譲渡企業
有限会社ナイス
代表取締役 水谷 英俊 様 インタビュー
デジタル転換期に先駆けて創業
ーまず、御社の創業の経緯について教えてください。
創業は2005年9月です。当時はちょうど写真分野がフィルムからデジタルへと変わる転換期でした。その流れに乗る形で、披露宴の最後に流すエンドロールムービーやペーパーアイテムといったものを先駆けて導入し、需要が高まったため独立して事業を立ち上げました。元々結婚式場でスタッフとして働いていた経験も活かしています。
写真ではなくデザインとして捉える撮影スタイル
―御社の事業内容と強みについて教えてください。
事業内容は、結婚式場と提携し、式当日の撮影をメインとしたブライダルフォト、そしてエンドロールムービーなどの制作です。強みは、当時のスタジオ写真が主流だった時代に「はい、笑って」と撮るのではなく、自然な笑顔を引き出す密接な距離感で撮影していたことです。徳島県独自の文化も捉え、写真というよりデザインの一環としてフレーミングを工夫していた点が、新ジャンルとして浸透した要因だと考えます。
広告を出さずに取引先限定のサービスを展開
―どのように事業を展開・拡大されてきたのでしょうか。
やっていたことは斬新でしたが、ビジネスモデル自体は奇抜ではありません。自分たちで直接お客さんを呼び込むことはせず、取引先限定のサービスを提供することで事業を拡大してきました。複数のオーガナイザーと組み、フォトグラフだけでなくファッションなどとも連携を図り、広告を一度も出すことなく展開してきたのが特徴です。
時代の変化と新しい集客方法への対応に限界

―譲渡をお考えになったきっかけや背景を教えてください。
以前は現場での技術職として良い仕事をすれば、それがフィードバックされて仕事につながるサイクルでした。しかし、今はSNS活用やフォロワー数など、集客の形が大きく変わっています。また、撮影ニーズも「より自然に」「盛らない」傾向に変わり、我々が理想とする「ハッピーで愛のある写真」との乖離を感じ、このビジネスモデルでは限界があると痛感し、M&Aを検討し始めました。
異業種で基盤が安定した企業への譲渡を希望
―検討を進められる上で、希望や大事にされた条件を教えてください。
まず、決して拡大していくマーケットではないと判断したため、同業系は避けたいと考えました。お互いがしがみつくだけでは意味がないと思ったからです。大事にしたのは、異業種とのマッチアップであること、そして従業員の将来性のためにも、基盤がしっかりしていて安定した会社であること、その安定した環境の中で彼らが様々なチャレンジができることでした。
広告代理事業とのシナジーに将来性を感じた
―最終的にG社様への譲渡をご決断されましたが、印象や決め手を教えてください。
G社様のグループ会社が金融業で、基盤が安定している点に魅力を感じました。また、ブライダル事業の拡大を求めているのではなく、弊社のカメラマンの技術を広告やイベントといった集客の部分で活用したいというお考えでした。これは社員の得意分野を活かせると考え、ブライダルというマーケットに囚われずに伸ばせるシナジーに将来性を感じたのが決め手です。
安心感を土台に更なるクオリティの向上を目指す
―今回のM&Aで期待することや今後のビジョンを教えてください。
G社様は、既存社員を刺激しすぎないよう、ゆっくりと着実に事業を拡大していく方針と伺っています。この安心感の土台の上で、社員にはブライダルのクオリティをさらに高め、実力を伸ばしてほしいと期待しています。ブライダルの成功を通じてファンを増やすことが、G社様にとっても必ず良い結果につながると信じ、良いマッチングとなるよう努力を惜しまないつもりです。
経営状況に囚われず前向きに検討を
―M&Aをご検討されている経営者様へメッセージをお願いします。
時代は驚くほど速い周期で変わっていきます。経営が危ないとかではなくても、既存の社員やサービスがもっと良いものになるチャンスがあるのなら、M&Aの窓口を広げて前向きに検討すべきだと思います。個人的には、完全に100対0となるM&Aではなく、もっとパートナーシップ契約に近い、対等な立場でシナジーを生み出す形が世の中に浸透すれば、より素晴らしいサービスが生まれると考えています。
譲受企業
広告代理店事業 G社
代表取締役 E.Y.様 インタビュー
創業10年、コンサルグループ参画を経て加速する保険広告事業
―まず、御社についてご紹介いただけますでしょうか。
保険関連の広告代理店として10年前に創業しました。数年前からは、生命保険・損害保険の代理店販売のコンサルティング会社のグループへ参画し、強固な資金基盤を背景に、従来の枠組みを超えた新たな保険広告の道を切り拓き、事業展開を続けています。
利益を追求した投資回収が可能な安定基盤
―御社の強みについて教えてください。
当社の強みは、安定した金融事業を基盤としている会社のグループである点です。また、従来の店舗集客だけでなく広告事業を展開し、多様な販売チャネルを強化している点も強みです。
新規顧客を呼ぶイベント手段の確保
―M&Aを検討されたきっかけを教えてください。
コロナ禍にグループ会社が来店型保険ビジネスの厳しさを痛感し、店舗に依存しない集客チャネルの開拓を検討していました。その中で、お客様を呼び込む集客手段の一つとして、カメラマンを使ったキッズ撮影会などのイベント開催に注目しました。既存の事業とのコラボレーションが可能だと考え、撮影事業を行う会社を探し始めたことがM&A検討のきっかけです。

事業の損益と広告代理事業との相性を重視
―最終的に有限会社ナイス様を譲り受けされた理由を教えてください。
譲り受けを決めた理由はシンプルで、事業の損益の部分で投資回収が可能だと判断したからです。また、有限会社ナイス様の撮影技術や人材を、当社の広告代理事業やイベント集客に活かすことで、新しいシナジーを生み出せると確信しました。
既存事業の安定化と閑散期の協業体制構築
―今回のM&Aで期待することや今後のビジョンを教えてください。
まずは本件の引き継ぎを完了させ、安定化を図ることです。その上で、事業自体の拡大も目指したいと考えています。ブライダル事業には繁忙期と閑散期があるため、閑散期には当社の広告事業と連携し、セミナー開催などの業務を依頼することで、隙間を埋める協業体制を構築し、収益の平準化を図ることを期待しています。
安定後にM&Aを継続活用していく方針
―今後、事業展開の一つとしてM&Aを活用されることはありますか。
これまでもM&Aは複数件経験しています。今回は事業譲渡という形でしたが、当社の事業を拡大していく上で、M&Aは有効な手段だと考えていますが、まずは本件が安定し、軌道に乗った段階で、新たなM&Aの検討を再開したいと考えています。
利益が出ているかを重視し冷静な判断を
―M&Aをご検討されている経営者様にメッセージをお願いいたします。
M&Aを検討する上で最も重要なのは、その会社が「ちゃんと利益を上げている会社かどうか」という点です。利益が出ているか、そしてそれを含めて投資回収が可能かどうかを冷静に見極めることが中心になります。特に異業種の場合は、決算書通りに本当に事業が推移するかどうかは不確定な部分があるため、慎重な見極めが必要だと考えます。
最後に、M&A総合研究所に任せた理由をお聞かせください
譲渡企業回答:最初は同業種で探していましたが、担当アドバイザーの鯉沼さんが異業種であるG社様を粘り強く勧めてくれたことが、異業種マッチングを考えるきっかけになりました。初回の面談で辛口なことも言いましたが、それでもこの話が生きていることに可能性を感じ、鯉沼さんの粘り強いサポートがあったからこそ成約まで至ったと思います。
譲受企業回答:スピード感と、適切な企業を連れてきてくれたマッチング力を評価しています。水谷様の新しいことへのチャレンジ意欲や時代の変化への危機感など、譲渡の背景を詳しく聞けたことで、安心して事業譲受を進めることができました。
時代の変化と共に新たな集客方法や事業の形を模索していた有限会社ナイスと、グループ会社の保険事業を支える集客力の強化を戦略的に求めていたG社。一見すると対照的な二社の出会いは、お互いの強みとニーズが完璧に合致した理想的な異業種間M&Aとなりました。水谷代表の社員の将来と事業継続への責任感、そしてG社代表の安定した基盤とシナジーへの戦略的な視点が見事に融合した結果と言えます。今回のM&Aを通じて、有限会社ナイスの持つ高い撮影技術が、ブライダルという枠を超えて広告・イベント分野で活躍の場を広げ、両社のさらなる発展への期待が高まります。
担当者からのコメント
オーナー様はブライダルフォト事業の先行き、従業員様のこれからという2つの未来を真剣に考えておられました。一方で譲受企業様は、既存の保険事業・広告代理事業を更に伸ばしていくにはどうすべきかという視点から本件を検討されていました。単純に事業内容だけを見ると、一緒になることのイメージが湧きづらい異業種マッチングですが、写真業と保険業には結婚や子供の誕生といった「人生の節目・ライフステージの変化」に寄り添い、「世代を跨いで」お客様とお付き合いするという共通点があります。今回のご成約により、両社が益々発展していくことを楽しみにしております。
(企業情報本部 部長 鯉沼 佑)
