2025年01月13日更新
居酒屋の事業承継マニュアル!成功・失敗事例と案件一覧・相談先も紹介
居酒屋の事業承継を検討し始めた場合のマニュアルとして、居酒屋の事業承継手続きの流れや、居酒屋の事業承継を成功させるために必要なポイントなどを解説します。居酒屋の事業承継の成功事例や失敗事例、案件一覧も併せてご紹介します。
目次
1. 居酒屋業界における事業承継の現状と課題
はじめに、居酒屋業界における事業承継の現状と課題をお伝えします。
居酒屋業界を取り巻く環境
2023年の国内料飲店市場規模は、2019年比で33%減の3兆5,734億円と推定され、コロナ禍で一時7割減に落ち込んだものの、徐々に回復の兆しを見せています。しかし、大規模な宴会需要の減少や、短時間で利用できるファミリーレストランやファストフード店の人気により、居酒屋などの需要が減少しています。
この傾向は続くと予測され、2030年には2019年比で35%減となる見通しです。
一方、2024年4月の外食売上高は前年同月比6%増で、29カ月連続のプラスを記録しています。宴会需要の回復や訪日外国人客の増加、人の流れの回復が底上げ要因です。また、2024年の桜の開花が遅れたことで宴会需要が4月に集中し、売上増に寄与しました。
居酒屋の事業承継に関する主要な課題
居酒屋の事業承継に関する主要な課題について、5つのトピックに分けて解説します。
経営者の平均年齢と引退年齢の上昇
2021年の休廃業や解散件数は44,377件に上り、2020年や2018年に次ぐ高い水準となりました。この背景には、経営者の高齢化が影響していると考えられます。
特に、休廃業や解散をした企業の代表者の中で最も多かったのは70代で、全体の42.7%を占めています。さらに70代以上の割合は増加しており、2021年には全体の60%を超える状況となっています。高齢化への対策は今後の重要な課題です。
参考:中小企業庁「2022年版 小規模企業白書」
店主の個性や独自サービスの重要性
居酒屋では、創業者である店主の人柄や独自メニューが店の人気を支えているケースが多く見られます。しかし、その個性をそのまま引き継ぐことは難しく、事業承継が進みにくい要因となっています。
後継者不足の深刻化
居酒屋業界全体で人材不足が深刻化しており、働く環境に対するイメージが悪いことも後継者不足の一因です。この課題を解消するためには、業界全体での取り組みが求められます。
酒税法改正の影響
2017年の酒税法改正により、酒類の安売りが規制され、居酒屋でも価格の見直しを余儀なくされました。この影響で、経営環境が厳しくなっている店舗も少なくありません。
現経営者の将来への不安
現経営者が運営や将来に不安を抱えていることが、後継者への事業引き継ぎをためらう要因となっています。事業承継を成功させるには、現経営者の希望を尊重しつつ、後継者がどのように店舗を引き継ぐかを具体的に計画することが必要です。
2. 居酒屋の事業承継の成功・失敗事例11選
ここからは、居酒屋の事業承継の成功事例と失敗事例をご紹介します。
成功事例
まずは、居酒屋の事業承継成功事例をご紹介します。
- SSSによる海帆への事業承継
- シーズライフによるチムニーへの事業承継
- つぼ八によるやまやとチムニーへの事業承継
- 湯佐和によるジー・テイストへの事業承継
- セクションエイトによるJ-STARへの事業承継
- エスエルディーによるDDホールディングスへの事業承継
- アクティブソースによるトリドールHDへの事業承継
- 商業藝術によるダイヤモンドダイニングへの事業承継
①SSSによる海帆への事業承継
海帆は、東京都千代田区に拠点を置くSSSの株式を取得し、子会社化しました。この取引の総額はアドバイザリー費用を含め約6億3千万円です。
海帆は名古屋市に本社を構え、居酒屋を中心とした飲食店の企画開発および運営を行っています。「新時代」「昭和食堂」「えびすや」などのブランドを展開しています。
SSSは、居酒屋事業を展開し、「桂」「すずの邸」「鳥魚門」などのブランドで現在19店舗を運営しています。
海帆は、SSSとの間にオペレーションや原材料の共通点が多く、また従業員の独立を支援する店舗展開なども行っているため、今回のM&Aにより多くのシナジー効果が期待できると判断しました。
②シーズライフによるチムニーへの事業承継
居酒屋の事業承継成功事例1件目は、2019年11月に行われたシーズライフによるチムニーへの事業承継です。
シーズライフは、居酒屋を中心に行っているチムニーが全株式を取得したことにより、子会社となりました。シーズライフは、上質なお肉を低価格で提供する焼肉店を主に手掛けています。
この事業承継は、買い手側のチムニーが、焼肉業態をグループに取り込みさらなる発展を目指している事例です。
③つぼ八によるやまやとチムニーへの事業承継
居酒屋の事業承継成功事例2件目は、つぼ八によるやまやとチムニーへの事業承継です。
総合居酒屋のつぼ八は2018年10月、酒類小売チェーン大手であるやまやと子会社で居酒屋を展開するチムニーの株式取得により、グループ入りしました。
総合居酒屋業態の人気が落ちていく中、つぼ八も業績を落とし続けていました。一方、チムニーは1,000店舗達成を目指していましたが、伸びは鈍化していました。
チムニーの経営資源を利用することで、つぼ八はブランド力向上が期待でき、チムニーは合わせて1,000店舗を早期達成しています。
④湯佐和によるジー・テイストへの事業承継
居酒屋の事業承継成功事例3件目は、湯佐和によるジー・テイストへの事業承継です。
寿司居酒屋などを展開する湯佐和は、2018年9月、全国で外食店舗を展開するジー・テイストへ株式譲渡を行い、子会社となりました。
ジー・テイストは、積極的なM&Aにより業績を伸ばしている会社です。このM&Aにより、ジー・テイストは神奈川県で高いブランド力やノウハウを持つ湯佐和を獲得し、事業基盤を強固にしています。
また、湯佐和もジー・テイストとのシナジー効果により、収益力・ブランド力を向上させています。
⑤セクションエイトによるJ-STARへの事業承継
居酒屋の事業承継成功事例4件目は、セクションエイトによるJ-STARへの事業承継です。
「相席屋」や「The Public Stand」といった、独自コンセプトの居酒屋業態で話題となっているセクションエイトは、2018年1月に投資ファンドのJ-STARが過半数の株式を取得したことにより、子会社となりました。
話題性の一方で、イメージの悪さも伴っていたセクションエイトのビジネスモデルは、J-STARの支援により成長し続けています。
⑥エスエルディーによるDDホールディングスへの事業承継
居酒屋の事業承継成功事例5件目は、エスエルディーによるDDホールディングスへの事業承継です。
ダイヤモンドダイニングの持株会社であるDDホールディングスは、2017年12月に全国で飲食店を展開する関連会社のエスエルディー株式を追加取得し、子会社化しました。
業績が低迷していたエスエルディーは、DDホールディングスの出資を受け、業績を回復させました。
また、DDホールディングスはエスエルディーの立て直しに一定の成果が見られたことから、さらなる業績アップを目指して子会社化しています。
⑦アクティブソースによるトリドールHDへの事業承継
居酒屋の事業承継成功事例6件目は、アクティブソースによるトリドールHDの事業承継です。
立ち飲み居酒屋「晩杯屋」を運営するアクティブソースは、2017年7月、「丸亀製麺」や居酒屋など他業態の飲食店を展開するトリドールHDへ、株式の譲渡を行いグループ入りしました。
当時、主事業の丸亀製麺で苦戦が続いていたトリドールHDは、勢いのある晩杯屋の獲得により収益力を向上させています。
また、アクティブソースはトリドールHDの経営資源を活用することで、スケールメリットを得ることができました。
⑧商業藝術によるダイヤモンドダイニングへの事業承継
居酒屋の事業承継成功事例7件目は、商業藝術によるダイヤモンドダイニングへの事業承継です。
全国主要都市で飲食店を展開する商業藝術は、2017年6月にダイヤモンドダイニングへ株式譲渡を行い、子会社となりました。
ダイヤモンドダイニングは、100店舗100業態を達成するなど、社長のリーダーシップにより独自のブランドを築いている会社です。
今回、ダイヤモンドダイニングは、居酒屋やバーのようなアルコール業態の多いDDグループにノンアルコール業態を展開する商業藝術を加えることで、さらに業態の幅を広げています。
また、商業藝術はDDグループに入ることにより、豊富なノウハウと経営資源を得ることができました。
失敗事例
続いて、居酒屋の事業承継失敗事例をご紹介します。
- シンガポールの飲食店運営企業によるエー・ピーカンパニーへの事業承継
- カッパ・クリエイトHDによるコロワイドへの事業承継
- 三光マーケティングフーズによる「東京チカラめし」の事業売却
①シンガポールの飲食店運営企業によるエー・ピーカンパニーへの事業承継
居酒屋の事業承継失敗事例1件目は、シンガポールの飲食店運営企業によるエー・ピーカンパニーへの事業承継です。
地鶏居酒屋「塚田農場」などを運営するエー・ピーカンパニーは、2015年11月にシンガポールの飲食店運営企業から飲食店3店舗を事業譲受しました。
エー・ピーカンパニーは、M&Aによって海外でも飲食店を展開していますが、その多くは失敗に終わっています。
2018年には、海外事業で赤字を出したことから、シンガポールの飲食店などを閉店しました。
②カッパ・クリエイトHDによるコロワイドへの事業承継
居酒屋の事業承継失敗事例2件目は、カッパ・クリエイトHDによるコロワイドへの事業承継です。
「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトHDは、2014年10月、外食大手のコロワイドによるTOBと第三者割当増資引受で子会社となりました。
しかし、かっぱ寿司の業績は上向くことがなく、業績の悪化はコロワイドの業績にも大きく影響を与えています。
M&Aによって成長してきたコロワイドですが、グループ全体の体制見直しが急務となっています。
③三光マーケティングフーズによる「東京チカラめし」の事業売却
居酒屋の事業承継失敗事例3件目は、三光マーケティングフーズによる「東京チカラめし」の事業売却です。
複数の居酒屋ブランドなどを運営する三光マーケティングフーズは、2014年4月、牛丼チェーンの「東京チカラめし」を、カラオケ店や飲食店を展開するマックなど複数企業へ売却しました。
三光マーケティングフーズが、2011年に開店した東京チカラめしは人気店となり急成長していきましたが、短期間での多店舗展開や競合店の成長などにより、業績が急激に悪化します。
東京チカラめしは、事業承継後も復活できず、現在は少数店舗での運営となっています。
3. 居酒屋の事業承継案件一覧
ここでは、弊社M&A総合研究所が取り扱っている居酒屋の事業承継案件をご紹介します。
【都内好立地×居酒屋2店舗】NetCash9,000万円 / ターミナル駅5分圏内
ターミナル駅徒歩5分圏内の路面店に位置し、圧倒的集客力を誇る好立地です。EBITDA3,000万円以上&NetCash9,000万円と財務も良好です。
エリア | 東京都 |
売上高 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡希望額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡理由 | 戦略の見直し |
【都内主要駅×居酒屋3店舗・焼肉1店舗】飲食業
居酒屋3店舗、焼肉屋1店舗を運営しています。それぞれの店舗が都内の主要駅から駅徒歩数分圏内に位置しています。
エリア | 東京都 |
売上高 | 5億円〜10億円 |
譲渡希望額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡理由 | 事業拡大 |
【関東/オリジナルブランド保有・FC展開あり】ホルモン居酒屋運営業
独自の立地診断プログラムで商圏を徹底分析し、駅前好立地に多店舗展開しています。FC事業に注力し、より安定的な収益構造へ移行中です。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡希望額 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡理由 | 戦略の見直し |
【首都圏】メディア掲載多数の人気居酒屋【複数店舗】
セントラルキッチンを有しており、店舗では二次加工を行っています。内装にもこだわり、おしゃれな居酒屋として認知が広まっています。
エリア | 東京都 |
売上高 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡希望額 | 1000万円〜5000万円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継)、戦略の見直し |
【首都圏/複数店舗運営・リピーター多数】居酒屋経営
全店舗、好立地な場所に出店しています。サラリーマン、ファミリー層がメイン顧客でリピーターも多数です。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡希望額 | 5000万円〜1億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
4. 居酒屋の事業承継先別の流れ
居酒屋の事業承継には、親族間事業承継・親族外事業承継・M&Aによる事業承継がありますが、承継の仕方によって手続きの流れに違いがあります。
ここでは、親族間事業承継・親族外事業承継とM&Aによる事業承継の流れについて解説します。
居酒屋の親族間事業承継(親族外事業承継)
居酒屋の親族間事業承継と親族外事業承継は、主に以下の流れで進みます。
- 事業承継計画の策定
- 後継者の教育
- 資産・財産・株式などの引継ぎ
- 個人保証・担保の処理
①事業承継計画の策定
親族間事業承継・親族外事業承継では、居酒屋の経営者と後継者の理念共有や、行動指針の明確化のため、事業承継計画を策定する必要があります。
親族の理解(親族外事業承継の場合)
親族間事業承継・親族外事業承継では、後継者が居酒屋経営を継ぐに値するかどうか、親族に了承を得なければなりません。
先に述べた事業承継計画を策定することは、親族の理解を得る際にも活用できます。
②後継者の教育
後継者の教育は、居酒屋経営の実務を身に付けるだけでなく、経営者の経営方針も引き継ぎ、居酒屋経営者としての覚悟も作っていきます。
そのためには、時間をかけてさまざまな経験をさせていかなければなりません。
③資産・財産・株式などの引継ぎ
株式や事業用資産の引継ぎは、経営者が元気な間にしっかりと準備しておかなければ、相続で経営権が分散してしまったり、後継者が税金で苦労したりする可能性があります。
相続や税金について対策するには専門的な知識も必要になるため、M&A仲介会社などの専門家に相談するなどして準備を進めておくことが必要です。
④個人保証・担保の処理
個人保証・担保の解除も、事業承継を行う前に処理しておかなければ、後継者に大きな負担がかかることになります。
早めに取引先金融機関や専門家と相談しておき、個人保証や担保を解除できるように準備しておくことが重要です。
居酒屋のM&Aによる事業承継
居酒屋のM&Aによる事業承継は以下のような流れで進みます。
- 仲介会社などへの相談
- 事業承継先の選定
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- クロージング
①仲介会社などへの相談
M&Aによる事業承継の場合、居酒屋の最適な事業承継先を探す必要があり、自力で探すのは容易ではありません。
そのため、仲介会社などM&A専門家に相談し、居酒屋の事業承継先を探してもらうようにしましょう。
秘密保持契約書の締結
事業承継のために提出した居酒屋経営に関する情報が外部に漏れると、事業承継や居酒屋経営に大きな打撃となる可能性があります。
そのため、仲介会社などの専門家と契約する際は、秘密保持契約を結ぶことで情報の漏洩を防ぎます。
②事業承継先の選定
M&A仲介会社のネットワークなどを頼りに、居酒屋の事業承継先を選定していきます。
事業承継先は、すぐに複数の相手から交渉の打診があることもあれば、なかなか相手が見つからない場合もあります。
また、後継者候補との交渉が難航し長引くこともあるので、事業承継の準備開始を早めに始め、余裕を持った選定を行うことが大事です。
③基本合意書の締結
居酒屋の事業承継相手と交渉がまとまったら、基本合意書を締結し、事業承継契約締結に向けて手続きを進めていきます。
基本合意書の内容に問題がなければ、最終契約書も同様の内容となりますが、手続き過程で変更の必要がある場合は、最終契約書で変更されることがあります。
④デューデリジェンスの実施
デューデリジェンス(企業内監査)によって、相手の企業価値を適正に判断したり、リスクを洗い出したりします。
デューデリジェンスの精度が事業承継の成否を分けることもあるので、デューデリジェンスを精度高く行うために、高い専門性を持った専門家のサポートが必要です。
⑤最終契約書の締結
最終契約書には、交渉で決定した事業承継の条件や義務、禁止事項などを記載します。
契約書の作成については、後々のトラブルなどを避けるため、専門家に作成してもらうことが一般的です。
⑥クロージング
クロージング後は、居酒屋が事業承継先で円滑に営業できるよう、PMI(事業承継後のマネジメント管理)を行います。
PMIでは、居酒屋を譲渡した側の経営者が、しばらくの間居酒屋経営をサポートするケースも少なくありません。
5. 居酒屋の事業承継を成功させるためのポイント
居酒屋の事業承継を成功させるには、以下のポイントを押さえる必要があります。
- 自店舗の強みを明確にする
- 計画的に準備する
- 事業承継先を選定する
- 事業承継の専門家に相談する
自店舗の強みを明確にする
近年の居酒屋の事業承継では、明確なコンセプトや強み、地域独自性を求める買い手が増えています。事業承継の事前準備として、以下のポイントを明確にしておくことが必要です。
- 利用者数などのデータ
- 立地条件・アクセスのしやすさ
- 従業員の質・評判
①利用者数などのデータ
個人経営や小規模の居酒屋の場合、利用者数などのデータを細かくとっていないケースが多いですが、買い手側にとっては大事な判断材料となります。
②立地条件・アクセスのしやすさ
居酒屋は、立地条件やアクセスのしやすさによって、商圏の広さが変わります。周辺の競合居酒屋と比べて、商圏を確保できているかどうかも重要なポイントです。
③従業員の質・評判
インターネットの口コミなどで居酒屋のランク付けがされる時代になり、買い手は従業員の質や評判をさらに重要視するようになりました。
そのため、人材確保が難しい近年においては、優秀な従業員は大きな評価ポイントになるといえます。
計画的に準備する
居酒屋の事業承継を成功させるには、後継者の育成や株式・事業用資産の整理、税金対策など、十分な準備が必要です。特に、以下の点には注意が必要です。
- 情報が漏れることを警戒する
- 譲れない条件をまとめる
①情報が漏れることを警戒する
事業承継を検討していることが、居酒屋の従業員や取引先など関係者に漏れてしまうと、事業承継に支障が出るケースがあります。
そのような事態を避けるためには、計画的に準備を進め、情報が漏洩しないように十分注意することが必要です。
②譲れない条件をまとめる
明確なプランがないまま事業承継先候補と交渉を進めると、交渉が難航したり不利な条件での交渉成立となったりするケースがあります。
事業承継を行う前に、譲れない条件や妥協できるラインなどを明確にまとめることで、円滑な交渉が可能となります。
事業承継先を選定する
事業承継先の選定は不安や焦りが伴いますが、成功させるためには冷静な対応が必要となります。特に以下のポイントに注意が必要です。
- 交渉は入念に行う
- 従業員の引き継ぎなどに注意する
①交渉は入念に行う
買い手からの熱意や誠意が感じられず、最終的に交渉を打ち切ったというケースは少なくありません。
交渉の際は、相手の人柄や、居酒屋の経営者としてやっていく熱意と覚悟があるかどうか、時間をかけて見極める必要があります。
②従業員の引き継ぎなどに注意する
事業承継により居酒屋の経営者が変わることは、従業員に大きな不安を与えます。事業承継をきっかけに従業員が離職してしまわないよう、丁寧にケアをする必要があります。
事業承継の専門家に相談する
居酒屋の事業承継ではさまざまな人たちの複雑な思いが関係するので、事務的に手続きを進めれば良いわけではありません。
信頼のできる事業承継の専門家に相談することが必要です。専門家を選ぶ際は、以下の点に注目して選ぶことが重要です。
- 手数料など費用が明記されている所を選ぶ
- 実績豊富な専門家を選ぶ
- 相性が良い所を選ぶ
①手数料など費用が明記されている所を選ぶ
居酒屋を事業承継する際に、どれくらいの費用がかかるのかわからなければ、不安から事業承継を躊躇する要因にもなります。手数料がシンプルで明確な専門家を選ぶことが大事です。
②実績豊富な専門家を選ぶ
同じ居酒屋の事業承継でも、人が違えば必要な対応も変わります。そのため、居酒屋の事業承継に柔軟に対応するには、知識だけでなく豊富な実務経験も必要です。
③相性が良い所を選ぶ
事業承継に成功した経営者が事業承継の専門家を選んだ理由として、担当者から誠意を感じたから、人柄が信頼できたから、といった理由を挙げる人は少なくありません。
事業承継の専門家を選ぶ際は、自身との相性もよく見極めることが重要だといえるでしょう。
6. 居酒屋のM&A・事業承継でおすすめの相談先
居酒屋のM&A・事業承継でおすすめの相談先をご紹介します。
金融機関
金融機関がM&Aのファイナンシャル・アドバイザーを務めるケースがあります。外資系投資銀行や日系証券会社は特に大規模なM&Aに強みを持ち、成功報酬は外資系で2億円以上、日系で2千万円以上が一般的です。一方、商業銀行では、メガバンクで2千万円以上、地方銀行では数百万円程度が目安とされています。
金融機関を利用する最大の利点は、専門性の高いサポートを受けられることです。加えて、資金調達に関する相談もしやすく、M&Aの進行において頼りになる存在です。しかし、中小企業が関与する場合、案件が金融機関の得意分野に合わず、十分な効果を得られないことがあります。また、成功報酬が高額になることが、中小企業にとって大きな負担になる点には注意が必要です。
公的機関
商工会議所などの公的機関は、中小企業を対象にM&A支援を提供しています。政府が策定した「事業承継ガイドライン」においても、M&Aは事業承継の重要な選択肢として位置付けられています。
これらの公的機関の強みは、中小企業ならではの業務や文化を深く理解している点です。特に、売り手と買い手の両方が中小企業である場合、こうした機関は適切なサポートを提供できます。また、商工会議所の会員になることで、初期費用なしでM&Aに関する相談や支援を受けられるのも大きな利点です。
ただし、商工会議所を利用するには会員登録が必要で、会費が発生します。この費用が、サービス利用を検討する際の課題となる場合があります。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、M&Aに特化した専門サービスを提供しており、それぞれ独自の強みや経験を持っています。そのため、自社のニーズに合った仲介会社を選ぶことが、成功への鍵となります。
仲介会社を利用する主なメリットは、広範なネットワークを活用して最適な買い手や売り手を見つけ出してくれる点です。さらに、金融機関と比べて成功報酬が比較的安価な場合が多く、専門的な支援を受けながらコストを抑えられることも魅力です。
一方で、一部の仲介会社では、報酬を優先するあまり契約の成立を急かすケースがあるため、注意が必要です。M&Aを成功させるには、信頼できる仲介会社を選び、自社の目標や状況を深く理解してもらうことが重要です。
7. 居酒屋の事業承継マニュアルまとめ
本記事では、居酒屋の事業承継について解説してきました。
今回ご紹介した居酒屋の事業承継事例は以下の10件です。
居酒屋の事業承継成功事例
- SSSによる海帆への事業承継
- シーズライフによるチムニーへの事業承継
- つぼ八によるやまやとチムニーへの事業承継
- 湯佐和によるジー・テイストへの事業承継
- セクションエイトによるJ-STARへの事業承継
- エスエルディーによるDDホールディングスへの事業承継
- アクティブソースによるトリドールHDへの事業承継
- 商業藝術によるダイヤモンドダイニングへの事業承継
居酒屋の事業承継失敗事例
- シンガポールの飲食店運営企業によるエー・ピーカンパニーへの事業承継
- カッパ・クリエイトHDによるコロワイドへの事業承継
- 三光マーケティングフーズによる「東京チカラめし」の事業売却
居酒屋の親族間事業承継と親族外事業承継は、主に以下の流れで進みます。
- 事業承継計画の策定
- 後継者の教育
- 資産・財産・株式などの引継ぎ
- 個人保証・担保の処理
また、居酒屋のM&Aによる事業承継は以下の流れで進みます。
- 仲介会社などへの相談
- 事業承継先の選定
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 最終契約書の締結
- クロージング
居酒屋の事業承継を成功させるには、以下のポイントを押さえる必要があります。
- 自店舗の強みを明確にする
- 計画的に準備する
- 事業承継先を選定する
- 事業承継の専門家に相談する
8. 居酒屋業界の成約事例一覧
9. 居酒屋業界のM&A案件一覧
【海外案件】ハワイ州の超人気カジュアルレストラン
飲食店/海外案件ID:2484公開日:2024年12月09日売上高
1億円〜2.5億円
営業利益
非公開
譲渡希望価格
希望なし
本件は、アメリカのハワイ州で飲食店を営む企業の案件でございます。
【シンガポール/口コミ高評価】寿司屋チェーン
飲食店/海外案件ID:2431公開日:2024年11月20日売上高
10億円〜25億円
営業利益
1億円〜2.5億円
譲渡希望価格
応相談
・シンガポールの中心地をメインに4店舗合計297席の日本食チェーンを展開
【関東/オリジナルブランド保有・FC展開あり】ホルモン居酒屋運営業
飲食店/関東・甲信越案件ID:2410公開日:2024年11月14日売上高
2.5億円〜5億円
営業利益
1000万円〜5000万円
譲渡希望価格
2.5億円〜5億円
・オリジナルブランドのホルモン居酒屋の複数店舗の運営 ・FC展開も積極的に行い、FC本部の運営
【首都圏】メディア掲載多数の人気居酒屋【複数店舗】
飲食店/関東・甲信越案件ID:2335公開日:2024年10月17日売上高
2.5億円〜5億円
営業利益
赤字経営
譲渡希望価格
1000万円〜5000万円
都内にて、人気の居酒屋を複数展開している企業
【シンガポール/譲渡案件】人気ラーメン店複数店舗
飲食店/海外案件ID:2143公開日:2024年08月10日売上高
2.5億円〜5億円
営業利益
5000万円〜1億円
譲渡希望価格
希望なし
シンガポールにて2店舗のラーメン屋を運営しています。ラーメンの他、とんかつやかつ丼等のメニューも提供しており人気を博しています。
【事業譲渡】都内コンセプトバー2店舗
飲食店/娯楽・スポーツ/関東・甲信越案件ID:1454公開日:2023年12月11日売上高
1億円〜2.5億円
営業利益
5000万円〜1億円
譲渡希望価格
希望なし
都内でコンセプトバーを2店舗運営しております。 本件は株式譲渡ではなく、事業譲渡が前提でございます。
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