成約インタビューM&A事例

内装工事業のM&A事例【東京都】

500年の歴史と新たな技術の融合

  • 譲渡企業

    株式会社KYOUKARA

    代表取締役

    清水 陽介 様

    業種
    内装工事業
    地域
    東京都
    売上
    約2億円
    社長の年齢
    48歳
    譲渡理由
    後継者不在と企業成長
  • 譲受企業

    武蔵商事株式会社

    業種
    不動産業
    地域
    東京都
    売上
    18億円(グループ売上35億)
    上場有無
    未上場
    譲受目的
    垂直事業の内製化及び事業の拡大

賃貸物件の原状回復工事を手掛ける株式会社KYOUKARA(東京都武蔵村山市)が、室町時代から続く老舗企業・武蔵商事株式会社(東京都杉並区)に譲渡を決断された。50歳を前に従業員と事業の未来を真剣に考えた譲渡企業の代表取締役清水陽介氏と、長年のニーズだった原状回復工事の内製化を実現したい譲受企業の執行役員伊藤貴志氏。それぞれの想いと決断の背景を伺った。

【譲渡企業】株式会社KYOUKARA
本社:東京都
事業内容:賃貸物件の原状回復工事を手掛ける「原状回復KYOUKARA」の運営

【譲受企業】武蔵商事株式会社
本社:東京都
事業内容:ビルやマンションなどの不動産開発や賃貸業

譲渡企業
株式会社KYOUKARA
代表取締役 清水 陽介氏インタビュー

現場で身につけた技術を武器に独立

―まず、御社の創業の経緯について教えてください。

「もともとは建築現場から産業廃棄物を回収する仕事をしていました。毎月廃材を取りに行っていた会社が原状回復工事を手掛けており、その社長に声をかけていただいたのがきっかけで、運転手の仕事を辞めてその会社に就職しました。そこで工事の技術を習得し、独立を決意しました。」

―御社の事業内容と強みについて教えてください。

「当社の強みは、大手不動産管理会社と提携し、内装から清掃までワンストップで受注できることです。お客様が複数の業者に依頼する手間を省くことで、多くの案件を獲得してきました。また、勤続年数が長いベテランスタッフが多く、幅広い工事に対応できることも強みです。」

同社の特徴は、単なる下請けとしてではなく、パートナーとして元請け企業の負担軽減に貢献していること。長年培った信頼関係が、安定した受注につながっている。

技術力向上で事業拡大

―どのように事業を展開・拡大されてきたのでしょうか。

「当初は清掃業務からスタートしました。お客様からのご要望に合わせて大小さまざまな工事を請け負ううちに、社員一人ひとりが着実に技術を向上させていきました。

営業面では、特定の大型顧客に依存してしまうとリスクが大きいと考え、複数の顧客開拓に力を入れました。その結果、安定した事業基盤を築くことができ、着実に事業を拡大することができました。」

一つの分野から始めて段階的に技術を高めていく戦略により、着実に事業領域を広げてきた清水氏。リスク分散のため複数の顧客との関係構築にも注力したことが、安定した経営基盤づくりにつながった。

50歳を前にした将来への責任感

―譲渡をお考えになったきっかけや背景を教えてください。

「法人化してちょうど10年という節目を迎え、従業員の将来や、私自身の年齢(50歳近く)を考えたとき、会社のさらなる発展と持続性を日々考えていました。ちょうど事業が順調で、時間的な余裕もできた時期でしたので、できることは早めに手をつけておこうと思い、M&Aの準備を進めることにしました。」

清水氏の決断の背景には、単なる事業拡大への願望ではなく、家族や従業員への責任感があった。50歳という人生の節目を前にして、長期的な視点で会社の未来を考えた結果だった。

経営の安心と社員の未来を守る体制づくり

―検討を進められる上で、希望や大事にされた条件を教えてください。

「最も重視したのは、会社の発展と事業の継続、そして従業員の雇用維持の3点です。また、M&Aに関するニュースで企業買収後のトラブルなども耳にしていたので、経営者としての個人保証を外してもらえることも、非常に重要な条件でした。」

経営者としての責任を次の体制に無理なく引き継ぐこと、そして従業員の雇用を守ることは、企業の未来を見据えた判断として極めて重要な要素だった。

―現在の状況はいかがですか?

「現状、武蔵商事さんが非常に丁寧にご対応くださっていて、順調に進んでいます。従業員に対しても真摯に向き合ってくださっているのが伝わり、安心してお任せできています。」

安心感が決め手となった武蔵商事との出会い

―最終的に武蔵商事様への譲渡をご決断されましたが、印象や決め手を教えてください。

武蔵商事さんが持つ建物関連の事業内容や、企業の安定性は、私が当初から理想としていた会社像とぴったり合致すると直感しました。トップ面談の際、宇田川専務から直接、経営者保証について言及していただいたことや、私自身が譲渡後も代表取締役として事業や従業員に関わり続けられるというお話に、とても安心しました。」

「また、武蔵商事さんの従業員の方々も勤続年数が長く、社員を大切にされている会社だと面談で感じたことも大きかったですね
会長、宇田川さん、滝沢さん、伊藤さんといったトップの方々が、終始とても和やかな雰囲気を作ってくださったので、当初抱えていた従業員や会社、そして自分自身の将来に対する不安や緊張が和らぎ、”この方たちになら安心して任せられる”と確信しました。」

清水氏の決断を後押ししたのは、譲渡企業の立場や不安を理解してくれる武蔵商事の姿勢に、信頼を感じることができたからだという。

社会的信用度向上と技術力の発展

―今回のM&Aで期待することや今後のビジョンを教えてください。

「今回のM&Aを通じて、企業の社会的信用度をさらに高め、従業員が安心して働ける環境を築きたいと考えています。当社の強みである施工技術と、武蔵商事さんが持つ豊富な管理物件を組み合わせることで、双方にシナジー効果を生み出し、共存共栄していきたいです。従業員の雇用を維持しつつ、スキルアップを促し、グループ全体の売上増加に貢献していきたいと考えています。」

M&Aを検討されている経営者様へメッセージ

―譲渡を検討されている経営者様へアドバイスをお願いします。

「事業には成長期、停滞期、そして出口戦略を考える時期が必ず訪れます。創業者として、会社の存続と発展のために、日頃から戦略を練っておくことが重要だと思います。

今回、さまざまなご縁があり、とても良い結果を迎えることができました。これからM&Aを検討されている経営者の皆様には、ご自身の会社で働く従業員のために、事業活動と並行してM&Aの準備を進めておくことをお勧めします。特に、事業が好調なうちに検討を始めた方が、より良い提携先が見つかりやすいと感じました。」

清水氏の言葉には、実際にM&Aを経験した経営者ならではの説得力がある。事業が順調なときこそ、将来を見据えた選択肢を検討することの重要性を語った。

譲受企業
武蔵商事株式会社
執行役員 伊藤 貴志氏インタビュー

室町時代から続く地域密着企業

―まず、御社についてご紹介いただけますでしょうか。

「当社は室町後期に創業した会社で、今の当主が17代目になります。1500年頃から続く、もともとは庄屋のような役割を担っていた家系です。現在はビルやマンションなどの不動産開発や賃貸業を運営しています。」

武蔵商事の歴史は、実に500年以上にも及ぶ。現代においても”地域密着”の姿勢を貫き、東京に根ざして長く事業を続けてきた。

―御社の強みについて教えてください。

「荻窪に密着して事業を展開しており、不動産オーナー業として賃料相場のコントロールやアセットの価値向上に力を入れております。また、不動産事業を通じて荻窪の魅力向上を目指しており、地域に根ざした長年の実績が最大の強みだと思います。」

伊藤氏自身は金融出身で、専務の大学時代の部活動での後輩という長い付き合いから同社に参画した。金融での経験を活かし、不動産事業の新たな展開を担っている。

何年も前からの強いニーズ

―M&Aを検討されたきっかけを教えてください。

「実は何年も前から、M&Aのニーズはありました。これまでも紹介はあったのですが、うまくいくところがなかったんです。特に 内装工事の中でも原状回復ができる会社様とご一緒したかったので、今回のKYOUKARAさんは、まさに求めていた会社でした。」

武蔵商事にとって、原状回復工事は長年の課題だった。不動産賃貸業を営む中で、この分野を内製化することは経営効率の向上に直結する重要な要素だった。

―いつ頃から具体的に検討されていたのですか?

「具体的な検討は数年前からですが、原状回復工事の内製化については、もっと以前から必要性を感じていました。外注に頼っている部分を自社でコントロールできれば、スケジュール管理もスピーディーになり、利益率の向上も期待できます。」

決め手となった6つのポイント

―最終的にKYOUKARA様を譲り受けされた理由を教えてください。

「決め手となったポイントが6つありました。①担ってほしい業務のど真ん中だったこと、②社員が若いこと、③十分な従業員数であること、④自前で7〜8割の業務をやっていること、⑤大手管理会社が既存取引先にあること、⑥都内の西側に拠点があることです。」

事業内容の親和性に加え、組織としての安定性や地理的な優位性まで、多角的に評価した結果だった。


―清水社長の印象はいかがでしたか?

M&Aが決まる前から、本当に 誠意のある対応をしてくれていました。社員の方も、清水社長に対してかなり忠誠心を持って働いてくれそうな印象がありました。まじめで実直な方なのですが、当時はかなり緊張されていて(笑)、今の表情の方がなおさら柔らかく見えますね。」

―初回のトップ面談はいかがでしたか?

「清水社長の初回のトップ面談が私との面談だったのですが、締結日の堅さはとびきりでした(笑)。でも、お話しさせていただく中で、『この方と一緒にやっていきたいな』と思ったんです。」

人と人との信頼関係が、M&A成功の重要な要素であることが伝わってくるエピソードだ。

内製化による効率向上とスピードアップ

―今回のM&Aで期待することや今後のビジョンを教えてください。

「最も期待しているのは、これまで外注していた部分の内製化です。スケジュールをコントロールできるようになることで、スピーディーに入居募集を開始できますし、利益率の向上も見込めます」

武蔵商事にとって、原状回復工事の内製化は単なるコスト削減以上の意味を持つ。賃貸物件の回転率向上につながる戦略的な投資と位置づけている。

不動産関連事業の拡充を視野に

―今後、事業展開の一つとしてM&Aを活用されることはありますか?

「不動産に関するM&Aは今後も考えています。ただ、現在は足りていない事業がないので、横に広げていくM&Aも検討対象になります。売り上げを拡大するためのM&Aという位置づけですね。」

―具体的にはどのような業界をお考えでしょうか?

「不動産管理業やビルメンテナンス業を営む会社様とご一緒したいと思っています。不動産管理会社様においては、荻窪はもちろん、中央線沿線にも拡大していきたいと考えています。」

地域密着を強みとする武蔵商事らしく、エリアを軸とした拡大戦略を描いている。

―M&Aをご検討されている経営者様にメッセージ

ー譲受企業様に向けて

仲介の力があってこそだと思います。利益が相反する話になりがちなので、良いアドバイザーとの巡り合わせが本当に大事だと実感しました。

譲渡企業と譲受企業、双方の利益を調整する仲介者の役割の重要性を、実体験を通じて痛感したという伊藤氏。M&A成功の鍵は、信頼できるパートナー選びにあることを強調した。
 

最後に、M&A総合研究所にお任せいただいた理由を教えてください。

【清水氏】「以前からM&Aに関する資料は目にしていたのですが、当初は気にしていませんでした。しかし、仲介会社の実績や内容を調べていくうちに、「まずは話を聞いてみよう」と思うようになったんです。

担当の石田さんは、淡々と仕事を進めるタイプだったので、正直なところ「大丈夫かな?」と思ったのが最初の印象です(笑)。

しかし、約8ヶ月にわたるやり取りの中で、私の個人的な悩みや不安、会社の価値評価、提出書類、そして提携先のイメージまで、本当に細かく相談に乗っていただきました。

結果的に3〜5社の企業様が手を挙げてくださり、M&A総合研究所のマッチング力の高さには本当に驚きました。石田さん、そしてM&A総合研究所さんが仲介してくださったおかげで、このような素晴らしいご縁が生まれたのだと改めて感じています。

【伊藤氏】「熱意をもってやってくれたことが一番大事でした。レスポンスも細やかで、締結まで安心して進めることができました。何度も納得のいく条件になるように進めてくれたんです」


双方が相手を思いやる姿勢を持っていたことが、スムーズな交渉につながった。アドバイザーの細やかなサポートにより、安心してプロセスを進めることができたという。

室町時代から続く老舗企業と、現場で培った確かな技術力を持つ成長企業。 一見対照的な二社の出会いは、お互いの強みを活かし合う理想的なM&Aとなった。清水氏の従業員への想いと事業継続への責任感、そして伊藤氏の長年のニーズと戦略的な視点が見事に合致した結果と言える。譲渡後も清水氏は7年間代表として経営を継続し、8年目以降も武蔵商事から継続の希望をいただいている。500年の歴史に新たな技術力が加わることで、両社の更なる発展への期待が高まる。

担当者からのコメント

石田 瑛平
創業10年を迎えた譲渡企業様は賃貸物件の原状回復工事業を手掛け、高度な技術力を駆使し大手不動産管理会社からも高い信頼を得ておられました。従業員様を何よりも大切にお考えであったオーナー様は、潜在的な後継者不在を抱えており、いずれM&Aが視野に入ってくる企業様でありました。 オーナー様は当初より「従業員を守ってくれて、企業がより成長できるお相手」を希望されており、当件は両社のニーズ・今後の方向性ともにマッチした、弊社の強みを活かしたご支援をさせていただけたかと思います。今後の両社の成長を加速化させる、シナジー効果の高いM&Aであると確信しております。 譲受企業様には初期段階からオーナー様のお考えとお人柄をご理解いただき、ご決断もスピーディーに行っていただけた為、オーナー様へのストレスも最小限に進めることができました。 今後は両社のご活躍により、より一層の荻窪エリアの発展及び更なる価値の提供をされ続けることを心より願っております。今回のご縁をいただけたことに深く感謝するとともに、両社の益々の発展に携わらせていただけたことを心から嬉しく思います。
(企業情報第八本部第一部 次長 石田 瑛平)

成約インタビュー一覧

M&Aアドバイザーのご紹介

M&A成約実績

過去にM&A総合研究所が、
M&A成約に導いた実績の一部をご紹介させていただきます。

※ 本ページには、成約時期に関わらず、過去に弊社がお手伝いさせていただいたお会社様の一部を掲載しております。

成約実績をもっと見る
ご相談はこちら
(秘密厳守)