譲渡企業
東北三上機材株式会社
代表取締役 中川 元基様 インタビュー
SNSで全国に広げた事業
ーまずは御社の創業の経緯、事業内容と強みについて教えてください。
もともと足場工事会社に勤めていて、いつか独立したいという目標を持っていました。東日本大震災の復興が始まったタイミングで、資材レンタル会社から「仕事はたくさんあるから、福島で仕事をするなら支援するよ」と声をかけてもらい、学生時代からの仲間と共に創業しました。
事業内容は、主に足場の工事業を行っており、その他に塗装の工事業と太陽光発電所の定期管理業務を行っております。強みは、リフォームにおいて足場と塗装の両方を自社施工できる点です。また、今回譲渡した建設資材販売のポータルサイト「足場工事ドットコム」は、SNSを活用して全国に販路を広げ、当社を建設資材販売の会社として広く知らしめる事業となりました。
業界全体の底上げを目指して
ー譲渡をお考えになったきっかけや背景、経緯を教えてください。
新たな事業を始めたいという思いがきっかけです。資材販売事業は、将来を担う若手の独立を後押しする事業だと感じていましたが、同時にビジョンを持たない経営者が多いという悲しい現実も見てきました。経営者が明確な目標を持たなければ、社員もその家族も幸せにはなれません。
この業界全体の底上げをしたいという強い思いが芽生え、そのためには、資材販売事業に費やしていた時間的負担を軽減する必要があると感じました。事業は順調に運営できていましたが、業界の未来のために、この事業をさらに成長させてくれる相手に任せるべきだと考え、譲渡を決意しました。
ー検討を進められる上で、ご希望や大事にされた条件を教えてください。
何よりもスピード感を最も重視しました。過去にM&Aを検討した際、長期間にわたってしまい、熱意が薄れて妥協してしまう経験があったからです。M&Aは、譲渡企業と譲受企業、双方の熱意と温度感が冷めないうちに一気に進めることが成功の鍵だと感じています。決算のタイミングも一つの要因でしたが、それ以上に、お互いのモチベーションを高く保ったままゴールまで辿り着きたいという強い思いがありました。
熱意と人柄が決め手

ー最終的に株式会社エヌ・エス・ピーへの譲渡をご決断されましたが、エヌ・エス・ピー様の印象や決め手を教えてください。
鈴木社長の人柄が最大の決め手です。とても物腰が柔らかい方ですが、その内には「やるからには一番を目指す」という熱い思いを持っていることが伝わってきました。また、足場業界は活発な会社が多い中で、エヌ・エス・ピーさんの社風が当社の柔らかい雰囲気に似ていると感じたことも大きいです。
同じ「色」を持つ会社であれば、安心して事業を任せられると思いました。全国展開している規模感と既存ルートへの展開力も、今後の事業の成長を確信させてくれました。
業界No.1のサービスに育ってほしい
ー今回のM&Aで期待することや今後のビジョンを教えてください。
足場資材販売といえば「足場工事ドットコム」だと言われるような、業界を代表するサービスに育ってほしいと強く願っています。エヌ・エス・ピーさんであれば、それが実現できると確信しています。
また、私自身のビジョンとしては、業界の教育事業に注力していきたいと考えています。現状、年金まで会社が持てばいいと考える高齢の経営者が多く、それによって業界全体の質が下がっていると感じています。若い経営者や社員が、仕事に明確なビジョンを持ち、適正価格でサービスを提供できるような、健全な業界に変えていきたいと考えています。
M&Aのその先を見据えて
ー譲渡を検討されている経営者様へアドバイスをお願いいたします。
M&Aは、まとまったお金を得ることが目的になりがちですが、M&A後の人生の方がはるかに長いです。何のためにM&Aをするのか、その後の人生や会社のビジョンを明確にすることが最も重要です。また、相手ありきのことなので、全てを完璧にしようとせず、お互いが歩み寄って納得できる着地点を見つけることが大切です。
譲受企業
株式会社エヌ・エス・ピー
代表取締役社長 鈴木 欣也様 インタビュー
「ないものはつくればいい!」の精神
ーまずは御社についてご紹介ください。創業の経緯、事業内容と強みを教えてください。
元々製造業の専業でしたが、自立を求めて「自分たちで売れる商品を見つけていこう」という思いから、自社で製品を作って販売するようになりました。主力は住宅用の型や土留めですが、特定の製品や業界にこだわらず、「面白ければやってみよう」という体質があります。「ないものはつくればいい!」という創業の精神が今も続いており、お客様の要望に応える形でさまざまな製品を企画・開発していることが当社の強みです。
ーM&Aを検討されたきっかけを教えてください。
主力事業である板金製品の製造において、自分たちだけでは作れないものが増え、他社の力を借りる必要が出てきたことが一つです。また、国内市場の縮小に直面し、新たな市場を開拓することが不可欠だと考えました。M&Aは、この新しい市場を獲得するための有効な戦略だと捉えています。小さくなっている市場を統合して大きな市場にすることで、業界全体を盛り上げていきたいという思いもあります。
社長の熱意と協力体制が決め手
ー最終的に東北三上機材様の「足場工事ドットコム」を譲り受けされましたが、決め手となった理由を教えてください。
今回の事業に魅力を感じたことはもちろんですが、最大の決め手は、中川社長が非常に協力的だったことです。我々は新しい市場に参入する知見が不足していたため、中川社長が「長くサポートします」と言ってくださったことが、事業を始める大きな後押しになりました。事業に対する中川社長の強い思い入れも感じられ、その熱意に応えたいと思いました。互いの「全国に展開していきたい」という思いが重なり、このM&Aが成立したのだと感じています。
全国展開と差別化を目指す
ー今回のM&Aで期待することや今後のビジョンを教えてください。
今回のM&Aを通じて、新しい市場のお客様と直接繋がれることに期待しています。お客様の声を聞き、他社にはない製品やサービスを提供することで、差別化を図っていきたいです。最終的な目標は、全国展開です。お客様に「エヌ・エス・ピーを選んでよかった」と言っていただけるよう、利便性を高め、サービスを充実させていきます。

ー今後、事業展開の1つとしてM&Aを活用されることは視野に入れていますか。
M&Aは今後の成長戦略において非常に重要だと考えています。新しい市場を創出していく上で、M&Aは欠かせない取り組みの一つです。まずは今回の事業譲渡を成功させ、事業を安定させた上で、さらなる事業拡大や新たな領域への参入に向けて、積極的にM&Aを検討していきたいと考えています。
最後に、M&A総合研究所にご依頼いただいた理由をお聞かせください。
中川氏:過去にM&Aがうまく進まなかった経験から、大手であるM&A総合研究所にお願いしました。業界最大手であるエヌ・エス・ピーさんと出会えたことが、本当に頼んでよかったと思う一番のポイントです。担当の西野さんはどんな時間でも対応してくれ、レスポンスも非常に早かったです。私だけでなく譲受企業にとっても良い結果につながるように動いてくれたので、本当に感謝しています。
鈴木氏:株式譲渡の経験はありますが、事業譲渡は初めての経験で、準備に戸惑う部分もありましたが、担当の西野さんが譲渡企業の中川社長とも密にコミュニケーションを取ってくれたので、安心して任せることができました。西野さんの中立的な立場でありながら、両社に寄り添ったサポートがあったからこそ、無事に成約までたどり着けたと思っています。
SNSで全国に販路を広げた「足場工事ドットコム」を、常に新しい市場を求める株式会社エヌ・エス・ピーに譲渡した今回のM&A。譲渡企業・中川氏の「M&A後の人生の方がはるかに長い」という言葉と、譲受企業・鈴木氏の「良い会社を引き継いで一緒に成長したい」という言葉は、単なる事業の売買ではなく、業界の未来を見据えた両社の誠実な姿勢を表している。お互いを尊重し、歩み寄ることで、このM&Aは新たな価値を生み出す事業承継となった。
担当者からのコメント
オーナー様は足場工事業を主軸に運営する中で、資材確保に苦戦した過去から足場資材販売業(本件対象事業)を始めました。同じような悩みを持つ、より多くの足場工事業者様のお役に立ちたいという思いをお持ちである一方、少人数で運営していたことから事業拡大に限界を感じており、この度譲渡を検討いただきました。譲受企業様にもオーナー様の想いに賛同いただくと共に、業界No.1を目指していくという力強いお言葉をいただきました。今後は譲受企業様の調達力・販売網を活かしてより多くの企業様に資材をお届けされることかと思います。今回のご成約により、足場業界の繁栄における一役を担えたこと、担当として心から嬉しく思います。
(企業情報第一本部第二部 次長 西野 博貴)
