独自性から共創へ
モズーが語る、M&Aに込めた決断と展望
■インタビュー
譲渡企業:株式会社モズー 代表取締役 竹原 真治 氏
CGアニメやゲーム制作の現場で約20年にわたり独自の存在感を放ってきた株式会社モズー。
“モーションキャプチャースタジオを核にした表現力のある制作”という強みを武器に、業界での信頼を築いてきた同社が、さらなる可能性を求めて選んだのは、ゲームの開発やローカライズを行っているW社とのM&Aだった。
その背景と今後のビジョンについて、竹原代表に話を聞いた。
20年、変わらぬ信念と磨き上げた技術

モズーは“スタジオからコンテンツを生み出す”というコンセプトのもと、広さと機能性を備えたモーションキャプチャースタジオを立ち上げた。
加えて、CG制作やワンストップの対応力も高く評価されてきた。
「スタジオが単なる制作空間ではなく、“人が集まる場所”であることを意識し、ホスピタリティや環境面にもこだわってきました」。
“いいものを継続して作り続ける”というスタンスが、モズーのスタイルだ。
閉鎖したスタジオと変わりゆく環境
変化の兆しが現れたのは、コロナ禍を機にスタジオを閉鎖した頃からだった。
「コスト面では軽減されましたが、スタジオという独自性が薄れてしまった。業界も少しずつ低迷し、他社と横並びになってしまう感覚があったんです」。
さらに、自身の年齢が58歳を迎える中で、次のステップを模索する思いが強くなった。
迷いなく進んだM&Aへの道
「実はコロナ前から、M&Aを検討し始めていました」。
モズーに届いた話に対し、竹原代表は迷うことなく返事。すでに意思は固まっていた。
「今回のM&Aで一番大切にしたのは、“シナジーがあるか”という点でした。そして、”業界においての将来性”と、”従業員の雇用条件が守られること”、この3つは譲れなかったですね」。
決め手は「ブランドを残す」姿勢
W社への譲渡を決めた理由には、いくつもの要素があった。
「モズー事業部としてブランドを維持してくれる点が大きかった。加えて、W社には海外籍の社員が多く、海外案件との接点やパイプをつくれる可能性も感じました」。
W社の親会社とのつながりや株価条件も含め、「総合的に判断して、すべての希望条件を満たしていた」と竹原代表は語る。
“継続”から“拡張”へ、期待する未来
今後の展望については、「何かを大きく変えるというより、“いい形で継続していける”ことが何よりも大切」と語る。
「そのうえで、W社とのシナジーを通じて、新しい価値を生み出せることを期待しています。エンタメを通じて、社会に貢献できる形があれば嬉しいですね」。
M&Aを検討している経営者様へ
「実は、M&Aを“少しは考えている”経営者様って多いと思うんです。でも、どの仲介会社を選べばいいのかわからなかったり、そもそもスタートの切り方が分からなかったりする」。
竹原代表が重視していたのは、“自分から能動的に動くこと”。
「迷っているならまず会ってみる。動かないと何も変わらない。人の意見はもちろん大切ですが、最後に決めるのは自分。とはいえ、相談できる相手がいることはとても重要です」。
信頼できるパートナーと歩むプロセス
M&Aアドバイザーの木村は、成約までのやりとりで企業理解や対応のバランスを大切にしてくれたという。
「一度話が白紙に戻ったときも、無理に引き止めるのではなく、こちらの意思を尊重してくれた。それが結果的に再度前に進むきっかけになりました」。

“変わらないために、変わる決断を”──
ブランドと信頼を守りながら、
新たなステージへの大きな一歩となった。
担当者からのコメント
業界内で高い技術力と安定した実績を持つ3DCG制作会社様が、今後の事業拡大と企業価値向上を見据え、M&Aという選択肢を選ばれました。コロナ禍を経た映像制作業界には依然として厳しい側面が残る中、後継者不在という課題と向き合いながらも、さらなる成長を目指す前向きなご判断でした。譲受企業様とは早い段階で方向性が一致し、互いの強みを活かす理想的なご縁となりました。このような素晴らしいご縁に関われたことを嬉しく思うとともに、両社の更なるご発展を心よりお祈り申し上げます。
(企業情報第一本部第三部 次長 木村 秀平)
