2023年04月27日更新
株式譲渡の際の支払調書は?手続きなどのポイントを解説
支払調書とは、税務署に提出する法定調書のひとつです。株式譲渡の際は、株式の譲渡と対価の支払いが行われたことを報告するために必要な提出書類です。本記事では、株式譲渡における支払調書の概要や手続きなどのポイントについて詳しく解説します。
1. 株式譲渡の際の支払調書とは
支払調書とは、税務署へ提出する法定調書のことです。法定調書は、所得税法・相続税法・租税特別措置法・内国税の適正な課税の確保を図るため、提出が義務付けられている資料です。
法定調書は全部で60種類(令和2年4月1日現在)あり、代表例に従業員の給与や役員報酬に関する「給与所得の源泉徴収票」や、報酬や投資信託の分配金の支払いに関する「支払調書」があります。
支払調書は株式譲渡が行われた際も提出が義務付けられています。この章では、株式譲渡の際の支払調書が必要な理由や提出先を解説しましょう。
株式譲渡の際の支払調書はどんなときに必要?
株式譲渡が行われた際は、譲渡企業の上場・非上場に関係なく「株式等の譲渡の対価等の支払調書」の提出が必要です。
株式譲渡は、譲渡側が保有する株式の譲渡と譲受側の対価の支払いによって成立する取引です。有償の株式譲渡の場合は譲渡側に所得税・住民税・復興特別所得税、無償あるいは時価の1/2未満の株式譲渡の場合は譲受側に贈与税が課せられます。
課税対象者は確定申告によって税額を申告して、期限内に納税します。これらの税金の申告内容が正しい内容か確かめるために、支払調書を提出して株式譲渡が行われたことを報告する必要があるでしょう。
国税庁が示す「株式等の譲渡の対価等の支払調書」の提出対象となる「株式等」は以下です。
- 株式(株主または投資主となる権利、株式・新株予約権の割当てを受ける権利を含む)
- 特別の法律による設立法人の出資者の持分、合名会社・合資会社または合同会社の社員の持分、協同組合等の組合員または会員の持分その他法人の出資者の持分
- 協同組織金融機関の優先出資に関する法律に規定する優先出資及び資産の流動化に関する法律に規定する優先出資
- 投資信託の受益権
- 特定受益証券発行信託の受益権
- 社債的受益権
- 公社債
株式譲渡の際の支払調書はどこに提出するのか?
「株式等の譲渡の対価等の支払調書」の提出先は税務署です。納税地等を所轄する税務署が分からない場合は、国税庁公式サイトの「組織(国税局・税務署など)」から調べられます。
「株式等の譲渡の対価等の支払調書」の提出期限は、株式譲渡が行われた翌年の1月31日までです。税務署に提出する際は、他の提出範囲の法定調書と法定調書の合計表を添付します。
支払調書が税務署に提出される場合
特定口座の場合、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」の2つがあります。どちらも「特定口座年間取引報告書」を使用し、簡易に確定申告ができるでしょう。上場株式等の配当金を特定口座(源泉徴収あり)にした場合は、支払通知書は提出せず特定口座年間取引報告書に記載されます。
一般口座の場合、以前は1回の支払金額が30万円以下であれば省略し、30万円を超える場合は支払調書を作成していました。しかし、2016年1月1日以後は「株式等の譲渡対価等の支払調書」の提出省略基準が廃止されたため、金額を問わず譲渡の支払調書の提出が必要です。
株式譲渡の際の支払調書にかかる費用
法人税や所得税の申告は、提出期限を過ぎると無申告加算税や延滞税などが課せられます。しかし、支払調書を含めた法定調書は、提出期限を過ぎても加算税や延滞税が課せられることはありません。
ただし、提出期限を過ぎた場合は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」(所得税法第242条)が科せられるおそれがあります。株式譲渡を行った際は翌年1月31日までに準備を進めておき、速やかに提出することをおすすめします。
2. 株式譲渡の際の支払調書の手続き
株式譲渡を行った場合は所轄の税務署へ支払調書を提出します。この章では、株式譲渡の際の支払調書の手続きを解説します。
株式譲渡の際の支払調書の提出
株式譲渡の際の支払調書の提出は「株式等の譲渡の対価等の支払調書」と「株式等の譲渡の対価等の支払調書合計書」の2つの書類が必要です。
申請書様式・記載要領は、国税庁公式サイトよりPDFファイルをダウンロードできます。自由に使えるパソコンやスマートフォンがなくてダウンロードができなかったり、PDFファイルを印刷する手段がなかったりする場合は、最寄りの税務署から用紙を受け取れます。
株式譲渡の際の支払調書の提出手続き
株式譲渡の支払調書の手続き内容は以下のとおりです。以下の内容に沿って支払調書を作成して、株式譲渡が行われた翌年1月31日までに提出します。
概要 | 株式等の譲渡の対価等の支払調書 |
手続きの根拠 | 所得税法第225条第1項第10号、第11号 |
手続きの対象者 | 国内において株式等の譲渡の対価の支払をする法人、証券会社または銀行 |
提出時期 | 翌年1月31日(特例あり) |
提出方法 | 支払調書に合計表を添付して提出先に送付または持参 |
手数料 | 手数料は不要 |
提出先 | 納税地などを所轄する税務署長 |
受付時間 | 午前8時30分~午後5時 |
相談窓口 | 最寄りの税務署 |
株式等の譲渡の対価等の支払調書の作成
株式等の譲渡の対価等の支払調書は、株式譲渡を行った際に税務署に提出する書類です。株式譲渡による支払い内容を伝えるために作成・提出が義務付けられています。
平成28年1月1日以降の各支払調書には、個人番号または法人番号を記載する項目が設けられています。M&Aの株式譲渡の場合は譲渡者が経営者個人であることが多いので、譲渡企業の経営者の個人番号を記載する必要があるでしょう。
しかし、株式譲渡の取引相手とはいえ、個人番号を教えてもらうことは簡単ではありません。相手の個人番号が分からない場合は、空欄のままでも良いとされているので、飛ばしてしまって問題ありません。
問題となるケースは個人番号がわからないといった理由により、株式等の譲渡の対価等の支払調書を提出しなかったり、虚偽の内容を記載してしまったりしたときです。未提出や虚偽申告は罰則対象なので注意が必要です。
そのほか、記載項目に特別な注意点はありません。各項目に株式譲渡取引の当事者の情報や取引に準じた内容を記載します。
【株式等の譲渡の対価等の支払調書の記載項目】
- 支払または交付を受ける者の住所(居所)または所在地
- 支払または交付を受ける者の氏名または名称および個人番号または法人番号
- 支払者または交付者の所在地
- 支払者または交付者の名称および法人番号
- 交付の取扱者の所在地
- 交付の取扱者の所在地および法人番号
- 区分:弁護士・税理士報酬、原稿料・さし絵料等といった名称で報酬・料金・支払先業務内容を記入
- 細目:弁護士・税理士報酬の場合は事件名、原稿料・さし絵料では支払い回数などを記入
- 番号
- 銘柄または名称
- 支払または交付確定年月日
- 事由
- 株数(口)または額面金額(千円)
- 支払金額または交付金額(千円):原則、当該年度で確定している消費税を含めた支払合計額を記入
- 源泉徴収税額(千円):当該年度中に源泉徴収するべき所得税と復興特別所得税の合計額を記入
記載方法について不明点があれば、弁護士や税理士などの専門家に相談しましょう。
株式等の譲渡の対価等の支払調書合計表の作成
支払調書合計表は、支払調書の種類ごとに添付が義務付けられている書類です。株式等の譲渡の対価等の支払調書を提出する際は、支払件数・支払金額・源泉徴収税額などの総額を記載した「株式等の譲渡の対価等の支払調書合計表」を添付します。
【株式等の譲渡の対価等の支払調書合計表の記載項目】
- 提出者の所在地
- 提出者の氏名または名称および法人番号
- 代表者の氏名および代表印
- 合計表作成担当者の氏名
- 区分(個人一般分・個人株式交換分・法人分)
- 支払件数、支払金額、源泉徴収税額
税務署へ提出
株式等の譲渡の対価等の支払調書と合計表の作成が終わったら、所轄の税務署へ提出しましょう。用紙で提出する場合は所轄の税務署へ送付・持参の2とおりの方法があります。
株式等の譲渡の対価等の支払調書を含めた法定調書は、e-Taxで電子申告することも可能です。e-Taxには申請書様式から送信機能まで備わっているので、ダウンロードや持参する必要がなくなります。
なお、平成30年度の税制改正により令和3年分の申告から、法定調書の電子申告義務化が「法定調書ごとに1,000枚以上ある場合」から「法定調書ごとに100枚以上ある場合」に引き下げられます。
該当事業者はe-Taxを使用して送付する方法、または光ディスクなど(CD、DVD)を使用して提出する方法でなければなりません。
M&A・株式譲渡のご相談はM&A総合研究所へ
M&A・株式譲渡は取引自体の手続きや交渉が大変であり、税務署へ提出する書類まで気が回らないことも多いでしょう。未提出や申告内容に不備があると罰則を受けるおそれもあるので、専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
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3. 株式譲渡の際の支払調書まとめ
株式譲渡の際の支払調書は、税務署が各事業者の確定申告内容と照らし合わせるために利用される重要な書類です。
株式譲渡の際は手続きに追われてしまって、後々に提出する書類を見落としてしまいがちです。不備なく全ての手続きを完了させるためには、専門家に相談しておくことをおすすめします。
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