学習塾の事業承継マニュアル!最新動向や事例・案件例・相談先を解説

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

学習塾の事業承継を円滑に進めるには、何から始めれば良いのでしょうか。本記事では、学習塾における事業承継の最新動向や事例、案件例について解説します。また、学習塾の事業承継の相談先についてもまとめましたので、参考にしてください。

目次

  1. 学習塾業界を取り巻く環境
  2. 学習塾の事業承継動向
  3. 学習塾の事業承継・M&A案件例
  4. 学習塾の事業承継の成功事例
  5. 学習塾の事業承継を成功させるためのポイント
  6. 学習塾を事業承継する際の相談先
  7. 学習塾の事業承継マニュアルまとめ
  8. 学習塾業界の成約事例一覧
  9. 学習塾業界のM&A案件一覧
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1. 学習塾業界を取り巻く環境

学習塾業界では、少子化の進行と不景気を背景に市場が縮小傾向にあります。

特に大手の学習塾では、オンライン講義やデジタル教材などのコンテンツを拡充し、生徒数の獲得に成功しているケースが見られますが、小規模の学習塾では、生徒数の減少により閉業または売却せざるをえないなど、市場内では二極化が進行しています。

以下では、学習塾業界の市場規模・動向について詳しく説明していきます。

市場規模の推移

日本経済新聞社の「サービス業調査」によれば、2023年度の学習塾・予備校業界の売上高は前年から2.5%増加しました。この業界では生成AI(人工知能)「ChatGPT」の導入が進んでおり、調査では6.5%の企業がすでに導入済みと回答しています。また、29.0%の企業が導入を検討している一方で、同じく29.0%の企業が「導入するつもりはない」としています。

今後の経営課題として挙げられる主な取り組みでは、「拠点の新設・増強」が最も多く45.2%を占めました。そのほか、「コストの見直し」や「講師の増員」も多くの企業が取り組む課題として挙げています。

さらに、文部科学省の調査によると、公立小学生が年間で塾に支払う費用は2021年度に平均8万円を超え、2018年度の約1.5倍に増加しています。これらのデータは、学習塾業界が経営環境の変化に対応しつつ、家庭の教育費負担が増加している現状を反映しています。

参考:日経コンパス「学習・進学塾」

オンライン学習、デジタル教材の導入・活用状況

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言の影響で、2020年4月から5月にかけて通塾が制限されたため、多くの学習塾や予備校はオンライン授業や映像授業、デジタル教材を無償で提供し、学習サービスの継続を図りました。その結果、学習塾・予備校業界におけるデジタル学習サービスの導入が大きく進展しました。

しかし、通塾が再開されると、多くの生徒が対面での学習指導を選ぶようになり、オンライン授業の効果や生徒のモチベーション維持、適切な指導方法の確立といった課題が浮上しました。

一方で、オンライン授業の普及により、首都圏の大手学習塾や予備校が地方や海外の生徒向けにオンライン授業を提供する新しいサービスを展開する動きも見られます。

デジタル教材に関しては、AI技術を活用して、生徒の学力や学習進度、理解度に応じた効果的で効率的な学習指導サービスの提供が進んでいます。

関連サービスを導入する事業者が急増しており、今後もAI搭載のデジタル教材を活用した学習指導サービスの開発と提供が拡大すると予測されます。

これは、優秀な講師の確保に伴う人件費の高騰などの課題に対し、人的リソースに依存しない学習サービスを確立する面で重要な役割を果たすと考えられます。

2. 学習塾の事業承継動向

下表に、中・小規模の学習塾が事業承継を行う主な理由をまとめました。
 

理由 補足
後継者がいないため 学習塾を引き継ぐ後継者がいない場合、廃業を選択すれば事業自体がなくなってしまいます。しかし、M&Aによる事業承継で学習塾の後継者を見つけることができれば、事業の継続が可能となります。
従業員・講師陣の雇用先を確保するため 学習塾の廃業や倒産の際に、従業員の今後を気に病んだり、再雇用先を探したりする経営者は少なくありません。M&Aによる事業承継であれば、雇用している従業員を路頭に迷わせることがないという大きなメリットがあります。
廃業・倒産を防ぐため 経営状況が悪化すれば廃業や倒産を選択しなければならないことがありますが、M&Aによる事業承継で事業を大事にしてくれる後継者に引き継ぐことができれば、学習塾は生き残ることが可能です。
事業承継時に利益を得るため 学習塾経営を廃業する場合、廃業にも費用がかかり、廃業後も何かとお金の心配をしなければなりません。しかし、M&Aによる事業承継の場合は譲渡益を得ることができ、さまざまな活動資金にあてることができます。

これに対して、大手学習塾では、顧客層や事業領域を拡大するために、提携や再編が相次いでいます。これには、少子化による顧客減少への懸念が背景にあります。

従来は、補習や受験対策、対象年齢層、個別指導や集団指導、通信教育の有無など、それぞれの学習塾が異なるターゲットや業態を持っていました。

しかし、近年の提携や再編により、他社のターゲットやノウハウを取り入れ、顧客層や事業領域を広げる企業が増えています。また、デジタル教育の急速な普及に伴い、eラーニング市場の拡大とともに、さらなる再編が進む可能性もあります。

3. 学習塾の事業承継・M&A案件例

弊社M&A総合研究所が取り扱っている学習塾の事業承継・M&A案件例をご紹介します。

【急成長中】科目特化のオンライン学習塾

高校生向け/科目特化のオンライン学習塾です。医学部、旧帝国大学等をはじめ、難関大学への合格者を輩出しています。
 

エリア 関東・甲信越
売上高 1億円〜2.5億円
譲渡希望額 1億5,000万円
譲渡理由 創業者利益の獲得

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【創業30年以上】那覇市中心部含む3教室で小・中・高生向け個別学習塾経営

沖縄で創業30年以上経営する学習塾で、地域住民からは一定の知名度を得ています。那覇市内の一等地を含む3教室を展開しています。
 

エリア 沖縄県
売上高 1000万円〜5000万円
譲渡希望額 1円(備忘価格)+役員借入金3,700万円の返済
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

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【難関大学進学実績多数/生徒総数1,000人超】英語特化進学塾

地元での高い知名度があり高い継続率・リピート率を誇ります。東大、京大など最難関大学へ、毎年合格者を輩出しています。
 

エリア 関東・甲信越
売上高 1億円〜2.5億円
譲渡希望額 応相談
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

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4. 学習塾の事業承継の成功事例

学習塾の事業承継における代表的な成功事例をご紹介します。

やる気スイッチグループによる寺小屋グループの買収

2024年12月2日、やる気スイッチグループは、愛媛県松山市を拠点とする寺小屋グループの全株式を取得し、連結子会社化しました。やる気スイッチグループは「スクールIE®」や「チャイルド・アイズ®」、「WinBe®」などの教育ブランドを展開する総合教育企業です。

一方、寺小屋グループは、愛媛県を中心に集団指導や個別指導、大学受験指導を手がけています。このM&Aにより、やる気スイッチグループの教育メソッドと寺小屋グループの地域密着型運営ノウハウを融合し、四国地域での教育サービスの拡充を目指します。

やる気スイッチグループ入りのお知らせ

オカモトによるスタハの買収

2024年9月2日、オカモトは、スタハ(石川県金沢市)の全株式を取得し、全事業を承継しました。オカモトは、グループ全体の経営管理を行う純粋持株会社です。

一方、スタハは、石川県内に18拠点を展開する個別演習型学習塾「スタディハウス」を運営しており、地域密着型の教育サービスを提供しています。この買収により、オカモトは教育分野での事業基盤を拡大します。

M&Aのお知らせ|オカモト

ナガセによるダンロップスポーツウェルネスの買収

2024年9月27日、ナガセは、ダンロップスポーツウェルネス(千葉県千葉市)の株式を取得し、子会社化を決定しました。ナガセは塾・予備校事業を主力とし、「心・知・体」の総合教育体制を構築しています。

一方、ダンロップスポーツウェルネスは幅広い年齢層を対象としたフィットネスジムを運営しており、小学生向けスイミングスクールを展開するイトマンスイミングスクール、イトマンスポーツスクールとは会員層や拠点が重複しません。

今回の子会社化により、各社のノウハウを融合し、ブランド力や顧客満足度の向上を図り、日本を代表する総合型スポーツジム、スイミングスクールの確立を目指します。

株式会社ダンロップスポーツウェルネスの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

ヒューリックによるリソー教育へのTOB

ヒューリックは2024年5月28日、リソー教育に対するTOB(株式公開買い付け)と第三者割当増資の引き受けにより、出資比率を20.57%から51%に引き上げ、連結子会社化したと発表しました。これにより、幼児教室や個別指導教室を運営するリソー教育を傘下に収め、教育事業の拡大を図ります。

ヒューリックはTOBに約126億円、増資に約34億円を投じました。リソー教育の創業者であり、約10%の株式を保有する第2位株主の岩佐実次名誉会長もTOBに応じました。

ヒューリック株式会社による当社株式に対する公開買付けの結果 及び親会社の異動に関するお知らせ

早稲田アカデミーによる幼児未来教育の買収

早稲田アカデミーは、2024年1月25日に開催された取締役会で、幼児未来教育の全株式を取得し、子会社化することを決定しました。

早稲田アカデミーは、小学生から高校生を対象とした進学塾事業を展開しています。

一方、幼児未来教育は「ベンチャースクール サン・キッズ」のブランド名で、1歳から6歳までの未就学児を対象とする幼児教室を運営しており、東京都心部に3教室を持ち、独自のプログラムで教育を提供しています。さらに、幼稚園受験や小学校受験の対策プログラムも充実しています。

早稲田アカデミーは、幼児未来教育をグループに迎えることで、新たな事業領域への進出が可能になるとともに、未就学児向けの教育ノウハウを共有し、これまで接点の少なかった顧客層との関係強化を図ります。

これにより、顧客生涯価値(ライフタイムバリュー)を高め、業容拡大を推進することができると考えています。また、両社の理念や事業の親和性が高いため、今回の子会社化により、女性の活躍の場を広げる取り組みも含め、早期にシナジー効果を創出できると見込んでいます。

株式会社幼児未来教育の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

スプリックスによる森塾事業の承継

スプリックスは、連結子会社である湘南ゼミナールから、森塾事業を会社分割(吸収分割)によって引き継ぐことを決定しました。

この会社分割では、スプリックスが承継会社となり、湘南ゼミナールが分割会社となります。

スプリックスと湘南ゼミナールは、いずれも学習塾および教育関連事業を展開しています。

今回の分割により、森塾事業をスプリックスに集約することで、グループ全体の資産効率を高め、変化の激しい学習塾業界において戦略的な営業体制を構築し、さらなる競争力の強化を目指します。

昴によるタケジヒューマンマインドの買収

九州四県で学習塾事業を行っている昴は、2020年3月に、沖縄県で高校生への学習塾を展開しているタケジヒューマンマインドの発行済全株式を取得し、連結子会社化しました。

この子会社化によって昴は、経営基盤を拡げて、中長期に渡る安定的な経営環境を築くことを見込んでいます。

5. 学習塾の事業承継を成功させるためのポイント

学習塾の事業承継を成功させるには、以下のポイントを意識して行うことが大切です。

  1. 事業承継は計画的に準備をする
  2. 後継者を決めたら育成を行う
  3. 事業承継先を入念に選定する
  4. 生徒・講師・従業員への報告は承継後にする
  5. 事業承継・M&Aの専門家に相談する

①事業承継は計画的に準備をする

学習塾の事業承継では、最適な後継者探しから、運営理念や指導ノウハウの承継など、時間をかけて準備をすることが重要です。なお、計画を立てる際は、学習塾の生徒への影響も考慮しましょう。

②後継者を決めたら育成を行う

学習塾は、指導ノウハウと経営者や講師の人柄・熱意が人気を左右します。たとえ、経験豊富な後継者が見つかったとしても、引き継いだ学習塾のカラーに合っていない場合もあります。

学習塾の後継者を決めたら、時間をかけてしっかりと育成することも重要なポイントです。

③事業承継先を入念に選定する

学習塾の事業承継が成功するかどうかは、大手学習塾や人気学習塾であるかどうかよりも、学習塾の教育理念や教育方針が合うかどうかが重要です。

したがって、トップ面談や相手学習塾の現場視察を入念に行いながら、事業承継先を探す必要があります。

④生徒・講師・従業員への報告は承継後にする

学習塾の事業承継などに関する噂は、生徒や親をとおしてすぐに広まってしまい、大きな不安と混乱を招きかねません。

生徒・講師・従業員など関係者への報告は承継後に行い、事業承継完了まで情報を漏らさない配慮が必要です。

⑤事業承継・M&Aの専門家に相談する

M&Aを行う際は、ここまで説明した学習塾の事業承継ポイントを押さえながら、自社に合った戦略を立てていきます。

学習塾の事業承継に取り組むにあたって何をしたら良いかわからない場合は、まず専門家に相談することで行動が具体的に見えてきます。

6. 学習塾を事業承継する際の相談先

ここでは、学習塾の事業承継を行う際に利用できる相談先をご紹介します。専門家や機関に相談することにより、学習塾の事業承継を円滑に進めることができます。

  • M&A仲介会社
  • 地元の金融機関
  • 地元の公的機関
  • 地元の会計士・税理士・弁護士など
  • マッチングサイト

①M&A仲介会社

M&A仲介会社は、売却側と買収側の双方と契約し、中立的な立場で交渉を調整する専門機関です。初期相談から企業価値評価、資料作成まで、M&Aの全工程を一貫してサポートします。最大の利点は、広範な候補企業から適切な交渉相手を探し、双方が納得しやすい条件でM&Aを進められる点です。

また、一貫した支援により、初心者でもスムーズに取引を進めやすいのも特徴です。

しかし、デメリットとして着手金や中間金がかかる場合が多く、成功報酬型の企業選びが推奨されます。また、交渉過程で希望売却価格より低い条件で成立する場合がある点も留意が必要です。

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②地元の金融機関

地方銀行や信用金庫でも、職員の資格取得や地元関連機関との連携などにより、事業承継の相談対応を強化しています。

実務面に関しては、提携仲介会社などの専門家と連携して行っているケースがほとんどです。

③地元の公的機関

各都道府県に置かれている事業承継・引継ぎ支援センターでは、事業承継支援の経験を持つコーディネーターが相談などを受け付けています。

事業引継ぎ支援センター単体で事業承継のサポートをするわけではなく、地元の専門機関などと連携して手続きを進めます。

④地元の会計士・税理士・弁護士など

専門分野の経験とネットワークを活かして事業承継支援を行っている事務所もあります。

多くの事務所では、大手仲介会社などとの提携によって、事業承継支援を行っています。

⑤マッチングサイト

マッチングサイトによっては、運営元仲介会社に相談したり、提携機関に相談したりできるサイトもあります。近年のマッチングサイトはサービスクオリティの向上と利用料の低価格化が特徴です。

M&A総合研究所のマッチングサイトは、AIシステムを採用した質の高いマッチングサイトになっています。

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7. 学習塾の事業承継マニュアルまとめ

本記事では、学習塾の事業承継について解説してきました。学習塾の事業承継を行う際は、事前にしっかりとした計画を立て、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けながら自社に合った手法・戦略のもと進めることが成功のカギともいえるでしょう。

8. 学習塾業界の成約事例一覧

9. 学習塾業界のM&A案件一覧

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