2024年08月25日更新
M&Aアドバイザーとは?仕事内容や手数料・選ぶポイントを徹底解説
M&Aを行う際はM&Aアドバイザーに依頼する形が一般的ですが、M&Aアドバイザー選びに迷ってしまう経営者の方もいるかもしれません。この記事では、M&Aアドバイザーの仕事内容、手数料、重要性、求められるスキルなどを紹介します。
目次
1. M&Aアドバイザーとは
M&Aアドバイザーとは、M&Aの専門的な知識を持った専門家のことで、M&Aを検討している経営者にアドバイスを行う存在です。M&AコンサルタントやFAと呼ばれていることもあります。
M&Aを行うためには、自社や買収予定の会社の財務状況・法務状況、経営の外部要因などを分析します。そして、M&Aを行っても問題ないか、M&A後にスムーズに経営していけるか判断する必要があります。
しかし、これらの分析を経営者のみで行っていくことは、経営者としての本業も行う必要があるために難しく、M&Aアドバイザーに依頼してM&Aの相談をするのがおすすめです。ここからは、M&Aアドバイザーの業態、種類、仕事内容を紹介します。
M&Aアドバイザーの種類
M&Aアドバイザーは、大きく分けると以下の4つに分類できます。
財務アドバイザー
財務アドバイザーは、決算報告書などをもとに会社の財務状況を分析するといった財務面からM&Aのアドバイスを行います。M&A時の会社の価格交渉や契約条件のアドバイスも行う存在です。
3種類のM&Aアドバイザーの中では財務アドバイザーが最も多いため、M&Aのコンサルティングを行う会社には基本的に1人以上在籍しています。この財務アドバイザーのなかで、財務関係の助言・交渉を代理で行う専門家を、特にM&Aアドバイザーと呼ぶこともあります。
法務アドバイザー
法務アドバイザーとはM&Aを行う際の法律面からアドバイスを行う人のことで、基本的に弁護士資格を取得しています。
M&A交渉時の業務内容としては、契約書の作成・確認などです。M&A後は、その会社の社内規定の整備、コンプライアンスの整備など法律に対応した社内整備の業務を行っています。
税務アドバイザー
税務アドバイザーとは、M&Aに関する税金面からアドバイスを行う人です。M&Aによって会社の規模が多くなると、納めるべき税金の額が変わってきます。
例えば、法人税の場合、資本金1億円以下の中小企業では軽減税率が適用されており、年間所得800万円以下の部分は税率15%、それよりも多い部分は23.2%の税率が課されます。しかし、M&Aによりその会社の資本金が1億円以上となると税法上では大企業に分類され、年間所得の全額に対して23.2%の税率が課されるでしょう。
M&A後の税負担の増加に対して、財務アドバイザーは会社の経営が変化しないか事前に想定しておき、経営者にアドバイスをします。M&Aによって自社の納税額がどのように変わり、キャッシュフローがどのように変化するのかを経営者に説明・アドバイスを行う業務もあります。
その他アドバイザー
その他アドバイザーとして、大手コンサルティングファーム、税務・財務系アドバイザリーファームなどが行うサービスがあります。
例えば、第三者算定機関として、フェアネス・オピニオンを表明するものです。フェアネス・オピニオンは第三者信用調査機関として、M&Aにおける株式売買やその他の取締役会の意思決定を補強する役割を担っています。
評価額や評価結果に至るまでの経営判断を、独立した第三者がさまざまな観点から調査し、財務的な視点から意見を表明します。
2. M&Aアドバイザーの仕事内容
ここでは、M&Aアドバイザーの仕事内容を紹介します。M&Aアドバイザーは、M&Aの交渉前の段階からM&A後の統合作業まで全般のアドバイスを行うことが可能です。
以下の動画では、M&A総合研究所の年間MVPアドバイザーの1日を紹介していますので、ぜひご覧ください。
相手先選び(マッチング)
M&Aの相手先企業を選ぶ際は、M&Aアドバイザーによるサポートのもと、以下のステップを進めていくのが一般的です。
- ロングリスト(20〜30社程度がピックアップされた書類)作成
- ショートリスト(数社〜8社程度まで絞った書類)作成
- ショートリストのなかで交渉を打診する優先順位を定める
ロングリストには、企業名や本社所在地、取扱商品、売上高など、主要な情報が記載されます。これに対して、ショートリストは当事者となる企業の希望条件を踏まえ、ロングリストのなかからM&Aを行いたい企業が数社ピックアップされる書類です。
上記のステップを経ることで、M&Aの実現可能性が高い相手候補を選定します。
資料作成
M&Aを進めていく際に提案する資料の作成を行うのも、M&Aアドバイザーの仕事のひとつです。
売り手企業に関する資料としてノンネームシートと企業概要書が作成されます。
ノンネームシートとは、企業名を匿名にした売り手企業の情報がまとめられた資料です。具体的には、所在地・業種・資本金など会社の概要、M&Aの方法や譲渡額・譲渡の理由なども記載します。一方、企業概要書とは会社名・事業内容・財務状況など詳細な情報が記載された書類です。
実務ではアドバイザーがマッチングの段階でノンネームシートを買い手候補に提出します。買い手が興味を持ち交渉を進める前に、売り手、買い手の間で秘密保持契約を締結します。その後、買い手候補へ企業概要書を提出します。この流れにすることで機密情報やM&Aを進めていることが漏洩するリスクを軽減することができます。
面談や交渉のサポート
面談や条件交渉に関しても、M&Aアドバイザーからのアドバイスをもらい進めていきます。面談や交渉がスムーズに進めるようにサポートすることがM&Aアドバイザーの仕事になります。
M&Aの交渉の場面ではそれぞれの利害が対立するため交渉が難航することが少なくありません。交渉が長期化していったり、不利益を被る条件で進めないために譲渡金額やスケジュール、従業員の処遇など具体的な条件の中で最も優先したい条件を明確にしていきお互いが納得できる条件を見つけるサポートを行います。
企業価値評価(バリュエーション)
譲渡側より提出された資料をもとに、譲渡側にどれほどの企業価値があるのか算出するための手続きを企業価値評価(バリュエーション)と呼びます。
企業価値評価により算出された価額は、M&Aの交渉を進めるうえで譲渡価額の目安となり、M&Aの交渉や最終的な譲渡価額を決める際に求められます。M&Aアドバイザーが担う業務の中でもM&Aを成功させるために重要な仕事です。
デューデリジェンス
デューデリジェンスとは、企業監査のことです。M&Aでは、候補としている会社を買収しても問題はないか確認するために、被買収会社の監査を行います。M&Aでのデューデリジェンスでは、会社の財務面や法務面などあらゆる方向からの分析を行うため、これらの分野のアドバイザーに依頼をしてプロセスを進めます。
デューデリジェンスにより金額修正やリスクを抱えるM&Aを回避することができます。そのため、専門知識を持つM&Aアドバイザーを活用しデューデリジェンスを実施することが望ましいです。
契約書の作成
M&Aでは秘密保持契約書や基本合意書、最終契約書など契約書を作成る場面が何度かあります。
秘密保持契約書とはM&Aを進める中で知り得た情報を第三者に開示することを禁止する契約書です。基本合意書とは条件などの交渉が終わった段階で買い手と売り手の間で合意した内容をまとめた契約書です。最終契約書とはM&A実施を正式に合意した際に締結する契約書です。
契約書の作成には法律の知識を必要なためM&Aアドバイザーが契約書作成を行います。
クロージング
クロージングとは、M&Aの実行を行うことです。具体的にはM&A契約による資金の移動や人の移動などをさします。資金の移動は、現金だけでなく株式の移動を伴うケースも多いです。実行時は、財務アドバイザーのアドバイスをもらって進めていきます。
PMI(統合作業)
PMIとは、M&A後の統合作業のことです。合併など会社が1つになるM&Aスキームでは、その会社のシステム統合や企業風土の統合を行う必要があります。PMIの作業が完了するまでには相当の時間がかかり、M&Aの中で一番時間がかかる作業です。
PMIもあらゆる分野のM&Aアドバイザーのアドバイスをもらい、時間をかけてPMIを行います。PMIの作業は、法律事務所のようなM&Aや経営に関して得意分野が1つのみの業態に依頼することも可能です。しかし、M&A仲介会社などのように総合的なアドバイスができる業態の会社に依頼することをおすすめします。
3. M&Aアドバイザーに依頼するメリット・デメリット
本章では、M&Aアドバイザーにサポートを依頼する主なメリット・デメリットを説明します。
メリット
M&Aアドバイザーにサポートを依頼するメリットとしては、主に以下の4つがあります。
最適なM&Aの相手先の発掘や見極めができる
M&Aアドバイザーは譲渡側・譲受側の案件を保有しており、独自ネットワークを持っている場合は多いです。自社単独で行うよりも広範囲から相手先を探すため、より希望条件にあった企業がみつかる可能性も高くなります。
M&Aアドバイザーは希望条件を考慮したうえで、シナジーは十分見込めるか、企業理念や風土は合うかなど、客観的な立場から判断してマッチングを行うので最適なM&A相手先の見極めが可能です。
円滑にM&Aを行える
M&Aが成立するまでには条件交渉だけでなく、必要書類を作成したり行政への届け出をしたりする場面も多いです。このような工程を自社の通常業務を行いながら進めていかなければならないため、経営者の負担は大きなものとなります。
M&Aアドバイザーは、交渉や書類作成などM&Aに必要な工程をサポートするため、自社の事業に対する影響を最小限にとどめて円滑に進めていくことが可能です。
また、M&Aアドバイザーは譲渡側企業・譲受側企業の考えや希望を汲み、そのうえで双方が折り合えるところをみつけていき、交渉をまとめていくので当事者間で直接交渉を行うよりも円滑なM&A実現に期待できます。
リスクの軽減ができる
M&Aでは専門知識が必要な場面も多く、正しく判断できなければ契約上の不備によりM&A後の事業に支障がでたり、譲受側はいわゆる「高値掴み」をしてしまったりする可能性もあります。
そうなればM&A自体が失敗に終わるおそれもありますが、M&Aアドバイザーがサポートすることでリスクの軽減が可能です。
M&Aアドバイザーは自身の知識と経験から想定されるリスクを考慮しながら、スムーズなM&Aが実現するようサポート対応を行います。
過不足のない取り決めができる
M&Aでは、譲渡側企業・譲受側企業とで取り決めが必要な事項が非常に多いです。たとえば、使用するM&Aスキームや取引価額、従業員の引継ぎなど、その内容は多岐に渡ります。
法律に則って行わなければならないものも多く、契約書や覚書の作成も必要です。どれも漏れや抜けがないように進めなければなりませんが、M&Aアドバイザーはサポートにつくことで過不足ない取り決めを行うことができます。
経営者の負担軽減
M&Aアドバイザーを活用することでマッチングから資料作成、交渉などサポートをしてくれます。多くの経営者は事業の活動と並行してM&Aを進めるかと思いますが、M&Aアドバイザーのサポートを受けながらM&Aを進めることで負担を軽減することができます。
デメリット
M&Aアドバイザーへサポートを依頼することには、メリットだけでなく当然デメリットもあります。そのため、依頼する際は生じうるデメリットを把握したうえで判断することが重要です。
トラブルの責任は追求できない
M&Aアドバイザーは、譲渡側企業・譲受側企業の双方にとって満足度の高いM&A実現となるようアドバイスを行います。
ですが、M&A成立あるいは成功を保証するものではなく、アドバイスが原因となってトラブルに発展した場合もM&Aアドバイザーに責任を追求することはできません。
M&Aアドバイザーの役割・業務は、M&A成功に向けたアドバイスやサポートに対し最大限努力し務めることです。M&Aアドバイザーに依頼したからといってM&Aが必ず成功するわけではない点には注意が必要です。
手数料がかかる
M&Aアドバイザーにサポートを依頼した場合は手数料がかかりますが、なかでも成功報酬は決して安いとはいえない金額です。専門的なサポートが受けられるとはいえ、手数料がかかる点はデメリットのひとつです。
想定よりも高額の手数料が生じたといった事態にならないよう、どのくらいの手数料(費用)が必要なのかを初期相談の段階でM&Aアドバイザーに確認しておくとよいでしょう。
4. M&Aアドバイザー業務を行う会社の業態
M&Aアドバイザー業務を行っている業態は、大きく7種類に分けられます。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、買収したい会社と売却したい会社を募集し、それぞれの会社の希望するM&A条件に合うようにM&Aの仲介を行う形態の会社です。このサイトを運営しているM&A総合研究所も、この業態に当てはまります。
主な特徴は、それほど規模の大きくないM&Aを取り扱っていることです。特に中小企業を対象とし相手探しからクロージングまでを一貫で行うことがM&A仲介会社の特徴だといえます。
また、買い手、売り手の双方に対して中立的な立場で交渉を進めM&A成立を目指します。そのため、スムーズにM&Aが成立しやすい点がメリットと言えます。
FA(ファイナンシャルアドバイザー)
FAも、M&A仲介会社と同様にM&Aの業務全般を引き受けられます。M&A仲介会社と異なる点は、買収する会社もしくは売却する会社のどちらか一方と専属契約を締結し、M&Aに関するアドバイスや交渉・契約を行うアドバイザリー形式を採用していることです。
FAの形態では、M&Aアドバイザー同士が各会社の代表として、M&A契約のための交渉やトップ面談の日程調整などを行います。
M&A仲介会社が中小企業を対象とするのに対して、FAは大企業を中心とした比較的規模の大きいM&Aを対象としています。
銀行
銀行でも、M&Aアドバイザー業を行っている機関があります。M&Aアドバイザー業を行う銀行では、通常の資金融資の業務以外にM&Aアドバイザー業に特化した部署を有するでしょう。
メガバンクといわれる大手銀行では、すべての銀行でM&Aアドバイザー業に特化した部署があります。例を挙げると、三井住友フィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループなどです。
地方銀行にもM&Aアドバイザー業に特化した部署を持つ機関もあります。地方銀行では、融資先である中小企業を対象にM&Aアドバイザー業を行っており、M&Aの仲介なども進めている状況です。
外資系の銀行もM&Aアドバイザー業を行っています。代表例としては、ゴールドマン・サックスやJPモルガンなどです。
証券会社
証券会社にも、M&Aアドバイザー業を行っている機関はあります。M&Aアドバイザー業を行う証券会社も、銀行と同様にM&Aアドバイザー業に特化した部署を有しています。代表例は、野村證券、大和証券グループなどです。
証券会社では、株式を用いたM&Aを行える点に強みがあり、上場株式の公開買い付け(TOB)など株式を用いた戦略を立てられます。
コンサルティングファーム
コンサルティングファームは、経営に関するコンサルティングを行う会社です。コンサルティングファームでは、経営に関する相談など、全般を引き受けられます。この理由は、コンサルティングファーム内でも経営戦略系・人事系・法務系などの専門領域に分類されており、必要に応じて該当分野に関する相談を行えるためです。
コンサルティングファームでは、会社のあらゆる分析を行った結果、M&Aの経営戦略を取るパターンが多いでしょう。
会計・税理士事務所
これまで紹介してきた5つの業態では、M&Aに関して総合的に相談を受けています。これに対して、会計・税理士事務所や法律事務所では、M&Aの総合的な相談を引き受けてもらうことは基本的にできないものの、M&Aの中でも得意とする分野の相談を引き受けてもらえます。
会計・税理士事務所では、会社の財務や税務面に特化しているため、M&Aアドバイザー業務の中でも財務や税務関係に強みがあるでしょう。
単独の会計・税理士事務所では、M&Aの相談を断られるケースが多いですが、M&A関連のグループに入っている会計・税理士事務所の場合は、M&A相談を受けてもらえます。
法律事務所
法律事務所は、経営法務・コンプライアンスなどの法律面に特化しています。法律事務所は会計・税理士事務所と同様に、M&Aの総合的なアドバイスを行うよりも法務デューデリジェンスを行うといった法務関連の業務を行う点が強みです。
M&Aの際は、コンサルティング会社と連携をしている事務所、もしくはM&A業務経験のある弁護士が所属している法律事務所を選ぶと良いでしょう。
5. M&Aアドバイザーの手数料と選ぶポイント5つ
M&Aアドバイザー選びでは、その選択が自社に最良なのかという観点だけで判断するのは難しいです。ここからは、M&Aアドバイザーを選ぶポイントに関して紹介します。
手数料体系で選ぶ
まずは手数料体系です。一般的にM&Aアドバイザーは、M&Aに関して最初から統合作業までサポートしてもらう場合、手数料も高くなります。
一方、M&Aで特定分野に特化している業態(法律事務所、会計・税理士事務所など)はM&Aの一部分のみしか仕事ができないため、それらの業態として会社に支払う手数料は低いケースが多いです。主な手数料には、主な4つがあります。
着手金
着手金は、M&Aアドバイザーの業務を依頼する際に支払う手数料です。着手金は50万〜200万円程度が相場といわれています。しかし、M&Aアドバイザーによっては、相場よりも多い高額な手数料を請求するケースや、着手金が無料のケースもあります。
着手金が発生する場合、たとえM&Aが途中で破談となった場合でも返金されません。できるだけM&Aの予算を抑えたい場合は、着手金のないM&Aアドバイザーを選択することが望ましいでしょう。
月額報酬(コンサルタント料)
月額報酬は、M&Aアドバイザーと契約中に毎月支払う手数料です。月額報酬は、毎月定額のケースや業務内容に応じて変動するケースもあります。月額料金は、他の手数料と同様に、M&A進行に対する報酬です。
相場はM&Aの規模によって異なります。スモールM&Aや中規模であれば月30万〜200万円程度、大規模なM&Aは月1,000万〜1,500万円程度などさまざまです。
月額報酬は毎月発生するため、M&Aの手続きが長くなればなるほど支払う手数料の総額は増加します。費用を抑えたい場合や相手先をじっくりと時間をかけて吟味したい場合は、月額報酬の発生しないM&Aアドバイザーを選ぶのが良いでしょう。
中間報酬(基本合意)
中間報酬は、M&Aの手続きが中間点に差し掛かった際の発生する手数料です。一般的に、売り手と買い手が基本合意書を締結した際に支払います。報酬体系に中間報酬が設定する場合、多くは成功報酬の10〜20%程度が相場です。M&Aの成立した際に、成功報酬から差し引く会社もあります。
相場は50万〜200万円程度です。中間報酬は、着手金と同様に請求しないM&Aアドバイザーもありますので、依頼する際は事前に確認しておくのが良いでしょう。
成功報酬(クロージング)
成功報酬とは、M&Aの最終契約が締結された時点で支払う手数料です。成功報酬の金額は、M&Aの金額をもとにレーマン方式によって計算されます。
レーマン方式は、売買金額に一定の料率(1〜5%)を乗じて計算された金額が相場です。成功報酬は、M&Aが成立した場合に支払う費用です。
業態で選ぶ
M&Aアドバイザー業務を行っている会社の中でも、業態によって得意としている分野のM&Aは異なります。
FAの場合は、主に大会社のM&Aや大規模のM&Aが得意です。一方で、M&A仲介会社は中小企業同士のM&Aや規模の小さいM&Aに多くの実績を持っています。中小企業でM&Aを考えている経営者の方はM&A仲介会社に相談しましょう。
得意とする業種・事業規模で選ぶ
M&Aアドバイザーによって得意とする業種や事業規模が異なってくることも少なくありません。介護業界特化のM&Aアドバイザーや中小企業を得意としているM&Aアドバイザーなどがあります。
得意とするM&Aアドバイザーに相談することで豊富な経験やノウハウ、ネットワークを活用してもらうことができるでしょう。満足のいくM&Aにするためにも自社の業種や事業規模に合ったM&Aアドバイザーに相談しましょう。
実績で選ぶ
実績を積んでいる会社ほど、M&Aにおける成功の信頼度は高まります。信頼度が高いと、その会社への仕事の依頼数が増加するため、報酬単価は高くなります。
しかし、M&Aに失敗したときの損失に比べると安いといえるでしょう。報酬単価のことはそれほど気にせず、積極的に実績のあるM&Aアドバイザーに依頼することをおすすめします。
誠実さで選ぶ
M&Aアドバイザーのなかには、自社の利益を優先する専門家も少なからず存在し、依頼主にとって不利な条件であっても強引に契約成立を目指されてしまうおそれがあります。
たとえ実績やスキルの面で優れていたとしても、こうした対応をするM&Aアドバイザーに依頼すると不信感が募ります。依頼主の利益を優先する誠実なM&Aアドバイザーを選びましょう。
M&Aアドバイザーの第一印象や人柄だけでなく、M&Aを仲介する会社の風土によっても対応は異なることから、優良なM&Aアドバイザーを見極めるためには、最初の相談段階で十分に話し合わなければなりません。
6. M&Aアドバイザー活用時の注意点
情報漏洩
M&Aでは、自社の技術やノウハウなどの情報を相手先へ提供する必要があります。しかし、思わぬところで社外秘情報が漏洩してしまい売却価値を下げてしまったり、従業員へ知られてしまい組織が崩壊してしまうリスクがあります。
そのため情報を提供する際は秘密保持契約を締結しすることと、秘密保持契約の内容を確認することが大切です。
費用対効果
M&Aアドバイザーを活用の際には費用対効果を検討することも大切です。買い手、売り手どちらも着手金や手数料などが必要です。特に成功報酬に関しては売却価格が高額になる程支払い金額も大きくなります。依頼する前に複数の会社と比較し検討する必要があります。
7. M&Aアドバイザーとその他の違い
M&Aアドバイザーとその他の違いをそれぞれ紹介します。
M&AアドバイザーとM&Aアドバイザリーの違い
M&Aアドバイザーは「M&Aのアドバイスや交渉などをサポートを行う専門家(人)」であるのに対し、M&Aアドバイザリーは「M&A成立に向けたアドバイスやサポートを行う業態(業務)」です。
同じようにも見える言葉なので混同している方もいるかもしれませんが、両者には人と業務という違いがあります。
M&AアドバイザーとM&A仲介会社の違い
M&Aアドバイザーが行う支援業務には「アドバイザリー形式」と「仲介形式」2つの業態があり、仲介形式をとっているのがM&A仲介会社です。
アドバイザリー形式は譲渡側企業と譲受側企業のどちらかとだけ契約し、サポートを行う企業の利益が最大になるよう交渉を進めていきます。1社のみと契約するため、当然のことながら報酬も契約を交わした企業から得るかたちです。
一方、仲介形式は双方の企業と交わし、報酬を両社から得るかたちです。それに対して、M&A仲介会社が譲渡側企業と譲受側企業の間に入り、中立的な立場から交渉を進めてM&A成立を目指します。
M&Aにおける仲介形式とアドバイザリー形式の違いはサポートを行う立ち位置(立場)にあり、仲介形式では譲渡側企業と譲受側企業とが折り合える条件を探しながら交渉を取りまとめていきます。
M&A仲介会社はM&Aアドバイザーの業態の一つであり、M&Aアドバイザーの一部がM&A仲介会社で働いているという認識をしていただければ良いです。
M&Aアドバイザーと経営コンサルティングとの違い
M&Aを検討している経営者の相談先としては、M&Aアドバイザーのほかに、経営コンサルティングからM&Aのアドバイスを受ける方法もあります。
M&アドバイザーと比べると、経営コンサルティングは経営への助言を行うケースが多いため、必ずしもM&Aの情報や知識を網羅しているわけではありません。したがって、自社が求めているアドバイスや情報が得られない場合もあります。
経営コンサルティングは、経営に関する全般的なアドバイスとしてM&Aの検討に至るまでのサポートも業務範囲ではあります。しかし、実際にM&Aを実施する際は、M&A業務に特化したM&Aアドバイザーのサポートを受ける方が望ましいでしょう。
8. M&Aアドバイザーに求められるスキル4つ
ここではM&Aアドバイザーに求められるスキルを紹介します。
広範囲の知識・実務の経験
M&Aアドバイザーは、M&A取引を遂行するうえで、会計・法務・税務・ファイナンス・M&Aに関する専門知識が求められます。
専門的な業務は、外部の専門機関に依頼することも可能です。しかし、顧客から得た情報や相談に対して、役立つ情報を抽出しアドバイスする必要があります。
そのほか、迅速で正しい判断ができないと、顧客の利益を害する可能性もあります。そのような事態を回避するためにも、M&Aアドバイザーには、以下のような幅広い専門知識や豊富な実務経験があるとよいでしょう。
- 証券会社での投資銀行部門の業務
- 経営企画部門での業務
- 総合商社でのPMI実行支援
- 金融機関の財務部門での業務
- 海外の買収先企業への協業経験
- コンサルティングファームでの協業経験
事業に対する理解能力
M&Aアドバイザーには、顧客の属する業界・事業に対する理解能力が求められます。顧客の財務諸表から収益性や安全性、成長性も含め、最適なM&Aの相手を選定する際は、専門知識だけでなく買収対象となる業界や事業に関する知識も必要不可欠です。
案件をハンドリングする能力
M&Aでは、売り手と買い手だけでなく、従業員・取引先・金融機関・専門機関など、さまざまな利害関係者が存在します。想定外のトラブルが発生するケースも多いでしょう。
M&Aアドバイザーは、そのような事態でも最適な意思決定を行い、スムーズにM&Aを進められるような案件をハンドリングする能力が必要です。
交渉能力
M&Aでは、売り手と買い手と契約条件の交渉が行われます。取引価格・従業員の雇用問題・取引先との関係・社名など、さまざまな項目で売り手と買い手の希望が真正面から対立しやすく、交渉の成立は一筋縄ではいきません。
単に自社の希望を伝えるだけでは、お互いの希望が対立し平行線となり、決裂してしまうおそれもあります。したがって、M&Aアドバイザーには、双方の条件に折り合いをつける交渉能力が求められるでしょう。
9. M&Aアドバイザーに関する資格
M&Aアドバイザーの業務を行う場合、資格や許認可などは特に必要はありません。したがって、M&Aアドバイザーは、誰でも実施可能な業務だといえます。
しかし、実際に業務を行っているM&Aアドバイザーは、経営実務・経営戦略・法務・会計・税務などの専門知識が必要です。ここでは、M&Aアドバイザーの業務に関連した資格を紹介します。
JMAA認定M&Aアドバイザー
JMAA認定M&Aアドバイザーは、一般財団法人日本M&Aアドバイザー協会が定めている資格です。定められた要件を満たしたうえで同機関が開催する養成講座を受講し、同協会の正会員に入会すると資格が取得できます。顧客の安心・信用につながるよう、一定の知識・スキル、そして堅実に職務を遂行するM&Aアドバイザーであることを証明する資格です。
オンラインで講座を受講し資格を取得できるため、M&Aアドバイザーの資格を手軽に取得したい人におすすめできます。会員同士のコミュニティがあるため、実務に役立つ人脈づくりを行える点もメリットです。
M&Aエキスパート認定制度
M&Aエキスパート認定制度は、中小企業の事業承継・ビジネスマッチングを支援する人材を養成する資格試験制度です。事業承継・M&Aエキスパート協会が運営しています。
M&Aアドバイザーとして、中小企業のM&Aや事業承継をメインにサポートを行いたい方におすすめの資格です。資格試験は、「事業承継・M&Aエキスパート」、「事業承継シニアエキスパート」「M&Aシニアエキスパート」の3種類があります。
1つ目の「事業承継・M&Aエキスパート」を取得すると、他の2種類の上級資格の取得を目指せる仕組みに特徴があります。
士業系資格
M&A専門に特化した資格ではありませんが、士業系の弁護士・公認会計士。税理士などの国家資格所持者は、M&Aアドバイザー業務でも必要不可欠な存在です。
各分野の士業系資格を取得した場合、豊富な知識を駆使し、クオリティの高いサポートを提供でき、専門性の高さを顧客に証明するのが可能です。
難易度は非常に高いとされていますが、実務能力の高いM&Aアドバイザーとして活躍できます。
10. M&Aアドバイザーのまとめ
この記事では、M&Aアドバイザーの概要やアドバイザーを選ぶポイントを紹介しました。M&Aのサポート先を決める際は、自社が行おうとしている業界のM&Aの実績を持っているか、信頼できるM&Aアドバイザーかなどを検討して依頼する会社を選ぶことがポイントです。
M&Aアドバイザー選びに迷うことがあれば、この記事で紹介したポイントをご参考ください。
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