2023年07月25日更新
廃業は倒産や閉店と違う?実態や種類・廃業にしないための方法をご紹介
廃業は倒産や閉店などと同等のものだと思われがちですが、企業にとっては会社だけでなく従業員の行く末が大きく変わる重要な決断のひとつです。本記事では廃業が他の方法とどのように違うのか、廃業になる理由や動向、 廃業にしないための対策、M&Aの活用などについて解説します。
1. 廃業とは
廃業とは、法人または個人事業主が自主的に会社・事業をやめることです。経営状態の悪化をイメージされるかもしれませんが、近年は後継者問題を抱えた中小企業の廃業も増加しています。会社を廃業するには、株式総会の決議や負債の返済などの各種手続きを終えなければなりません。
それらの手続きは順序立てて行う必要があるため、計画性が求められます。会社を廃業すると、従業員や取引先に与える影響も大きなものです。会社自体がなくなってしまうので、経営者にとって廃業は可能な限り避けたい最後の選択肢といえるでしょう。
廃業する企業が増えている理由
廃業件数は全体的に増加傾向にありますが、具体的な理由はどのようなものが考えられるのでしょうか。ここでは、廃業する企業が増えている理由5つを解説します。
- 後継者不足
- 人材不足
- 経営状態の悪化
- 将来への不安
- 需要の低迷
後継者不足
廃業する中小企業が増えている理由の1つ目は、後継者不足です。帝国データバンクの「全国企業【後継者不在率」動向調査(2021年)」によると、全国の約26万社の統計では、61.5%の中小企業で後継者が不在でした。経営者年齢が60歳以上の場合は、以下の数値です。
- 60代:47.4%
- 70代:37.0%
- 80歳以上:29.4%
現在、日本の中小企業経営者の平均引退年齢は70歳前後といわれています。上記の年代別の後継者不在率を見ると、引退間近、あるいはすでに平均引退年齢に達している多くの企業で、後継者がいません。後継者不在のまま、経営者が引退時期を迎えれば、会社は廃業するしか選択肢がないのが現状です。
人材不足
廃業する企業が増えている理由の2つ目は、人材不足です。中小企業庁の中小企業アンケートによると「中小企業の約7割が人材不足を実感している」というデータが明らかになっています。中小企業の人材不足は、1人あたりの作業量や残業増加など、職場環境の悪化につながるものです。
これがさらに深刻化すると、事業を行うだけの人材が確保できなくなるかもしれません。国内の少子化による人口減少の影響により、さまざまな業種で人材不足が深刻化しているため、今後も多くの中小企業において、人材不足を原因とする廃業が懸念されています。
経営状態の悪化
廃業する企業が増えている理由の3つ目は、経営状態の悪化です。赤字経営からの立て直しが困難な状態にある企業が廃業を選択するケースがあります。
仮に、一時的に経営状態を回復させられても、無理して経営を続けていると結局、債務を大きくするおそれも否定できません。廃業を選択するほうが良い結果を得られるという判断のもと、早期に廃業を決断する経営者も少なくありません。
将来への不安
廃業する企業が増えている理由の4つ目は、将来への不安です。事業の収益性の低下や業界の不安材料などから、将来性を不安視して廃業するケースがあります。
近年は、IT分野の目覚ましい発達により、さまざまな業種でIoT化やAIの導入が進みました。業種によっては、業務の大半をAIで代替できる可能性が浮上しており、業務の提供側には不安材料にもなっています。
収益性の低下どころか仕事自体が失われるかもしれない不安から、事業を存続させても最終的には廃業を迎えてしまうネガティブな思考になり、自主的に廃業してしまうでしょう。
需要の低迷
廃業する企業が増えている理由の5つ目は、需要の低迷です。時代の流れやニーズの変化から、業種自体の需要が減少して廃業せざる得ないケースがあります。大手企業のように経営資源が豊富であれば、新たな市場を求めて海外進出も可能です。
しかし、資金力の少ない中小企業は、国内の限られたシェアで戦うしかありません。需要自体が減少している業界は将来性も厳しいため、早期に見切りをつけて廃業を選択する経営者もいます。
廃業の種類
企業が経営に失敗した場合、様々な方法での廃業が可能です。いくつかの種類とその特徴を紹介します。
自主廃業・通常清算
「自主廃業・通常清算」は、企業が自ら廃業を選択する場合の手続きです。負債よりも資産が多い場合には、問題なく実施できます。
通常清算には、「債権の取り立て」「財産換価処分」「債務弁済」などが含まれ、清算後に残った資産は株主のものとなります。黒字経営の企業であれば、手元に資産を残すことができるでしょう。
一方負債が多く資産が少ない場合には、破産申請をすることも検討する必要があります。
私的整理
経営者と債権者が直接交渉を行う手続のことで、裁判所の監督を必要としません。そのため、非公開で行うことも可能です。
ただし、必要とされる手続きが多く、知識が必要です。個人で行うのは難しく、交渉もまとまらないこともあります。
特別清算
特別清算は、債務超過などの理由で通常清算ができない企業が実施する手続きです。裁判所の監督のもとで実施され、協定型と和解型があります。
協定型は、経営者と債権者が合意に達し、債務の整理や財産の処分を行います。和解型は、債務者が経営権を放棄し、財産を清算して債権者に償還する方法です。
特別清算は、企業にとっては厳しい手続きですが、債権者にとっては債権回収の可能性があることから、債権者にとっては望ましい手続きとなる場合もあります。
経営者保証債務の整理
経営者保証債務の整理とは、企業が融資を受ける際に、経営者自身が連帯保証人として融資を受け、企業が廃業した場合に、保証人として対応しなければならないことを指します。しかし、経営者個人の資産で企業の負債を補うことは困難です。
このような場合に、経営者保証債務の整理が活用されます。生計費に使う預貯金や自宅不動産を残したまま債務処理ができるため、経営者個人の生活を維持しながら債務整理ができる点が大きなメリットといえるでしょう。
破産
破産とは、企業が負債の弁済ができず、廃業することを意味します。この場合、経営者は手続きに関与できず、破産法と破産管財人に従って手続きが進められます。
破産の場合、企業に残った資産はすべて弁済に充てられますが、残った負債は企業に支払える能力がないため、弁済されません。最終的には企業が消滅し、破産手続きが終了になります。
廃業の手順・流れ
廃業を実施するにあたっては、さまざまな手続きがあるため、自社だけでは対応しきれない可能性が高いでしょう。したがって、廃業を決めた場合は、まず、各種手続きの相談や代行を頼める弁護士探しから始めます。弁護士と相談しながら進める廃業手続きの流れは、以下のとおりです。
- 会社解散と清算人の登記
- 官報公告への掲載と債権者への通知
- 債権の回収と資産の売却
- 全債務の支払い(税金を含む)
- 全債務支払い後、残った財産を分配
- 株主総会で決算報告の承認を得る
- 解散時と清算結了時の確定申告
- 清算結了登記
2. 閉店・休業・倒産と廃業との違い
廃業と混同されることが多い言葉に、閉店・休業・倒産があります。似たようなニュアンスで使われることも多いですが、それぞれ異なる意味を持つ言葉です。
廃業と閉店の違い
まず、閉店には、それ自体に以下の3つの意味があります。
- 廃業、倒産などにより、運営していた店舗を閉鎖する
- 改装や営業内容の変更のため、一時的に店舗を閉鎖する(後日、新装開店する)
- 店舗がその日の営業を終えること
廃業による閉店の場合、再び開店することはありません。事業の見直しや店舗改装による閉店は、後日、新装開店します。店舗がその日の営業を終える意味の閉店は、翌営業日に商売を始める時間に開店するので、前述の2つとは全く異なる意味です。
廃業と休業の違い
休業とは、事業を一時的に停止することです。会社や事業は休業状態に入りますが、法人格は存続するため、廃業とは全く異なるものになります。会社を休業させるメリットは、法人税・消費税などの税金が発生しないことや、スムーズに事業再開できる点です。
会社を廃業した場合、事業再開するためには、あらためて法人登記や許認可の取得が必要になりますが、休業であれば所定の手続きをするだけで事業を再開できます。
廃業と倒産の違い
倒産とは、金銭的な事情で会社・事業の経営が困難になった状態のことです。倒産処理の方法は「法的整理」と「私的整理」の2つに大別されます。倒産は、会社の資金がなくなって従業員や取引先への支払いも行えない状態です。
事業はおろか経営を維持できないことが大半なので、適切に対処しなくてはなりません。倒産状態になった会社は、法的整理もしくは私的整理により、できる限り債務の支払いに努めることになります。
倒産を考える理由
倒産は、従業員の給与、取引先への支払い、借入金の返済などが、手持ち資金がないために行えない状態であり、検討する間もなく追い込まれる状況です。そのような状況になる前に倒産を考えるとすれば、以下のような理由があります。
- 債務不履行に追い込まれてはいないが数カ月で資金ショートが予測される
- 入金見込のどれか1つでも遅延が発生すれば資金ショートしてしまう
- 常にぎりぎりの状態での資金繰りが続いている
倒産と破産の違い
破産とは、倒産状態にある会社が、残された資産を債権者に分配し、その後、会社を廃業する手続きのことです。破産手続きを行うことで全ての資産・負債の清算を行います。会社の資産は、裁判所から選任された破産管財人が全て現金化します。
現金は全て債権者へと分配が行われるため、会社の資産は残りません。破産対象はあくまで会社です。会社代表者が個人的に破産することはないので、個人的な資産は守れます。ただし、借入の際に個人保証・担保を提供している場合は、個人資産で弁済しなくてはなりません。
中小企業の場合、会社の財務状況と経営者個人の財政事情は一体化してしまっていることがほとんどなので、会社を破産手続きする場合、経営者個人の自己破産するケースが多いでしょう。
倒産(破産)の手続き・流れ
ここで、倒産(破産)手続きの流れを掲示します。倒産(破産)の場合も、専門的な手続きを踏まなければならないため、破産手続きに精通した弁護士を探し、相談することが第一歩です。
- 弁護士に相談し破産申し立て手続きを依頼(弁護士への報酬が発生)
- 弁護士は債権者に破産申し立て予定を通知する
- 弁護士が必要書類を用意し管轄の裁判所に破産申し立て(裁判所に予納金を支払う)
- 破産手続き開始決定を裁判所が発令し、破産管財人を選任する(破産管財人は弁護士から選ばれる)
- 債権者集会の実施(必要に応じて複数回開かれる)
- 裁判所による破産手続き終結決定
- 破産手続き終結の登記
倒産と経営破綻の違い
経営破綻は倒産と同じ意味合いで使われています。倒産と同様に、会社の資金が底をつきて経済事情が困難な状態であることです。
3. 廃業・休業・解散・倒産の件数
2022(令和4)年1月、東京商工リサーチは企業の廃業・休業・解散・倒産に関するデータを公開しました。休廃業の件数推移や業種・業歴別などのデータが充実しており、国内企業の休廃業の動向を知ることが可能です。
ここでは、公開されているデータをもとに、廃業・休業・解散・倒産の件数を見ていきます。
休廃業の件数推移
年 | 休廃業・解散 | 前年比 |
---|---|---|
2013 | 34,800 | 13.68% |
2014 | 33,475 | ▲3.81% |
2015 | 37,548 | 12.17% |
2016 | 41,162 | 9.63% |
2017 | 40,909 | ▲0.61% |
2018 | 46,724 | 14.21% |
2019 | 43,348 | ▲7.23% |
2020 | 49,698 | 14.6% |
2021 | 44,377 | ▲10.7% |
2021(令和3)年の休廃業・解散件数は、前年よりは減少したものの、過去9年間で3番目に高い数値でした。8年間で約1万件も増加しています。
倒産の件数推移
年 | 倒産 | 前年比 |
---|---|---|
2013 | 10,855 | ▲10.47% |
2014 | 9,731 | ▲10.35% |
2015 | 8,812 | ▲9.44% |
2016 | 8,446 | ▲4.15% |
2017 | 8,405 | ▲0.49% |
2018 | 8,235 | ▲2.02% |
2019 | 8,383 | 1.80% |
2020 | 7,773 | ▲7.28% |
2021 | 6,030 | ▲22.5% |
2021年の倒産件数は、過去9年間で最も低い数値でした。これは、コロナ禍のために国や自治体が行った、各種経営支援策が功を奏したものと考えられます。したがって、経営支援策がなくなったあと、どうなるかは予断を許しません。
産業別のデータ
産業別 | 2021年 | 2020年 | ||
件数 | 構成比 | 前年比 | 件数 | |
農・林・漁・鉱業 | 594 | 1.3% | 0.51% | 591 |
建設業 | 7,567 | 17.1% | ▲7.84% | 8,211 |
製造業 | 4,986 | 11.2% | ▲9.64% | 5,518 |
卸売業 | 3,994 | 9.0% | ▲15.65% | 4,735 |
小売業 | 5,298 | 11.9% | ▲14.11% | 6,168 |
金融・保険業 | 1,426 | 3.2% | ▲21.52% | 1,817 |
不動産業 | 3,478 | 7.8% | ▲7.10% | 3,744 |
運輸業 | 801 | 1.8% | ▲4.30% | 837 |
情報通信業 | 2,162 | 4.9% | ▲11.86% | 2,453 |
サービス業他 | 14,071 | 31.7% | ▲9.94% | 15,624 |
休廃業・解散件数を産業別で見ると、圧倒的に多かったのは飲食業・宿泊業・非営利団体などを含む「サービス業他」です。次いで、建設業、小売業、製造業が続きました。前年比では、金融・保険業は最も高い比率で減少しています。
業歴別のデータ
業歴 | 2019年 | 2018年 | 2017年 | 2016年 | 2015年 | 2014年 | 2013年 |
100年以上 | 0.06% | 0.02% | 0.02% | 0.01% | 0.02% | 0.03% | 0.09% |
50~99年 | 10.73% | 10.84% | 9.11% | 8.45% | 8.81% | 8.41% | 8.49% |
40~49年 | 9.43% | 10.18% | 9.20% | 9.47% | 10.06% | 9.70% | 9.52% |
30~39年 | 13.97% | 13.51% | 11.71% | 12.03% | 13.81% | 12.25% | 12.87% |
20~29年 | 17.53% | 18.15% | 17.98% | 18.13% | 22.57% | 18.26% | 18.98% |
10~19年 | 20.86% | 20.84% | 21.16% | 21.00% | 18.07% | 17.84% | 17.53% |
5~9年 | 11.89% | 11.80% | 13.24% | 12.90% | 12.17% | 15.03% | 15.54% |
5年未満 | 15.54% | 14.65% | 17.57% | 18.01% | 14.48% | 18.46% | 16.99% |
合計 | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% |
2020(令和2)年と2021年は、以下の業歴のみ比率が公表されています。
【2020年】
- 10年以上20年未満:21.6%(業歴20年未満は49.4%)
- 20年以上30年未満:15.5%
- 100年以上:0.03%(50年以上100年未満は10.7%)
【2021年】
- 10年以上20年未満:21.6%(業歴20年未満は48.2%)
- 30年以上40年未満:15.8%
- 100年以上:0.03%(50年以上100年未満は11.3%)
直前の経営状態
年 | 黒字 | 赤字 |
---|---|---|
2013 | 61.7% | 38.3% |
2014 | 62.6% | 37.4% |
2015 | 63.7% | 36.3% |
2016 | 64.0% | 36.0% |
2017 | 61.9% | 38.1% |
2018 | 61.6% | 38.4% |
2019 | 61.4% | 38.6% |
2020 | 61.5% | 38.5% |
2021 | 56.5% | 43.5% |
休廃業・解散直前の損益状態は、2021年に初めて60%を切りました。それでも56.5%の企業が黒字で休廃業しています。休廃業と聞くと経営状態の悪化をイメージすることが多いですが、実態は異なることが示されました。この主な原因として考えられるのは、後継者不在です。
代表者の年齢
2020年 | 2019年 | 2018年 | 2017年 | 2016年 | 2015年 | 2014年 | 2013年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
20代以下 | 0.22% | 0.16% | 0.16% | 0.15% | 0.12% | 0.13% | 0.17% | 0.12% |
30代 | 0.76% | 1.07% | 0.97% | 1.19% | 1.24% | 1.51% | 1.45% | 1.70% |
40代 | 4.79% | 4.75% | 4.80% | 5.23% | 5.86% | 5.83% | 6.03% | 5.77% |
50代 | 10.01% | 10.52% | 10.36% | 10.19% | 10.73% | 10.77% | 11.04% | 11.87% |
60代 | 24.50% | 27.50% | 29.00% | 32.95% | 34.76% | 35.27% | 35.69% | 36.37% |
70代 | 41.77% | 39.06% | 37.53% | 35.65% | 33.29% | 33.67% | 33.61% | 32.62% |
80代以上 | 17.94% | 16.94% | 17.18% | 14.64% | 14.00% | 12.83% | 12.01% | 11.54% |
2021年の休廃業した企業経営者の年代比率は、以下の年代のみ公表されています。
- 60代:23.3%
- 70代:42.6%
- 80代以上:20.0%
高齢経営者による休廃業が多いのは一目瞭然です。後継者不在で事業承継が行えず、ぎりぎりまでがんばったものの年齢を理由に引退した経営者が多いと推察されます。
4. 廃業するメリット・デメリット
廃業を選択する企業が増えていますが、廃業するメリットやデメリットには何があるのでしょうか。この章では、廃業するメリット・デメリットをそれぞれ解説します。
廃業するメリット
廃業することで得られるメリットは、後継者問題から解放されることです。中小企業の後継者問題が深刻化し、経営者を悩ませる種となっていますが、廃業すれば後継者問題に悩まされる日々から解放されます。
経営状態の悪化による債務増大を防ぐことも可能です。時代の流れや社会的な事情で需要の低迷が見られる場合、早期に廃業決断することで被害を最小限に抑えられるでしょう。
しかし、廃業はあくまでも問題の回避を目的としたものであり、前向きな決断とはいえません。廃業を選択するメリットは以下のようなものですが、いずれも消極的なものとなっています。
- 後継者問題からの解放
- 債務拡大を防ぐ
- 経営責任からの解放
- 計画的に清算できる
- 一定の資産を確保できる
廃業するデメリット
廃業するデメリットは、従業員の失業です。会社・事業の廃業は、長年ん、業務に取り組んでいた従業員を解雇しなくてはなりません。従業員やその家族の暮らしにも影響するため、重大な決断となります。
会社・事業の消滅もデメリットです。身を粉にして取り組んできた会社・事業が消滅することで、喪失感に襲われることもあります。再び開業したくなったとしても、法人登記などの手続きを行うための手間と時間が必要です。
廃業するデメリットは以下のように多く、自社以外にも大きな影響を与えることもあるため、それらを考慮したうえの最終的な決断が求められます。
- 従業員の失業
- 会社・事業の消滅
- 取引先への影響が大きい
- 資産の売却が処分価格になる
- 廃業費用の発生
5. 廃業検討時に倒産を防ぐポイント
廃業の際の注意点として、廃業のつもりが倒産に追い込まれるケースがあります。これは、廃業手続きの1つである債務の支払いや設備の廃棄などを行っているうちに、想定外の金額となり手元の資金がなくなり、資産を処分してもそれでも資金が足りないケースです。
廃業では、以下のような出費があります。
- 従業員の最終給与
- 従業員の解雇手当
- 設備、機械、在庫品などの処分費用
- 事務所が賃貸物件であれば原状回復工事費、解約費
- 借入金の返済
- 買掛金の支払い
- 弁護士や司法書士など廃業手続きを依頼する士業への手数料
- 解散登記時の手続き料
- 各種税金
全ての支払いができないと倒産~破産となってしまいますから、場合によっては税理士にも相談し全ての支払いが可能かどうかのシミュレーションを行うとよいでしょう。
6. 廃業を避ける方法
会社を経営していると、時には廃業を決断せざる得ない状況が訪れることもあります。しかし、廃業にはさまざまなデメリットがあるため、経営者としてはできるだけ避けたい選択肢です。
会社が抱えている問題に合わせた対策を施すことで、廃業を避けることも可能になります。以下の3つが廃業を避ける方法です。
- 後継者を育成する
- M&Aによる事業承継をする
- 経営状態を回復させる
後継者を育成する
廃業を避ける方法の1つ目は、後継者を育成することです。中小企業の廃業理由で高い割合を占める後継者問題対策として、後継者を育成しておくことで廃業リスクを大幅に抑えられます。
早期から後継者育成に着手しておくと、経営能力の向上や経営者としての覚悟の醸成ができるでしょう。経営者として優秀な人物に育ちやすいので、事業承継後の経営にも安心して任せられます。
この場合、入念に事業承継計画を立てられる点もメリットです。経営者と後継者候補の共通認識を持ちながら事業承継計画を進められるので、経営者が孤独になることもありません。
M&Aによる事業承継をする
廃業を避ける方法の2つ目は、M&Aによる事業承継をすることです。親族や社内に後継者候補がいない場合、事業承継をあきらめてしまう中小企業もあります。しかし、M&Aでも事業承継は可能です。会社を売却することで買い手が後継者(新たな経営者)となり、事業承継は実現できます。
廃業時にM&Aの事業承継を活用する理由
近年、廃業時にM&Aを活用する経営者が増加しています。その理由は、M&Aを活用することで、事業を引き継ぎさせられる、従業員の雇用を守れる、取引先への負担が抑えられる、廃業と異なり資産が残りやすくなる、という4つのメリットがあるためです。
以下にそれぞれのメリットを解説します。
- 事業を引き継ぎさせられる
- 従業員の雇用を守れる
- 取引先への負担が抑えられる
- 廃業と異なり資産が残りやすくなる、
事業を引き継ぎさせられる
M&Aを活用すると、自分たちのビジネスや技術、ノウハウを後世に残すことができます。廃業してしまうよりも、社会全体の損失を避けることができます。M&Aによって、他の企業が自分たちの事業を引き継いでくれるため、自分たちが築き上げたビジネスを維持することができます。
これまでの経験やノウハウを活かすことができるため、M&Aの方がメリットが大きいです。
廃業と異なり資産が残りやすくなる
M&Aを活用すると、事業を売却することで資産が残りやすくなります。廃業する場合は、負債の弁済が必要で、手元に残る資産が少なくなることが多いです。
一方、M&Aでは、企業全体を売却することができます。また、従業員やノウハウなどの無形資産も企業価値になります。廃業すると、無形資産は資金にならず、企業価値として評価されないことがありますが、M&Aであれば、無形資産を含めた企業全体を売却することができます。
そのため、資産が残りやすくなるというメリットがあります。
従業員の雇用を守れる
M&Aを活用すると、従業員の雇用を継続できるため、安心感があります。事業を閉じる際に、従業員の雇用がネックになることがありますが、M&Aを活用すれば、買い手企業に従業員を引き継いでもらえるよう依頼できます。
買い手企業も、事業を継続させるためには、ノウハウを持った従業員を必要とするため、再雇用することが多いです。このように、M&Aを活用すると、従業員の雇用が継続できるため、メリットがあります。
取引先への負担が抑えられる
M&Aを活用すると、事業が継続するため、取引先に迷惑をかけることがありません。買い手企業と再度契約を結ぶことで、取引を維持することができます。
廃業すると、取引先が困惑することが多いですが、M&Aで事業を継続させることで、取引先に迷惑をかけることがありません。事業をやめることで取引先に迷惑をかけることを考えると、M&Aで事業承継できることはメリットになります。
経営状態を回復させる
廃業を避ける方法の3つ目は、経営状態を回復させることです。経済状態が芳しくない場合は、経営状態の回復に努めることで廃業を回避できます。経営状態の回復で比較的実践しやすい対策は、経費削減です。
削減対象の把握やコストの分析・測定などを通して無駄な工程や費用を見極めることで、経費削減による経営状態の回復が実現できます。実現可能な目標を中長期別に設定することも有効です。
高すぎる目標は足かせになりやすいですが、実現可能な目標であれば、一体感や達成感を得られて会社の結束力も高められます。
7. 廃業を避けたい経営者におすすめの相談先
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8. 廃業のまとめ
ここ数年の廃業件数推移は全体的に増加傾向にありますが、6割近くは黒字経営だったことも明らかになっています。黒字経営にもかかわらず廃業が相次いでいる理由は、後継者問題の深刻化です。
後継者不在が原因で廃業危機を迎えている企業が増えているので、後継者育成やM&Aなどの早期対策が必要とされています。本記事の概要は以下のとおりです。
・廃業のまとめ
→廃業とは法人または個人事業主が自主的に会社・事業をやめること
→閉店には廃業による閉店と事業継続を前提とした閉店がある
→休業とは事業を一時的に停止すること
→倒産とは金銭的な事情で会社・事業の経営が困難になった状態のこと
・廃業する企業が増えている理由
→後継者不足、人材不足、経営状態の悪化、将来への不安、需要の低迷
・廃業するメリット
→後継者問題からの解放、債務拡大を防ぐ、経営責任からの解放、計画的に清算できる、一定の資産を確保できる
・廃業するデメリット
→従業員の失業、会社・事業の消滅、取引先への影響が大きい、資産の売却が処分価格になる、廃業費用が発生
・廃業を避ける方法
→後継者を育成する、M&Aによる事業承継をする、経営状態を回復させる
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