新型コロナによりM&Aマーケットはどうなる?業界別に動向を解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

新型コロナの影響で数多くの業界が影響を受けました。事業のあり方の変化や廃業・倒産を余儀なくされている企業も多く、M&Aマーケットへの影響も大きくなっています。本記事では、新型コロナがM&Aマーケットへ与える影響を業界別に解説します。

目次

  1. 新型コロナによりM&Aマーケットはどうなる?
  2. 新型コロナによりM&Aマーケットに大きな変化が見られる業界
  3. 新型コロナによる業界別M&Aマーケット情勢
  4. 新型コロナによるM&Aへの追い風
  5. 新型コロナ以降のM&Aマーケット予測
  6. 新型コロナによるM&Aマーケットの動向まとめ
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1. 新型コロナによりM&Aマーケットはどうなる?

新型コロナウイルスの世界的流行の影響により、経済活動に大幅な制限が掛けられています。感染拡大を防止するために外出自粛や休業要請が出されており、平時であれば多くの人通りが見られる繁華街も、商店の休業によって閑散としています。

M&Aマーケットも無関係ではなく、コロナで状況が一変したことで以前から進めていたM&Aの交渉が白紙になったり、経営状態の悪化が著しく会社売却を余儀なくされたりと、業界や企業によってさまざまな問題が出ました。

限定的な場面でコロナ特需を得ている業界もありますが、他業界とつながりを断てるわけでもないため、どうしても悪い影響を受けてしまう現状があります。

2020年前半までのM&Aマーケットに及んだ影響

2020年1~2月は、前年を少し上回るペースでM&Aが成立していましたが、3月に新型コロナウイルス緊急事態宣言が発令されました。近年、世界的な疫病蔓延(まんえん)の経験は経験したことがなく、経済界も混乱しました。

4月、5月、6月にかけては、M&Aが成立した件数はかなり落ちこんでいます。コロナウイルスは簡単に終息するものではない、といった認識が浸透します。したがって、2020年前半はM&Aを計画していた企業はこれを無期延期あるいは中断するケースが多く見られました。

2020年前半期全体として、M&A件数は前年よりも大きく減少する結果となりました。

2020年後半以降のM&Aマーケット動向

そのままの減少傾向が続くかと思われたM&Aマーケットですが、2020年後半から回復に転じました。何もしないままだと、ますます経済は悪化するだけであり、これを打破するために積極的な経営戦略を取るべきだと各企業が動き出しました。

先行きが不透明になっているから、買収を控えると判断する企業も多くありますが、大きな転換期だからこそ、攻めの姿勢で決断する企業もあります。M&Aを経営戦略の一環として、2020年後半は各社がM&A市場に戻ってきました

大型M&Aはあまり実施されなかったものの、小規模・中規模のM&Aが多くを占めています。その一因として、コロナウイルスで経営が悪化した中小企業も多く、廃業を避けるためにM&Aを選択するケースが増加したといえます。したがって、コロナ禍ではあったものの、そこまでマイナスの影響は大きくないといえるでしょう。

リーマン・ショック時に見られたM&A市場の変化

2008年のリーマン・ショック時は、M&Aの成約までに時間や費用が増加したため、案件数の減少や規模の縮小が目立っていました。当事のM&A仲介会社では、M&A仲介による手数料収入が大きく減少し、仲介業務ではなく、企業への資金調達やリストラの助言が業務のメインとなっています。

大手中小などの規模を問わず、多くの企業が経営悪化となり、M&A市場の縮小も2011年まで続きました。しかし、2012年からは企業の海外M&A案件や、経営者の高齢化による事業承継の案件の増加し、全体的にM&A市場は回復基調に向かいました。

2. 新型コロナによりM&Aマーケットに大きな変化が見られる業界

新型コロナウイルスは各業界に大きな影響を与えています。この章では、特にコロナの影響が大きい業界に焦点をあてて解説します。

外食産業界

外食産業界は、外出自粛要請の影響で多くの飲食店で売り上げが減少しています。特に外出自粛が本格化した3月以降が厳しい状況で、客足が途絶えた飲食店は家賃や従業員の給料も払えないほど切迫している状況です。

一方、外出自粛が強まるなか、デリバリーサービスで業績を伸ばす飲食店もあります。これまで店舗内の食事限定だった飲食店も、新規デリバリーサービスの開始や配送サービス「UberEats」を活用する姿が多く見受けられます。

観光業界

観光業界はインバウンドの恩恵が大きい業界だったこともあり、コロナの影響をダイレクトに受けています。観光庁の統計によると、2020年4月の訪日外国人数は約2,900人(前年度比-99.9%)といったデータが出ています。

これは、世界的に入国や渡航を制限する動きが強まっており、日本でも同様の処置が取られた結果です。

独自の企業努力で対応するのが難しく耐え忍ぶしかない現状ですが、段階的な自粛解除がされていくなか、観光業界のコロナウイルス対応ガイドライン(第1版)もそろってきており、経済活動再開に向けて少しずつ動きを見せ始めています。

製造業

緊急事態宣言を受けて在宅勤務に切り替えている業種も多いですが、製造業は工場で仕事をしなければならないため、緊急事態制限の影響を強く受けています。

緊急事態宣言の対象外地域の製造業も、発注先の経済活動が止まったことで発注キャンセルが相次いでしまい、数カ月先までの収益が途絶えている企業も少なくありません。

製造業のなかには、2008年のリーマン・ショックのダメージが回復しきっていない企業も多く存在するため、コロナウイルスが長引くほど持ちこたえられる企業は少なくなっていくでしょう。

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スタートアップ業界

スタートアップは、革新的な技術開発やビジネスモデルの確立を持ち、組織は基本的に即戦力となる人材のみで構成されています。そして、短期間で急激に成長させる特徴があるため、赤字経営で開発を進める傾向があるでしょう。

しかし、新型コロナウイルスの影響によって、資金調達先であるベンチャーキャピタルや個人投資家からの融資が停滞しました。スタートアップ企業のなかには数カ月先の運転資金が厳しいところもあり、事業存続に不安を抱えていたのが実情です。終息が読めないコロナ禍の現状では、スタートアップ企業は厳しい状況にあるでしょう。

海外M&Aマーケット

新型コロナウイルスの影響で、海外M&A市場も縮小傾向です。日本企業による海外企業の買収件数はコロナ前であれば、毎月10~15件前後でしたが、現在は月に2~3件と大きく減少しています。

一方、欧州やオーストラリアでは海外企業とのM&Aを規制する動きがあります。特に中国系企業やファンドが、体力が弱まった欧州企業に対し強い買収姿勢を見せているのが原因です。コロナが長引くことで海外M&Aの規制が厳しくなると、日本企業の海外企業のM&Aが困難となってしまいます。

3. 新型コロナによる業界別M&Aマーケット情勢

新型コロナウイルスの影響により、M&Aマーケット情勢も大きく変わりつつあります。ここでは、業界別にコロナの影響を解説します。

金融業界

世界的にコロナウイルスが流行するなか、各業界が資金調達に四苦八苦しています。これまで借入や融資とは無縁だった優良企業も、金融業界からの借入を決意する姿が見受けられます。

金融業界は引く手あまたで、限定的な特需を得ている業界の1つといえるでしょう。M&Aマーケットは、M&Aを検討する企業に対して融資といった形で需要が伸びることが想定されます。

建設業界

建設業界では、建設現場の工事・業務の一時中止が相次いでいます。緊急事態宣言が出された当初は自粛の動きは弱かったものの、清水建設の社員3名の感染、1名の死亡の公表と同時に建設業界全体で働き方の見直しが図られました。

建設現場が止まることで経営状態が悪化する企業が急増しており、M&Aによる会社売却を余儀なくされる企業も増える見通しです。

出版業界

出版業界も合併号や販売延期などの形で大きな痛手を受けています。特にファッション雑誌が撮影や取材が困難な状況にあり、制作に遅れがでています。

集英社が刊行しているファッション雑誌「More」や「Marisol」は6~7月を合併号にするなど、コロナの影響が表面化しました。

この状態が続けば取引先との契約継続も難しくなり、状況はますます悪化していくことが想定されます。従来から電子媒体にシフトしていく傾向にありましたが、紙媒体はつらい状況に追い込まれています。

運輸業界

運輸業界は物流需要の増加でコロナ特需を得ていると見られがちですが、マイナス影響も大きく受けています。

輸送物の増減が激しかったり、入荷の遅れや急な出荷の対応だったりと、従来の体制では対応しきれていない企業のほうが多いのが実情であり、海外輸入が途絶えたことで配送業務が完全になくなった企業もありました。

従来からドライバー不足が叫ばれている業界でもあるため、今回のコロナウイルスで深刻化したともいえるでしょう。増加する物流需要に対応するために、ドライバー確保を目的にしたM&Aが増加すると見られています。

卸売・小売業界

小売業界は、通信販売やネット販売に対応している小売店は業績を伸ばす傾向にありますが、店頭販売のみの小売店は厳しい状況にあります。外出自粛で休業を余儀なくされているため、支出のみが続く現状です。

卸売業界は、スーパーやドラッグストアなどの一部を除き、注文キャンセルが相次いでいます。流通を支える重要な業界であるため、コロナの影響も色濃く出ているでしょう。

卸売・小売業界では、資金調達に難を抱える企業がM&Aを検討する見方がされています。

不動産・賃貸業界

新築マンションのモデルルームの来場者が激減したことで、実際のマンションの売り上げが減少しています。オリンピックの選手村跡地の新築マンションも、オリンピックの延期に伴い販売を延期せざる得ない状況に追い込まれました。

賃貸業界では、コロナの影響で家賃を払えない困窮者が増加しています。政府主導による給付金制度もあがっていますが、全国に浸透するまでは時間がかかっているのが現状です。

コロナによって収益が途絶えたわけではありませんが、この状況が続くと経営が傾く企業も出てくるでしょう。特に中小や個人事業者の場合は、危機的状況に直面していることも想定されます。

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娯楽産業界

娯楽産業は、興行的でないスポーツ関連施設(ボウリング場など)やパチンコホール、ゲームセンターなどが該当するでしょう。

生活必需ではないことから、自粛や休業を余儀なくされている業界です。なかには営業を強行する店舗も見られますが、行政機関からの強い要請で応じているのが現状です。

経済活動を停止している状態なので、コロナが長引くほど経営状態が悪化していくことが想定されます。施設維持費や従業員の給料が負担になった事業者が、M&Aで店舗を手放すケースが多くなるでしょう。

医療・福祉業界

医療・福祉業界は、新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)によって閉鎖・閉院を余儀なくされている施設が増えています。

独立行政法人福祉医療機構による福祉貸付事業・医療貸付事業で最大1億円まで無担保・無利子で借入できるなど、制度も充実してきていますが、営業再開の見通しが立たない以上は厳しい状況下にあります。

負債を拡大してしまう前に、M&Aによる売却を視野に入れる医療・福祉施設も増えてくるでしょう。

その他の業界

そのほかにも、さまざまな業界が影響を受けていますが、特に被害が目立つのは冠婚葬祭業界です。

結婚式は中止・延期が相次いでいるのが現状です。施設維持費やキャンセル料が重くのしかかり、ブライダル事業者を悩ませる要因となっています。

葬式は、葬儀場が「社会生活を維持する上で必要な施設」に指定されているため、緊急事態宣言下であっても葬儀を行うことは認められています。

しかし、実際に葬儀を行うとなれば3密は不可避であり、コロナ感染拡大のリスクが高いのも事実です。

ブライダル事業は生活必需ではないため、経済活動が完全に再開されたとしても即座に回復しづらい業種でもあります。先行きが不安な業界だけに、M&Aを検討する事業者も増えると予想されます。

4. 新型コロナによるM&Aへの追い風

世界的に新型コロナの悪影響を受けていますが、M&Aマーケットは追い風となる部分もあります。M&Aを活用してうまく立ち回ることで企業成長を図ることも可能です。

買収検討中の企業による実行のチャンス

コロナの影響で業績が悪化している業界が増えていますが、見方を変えるとM&Aによる買収が行いやすくなっていると捉えられます。

コロナで経営が傾いている企業は、資金調達による再起や廃業を視野に入れているケースがほとんどです。M&Aであれば買い手の経営資源を活用でき、従業員の雇用先を確保することにもつながります。

コロナを利用するようで後味が悪いと感じるかもしれませんが、M&Aは売却側にとっても大きなメリットがある魅力的な話ともいえるでしょう。

買収側にとっては選択肢が増加

コロナの影響は凄まじく、安定した経営状態にあった企業も廃業・倒産を余儀なくされています。M&Aによる会社売却の検討や打診に応じる企業も増えてくるでしょう。

この流れは、買収側からするとM&A売却案件の選択肢が増加することを意味しています。コロナの影響で一時的に経営が傾いている企業や事業なら、コロナを乗り切ることさえできれば事業規模を大きく拡大させることも可能です。

M&Aによる買収のご相談はM&A総合研究所へ

コロナ不況のなか、積極的なM&A・買収行動に移すのはリスクが伴うのも事実です。単純に負債を抱え込むリスクもあり、正当性・将来性が見られないM&Aであれば、株主からの反対も想定されます。

M&A総合研究所には、業界動向に精通したアドバイザーが在籍しています。コロナによる影響を業界・業種ごとに把握しており、今後の動向予測をするのが可能です。

料金体系は完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)で、着手金は譲渡企業様・譲受企業様とも完全無料です。無料相談は随時受け付けていますので、M&Aによる買収を検討の際は、M&A総合研究所へぜひご相談ください。

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5. 新型コロナ以降のM&Aマーケット予測

現在の新型コロナ以降の国内におけるM&Aが今後どうなっていくのか、M&Aマーケット予測を解説します。

M&Aニーズの増加

新型コロナ以降、業績が好調の業種は多くあり、M&Aも活発に行われています。ただし、業績が不調な業種の場合、経営不振の中小企業が積極的にM&Aを活用し、今後も多くのM&Aが成立する見込みです。

中小企業の事業承継手段として、ベンチャー企業やスタートアップの出口戦略として、今後M&Aが活発となっていくでしょう。

業界再編の活発化

新型コロナのまん延により業績が悪化している業界の場合、体力のない企業は大手企業に吸収され、業界再編が進むこととなるでしょう。

業績が好調な業界の場合は市場シェア拡大を進めるため、大手企業同士のM&A、大手企業による中小企業のM&A、中小企業同士のM&Aがますます増えていくと予想されます。

資本力のある異業種からの参入も見られます。その場合はM&Aを活用しているケースが多く、業界再編はより活発化することでしょう。

6. 新型コロナによるM&Aマーケットの動向まとめ

当記事では、新型コロナウイルスによる業界別M&Aマーケットへの影響を解説しました。在宅勤務に移行できる業種に関して、コロナの影響は比較的少ない傾向にありますが、現場仕事や流通関連の業種は色濃く影響が出ています。

昨今は、自粛解除の動きが進んでいて経済活動再開の兆しもみえてきていました。しかし、業種によっては大きなダメージが残ることも想定されるため、アフターコロナの立ち回りを考えなければならないタイミングが訪れているのかもしれません。

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