M&AにおけるビジネスDD(デューデリジェンス)とは?手法と目的を解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aでは、対象企業への理解を深め、より効果的なM&AにするためにDD(デューデリジェンス)を行います。その中でも、ビジネスDDは重要な役割を持ちます。この記事では、M&AにおけるビジネスDDの手法と目的を詳しく解説します。

目次

  1. M&AにおけるビジネスDD(デューデリジェンス)とは
  2. M&AにおけるビジネスDD(デューデリジェンス)の目的
  3. M&AにおけるビジネスDD(デューデリジェンス)の種類
  4. M&AにおけるビジネスDD(デューデリジェンス)の手法
  5. M&AビジネスDD(デューデリジェンス)の外部環境分析
  6. M&AビジネスDD(デューデリジェンス)の内部環境分析
  7. M&AにおけるビジネスDD(デューデリジェンス)まとめ
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1. M&AにおけるビジネスDD(デューデリジェンス)とは

ビジネスDDとは、主にM&Aの実施に際して、対象企業・事業の状況や将来計画などをチェックする作業のことです。市場状況や対象企業の強み・弱みなどを分析しつつ、対象企業の作成した事業計画の妥当性を検証していくのが一般的です。そのうえで、必要に応じて事業計画を修正します。

DDを日本語に直訳すると「当然の努力」となるように、DDはM&Aのプロセスで非常に重要な役割を持ちます。その中でもビジネスDDは、M&A対象会社の製造や営業などのビジネスモデルの把握、事業性の評価およびシナジー効果分析・事業統合に関するリスク評価などを行うものです。

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2. M&AにおけるビジネスDD(デューデリジェンス)の目的

M&Aを行うにあたり、買い手企業は、候補先となる企業の情報を入念に調べる必要があります。候補先企業の情報を調べ上げ、検討を重ねることで、自社の経営戦略を実現に近づけるM&Aスキームの策定が可能です。

買い手企業自身が行うことが多く、大型の投資になると外部の経営コンサルティングに依頼することもあるため、DDの中でも、ビジネスDDは大きなウェイトを占めます。ここからは、なぜビジネスDDが必要なのか、その目的を解説します。

対象会社の経営実態の把握

M&AにおけるビジネスDDの第一の目的は、対象会社の経営実態の把握です。

経営実態を把握するための大きなポイントは、対象となる会社が所属する市場で対象会社はどのようなポジションにいるのかを査定することです。

対象会社がどのようなポジションにいるのかを把握するには、まず母体である対象となる会社が所属する市場の動向を把握する必要があります。その後、その市場の中で競合にはどのような企業があるのか、対象会社はその中でどのようなポジションにあるのかを査定します。

対象会社の市場におけるポジションに加えて、買収合併によるM&Aを行った場合に得られるシナジー効果を査定することも重要なポイントの1つです。

事業の将来性を見極める

M&Aの根本的な目標は、M&Aがクロージングまで進んだ後に行うPMIの実施によりシナジー効果を引き出すことです。M&Aの最初のステップである目的明確化の時点で、事業の将来性を見極めることが大切です。

事業の将来性は、対象会社の現状を把握するとともに、自社企業が買収や合併を行った場合に得られる効果を見極めることが大切です。

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M&Aを行うためには、DDの徹底が重要です。その他にも、M&Aでは専門的な知識が必要になる場面が多々あります。M&A総合研究所では、M&A経験豊富なアドバイザーが担当につき、丁寧にサポートします。

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3. M&AにおけるビジネスDD(デューデリジェンス)の種類

本章では、M&AにおけるビジネスDDの種類の中から代表的な5つをピックアップし、順番に解説します。

コマーシャルDD

DDのうち、売上に重点を置いた作業のことです。具体的には、市場環境・事業構造などを分析し、対象企業の強み・弱みを踏まえながら、売上の蓋然性を精査します。

オペレーショナルDD

DDのうち、生産オペレーションをQCD(品質、コスト、納期)や4M(人、機械、材料、方法)の観点から分析する作業のことです。特にメーカーでは生産力が強みの根源に据えられているケースが多く、オペレーションを十分に分析しなければなりません。

ITDD

DDのうち、対象企業の情報システムの状況をチェックし、今後の経営・事業を推進するうえで立ちはだかるIT関連の課題や、対応策の必要性などを分析する作業のことです。

システム統合は経営に致命的な影響を及ぼしかねないため、PMIを強く意識したDDの実施が重要視されています。具体的にいうと、使用している基幹システムが異なる場合の対応策や、対象企業の保有データの移行にどれほどのハードルがあるのかなどを精査します。

ガバナンスDD

DDのうち、対象企業のガバナンスが自社のガバナンス基準に合致するかを調査する作業のことです。第一のプロセスとしては、子会社管理規程や決裁権限規定などの分析の実施などが挙げられますが、その他にも運用がしっかり行われているかヒアリングすることも大切です。

サステナビリティDD

昨今、ESG経営・SDG’sなどサステナビリティをキーワードとした経営課題が増えて生きています。そこで、サステナビリティDDとして、対象企業がこうした対応を実施できているか、実施を図っているかなどを調べることがあります。

統合報告書があれば、これを用いて分析を行うこともありますが、中小企業など対応が追いついていない企業は、ヒアリングでのプロセス実行がメインです。

4. M&AにおけるビジネスDD(デューデリジェンス)の手法

M&AにおけるビジネスDDの手法は、大きく分けて以下の2つに分けられます。

  1. 外部環境分析
  2. 内部環境分析

M&AでビジネスDDを進めていくうえで重要となるのが、フレームワークの選択です。ここでは、有名なフレームワークを詳細に解説します。これらのフレームワークを駆使し、ビジネスDDを進めましょう。

フレームワークの選択

有名なフレームワークとして挙げられるのが、以下の4つです。

  • PEST分析
  • 5フォース分析
  • VRIOフレームワーク
  • バリューチェーンモデル

ここでは、以上の4つを外部環境分析と内部環境分析に分けて簡単に解説します。後半で詳細な解説をしますので、概要を理解するためにご参考ください。

外部環境分析

M&AのビジネスDDで外部分析にあたるのは、PEST分析と5フォース分析です。

PEST分析とは、「Politics(政治的要因)」「Economics(経済的要因)」「Social(社会的要因)」「Technology(技術的要因)」のそれぞれの頭文字を取ったものです。

PEST分析は、以降のビジネスDDで前提となるフレームワークであるため、非常に重要です。さまざまな視点から、対象会社の分析を行うことで見落としがないようにします。

5フォース分析とは、「Entry(新規参入)」「Rivalry(競合)」「Substitutes(代替品)」「Suppliers(供給者)」「Buyers(購入者)」のことです。これら5つの項目は、企業が利益を出し続けるために、そして新しい価値を創造するために、重要視されている項目です。

M&AのビジネスDDでは、対象企業の経営の環境を把握するために重要なポイントとなります。

内部環境分析

M&AのビジネスDDで内部分析にあたるのは、VRIOフレームワークとバリューチェーンモデルです。

VRIOフレームワークとは、「Value(経済価値)」「Rarity(希少性)」「Inimitability(模倣困難性)」「Organization(組織)」のそれぞれの頭文字を取ったものです。

これらのポイントに沿ってDDを行うことで、対象企業の強みを知ることが可能です。ここでわかった内容を、M&A最終契約書の締結後に行われるPMIの実施で十分に発揮できるようにM&Aを進めていくことが大切です。

バリューチェーンモデルは、「支援活動」と「主要活動」の2つに分けられます。

価値を創造するための活動は「支援活動」と「主要活動」に分けられ、それぞれがうまくかみ合うことでシナジー効果が期待できる考え方に基づいたDDのフレームワークです。

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5. M&AビジネスDD(デューデリジェンス)の外部環境分析

外部的要因は自社だけで左右できるものではないため、DDによって得られた情報が企業にとってどんなメリットがあり、どんなデメリットが考えられるのかを考察することが大切です。

前述のとおり、M&AビジネスDDの外部環境分析の代表的なフレームワークとしては、PEST分析と5フォース分析が挙げられます。ここでは、それぞれのフレームワークの詳細を解説します。

PEST分析

M&AビジネスDDにおけるPEST分析の目的は、政治的・経済的・社会的・技術的な要因から、対象企業が所属する市場にどのような影響が考えられるのか分析し、今後どのような影響が考えられるのか査定することです。

Politics(政治的要因)

M&AビジネスDDのPEST分析における政治的要因の具体例としては、政府の方針やその変更、法律とその改正内容、税制とその変化、公的な支援制度などが挙げられます。国際的な政治動向も、政治的要因の1つです。

市場経済が活発に動くためには競争が重要ですが、政治的要因が変化すると、その市場競争に直接影響をもたらします

政治的要因が市場にもたらす影響を考えると悪い影響ばかりが目に付きがちですが、公的な支援制度も政治的要因に含まれるため、M&AビジネスDDを行う企業にとってメリットとなる要因も少なくありません。

現在の政治的要因だけでなく今後考えられる要因も調査し、M&A最終契約書を交わした後に考えられるメリット・デメリットを査定していくことが大切です。

Economics(経済的要因)

M&AのビジネスDDのPEST分析における経済的要因の具体例としては、景気動向、物価変動、為替や金利、失業率、経済成長率などが挙げられます。

経済的要因は政治的要因と深い結び付きがあり、政治的要因の変動により経済的要因が影響を受けることが多くあるでしょう。しかし、M&AビジネスDDでは、経済的要因として分けて考えます

物を製造・販売している企業であれば、物価変動により原材料の価格が変わり、商品の価格も変わるでしょう。海外から輸入・海外へ輸出している企業であれば、外国為替の変動も多く関わってきます。

経済的要因を査定することで、どのタイミングでM&Aを行うと良いのか、どのくらい事業を広げていくと良いのか、検討するための材料として活用できます。

Social(社会的要因)

M&AのビジネスDDのPEST分析における社会的要因の、具体例としては、人口動態、教育、ライフスタイルの変化、流行などの文化などが挙げられます。

人口動態としては、日本でいうと少子高齢化が挙げられます。高級有料老人ホームが流行したのも、人口動態の影響でしょう。

流行などの文化でいえば、現在日本で話題になっているのはeスポーツ関連事業です。ゲームが単なる遊びではなく、職業として定着していくことでさまざまな影響を与えることが考えられます。

ライフスタイルの変化に関して、長年にわたり日本では食の欧米化が進んでいるといわれています。実際に長期的な目線で見ると、お米の消費量が減り、パンや麺の原材料である小麦の消費量は増えました。

このように、文化の変動によっても、市場経済は大きな影響を受けます。M&AビジネスDDで社会的要因を査定することで、企業がこれからどのような人にターゲットを絞り、事業戦略を練っていくのか検討することが可能です。

Technology(技術的要因)

M&AビジネスDDのPEST分析における技術的要因の具体例としては、新しい技術の創造や、今ある技術の代替となる技術の登場などが挙げられます。

例えば、Amazonや楽天を代表するインターネットショッピングの登場により、欲しいものはインターネットで検索し購入する、商品は自宅に郵送される、といった新たなショッピングの形が流行しました

そして、現在では、日本人であれば1度は利用したことがあるのではないかというほど普及しています。現在流行の最先端といわれているのが人工知能(AI)です。人工知能が生活になじみ深いものとなれば、それに伴いライフスタイルも変わってくることが予想されます。

M&AビジネスDDによって、新たな技術に関する情報を常に手に入れておくことで、競合に追い抜かれることなく、最先端の技術を取り入れられるような戦略を検討していけるでしょう。

5フォース分析

M&AのビジネスDDにおける5フォース分析を詳細に解説します。フォースとは、「脅威」を意味する言葉で、企業が事業戦略を進めていくうえで脅威となるものを5つに分類し、分析することで特徴をつかむことが目的です。

企業にとって、競争の要因になるものは、「Entry(新規参入)」「Rivalry(競合)」「Substitutes(代替品)」「Suppliers(供給者)」「Buyers(購入者)」の5つに分類できます。

これら5つの詳細な説明とともに、M&AビジネスDDを行う際のポイントについて解説します。

Entry(新規参入)

M&Aによって、新しい市場へ参入し、収益を得たとしても、必ずしも今その業界に参入している企業のみで業界で得られる収益を分け合えるわけではありません。今後、企業が新規参入してきて、自社の取り分が減ってしまう危険性があります

買収や合併によるM&Aを行い、新しい業界に参入したとしても、その業界の新規参入の難易度が低いものであれば、今後さらに新規参入が増えることが予想されるでしょう。

M&AビジネスDDを行う際の調査するポイントとしては、「収入の取り分を分け合う母体となる、市場の経済的な規模はどのくらいなのか」「M&Aによって手に入れることのできる技術は市場の中でどのくらいのレベルに位置するのか」「市場の中での知名度はどのくらいあるのか」などが挙げられます。

これらのポイントを調査することで、今後新規参入が増えた場合に自社への影響はどのくらいあるのかを考察できます

Rivalry(競合)

事業を展開していくうえで、競合のいない市場はほとんどありません。M&Aによって新しく事業を展開する場合は、すでに競合する企業がいることがほとんどです。新規参入を検討しているなら、競合の調査することが大切です。

M&AビジネスDDを行うにあたって調査するポイントは、「M&Aによって競合になる企業には何社あるのか」「その競合はどれほどのシェアがあり知名度があるのか」「新規参入する業界は今後成長する見込みはあるのか」などが挙げられます。

競合の情報を調査することで、M&Aによって今後自社が業界の中でどのレベルのポジションに付けるのかがわかります。商品やサービスの差別化がしにくく、業界の成長スピードが遅い市場では競争率が高くなるでしょう。業界全体の成長も調査することが大切です。

Substitutes(代替品)

M&Aを行った後、自社の商品やサービスの代替となるものが出てくると脅威になります。代替品を調査する際に注意したいのが、その商品やサービス1つ1つを見るのではなく、市場全体を見て脅威となる企業はいないのか調査することです。

例えば、大手ハンバーガーチェーンであるマクドナルドは、主にハンバーガーを商品として販売しています。ハンバーガーのみに絞ると、他社の代替品となる商品は、マクドナルドよりも知名度が低いように思えます。

しかし、ハンバーガーを「手軽に食べられる商品」と視野を広げてみると、牛丼のチェーン店や弁当のチェーン店なども脅威となることが考えられるでしょう。このように、広い視野で市場全体を見て、代替品となるものがどれほどあるのか調査することが大切です。

M&AビジネスDDを行う際のポイントとしては、「M&Aを行った後の自社の製品と、代替品にはどのような違いがあるのか」「代替品の価格は自社の商品と比べて低価格なのか」「自社の商品を代替品へと変えていくことを検討した場合、どのくらいのコストがかかるのか」などが挙げられます。

Suppliers(供給者)

事業を行う際、ほとんどの場合は原材料を仕入れ、それを自社で加工などを行うことで商品・サービスを作り出します。仕入れをする際に仕入先の業者が強い交渉力をもっていた場合、高いコストで原材料を仕入れなければならず、利益率が減少することが考えられるでしょう。

例えば、車の生産販売している企業を想定します。車はさまざまな部品から成り立っていますが、その部品の仕入先企業が少ない場合や、寡占状態にあった場合、自社はその企業から原材料となる部品を仕入れなければいけないため、価格が高くても購入しなければいけなくなります。このように、供給者と自社の関係は、ときに脅威をもたらすでしょう。

M&AのビジネスDDを行う際のポイントとしては、「供給者となる企業は何社あるのか」「供給者とM&Aを行った後の自社のパワーバランスはどうなるのか」「仕入先を変更した場合にはどのくらいのコストがかかるのか」などが挙げられます。

Buyers(購入者)

商品やサービスを販売する場合、必ず購入者が必要です。自社企業と購入者のパワーバランスは、販売できる量や価格に大きく関係します。例えば、食肉の加工をしている企業を想定します。この場合、購入者となるのは食肉を販売しているスーパーや小売店です。

M&Aを行った後に購入者となる企業が大きな力を持っていた場合、価格交渉により自社の商品の価格が下落してしまう可能性があります。また、購入者が多くの仕入先を持っていた場合も、仕入先同士で激しい価格競争が起こり、商品の価格が下落してしまう原因になります。

M&AビジネスDDを行う際のポイントは、「M&Aを行った際、参入を図る市場全体の経済規模はどのくらいなのか」「自社と販売者とのパワーバランスはどうなるのか」「市場の中で自社の商品やサービスの価格設定は適切なのか」などです。

6. M&AビジネスDD(デューデリジェンス)の内部環境分析

外部環境分析によって判明した、M&A実施後の所属する市場経済の動向や、技術の進行状況、社会が欲しいと感じている商品やサービスに基づいて、自社では何を提供できるのか、どんな貢献ができるのかを分析するのが内部環境分析です。

世間のニーズに合わせて自社が提供できるサービスを検討していくことで、競合に負けることのない商品やサービスを生み出し、販売することが可能です。M&AビジネスDDで内部環境分析を行うことで、自社の強みを明確化できます

内部環境分析のフレームワークとして、VRIOフレームワークとバリューチェーンモデルを詳細に解説します。

VRIOフレームワーク

M&AビジネスDDのVRIOフレームワークの目的は、外部環境分析のように市場全体の分析ではなく、M&Aを行う企業1つに絞って分析を行うことで、その企業にはどのような特徴があり、経営戦略として有利なのかを査定することです。

VRIOフレームワークによって自社の強みを的確に把握することで、企業のブランド力も高められます。VRIOフレームワークは、「Value(経済価値)」「Rarity(希少性)」「Inimitability(模倣困難性)」「Organization(組織)」の4つの項目の頭文字をとったものです。

ここでは、それぞれの特徴を説明するとともに、M&AビジネスDDを行うにあたって注意したい点を詳細に解説します。

Value(経済価値)

ここでいう経済価値とは、M&Aを行った後に企業が持つ商品やサービスは経済にどのような価値をどのくらいもたらすのかを意味する言葉です。商品やサービスを生み出すためにかかるコストではありません。

経済のもたらす価値を考えるため、自社が持つ商品やサービスが世間のニーズに合っているかが重要です。そのサービスは競合にとってどれほどの脅威になっているかも経済価値を調査するための1つの指標です。

M&AビジネスDDで経済価値を調査する際にポイントとなるのは、自社の商品やサービスを客観的に見て、どのくらいの経済価値を生み出せるのか調査することでしょう。世間のニーズに合致し、求められている商品やサービスであるほど経済価値があるといえます。

Rarity(希少性)

希少性とは、M&Aを行った後に企業が持つ商品やサービスは競合他社が持っていないものなのかを意味する言葉です。希少性が高い商品であれば今後の新規参入も防げます。

これとは逆に、希少性が薄い商品であれば、他社がまねをするのが容易であるため、今後新規参入も増えていくことが予想されます。希少性の高い商品は、購入者からの購買意欲も高いために価値があるといえるでしょう。

M&AビジネスDDで希少性を調査する際にポイントとなるのは、自社の商品やサービスを生み出すための技術やノウハウは自社独自のものなのか調査することです。希少性が高い商品であれば、市場競争による価格設定だけでなく、商品やサービス自体の価値や企業のブランド力で勝負できます。

Inimitability(模倣困難性)

模倣困難性とは、M&Aを行った後の企業が持つ商品やサービスが、他社にとって模倣しやすいものなのか、難しいものなのかを意味する言葉です。

M&AビジネスDDの模倣困難性を調査するうえでポイントとなるのが、自社が展開する商品やサービスに歴史があるかどうか、商品の生産方法やサービスの仕組みは他社から把握しにくいものなのか、商品やサービスを生み出すためのプロセスはどれほど複雑なものなのか、その商品には特許がついているのかどうかなどが挙げられます。

長い歴史を持つものであれば、その歴史ごと模倣するのは困難です。他社から把握されにくいものであれば、他社が模倣するためには膨大な時間と資金が必要でしょう。

複雑なプロセスで生み出された商品やサービスも同様です。特許が付いている商品であれば、競合他社が生産するためには特許使用料が必要となるため、模倣するのが困難だといえます。

Organization(組織)

M&AのビジネスDDのVRIOフレームワークでまとめの存在になるのが、組織の項目です。経済価値があり、希少性も高く、模倣も困難である商品やサービスを保有していても、それをうまく生かせる組織づくりができていなければ収益化は難しいでしょう。

組織体制をしっかりすることで、M&Aクロージング後に展開する商品やサービスに経済的な価値をもたらし、高い希少性を保てます。競合他社に簡単に模倣されてしまわないような組織体制を目指すことで、市場競争の中で生き残り、商品・サービスを展開できます。

M&AビジネスDDの組織の調査によって判明した課題は、M&A最終契約書の締結後のPMI実施のプロセスにも生かすことが可能です。

バリューチェーンモデル

バリューチェーンとは、日本語で「価値の連鎖」と直訳される言葉です。商品を販売している企業なら仕入れ・加工・販売、サービスを提供している企業なら企画・考案・提供など、流れの中で価値を生み出し、市場経済に貢献しています。

バリューチェーンの考え方の中では、事業を行うに際して、活動を支援活動と主要活動に分け、どこで価値が生まれているのかを調査します。どこで価値が生まれているのかを調査し、それぞれの流れや連鎖を分析することがバリューチェーンの目的です。

M&AビジネスDDの外部環境分析では、商品やサービスが市場の中で、どのポジションにあるのかを広い視野で調査します。しかし、バリューチェーンモデルでは、事業のプロセスの中で、それぞれの活動の役割や、それにかかるコスト、事業全体でどのくらいの貢献度があるのかなどの視点から調査することがポイントです。

事業内容を主要活動と支援活動に分類する

バリューチェーンモデルの最初のステップは、ビジネスDDを行う対象企業の事業内容を主要活動と支援活動に分類します

主要活動とは、商品を販売している企業であれば、仕入れから商品を生産するまでの過程です。支援活動とは、生産した商品が実際に消費者に渡るまでの過程です。これらの過程を細かいプロセスに分類します。

プロセスにかかるコストと価値を検討する

分類して判明したプロセスそれぞれにかかるコストを計算します。そして、そのプロセスが事業全体のうちに占める価値を検討します。これにより、そのプロセスがどれほど事業全体に貢献しているのかを知ることが可能です。

プロセス同士のつながりを検討する

プロセスそれぞれの貢献度が判明したら、プロセス同士がどのようにつながっているのかを検討します。プロセスのつながりがわかることで、M&Aを行い、PMI実施の際にどのプロセスによりアプローチしていくのか、投資していくのかが明確です。

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7. M&AにおけるビジネスDD(デューデリジェンス)まとめ

M&AにおけるビジネスDDは、非常に項目が多く複雑ですが、M&Aのプロセスを進めていくにあたり避けられないプロセスです。

正確な調査を行うことで、M&AのビジネスDDをもとに得られた情報から、スキームの見直しを行う場合や、買収によるM&Aを行う場合であれば、買収価格の見直しを行え、自社にとってより有益なM&Aを行うことが可能です。

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