開です。これにより、アルビスは富山県内でのシェアを拡大し、スケールメリットの獲得を図っています。
⑯バローホールディングスと三幸のM&A
2019年2月、スーパーマーケット・ドラッグストア・ホームセンターを展開するバローホールディングスは、富山県でスーパーマーケット事業を営む三幸を株式譲渡により子会社化(株式81.6%を取得)しました。譲渡価額は非公開です。
バローホールディングスは、富山県内でのシェア拡大のためにこのM&Aを実施しました。
⑰オイシックス・ラ・大地とウェルカムの資本業務提携
2019年2月、食品宅配スーパー事業などを行うオイシックス・ラ・大地は、輸入食品の販売などを行うウェルカムの第三者割当増資を引き受け約11億円を出資しました。同年5月には業務提携契約を締結しています。
両社は2013(平成25)年から協業を始めていましたが、関係強化によるさらなるシナジー効果の獲得が狙いです。
⑱マックスバリュ西日本と広電ストアのM&A
2018年10月、マックスバリュ西日本は広電ストアが経営するスーパーマーケット「マダムジョイ」を事業譲渡により取得しました。譲渡価額は非公開です。
広電ストアは、厳しい経営状態にあったために事業譲渡を決めています。一方のマックスバリュ西日本はマダムジョイの事業取得により、広島県でのシェアを拡大しながら、グループの経営強化を図る考えです。
⑲ドンキホーテホールディングスと QSI, Inc.のM&A
2017年8月、ドンキホーテホールディングス(現パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)は、アメリカの連結子会社を通じて、アメリカ・ハワイ州で24店舗のスーパーマーケットを展開するQSI, Inc.を株式譲渡により買収しました。
ドンキホーテホールディングスはこれまでもアメリカで事業展開してきましたが、本件M&AによりQSI, Inc.が蓄積してきたノウハウを投入し、グローバル企業としての企業価値向上を目指しています。
⑳オイシックス・ラ・大地ととくし丸のM&A
2016(平成28)年5月、オイシックス・ラ・大地は移動スーパーのとくし丸を株式譲渡により買収しました。譲渡価額は非公開です。
とくし丸は、買い物難民とされる高齢者向けの移動販売を全国展開して急成長していました。本件M&Aにより、オイシックス・ラ・大地では、自社ノウハウを投入し、とくし丸の販路拡大を支援する考えです。
4. 異業種企業によるスーパーマーケット買収・出資事例3選
ではここからは異業種企業によるスーパーマーケット買収・出資事例を3つご紹介していきます。
①OniGOに東京大学エッジキャピタルパートナーズが出資
2022年4月、様々な研究機関と連携しサイエンス・テクノロジーを軸にベンチャーキャピタル投資事業を展開している「東京大学エッジキャピタルパートナーズ」は、宅配スーパー事業を東京都内で展開する「OniGO」に出資しました。
出資総額は7.2億円。本M&Aは人材採用やプロダクトの改善などを目的に行われました。
②イオンネクスト準備の物流子会社にSBSホールディングスが出資
2022年3月、物流・不動産・人材事業を展開する「SBSホールディングス」は、次世代型オンラインスーパーマーケット事業を展開する「イオンネクスト準備の物流子会社」に出資しました。
出資総額は不明。本M&Aにより物流ノウハウを融合し次世代型オンラインスーパーマーケット事業のさらなる展開とラストワンマイル物流のサービスを強化しています。
③一二三屋をクスリのアオキHDが子会社化
2022年3月、23府県でドラッグストアなどを展開する「クスリのアオキHD」は、福島県いわき地方でスーパーマーケットを4店舗展開する「一二三屋」を子会社化しました。
本M&Aにより食品スーパーとドラッグストアの融合や東北地方への事業展開を実現しています。M&A手法は株式譲渡・吸収合併で一二三屋の全株式を取得しました。
5. スーパーマーケットのM&A・売却・買収のメリット
スーパーマーケット業界でM&A・売却・買収を行うメリットを紹介します。
売却側
売却側では、主に以下のメリットが得られます。
- 従業員の雇用確保
- 知名度・ブランド力のあるPB商品の取り扱い
- 人員の削減や教育などによる生産性の向上
- スケールメリットによる仕入原価の引き下げ
- 負債などの清算を回避できる
従業員の雇用確保
仮に後継者不在などの理由で経営者の引退時に会社を廃業した場合、従業員は職を失います。しかし、M&Aで会社を売却すれば、買い手(新たな経営者)のもとで会社は存続するため、従業員の雇用は確保されるでしょう。
知名度・ブランド力のあるPB商品の取り扱い
プライベートブランド(PB)商品の取り扱いは、他店との差別化要因となります。M&Aによる売却・譲渡によって大手傘下に入り、ブランド力のあるPB商品を取り扱えるようになれば、業績の向上が期待できるでしょう。
人員の削減や教育などによる生産性の向上
スーパーマーケットは労働集約型のビジネスモデルであり、人件費にかかるコストが大きい業界です。M&Aによる売却・譲渡で人員の削減や教育の効率化などが実現すれば、生産性を向上できます。
スケールメリットによる仕入原価の引き下げ
スーパーマーケットにとって仕入原価の引き下げはそのまま差別化要因となるため、大手では規模の拡大により、中小企業では共同仕入れにより、それぞれ仕入原価の引き下げ努力を続けています。
M&Aによる売却・譲渡で事業規模を拡大できれば、スケールメリットの観点から仕入原価の引き下げが可能です。
負債などの清算を回避できる
何らかの事情でスーパーマーケット事業を清算する場合、負債なども合わせて清算しなければなりません。しかしM&Aによる売却・譲渡であれば、相手企業に負債を引き継いでもらったうえで、売却・譲渡益を得られる可能性もあります。
買収側
買収側は主に以下のメリットが得られます。
- 経営の効率が高められる
- PB商品の販売チャンネルを拡大
- 新規事業へ低コストで参入
- 新たな顧客・取引先・ノウハウなどの獲得
- 事業エリアの拡大
経営の効率が高められる
スーパーマーケット業界は、スケールメリットが大きい業界です。業界大手は、M&Aによる買収で規模の拡大を続けています。M&Aを行うと、経営効率が向上するうえに、他社からの買収防衛策にもつなげられるでしょう。
PB商品の販売チャンネルを拡大
PB商品は収益率の高い商品であり、販売チャンネルが増えるほど収益力も上がります。M&Aにより買収先のスーパーマーケットでも販売できるようになれば、収益と認知度の向上が見込めるでしょう。
新規事業へ低コストで参入
近年では、異業種からスーパーマーケット業界への参入が相次いでいます。新規でスーパーマーケットを立ち上げると多くの資金と時間が必要となりますが、M&Aによって既存のスーパーマーケットを取得できれば、低コストでの参入が可能です。
新たな顧客・取引先・ノウハウなどの獲得
現在のスーパーマーケット業界では、さまざまな外部要因に対する対応が必要です。M&Aによる買収で顧客・取引先・ノウハウなどを獲得できれば、外部要因の変化にも柔軟に対応できるようになります。
事業エリアの拡大
スーパーマーケットの規模を問わず、業界全体で競争が激しくなっています。M&Aによる買収を利用すれば、業界大手では事業エリアの拡大を行える一方で、中小企業では事業エリアの地盤固めを行えるでしょう。
6. スーパーマーケットのM&A・売却の成功ポイント7つ
スーパーマーケットのM&Aによる売却を成功させるには、以下のポイントを押さえる必要があります。
- 店舗・グループでコミュニケーションが取れている
- 顧客ニーズに敏感な商品選びができている
- 立地や交通アクセスに問題がない
- 地域に根づいた商品が陳列されている
- コストや予算管理がまとめられている
- 接客態度など従業員教育が行き届いている
- M&Aの専門家に相談する
①店舗・グループでコミュニケーションが取れている
買収側からすると、M&A後の事業統合作業が重要です。売却・譲渡側の店舗・グループでコミュニケーションが十分に取れていると統合プロセスもスムーズに進むため、買収側の評価が高まります。
②顧客ニーズに敏感な商品選びができている
トレンドや地域性に合わせた商品陳列ができているかどうかで、スーパーマーケットの経営力・ブランド力は把握できます。どのような商品選びをしているかは、買収側の重要な判断基準の1つです。
③立地や交通アクセスに問題がない
スーパーマーケットでは、立地が重要です。特に地方の場合には車での来店が多いことから、駐車場の広さと車の出入りのしやすさも、買収側の重要な判断材料となります。
④地域に根づいた商品が陳列されている
地域に根づいた商品を製造する地元企業と取引があり、その地域の商品を取りそろえているスーパーマーケットは、地域に浸透しブランド力を持っているスーパーマーケットだといい換えられます。
つまり、地域のブランド力を持っていると、買収側から高い評価を受けやすいです。
⑤コストや予算管理がまとめられている
小規模のスーパーマーケット事業会社の中には、コスト管理・予算管理が行き届いていない企業も多く見られます。コスト管理・予算管理が十分に行われていると、買収側は安心して買収判断を下せます。
⑥接客態度など従業員教育が行き届いている
買収側からすると、統合後の教育コストは大きな負担です。あらかじめ従業員教育が行き届いているスーパーマーケットは、それだけで企業価値が高まります。
⑦M&Aの専門家に相談する
M&Aの成功率は3割程度といわれるほどに、統合がうまくいかないケースも多く見られます。M&A仲介会社に依頼すれば、手続き面だけでなく、最適な買収先選びや徹底した売却戦略策定などのサポートも受けられます。
優良な仲介会社を選ぶことで、好条件の売却を行えるでしょう。もし、M&A仲介会社探しでお困りでしたら、M&A総合研究所にご連絡ください。
全国の中小企業のM&Aに数多く携わっているM&A総合研究所では、スーパーマーケット業界のM&Aに精通し実績も豊富なアドバイザーが専任となって相談時からクロージングまでM&Aを徹底サポートします。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談を受け付けますので、スーパーマーケット業界のM&Aをご検討の際には、お気軽にお問い合わせください。
7. スーパーマーケットのM&A・買収の成功ポイント3つ
スーパーマーケット業界でM&Aによる買収を成功させるポイントは、以下のとおりです。
- M&A仲介会社に相談する
- M&Aのマッチングサイトなどの募集案件を探す
- 金融機関や行政機関などに相談する
①M&A仲介会社に相談する
M&A仲介会社に依頼すると、買収先となるスーパーマーケット探し・手続きのサポート・条件交渉などを依頼できます。手続き面だけでなく、買収後の統合戦略までサポートする仲介会社も多いです。
スーパーマーケットのM&A・買収を行う際は、スーパーマーケットのM&A・売却・買収に精通した仲介会社に相談しましょう。
②M&Aのマッチングサイトなどの募集案件を探す
最近では、M&Aマッチングサイトなどの募集案件から自力で買収先を探す方法も効果的です。AIにより最適な買収先を探せたり無料で利用できたりと、マッチングサイトの質は急速に向上しています。
③金融機関や行政機関などに相談する
取引のある地元銀行や、都道府県ごとに設置されている事業承継・引継ぎ支援センターに相談する方法もあります。近年は、金融機関や行政機関も事業承継対策に力を入れており、特に地方ではスーパーマーケットなど生活に欠かせない地元企業の事業承継支援が急がれている状況です。
8. スーパーマーケットのM&A・売却・買収まとめ
この記事では、スーパーマーケットのM&A・売却・買収に関する情報を提供しました。スーパーマーケット業界は外部要因による変動が激しいのが特徴です。スーパーマーケット業界のM&Aを成功させるには、業界に精通した専門家のサポートを受けるとよいでしょう。
9. スーパーマーケット業界の成約事例一覧
10. スーパーマーケット業界のM&A案件一覧
【好立地/複数店舗運営】食品スーパー・食料品小売専門店
食品卸・小売/関東・甲信越案件ID:2322公開日:2024年10月10日売上高
25億円〜50億円
営業利益
1000万円〜5000万円
譲渡希望価格
2.5億円〜5億円
対象企業は、首都圏にて食品スーパーマーケット運営をメインとし、食のセレクトストアも手掛ける企業でございます。
【関東/大手予約サイト上位】いちご・ブルーベリー狩り農園運営業
食品製造/その他の卸・小売/関東・甲信越案件ID:2263公開日:2024年09月20日売上高
1000万円〜5000万円
営業利益
〜1000万円
譲渡希望価格
5,000万円(応相談)
いちご・ブルーベリー農園の運営をしております。
【マレーシア/45店舗以上展開、EBITDA18億円】ハイパーマーケット業
繊維・衣料卸・小売/食品卸・小売/医薬品卸・小売/海外案件ID:2125公開日:2024年08月05日売上高
250億円〜500億円
営業利益
10億円〜25億円
譲渡希望価格
20億円〜
マレーシアにてハイパーマーケット事業を展開する企業
【稼働会員6万人×高収益】ギフトショップ運営・EC販売業
食品卸・小売/その他の卸・小売/ECサイト(カートあり)/非公開案件ID:1612公開日:2024年02月21日売上高
10億円〜25億円
営業利益
5000万円〜1億円
譲渡希望価格
2.5億円〜5億円
冠婚葬祭などに用いるギフトを店舗・EC販売を手掛ける企業様になります。
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