2023年10月27日更新
新株予約権とは?仕組みや手続き方法からメリットやリスクまで解説!
本記事では、新株予約権の仕組みや手続き方法、そのメリットやリスクを解説します。会社が発行できる株式のなかに、新株予約権があります。新株予約権は、従業員のモチベーション向上や、敵対的買収への防衛策などの用途で使われます。新株予約権の知識をつけたい方は必見です。
目次
1. 新株予約権とは
新株予約権とは、発行した会社に対して使うことにより、新株の交付を受けられる権利をいいます。
新株予約権の交付にはメリットとデメリットがありますが、適切に使用できれば自社にとって大きなメリットをもたらすでしょう。
新株予約権の種類
新株予約権は、使い方に応じて大きく以下の種類に分類できます。ここでは、4種類の新株予約権を解説します。
- 社内向け発行(ストックオプション)
- 社外向け発行
- 無償割当
- 有利発行
社内向け発行(ストックオプション)
1つ目は、社内向けのストックオプションで、従業員や取締役に、決められた金額で新株を取得できる新株予約権です。
新株を取得できる金額を現在の株価以下に設定し、その権利を行使できる期間を数年後に設定するので、新株予約権を取得した従業員や取締役は、株式によるインセンティブを得るためモチベーションが上がるでしょう。数年後にしかインセンティブを得られないので、従業員の早期退職も減らせます。
優秀な人材を確保するためにもストックオプションの発行は有効的です。特にベンチャー企業は優秀な人材を確保することが欠かせません。
しかし、豊かなキャッシュフローがある段階ではないため、業績により大きな利益を獲得できるストックオプションを発行すれば優秀な人材を得やすくなるでしょう。
社外向け発行
2つ目は、社外向けの発行です。社外向けに新株予約権を発行する目的は、資金繰りに苦しんでいる企業が資金調達を行うためです。新株予約権を社外に発行するとオプション料を得られるため、その対価ですぐに資金調達が可能になります。
株式は社債と異なり返済義務がないため、会社にとって負債になることはありません。ただし、新株予約権を発行しすぎると株価が大きく下落し、新株予約権が売れない可能性があります。
無償割当
3つ目は無償割当です。無償割当とは、新株予約権を既存株主に無料で割り当てることです。
これは大規模な増資を行う際など、新株を大量に発行するときによく行われます。新株を大量に発行すると株価が大きく下落するため、既存株主は新株を取得しなければ株式資産が大きく減少してしまうでしょう。
このような状況を避けるため、既存株主に対して無償割当を実施するといった対策が取られます。
有利発行
4つ目は、有利発行です。会社は自社の株式を自由に割り当てられるため、特定の人や法人に対して新株予約権を発行でき、これを有利発行といいます。
ただし、不公平な発行方法であるため、有利発行を行うためには株主総会でその理由を説明し、特別決議による承認を得なければなりません。
2. 新株予約権の仕組み
次は、新株予約権の仕組みを説明します。同じ新株予約権でも、社内向けのストックオプションとその他の新株予約権では少し仕組みが異なるため、それぞれ解説しましょう。
ストックオプションの仕組み
ストックオプションは、社内向けに発行する新株予約権のことです。そのほかの新株予約権との大きな違いは行使できる期間が異なっており、ストックオプションの方が数年間と行使期間が長くなっています。
その理由は、ストックオプションにより高めた従業員や取締役のモチベーションを持続させるためです。
新株予約権の行使期間中、従業員や取締役が尽力して業績を上げ、株価上昇となれば、その分が新株予約権によるインセンティブになります。
それ以外の新株予約権の仕組み
一方、ストックオプション以外の新株予約権は社外向けであり、資金調達が目的になっています。通常、資金調達のために新株予約権を発行することはなく、新株発行の募集を行い資金調達します。
それでは、なぜ新株予約権を用いて資金調達を行うのでしょうか。その理由は、新株を発行しても誰も出資しないときに用いる最終手段だからです。新株予約権を安価に発行し、株主に対して比較的大きな利益が出るような条件を提示して資金調達を行います。
このように、通常の新株発行よりも株主に対してメリットを与えるような新株を発行したいときに、新株予約権を発行します。
3. 新株予約権の3つの目的と発行方法
次は、新株予約権を発行する目的と発行方法について、それぞれ解説します。
新株予約権を発行する3つの目的
新株予約権を発行する目的には、主に以下の3つです。なお、①と②は、先ほど説明したのでここでは割愛します。
- ストックオプション
- 資金調達のための有利な発行
- 買収防衛策(ポイズンピル)
③の買収防衛策では、敵対的買収に備えて新株予約権を友好関係のある第三者に発行し、買収されそうになったときに権利を行使して、買収先の株式占有率を低下させて買収を防ぎます。
この防衛策をポイズンピルといい、ほとんどの会社は敵対的買収に備えてポイズンピルの準備を行うでしょう。
新株予約権の発行方法
新株予約権の発行方法には、公正発行と有利発行の2つがあります。
公正発行
公正発行は、すべての株主に対して新株予約権を発行する方法です。通常、社外向けの発行や無償割当、有償のストックオプションは公正発行に該当します。
有利発行
有利発行は、特定の株主に対してのみ新株予約権を発行する方法です。この方法により、株主の議決権など他の株主が不利益を被る可能性があることから、有利発行の際は株主総会特別決議で承認を得る必要があります。
以前は、無償のストックオプションは有利発行に当たるとして、すべての会社で株主総会特別決議の承認を得ていました。
しかし、近年はストックオプションが無償であっても、従業員や取締役のインセンティブの目的として、公正発行とみなす企業が増加しています。
4. 新株予約権のメリット
この章では、新株予約権のメリットを会社側、権利者・投資家側、既存株主側の視点から解説します。
会社側の3つのメリット
新株予約権を発行することによる会社側のメリットには、以下の3つがあります。
- 安全で健全な資金調達ができること
- 敵対的買収への防衛策になること
- ストックオプションの場合、従業員のモチベーションが上がること
安全で健全な資金調達ができること
資金調達の方法は、株式を発行して得る株主資本と、金融機関などから融資を受ける借入金があります。
経営難や資金繰りが悪化しているときでも、金融機関などからの融資の場合は返済義務がありますが、株式発行による資金調達では返済義務はありません。
新株予約権発行は安全で健全な資金調達であるといえます。しかし、新株予約権の発行は、新株発行で必要人数の買い手が見つからないときに行う最終手段であるため、新株予約権にあまり頼らないことをおすすめします。
敵対的買収への防衛策になること
新株予約権を自社に対して友好的な第三者に発行しておくことで、友好的第三者に安定的に株式を保有してもらえるため、簡単に敵対的買収が行えなくなります。
このような新株予約権の発行による敵対的買収への防衛策をポイズンピルといいます。
敵対的買収については、下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
ストックオプションの場合、従業員のモチベーションが上がること
ストックオプションは、従業員や取締役ががんばることで業績が上がり、株価が上昇することでインセンティブが得られます。ストックオプションはモチベーションの向上につなげられるでしょう。
なお、適格税制の適用を受けるためには、行使期間を2年から10年に設定しなければなりませんが、行使期間が長すぎると、逆に従業員や取締役のモチベーション低下につながるので注意が必要です。
権利者・投資家側の3つのメリット
新株予約権を発行することによる権利者・投資家側のメリットには、以下の3つがあります。
- 安価な株を購入できること
- 行使実行の選択ができること
- 大きな売却益を得る可能性があること
安価な株を購入できること
社外向けに新株予約権を発行する場合、行使期間があるため、新株発行よりも株主にプレミアムが付与されます。
権利者や投資家向けに発行される新株予約権は、発行時の株価よりも安い価格で募集発行されます。新株予約権は、安価に株を購入できる手段といえるでしょう。
行使実行の選択ができること
新株予約権は行使期間が定められていますが、その期間内であれば、いつでも権利を行使できます。つまり、権利者や投資家は、自身の利益が確定しているときに権利を行使でき、損失のリスクを抑えた投資を行うのが可能です。
大きな売却益を得る可能性があること
新株予約権は、新株の購入よりも売却益を得られる可能性があります。株式投資は、購入時の価格よりも高い株価のときに売却できれば、利益を得られるでしょう。
新株予約権の場合、行使期間まで権利を行使できない分、新株予約権を安価に購入できるため、売却益を確保できる可能性は大きくなります。権利行使期間内であれば、権利者や投資家の裁量で権利を行使できるため、売却益を手にできます。
ただし、いくら新株予約権を購入したからといって、将来的な会社の成長が見込めない場合は売却損になる可能性が高いので、見極める必要があるでしょう。
既存株主のメリット
新株予約権を発行することによる既存株主のメリットはいくつかありますが、この記事では1つのみ紹介します。
社債の発行や借入金より安全で健全
新株予約権は企業価値に大きな変動がなく、社債や借入金よりもリスクを回避した資金調達方法です。株価の下落による資産減少の可能性が少なくなるため、既存株主にとってはメリットであるといえます。
企業価値について
企業価値とは企業の価値を示すもので、その企業の資本構成から計算できます。企業価値は、株主資本(株式や新株予約権などからの資金調達)と負債価値(社債や借入金など)の合計で求められ、それをもとに株価が決まります。
負債価値が増加すると、節税効果により企業価値は上昇するでしょう。逆に株主から要求されるリターンが大きくなるため、株主資本は低下し、企業価値が低下することになります。つまり、社債や借入金の資金調達方法は、株価が低下するリスクがあります。
5. 新株予約権のリスク
それぞれの立場から考えられる新株予約権のリスクを解説します。
会社側のリスク:既存株が希薄化する可能性
新株予約権を発行すると、既存株が希薄化する可能性があります。既存株が希薄化すると、権利者や投資家、既存株主に悪い影響がおよぶため、株価が低下して今後の資金調達が困難になる可能性があるでしょう。
資金調達による新株予約権を発行する際は、その発行数に注意する必要があります。
会社側のリスク:権利行使後に株価下落の可能性
新株予約権を発行すると、市場価格が上昇したタイミングで投資家が株式を売却する可能性があるでしょう。その結果、発行数が多いと大幅に株価が急落するもしれません。
株価が大幅に下落してしまうと、将来的に資金調達が難しくなるだけでなく、既存株主からの信頼が失ってしまうといったリスクも考えられます。新株予約権を発行する際は、株価の大幅な下落を防ぐために、発行数に注意が必要です。
権利者・投資家側のリスク:オプション料が発生する
権利者・投資家にとっての新株予約権のリスクは、オプション料が発生することです。新株取得の場合、新株に対する対価(株価分)だけを支払えば取得できます。
しかし、新株予約権から新株を取得するまでには行使価格を支払うだけでなく、新株予約権を取得するために対価(オプション料)を支払う必要があるでしょう。つまり、新株取得に比べて新株予約権の取得は、オプション料の分だけコストがかかります。
投資家側のリスク:株価が上がらない可能性
権利者・投資家にとっての新株予約権のリスクは、株価が上がらない可能性もあることです。株価が上昇しなければ、せっかくストックオプションを保有していてもあまり意味がありません。
既存株主のリスク:既存株が希薄化する可能性
新株予約権が発行されて、その権利が行使されると発行済み株式数が増加するため、既存株が希薄化します。既存株が希薄化すると株価が下落してしまうため、株式による資産が減少することになります。
6. 新株予約権の権利を行使する手続き方法
次は、新株予約権の権利を行使する手続き方法を解説します。
行使する手続き方法
新株予約権を行使するためには、証券会社を通して以下の手順を経て、新株を取得することになります。
- 株主確定日に株主に対して新株予約権が割り当てられる
- 新株予約権を割り当てられた株主に対して発行会社から権利行使請求権が送られる
- 株主は権利行使の申し込みを行う(Web・電話・書類での申し込み)
- 証券会社で権利行使に当たっての手続きや審査を行う
- 審査が通れば、新株を受け取れる
なお、この手順はある証券会社で権利行使するための手続き方法です。証券会社によって手続き方法は異なるため、詳しくは新株予約権の発行の際に使われる証券会社にお問い合わせください。
行使期間について
行使期間とは、新株予約権が付与されてから権利行使できるまでの期間をいいます。商法上、行使期間の決まりはありませんが、適格税制に適応するためには、行使期間を2年から10年に定めなければなりません。
適格税制とは
適格税制とは、定められた要件を満たすと新株予約権行使に当たっての課税を一部免除できる制度です。ストックオプションの場合、ストックオプション取得に関して課税はされませんが、権利行使時や株式譲渡時には課税されます。
権利行使時の課税は、ストックオプションが付与されたときから権利を行使するまでに株価が上昇していた場合、その分が利益となるため課税対象です。なお、権利行使時の利益は労働の対価と考えられるため、給与所得として課税されます。
株式譲渡時の課税は権利行使から譲渡するまでに得た利益に対して課税されます(譲渡所得として課税)。しかし、適格税制が適応されると権利行使時の課税(インセンティブ分の課税)が免除されるため、ストックオプションを使う場合は、できるだけ適格税制に適応させましょう。
行使価格について
行使価格とは、新株予約権を行使するときに払い込む金額のことで、この価格は新株予約権を発行するときに決められます。
新株予約権は割り当てる株主に対して、通常の新株購入よりもメリットを与える必要があるため、発行時の株価よりも安価に発行される場合が多いです。
なお、ストックオプションの場合は適格税制を受けた方が有利なため、行使価格に関して以下のような制限を受けることになります。
- 行使価格がストックオプション発行時の株価以上であること
- 行使価格が年間で1,200万円を超えないこと
したがって、適格税制の適用を受ける場合は、行使価格も注意する必要があります。
7. 新株予約権の買取請求について
新株予約権は原則として買取請求できませんが、株主が不利になると思われる場合は、買取請求できます。
新株予約権の買取請求が可能となる条件は、以下の4つです。
- 譲渡制限株式化した場合
- 全部取得条項付種類株式化した場合
- 株式が分割・交換・移転された場合
- 会社合併が行われた場合
①譲渡制限株式化した場合
1つ目は、譲渡制限株式化した場合です。譲渡制限株式とは、保有している株式を譲渡するときに、その会社の取締役会か株主総会で承認を得なければならない株式のことです。
株式の譲渡益を目的に新株予約権を購入した株主にとって、譲渡制限化することはすぐに譲渡益を得られないことを意味しています。つまり、そのような株主にとって不利になるため、譲渡制限化した場合には新株予約権の買取請求を認めています。
なお、以下の記事で譲渡制限株式を詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
譲渡制限株式については、下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
②全部取得条項付種類株式化した場合
2つ目は、全部取得条項付種類株式化した場合です。全部取得条項付種類株式とは、株主総会特別決議で承認が得られれば、発行しているすべての株式をいつでも会社が取得できる株式のことです。
つまり、株主が期待する譲渡益が得られないまま、会社に取得される可能性があることから、株主にとって不利になります。全部取得条項付種類株式化した場合も、新株予約権の買取請求が認められています。
③株式が分割・交換・移転された場合
3つ目は、株式が分割・交換・移転された場合です。株式分割とは、すでに発行されている株式を分割することで、株価が下落することを意味します。
新株予約権は株式分割で分割しないため、価値が低下し、株主にとって不利になるでしょう。株式交換・移転とは発行済み株式すべてを既存会社もしくは新設会社の株式と交換・移転することをいいます。
つまり、新株予約権を割り当てられたときの企業とは異なる会社の株式を、付与されることになるでしょう。以上のことから、これらの場合も新株予約権の買取請求が認められています。
④会社合併が行われた場合
4つ目は、会社合併が行われた場合です。会社合併が行われると株式交換・移転のときと同様、新株予約権が割り当てられたときの企業とは異なる会社の株式を付与されることになり、株主にとっては不利になります。
会社合併が行われる場合も、新株予約権の買取請求が認められています。
8. 新株予約権の会計処理
新株予約権の基本的な仕訳の考え方を解説します。新株予約権は、「新株予約の発行付与」「権利確定」「権利行使」「権利失効」に分かれます。したがって、新株予約権で仕訳が発生するのは、それらのタイミングです。仕分けの流れに沿って見てみましょう。
発行側の会計処理
(例)前提条件
- 新株予約権発行価額:1株1万円
- 新株予約権1個につき発行する株式は100株
- 権利行使価額は1株当たり1万円
- 払い込みは当座預金
【発行】
新株予約権を100個発行した場合は以下です。新株予約権総額100万円となり、純資産科目の「新株予約権」勘定を使用して勘定します。払い込み時にすぐに資本金に組み入れない理由は、権利が行使されるケースや行使されずに失効するケースが想定されるからです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
当座預金 | 1,000,000円 | 新株予約権 | 1,000,000円 |
【権利行使】新株予約権のうち、70個分の権利が行使された場合、全額を資本金に組み入れます。
「1万円×新株予約権70個×100株=7,000万円」
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
新株予約権 | 700,000円 | 資本金 | 70,700,000円 |
当座預金 | 70,000,000円 |
【権利失効】
権利失効により行使されなかった新株予約権30個分があった場合は、以下の仕分けです。失効された新株予約権は、取り崩され利益(特別利益)として処理されるでしょう。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
新株予約権 | 300,000円 | 新株予約権戻入益 | 300,000円 |
取得側の会計処理
取得側の会計処理を見ましょう。
(例)前提条件
- 新株予約権発行価額 1株1万円
- 新株予約権1個(株式株式100株)
- 権利行使価額は1株当たり1万円
【取得】
新株予約権2個を取得した場合は以下です。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
投資有価証券 | 20,000円 | 当座預金 | 20,000円 |
【権利行使】
新株予約権2個の権利を行使した場合は以下です。新株予約権を行使し株式を取得した場合は、帳簿価額で株式に振り替えます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
投資有価証券 | 2,020,000円 | 投資有価証券 | 20,000円 |
当座預金 | 2,000,000 |
【権利失効】
新株予約権2個の権利を行使しないまま行使期間が過ぎ、失効損を計上しました。失効分を「投資有価証券勘定」から「新株予約権失効損」勘定に振り替えます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
新株予約権失効損 | 20,000円 | 投資有価証券 | 20,000円 |
資本政策が多様化していくなか、新株予約権の利用も拡大していくと考えられています。発行側、取得側の両面においてその会計処理を事前に知っておくことは有用でしょう。新株予約権の交付は、適切に使用できれば自社にとって大きなメリットをもたらします。
9. 新株予約権の税務面での取り扱い
新株予約権を税務面で取扱う場合、注意するべき手続きが無償ストックオプションです。無償ストックオプションには、「税制適格ストックオプション」と「税制非適格ストックオプション」があります。
税制適格ストックオプションは、租税特別措置法の要件を満たした無償発行のストックオプションであり、ストックオプションの権利行使の際には課税は行われません。新株予約権者が、ストックオプションにより取得した株式を譲渡するまでは、課税が繰り延べられるのが特徴です。
ストックオプションの権利行使の際、給与所得として課税がされません。したがって、発行側の法人は損金算入ができないため注意が必要です。
一方、税制非適格ストックオプションでは、権利行使時および権利行使後の株式譲渡の際に課税が行われます。権利行使時には、ストックオプションの行使価額と株式時価との差額が給与所得として扱われるため、損金算入ができます。
10. 新株予約権発行時の相談先について
「新株予約権を発行するべきか」「発行するときにはどのような注意点があるか」などは、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。先ほども紹介したように、敵対的買収の方法として新株予約権の発行(ポイズンピル)があるため、新株予約権に関する相談をM&Aの専門家にしても問題はありません。
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11. 新株予約権のまとめ
新株予約権の仕組みや手続き方法、メリットやリスクを紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。新株予約権発行は新株発行と異なる部分が多いため、メリットとリスクが同時に生じます。したがって、それらをよく吟味したうえで、メリットが上回るときは新株予約権を発行するようにしましょう。
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