譲受企業
中央税務会計事務所
所長 中島 由雅様 インタビュー
まずは御社についてご紹介いただきたいと思います。

1.御社の創業の経緯、事業内容と強みを教えてください。
私の父が1979年(昭和54年)に税理士事務所を創業し、今年で45年目を迎えます。現在、職員数は105名で、そのうち税務署のOBが10名ほど在籍しています。当事務所の強みは、納税者や事業者の視点に立ち、申告・納税、税務調査対応などを行える点です。また、税務や経営に関する悩みを気軽に相談できることも特徴の一つです。さらに、業歴の長さに裏付けられた職員の豊富な経験があり、在職年数の長い職員も多く在籍しています。20代から80代まで幅広い年齢層が活躍しており、中小企業経営者の多様な課題に柔軟に対応できる点が大きな強みです。
M&Aを検討されたきっかけ
2.M&Aを検討されたきっかけを教えてください。
税理士業界は平均年齢が60代半ばと高齢化が進んでいます。そのため、税理士・会計事務所を取り巻く環境では、後継者問題、高齢化、デジタル化、そして複雑化する税制などに対応しきれずリタイアを選ぶケースが増えています。当事務所も過去に、そのような理由でいくつかの事務所を引き継いだ経験があります。今後も、従業員やクライアントをしっかりと引き継ぎつつ事業を拡大していきたいという思いから、M&Aの活用を積極的に検討しています。
税理士法人A様との出会い
3.税理士法人A様の印象や譲り受けを決められた理由を教えてください。
最初に担当アドバイザーの平田様からご紹介いただいたのは、2023年11月頃でした。しかし、所長のご体調が悪化し、数ヶ月間ほど話が進まない期間がありました。過去にも同様に直前で破談になったケースがあったため、今回もその覚悟をしていましたが、その後税理士法人Aの所長ご本人が不在のままM&Aの面談を行うこととなり、非常に緊張したのを覚えています。また、従業員の方々からの強い想いや熱意を直接聞けた場面が非常に印象的でした。私事ではありますが、父が平成29年に急逝し、困難を乗り越えた経験があります。同じような状況に置かれた事務所を支えられるのは当事務所しかないという強い思いから、譲り受けを決断しました。
今後への思い
4.今回のM&Aで期待することや今後のビジョンを教えてください。
今回のM&Aでは、予想外の出来事が多くありました。しかし、その一つひとつが貴重な経験であり、財産だと考えています。過程の中で失敗やトラブルが発生することもあるでしょうが、それ自体が学びの機会だと思っています。M&Aは希望しても必ず成立するわけではなく、失敗に終わることもありますが、重要なのは挑戦することだと考えます。これから「大M&A時代」が到来すると思いますので、そのときに今回の経験が必ず役立つと信じています。今後もM&Aを積極的に進め、さらなる成長を目指していきたいと考えています。
ー従業員の皆様とはどのようなコミュニケーションを取られていますか。
緊張感のある中で、いきなり当事務所の従業員と融合させるのではなく、一定の距離を保ちながら徐々に交流を深めていくようにしました。一方で、そのままでは孤立を招く恐れもあるため、緩やかにコミュニケーションの場を設け、両者が歩み寄れるよう工夫しました。
M&Aでは、成約するまでお互いに不明な部分が多いため、従業員に疑念が生じることもあります。そのため、じっくりと対話を重ねることが重要だと感じています。当事務所の従業員も受け入れる側として丁寧な配慮を忘れず進めることで、円滑な統合が実現したと思います。
5.今後、事業展開の1つとしてM&Aを活用されることは視野に入れていますか。その際の方針も併せて教えてください。
今後もM&Aを積極的に検討していきたいと考えています。異なる文化を持つ事業所を統合することで、当事務所にはない資源を活用し、新たなシナジーを生み出す可能性があります。もちろん、通常の事業努力や営業活動で成長を目指すことも重要ですが、M&Aによってシナジーを生み、新しい機会を得る点で非常に有効だと思います。

ー税理士法人以外の譲り受けもご検討されていますか。
同業はもちろん、同業に関連する士業分野も視野に入れています。また、不動産業、教育関連、IT関連など、中小企業の経営者様を支援できる分野であれば、M&Aを検討したいと考えています。当事務所に不足している顧客基盤や知識、経験を補完し、新たなシナジーを生み出せるのであれば、前向きに検討していきたいと思っています。
M&Aを考えていらっしゃる経営者様にアドバイスをお願いいたします。
6.M&Aを考えていらっしゃる経営者様にアドバイスをお願いいたします。
ー譲渡企業様へ向けて
譲れないポイントや大切にしている部分を明確にし、優先順位をつけることが重要です。また、主張しすぎるのは避けた方が良い場合もありますが、必要な点については後々のトラブルを防ぐためにも遠慮せずに確認することが大切です。M&Aでは予測不能な事態が起こることも少なくありません。そのため、両社のトップ同士が頻繁に連携をとり、顧客や従業員の信頼を築くことが重要です。特に、顧客や従業員のために、経営者として気力や体力、熱意のあるうちにM&Aを進めることが最善だと考えます。
ー譲受企業様へ向けて
M&Aの条件をしっかり整えることも重要ですが、譲渡側の企業や従業員が抱える不安に寄り添い、温かく受け止める姿勢が何よりも大切だと思います。
最後に、M&A総合研究所についてお聞かせください。
7.弊社のアドバイザーのサポートはいかがでしたでしょうか。
予想外のことが多くありましたが、担当アドバイザーの平田さんがそばでサポートしてくださり、大変助けられました。今回のM&Aが無事に成約に至ったのは、平田さんの支えがあったからこそだと感じています。両社が感情的になる場面も多々ありましたが、平田さんが常に穏やかで安心感を与えてくれたので、非常に頼りにしていました。
担当者からのコメント
本件の売主様は、ご高齢で後継者が不在であり、さらにご自身の体調にも不安を抱えていらっしゃいました。ディール進行中に、体調を崩されるという危機的な状況に陥りましたが、最終的に6社の候補企業様がトップ面談を希望され無事に事業承継を実現しました。
後継者不在という課題に直面する中小企業にとって、迅速かつ柔軟な対応が重要であることを改めて学ぶ貴重な経験となり、この経験を通じて、後継者問題に悩む経営者の皆様をお支えしたいという思いを、さらに強く抱くようになりました。
(会計提携第一部 次長 平田 和正)
