2024年02月19日更新
株式譲渡と会社分割の内容を比較!メリットとデメリットから注意点まで解説!
本記事では、株式譲渡と会社分割の内容について比較しながら紹介します。そのメリットやデメリット、手続き、注意点も解説しましょう。近年、M&Aの成約件数は増加しており、株式譲渡や会社分割も増加しています。株式譲渡や会社分割を検討している方は必見です。
目次
1. 株式譲渡と会社分割
M&Aをスムーズに進めて満足のいく結果を得るためには、多くのM&A手法の中から、自社の目的や状況に合ったものを選ぶことが大切です。株式譲渡と会社分割はどちらもM&A手法のひとつですが、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
この記事では、株式譲渡と会社分割の違い、それぞれのメリット・デメリットなどについて解説します。
株式譲渡とは
株式譲渡とは、自社株式を第三者に譲渡して経営権を移行するM&Aスキームです。株式譲渡によって、相手先企業が自社株式を100%保有する場合は、完全子会社化となります。
株式譲渡を行うメリットには、手続きが簡便でありかつ従業員などに大きな影響を与えないことが挙げられるでしょう。
株式譲渡の場合は包括承継であり、事業や組織自体は変わらないため、従業員の雇用もそのまま引き継がれます。したがって、売却される企業の従業員に大きな影響を及ぼすことはありません。
株式名簿の書き換えを行うだけで完了するため、非常に簡便な手続きで済みます。
M&Aの手法・株式譲渡の手続きについては下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
会社分割とは
会社分割とは、株式会社または合同会社で運営している特定の事業について、その権利義務の全部もしくは一部を包括的に別の会社へ承継することです。必要事業を分割して売買する点では、事業譲渡と似た特徴を持っています。
会社分割は、分割の仕方と切り出した会社をどのように扱うか、その組み合わせによって、4種類に分類できるでしょう。
まずは、会社分割の仕方です。売却する事業を子会社として新設して売却することを分社型といい、売却する事業を兄弟会社として新設し売却することを分割型といいます。
次に、切り出した会社をどのようにするかで、さらに2種類に分けるのが可能です。新設した会社を既存の会社に売却し、その企業を子会社化する場合を吸収分割といいます。新設した会社をそのまま独立させる場合は、新設分割といいます。
会社分割(吸収分割・新設分割)については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
新設分割と吸収分割
吸収分割とは、ある会社(A社)の特定の部門が、新しい会社を作るのではなく、すでに存在する別の会社(B社)に移されることを言います。例えば、新しく会社を作るとき、その対価として受け取るものは通常、その新会社の株式です。しかし、吸収分割の場合、対価としてお金などの財産を受け取ることも許されています。
基本的な手順や考え方は、新しく会社を作る場合(新設分割)と、既存の会社に部門を移す場合(吸収分割)で同じです。実際には、2つ以上の会社が1つの会社に部門を移すケースも考えられます。
会社の部門を移すとき、その部門のすべての権利や義務も一緒に移ります。ただ、いくつかの業界、例えば建設業や不動産業など、特別な許可が必要です。この許可は自動的には移らず、新しい会社や部門を受け取る会社が改めて申請して取得しなければなりません。
特に新しい会社を作る場合、会社が設立されてから許可を申請できるので、実際の業務を開始するまでに時間がかかることがあります。一方、既存の会社に部門を移す場合は、あらかじめ許可を取得してから部門を受け取ることができるので、スムーズに業務を開始できます。
事業譲渡とは【参考】
事業譲渡とは、会社が事業の一部またはすべてを他の会社へ譲渡する手法です。事業譲渡が株式譲渡・会社分割・合併などを比べて特徴的なのは、譲渡対象となる事業を選択でき、資産や負債も比較的自由に選別するのが可能なことです。
売り手は売却益を獲得でき、買い手は対価と引き換えに新しい事業を得られます。事業譲渡は、M&Aの中では株式譲渡の次に採用される手法です。事業譲渡と株式譲渡の大きな違いは、経営権の移動の有無でしょう。株式譲渡では会社の経営権も移りますが、事業譲渡は会社の経営権は移りません。
2. 株式譲渡と会社分割のメリットとデメリット
株式譲渡と会社分割には、それぞれ特徴があり、メリットとデメリットが存在します。この章では、株式譲渡と会社分割のメリット・デメリットをそれぞれ解説します。
株式譲渡のメリットとデメリット
まずは、株式譲渡のメリット・デメリットを見ましょう。
メリット
【株式譲渡のメリット】
- 節税が可能である
- 後継者問題が解決できる
メリット1つ目は、節税ができる点です。これは売却側に当てはまるメリットであり、合併や買収などで得た売却益に対しては、所得税や法人税が課せられます。法人税率は23.2%と定率ですが、所得税率は累進課税制度を採用しているため、売却益が大きいほど納税額も高くなるでしょう。
しかし、株式譲渡で得た利益は、譲渡所得税の対象として処理することが認められています。譲渡所得税とは、株式を売却したときに所得税や住民税が源泉徴収される税金で、税率は20.315%と定率であるため、売却額が大きいほど譲渡所得税による節税効果も大きくなります。
2つ目のメリットは、後継者問題が解決できる点です。M&Aによる事業承継は、引退に近い経営者が行うことが多いため、迅速に手続きを行うことが望ましいです。先述したとおり、株式譲渡は手続きが簡便であり、人材なども包括承継できるため後継者問題を解決には適しているといえるでしょう。
デメリット
【株式譲渡のデメリット】
- 債務などのトラブルも引き継がれる
- 買収資金が必要である
1つ目のデメリットは、債務などの負債やトラブルも引き継ぐ必要がある点です。株式譲渡は、事業や組織を変更することのない包括承継のM&Aスキームです。
株式譲渡では、事業の資産やノウハウだけでなく、負債や将来的に起こりうるトラブルも引き継ぐことになります。M&Aの際は、デューデリジェンスを徹底的に行って負債やトラブルを洗い出し、リスクを回避することが重要でしょう。
2つ目のデメリットは、買収資金が必要になる点です。これは買い手側のデメリットですが、一般的に株式譲渡の対価は現金であることが多いです。
買収側は株式を買い取るための資金を準備が必要になるので、買収資金を自己資本から調達するのか、銀行からの借入金で賄うのか、M&A専門家と相談して慎重に決めるようにしましょう。
会社分割のメリットとデメリット
次に、会社分割のメリット・デメリットを見ましょう。
メリット
【会社分割のメリット】
- 対価が株式でも問題ないため、資金を準備する必要がない
- 買収によるシナジー効果を得やすい
1つ目のメリットは、対価が株式でも問題がないため、資金を準備する必要がない点です。株式譲渡の場合、対価が現金であるため資金を用意しなければなりませんが、会社分割の場合は対価に自社株式を用いることが可能なため、莫大(ばくだい)な買収資金を用意する必要はありません。
しかし、現在はM&A対価の柔軟化が積極的に行われており、株式分割でも現金を対価にするように求められる可能性があります。その場合は相手先と交渉を行い、柔軟に対応するようにしましょう。
2つ目のメリットは、買収によるシナジー効果が得やすい点です。株式分割は、特定事業の売買を行うスキームであるため、シナジー効果が測定しやすく、期待したシナジー効果が得られる可能性も高くなります。
デメリット
【会社分割のデメリット】
- 統合プロセスがスムーズに進まない可能性がある
- 多くの手続きが必要になる
1つ目のデメリットは、統合プロセスがスムーズに進まない可能性がある点です。これは会社分割の中で、特に吸収分割に当てはまるデメリットです。株式譲渡は、対象企業の経営権を移動させて子会社化するため、社内システムなどをM&A先に合わせる必要はありません。
一方、会社分割では、切り離した事業がM&A先に吸収されるため、社内システムなどをM&A先に合わせるために統合プロセスを行う必要があります。自社の社風や企業理念など、ソフト面でも統合させないとシナジー効果が得にくくなるため、統合プロセスに苦戦する企業は少なくありません。
2つ目のデメリットは、多くの手続きが必要になる点です。詳細な条件や取引金額の交渉を行う必要があるため、株式譲渡に比べると多くの手続きが必要になります。会社分割はスピーディーに行えないことを念頭に置いて、M&Aを実施するようにしましょう。
事業譲渡のメリットとデメリット【参考】
事業譲渡のメリット・デメリットを見ましょう。
メリット
【事業譲渡のメリット】
- 必要な事業だけを選択して買収できる
- 簿外債務の引き継ぎリスクを負わない
1つ目のメリットは、譲り受けたい事業だけを選択して買収できる点です。株式譲渡や合併などの場合、必要ではない資産や負債を引き継ぐおそれもあります。一方、事業譲渡であれば、利益が見込める事業や、譲り受けたい人材を選別できるので、比較的小さなリスクで成長が見込めるでしょう。
2つ目のメリットは、簿外債務の引き継ぎリスクを負わない点です。通常、M&Aを実施する際は、売り手の簿外債務をそのまま引き継ぐ必要がありますが、事業譲渡であれば、債務・負債などを引き継ぐ必要がありません。
デメリット
【事業譲渡のデメリット】
- 手続きに手間がかかる
- 譲渡益に税金が発生する
1つ目のデメリットは手続きに手間がかかる点です。事業譲渡を行う場合は、対象事業が関わる全ての契約に関して、相手方の同意を得て、再度個別に結び直す必要があるため、手間とコストがかかります。
2つ目のデメリットは譲渡益に法人税、住民税などの税金が発生する点です。ただし、売り手側に多額の繰越欠損金がある場合や退職金を拠出する際に損金として計上できるケースがあるでしょう。
したがって、事業譲渡で対価を受け取るほうが税金負担も軽くなり、手元に残る金額が増えます。
3. 株式譲渡と会社分割の6つの違い
株式譲渡と会社分割には、どのような違いがあるのでしょうか。ここでは、株式譲渡と会社分割の違いを以下の6つの視点から解説します。
【株式譲渡と会社分割の違い】
- 会社法上の取り扱い
- 従業員の雇用に関する違い
- 許認可取得の違い
- 税務の違い
- 債権・債務の違い
- 表明保証違反に関する違い
会社法上の取り扱い
1つ目の違いは、会社法上の取り扱いです。株式譲渡は、対象企業の株式の売買を行う契約です。つまり、単純な株式の売買契約であるため、会社法における組織再編行為には該当しません。
一方、会社分割は対価を自社株式で支払うため、会社法における組織再編行為に該当します。このように、組織再編行為に該当するか否かで法的性質が異なるため、税務面や取引内容も大きく異なってきます。
従業員の雇用に関する違い
2つ目の違いは、従業員の雇用に関する違いです。株式譲渡は包括承継であるため、対象企業の従業員は同意を得なくても引き継げます。
一方、会社分割では、対象企業のすべての従業員を引き継げないため、労働承継法に従って適切な手続きを行う必要があります。
労働承継法
労働承継法とは、M&Aにおいて従業員の引き継ぎについて定めた法律です。会社分割における従業員の引き継ぎは、労働承継法に基づいて行わなければなりません。
【会社承継法による従業員の引き継ぎ】
承継の計画がある | 承継の計画がない | |
承継する事業に従事している | 承継する | 原則残留、ただし異議を 申し出れば承継可能 |
承継する事業に従事していない | 原則承継、ただし異議を 申し出れば残留可能 |
当然、残留する |
買い手側は、承継する事業に従事していて、かつ会社分割計画に記載されている従業員は、当然引き継げます。対象とする従業員の同意が得られれば、承継する事業に従事していなくても引き継ぐことが可能です。
一方、計画に記載されていない従業員は、承継する事業に従事していたとしても引き継げません。承継できる従業員には限りがあるため、どの程度の従業員を引き継げるか把握したうえで、交渉や会社分割後の準備を進めるようにしましょう。
許認可取得の違い
3つ目の違いは、許認可取得の違いです。許認可とは、ある事業を行うために所管の省庁に許可を得ることです。許認可が得られないまま事業を行うと違反になるため、許認可を必要とする事業を取得する場合は注意しましょう。
株式譲渡の場合は包括承継が原則であるため、許認可も引き継げ、買い手側は許認可の再申請・再認可を得なくても事業を継続して行えます。
一方、会社分割の場合、原則許認可の再取得が必要になります。ただし、業種によっては引き継げる許認可もあり、再認可が下りるまで事業を停止しなければならない事業もあるので、詳細はM&Aの専門家と相談しましょう。
税務の違い
4つ目の違いは、税務の違いです。先述したように、株式譲渡と会社分割は会社法上の取り扱いが異なるため、税務も違ってきます。株式譲渡の場合、売り手側の売却益には譲渡所得税が課せられます。譲渡所得税は一定の税率でかつ、法人税よりも低いため、売却益が大きくなるほど節税効果は高くなるでしょう。
一方、会社分割は税制適格要件を満たせば、簿価での計算が許されます。通常のM&Aでは時価で資産などを計算します。しかし、成長中の会社である場合、時価よりも少し前の簿価のほうが価格も低くなるため、節税できます。
株式譲渡と会社分割は、いずれもうまく活用できれば、節税することが可能です。
債権・債務の違い
5つ目の違いは、債権・債務の違いです。特に債権者に対する保護の度合いは、株式譲渡と会社分割とで異なります。一般的に、M&Aによって債権者に影響が及ぶと考えられる場合、債権者保護手続きを企業が行い、M&Aに反対する債権者に対して債権の支払いを行います。これが債権者保護手続きです。
会社分割では、債権者保護手続きを行うことが会社法で定められており、官報公告や債権者への個別の通知が義務付けられています。一方、株式譲渡では、債権者保護手続きを行う必要はありません。株式譲渡では株式の売買が行われるだけであり、債権者に影響を及ぼさないため、債権者保護手続きは義務付けられていません。
表明保証違反に関する違い
6つ目の違いは、表明保証違反に関する違いです。表明保証とは、会社の財務状況やトラブルなどに関してそれらが真実であることを表明保証させ、万が一表明内容に虚偽があった場合は損害賠償請求を可能にする効力のことです。
M&Aの契約時には、表明保証に関する条項が記載されていることが一般的であり、株式譲渡や会社分割では表明保証に記載する必要があります。ただし、現金交付による会社分割は、法定の会社分割計画書・会社分割契約書に明記されていないことに注意が必要です。
4. 株式譲渡と会社分割の手続き
次は株式譲渡と会社分割の手続きをそれぞれ紹介します。
株式譲渡の手続き
株式譲渡は以下の4つのステップを経て行われます。
- 株式譲渡承認請求
- 取締役会、もしくは株主総会の開催
- 株式譲渡契約の締結
- 株主名義の書き換え
①株式譲渡承認請求
まずは、株式譲渡承認の請求を行います。中小企業が株式譲渡によりM&Aを行う場合、譲渡制限株式である場合が多いので、経営者は会社に対して株式の譲渡を承認する請求が必要になります。
この請求書を株式譲渡請求書といい、譲渡する株式の種類と数、および譲渡する相手の氏名を記載しなければなりません。なお、公開会社の場合、株式の譲渡が制限されているわけではないので、この手続きを省略できます。
②取締役会、もしくは株主総会の開催
株式譲渡請求書が提出されると、取締役会もしくは株主総会を開催し、株式の譲渡請求を承認します。株式の譲渡請求に対する承認は、原則として株主総会での決議を得なければなりません。
ただし、取締役会を設置している企業の場合、譲渡請求の承認を行う機関は株主総会ではなく、取締役会になります。取締役会の過半数の同意が得られると譲渡が承認されたことになります。
株式譲渡請求書が会社に提出されてから2週間以内に株主総会(取締役会)が開催できない、もしくは開催せず請求書に対して返答がなかった場合、その譲渡請求書は承認されたものとみなされるでしょう。
③株式譲渡契約の締結
株式譲渡が承認されると、M&A先と株式譲渡契約を締結します。株式譲渡契約は今後のトラブルを避けるために詳細な事項まで記載する必要があります。
【株式譲渡契約に記載すべき事項】
- 基本合意の内容
- 株式譲渡代金や支払い方法、期日について
- 株式名簿書き換えについて
- 表明保証内容
- 契約解除に関する事項
- 損害賠償事項
- 競業阻止義務について
- 合意管轄について
表明保証とは、表明した事実に対して虚偽であることが分かった場合、損害賠償を請求できる契約事項です。
株式譲渡に関していえば、巨額の資金が移動するため、急に株式譲渡の意思がないと拒否されれば大きな損害を被ることになります。これを防ぐために株式譲渡契約書で表明保証を明示しておきます。
競業阻止義務とは、会社を譲渡した後、同じ地域内で一定期間同種の事業を行わないことを約束する取り決めのことです。これは買い手側に与えられる権利であり、事前に通知しておかないとトラブルになる可能性があります。
株式譲渡契約書の作成方法・注意点については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
④株主名義の書き換え
株式譲渡が完了したら、会社が株主名簿を書き換えることで、株式譲渡が完了したことになります。なお、株主名義の書き換えが完了しているかどうか確認するためには、証明書を交付してもらう必要があるでしょう。証明書は会社に株主名簿記載事項の証明書の交付を請求し、証明書を発行してもらいます。
株式譲渡を無償で行う場合
株式譲渡を無償で行うときの手続きも、有償で行う手続きとほぼ変わりません。株式譲渡に対する対価が発生するかどうかだけの違いになります。ただし、株式譲渡の手続きは、法律上、株式譲渡契約書を作成する必要はありません。
口頭で株式譲渡を行う場合もありますが、株式譲渡の額が大きくなるほど譲渡後のトラブルが発生する確率は高くなります。特に会社の売買を伴う株式譲渡を無償で行うとなると、よりトラブルが発生しやすくなると考えられます。
専門家との相談のもと、株式譲渡を無償で行う場合は株式譲渡契約書を作成するようにしましょう。
会社分割の手続き
続いて、会社分割の手続きを紹介します。ここでは、吸収分割と新設分割に分けて見ましょう。
吸収分割
吸収分割を行う場合、基本的には以下のステップを経て手続きを行います。
- 吸収分割に関する基本合意書の締結
- 各社の取締役会の承認
- 吸収分割契約の締結
- 吸収分割契約書などの事前開示
- 吸収分割会社の株主総会の特別決議・承認
- 反対株主の株式買取請求通知
- 債権者保護手続き
- 吸収分割書面などの事後開示
- 各社の変更登記
①、②では、吸収分割に関係する企業間で基本合意書を締結し、各社の取締役会で承認を得ます。その後、③、④で会社分割に向けた手続きを行います。
⑤~⑦では、株主や債権者に対しての承認・保護手続きを行いましょう。最後に吸収分割書面を開示し、会社の変更登記を経て会社分割が完了します。
新設分割
新設分割を行う場合、基本的には以下のステップを経て手続きを行います。
- 分割会社の取締役会の決議
- 新設分割計画書の作成
- 新設分割計画書などの事前開示
- 新設分割会社の株主総会の特別決議・承認
- 反対株主の株式買取請求通知
- 債権者保護手続き
- 新設分割書面などの事後開示
- 新設会社の設立登記・各社の変更登記
吸収分割とほぼ同じ手続きを行う必要がありますが、大きく異なる点はこの手続きを行う企業は1社だけであることです。新設分割は対象事業を切り離し、その事業を新設企業として設立するM&Aスキームをさし、分割手続きを行う企業は1社だけとなります。
5. 株式譲渡と会社分割の注意点
最後に、株式譲渡と会社分割の注意点をそれぞれ紹介します。
株式譲渡の注意点
まずは、株式譲渡の注意点を見ましょう。株式譲渡を行う際は、以下の3点に注意する必要があります。
【株式譲渡の注意点】
- 株券を発行している会社であるか
- 譲渡制限がないか
- 税金の発生は理解しているか
株券を発行している会社であるか
1つ目の注意点は、株券を発行している会社であるかどうかです。第三者への対抗要件が異なるため、確認しておかなければなりません。
株券を発行している会社の場合、株券を所有していることが第三者に対する対抗要件になります。自身が株主であることを示すものも株券です。一方、株券を発行していない会社の場合、株主名簿の名義書き換えが第三者への対抗要件になります。
近年はペーパーレス化が進んでおり、株券を発行しない会社が増えているため、株主名簿の書き換えは確認するようにしましょう。
譲渡制限がないか
2つ目の注意点は、株式の譲渡制限がないかどうかです。株式の譲渡制限があっても、株式譲渡はできますが、会社の承認が必要になるため手間と時間がかかります。
譲渡制限株式であるか否かで、株式譲渡が完了するまでの時間が変わってきます。中小企業の場合、譲渡制限があったとしても譲渡人と承認する機関が経営者(同一人物)であることが多いため、譲渡請求するまでに承認が取れているケースもあるでしょう。
株式譲渡制限会社については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
税金の発生は理解しているか
3つ目の注意点は、税金の発生を理解しているかどうかです。どのM&Aスキームを使えば、節税効果が高いかを経営者は理解しておく必要があります。
例えば、売り手側から見ると、会社分割よりも株式譲渡のほうが節税効果は高くなります。株式譲渡の売却益にかかる税金は譲渡所得税であり、税率が一定かつ法人税よりも低く設定されているからです。
どのような税金が発生し、節税対策はどうすべきかなど、経営者は事前によく理解しておくようにしましょう。
株式譲渡の費用・手数料については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
会社分割の注意点
次に、会社分割の注意点を見ましょう。会社分割を行う際は、以下の2点に注意して進める必要があります。
【会社分割の注意点】
- 株主・従業員・債権者の利害関係に注意しているか
- 効力発生日を理解しているか
株主・従業員・債権者の利害関係に注意しているか
1つ目の注意点は、株主・従業員・債権者の利害関係に注意しているかです。会社分割では、株主・従業員・債権者に大きな影響を及ぼすため、会社分割に異議のある人に対して会社法にのっとって適切に対応する必要があります。
株主の場合、会社分割に反対する人の株主買取請求権を承認し、株式を買い取ります。従業員に対しては、分割計画に記載されている人は承継することになりますが、対象事業に従事していない人が異議を唱えた場合、意見を尊重して承継を中断する必要があるでしょう。
債権者に対しては、債権者保護手続きを行って、会社分割に反対する債権者の債権を買い取る必要があります。
効力発生日を理解しているか
2つ目の注意点は、効力発生日を理解しているかどうかです。会社分割の効力発生日は、吸収分割と新設分割で異なります。
吸収分割の場合は、締結した契約書に記載されており、その日が効力発生日になります。一方、新設分割は、新設の手続きを行って会社が登記された日が効力発生日です。
6. 株式譲渡・会社分割の際におすすめの相談先
株式譲渡・会社分割を行う際には、まず仲介会社の無料相談を利用してみましょう。M&A仲介会社には、M&A(株式譲渡や会社分割など)の専門家が在籍しており、交渉や手続きなど一貫したサポートを行っています。M&A総合研究所では、M&Aや事業承継の実績豊富なアドバイザーフルサポートします。
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7. 株式譲渡と会社分割の内容比較についてまとめ
今回は株式譲渡と会社分割を紹介しました。株式譲渡と会社分割は、手続きや税制面などあらゆる面で異なっています。それぞれのM&Aスキームのメリット・デメリットを理解した上で、適切なM&Aスキームを選択するようにしましょう。
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