2025年12月15日更新
医療機器卸のM&A動向【2025年最新】| 買収・売却のメリット、価格相場、成功のポイントを専門家が解説
医療機器卸業界では、M&Aによる事業承継や事業拡大が増えています。本記事では、最新の業界動向やM&Aのメリット、価格相場、成功のポイントをわかりやすく解説します。
目次
1. 医療機器卸業界の現状と特徴
医療機器卸・商社とは
医療機器卸・商社業界は、病院やクリニックなどの医療機関に対し、診断・治療・予防に使用されるさまざまな医療機器を販売・レンタルする事業を展開しています。一般的に「ディーラー」とも呼ばれ、医療現場を支える重要な役割を担っています。
医療機器は、人の生命や健康に直接関わるため、医薬品医療機器等法(薬機法)によって厳しく規制されており、その取り扱いには専門的な知識と許可が必要です。事業を行うには、取り扱う医療機器のクラス(リスクの高さ)に応じて、以下のような許可や届出が求められます。
医療機器を販売するためには「医療機器製造販売業許可(第1種~第3種)」、高度管理医療機器および特定保守管理医療機器を販売するためには「高度管理医療機器などの販売業および賃貸業の許可」、管理医療機器を販売するためには「都道府県知事への届け出」が必要です。
医療機器卸・商社は非常に専門的な商品を扱う会社になります。ここからは、医療機器卸・商社の業務内容を見ていきましょう。
医療機器卸・商社の業務
医療機器卸・商社(ディーラー)の主な業務は、医療機器メーカーから各医療機器を仕入れ、必要としている病院などに販売することです。その他、医療機器の配送(緊急配送)・医療機器の点検・医療機器の在庫管理なども行っています。
医療機器卸・商社の販売先は、約75%が病院・診療所といった医療機関で、残りの約25%は同業の医療機器卸・商社です。
医療機器卸・商社における取引先のほとんどは医療機関で、人の生命や健康を扱う場所になります。したがって、医療機器卸・商社の商品に不具合があれば非常に問題となり、避けなければなりません。
医療機器卸・商社の業務内容は大きな責任がかかっています。
医療機器卸・商社の役割
医療機器卸・商社(ディーラー)は、医療機器メーカーから医療機器・医療品を仕入れ、病院などの取引先へ販売します。取引先の多くは医療機関で、人の命や健康に密接にかかわる医療行為に関する事業です。
人の命や健康に携わっている医療機関は、医療機器に不具合が生じたり、患者の症状に対応できる医療機器・医療品が不足したりする状況を避けなければなりません。
専門性が高いこともあり、医療機器の取り扱いは難しく、医療機器に不具合が生じた際に代替品を確保することも困難です。
こういった観点から、医療機器を必要とする医療機関への販売や配送、医療機器の点検、医療機器の在庫管理などを担う医療機器卸・商社(ディーラー)は、非常に重要な役割を担っています。
医療機器卸・商社の市場規模
厚生労働省の「令和5年薬事工業生産動態統計年報」によると、2023年の医療機器の国内生産金額は2兆6,747億円、輸入金額は3兆3,217億円、輸出金額は1兆1,255億円でした。
輸入超過の傾向が続いていますが、国内市場は高齢化を背景に底堅く推移しています。一方で、診療報酬改定による公定価格の引き下げ圧力は続いており、経営環境は厳しさを増しています。。
参考:厚生労働省「令和5年薬事工業生産動態統計年報」
高齢化に伴う医療費増加と市場への影響
近年の日本は、国民医療費が毎年およそ1兆円程度増加しています。2014年の時点で40兆円にまで膨らんでおり、65歳以上における人口(老年人口)の割合が増加していることが大きな一因です。
今後も老年人口の割合は増えると見込まれます。それに伴って医療費も増加すると推測できるため、医療機器卸・商社(ディーラー)業界の市場規模はますます大きくなるでしょう。
一方で高齢化が進む中、医療費を中心とした社会保障費用を抑えることが、日本政府が取り組んでいる課題です。医療費の抑制によって病院数が減り、医療機器卸・商社の市場規模が縮小する見方もあります。そうなった場合、特に中小規模の会社は、生き残りが難しくなるでしょう。
医療機器メーカーの生産拡大がもたらす影響
医療機器卸・商社(ディーラー)の業界動向として、仕入れ先となる医療機器メーカー業界が市場拡大していることから、この業界もますます拡大していくと考えられます。
医療機器メーカー業界の市場は、製品の国内流通金額が2007年から2014年までの7年間でおよそ6,500億円増加しています。これに伴って、その取引先である医療機器卸・商社(ディーラー)業界の市場規模も拡大しているのです。
医療機器卸・商社の特徴
医療機器卸・商社(ディーラー)業界には以下の特徴があります。
- 各営業担当の素養に依存している
- 厚生労働省の影響を受けやすい
- 地域密着型
- 独占販売権による差別化が可能
- 複数の医療機関による共同購入
- 中小規模の会社が多数
- 年間売上高1,000億円以上の企業例
それぞれの特徴について、順番に見ていきましょう。
各営業担当の素養に依存している
医療機器卸の営業は、個々の担当者のスキルや医療従事者との信頼関係に大きく依存する傾向があります。医療現場では、機器の不具合が患者の安全に直結するため、医師は新しい製品の導入に慎重になりがちで、実績や信頼のある製品を継続して使用するケースが少なくありません。
そのため、新製品を提案する際は、製品知識だけでなく、医療現場のニーズを深く理解し、医師との強固な信頼関係を築くことが不可欠です。こうした営業担当者の個人的な力量に頼るビジネスモデルは、業界の大きな特徴といえるでしょう。
厚生労働省の影響を受けやすい
医療機器卸業界は、厚生労働省が定める診療報酬制度の影響を強く受けます。特定の医療機器を使用した治療に支払われる公定価格(保険償還価格)が定期的に見直されるため、卸売価格もその影響を受けざるを得ません。
つまり、自社の努力だけでは価格をコントロールしにくく、収益性が国の政策に左右されるという特徴があります。このため、安定した経営を続けるには、診療報酬改定の動向を常に注視し、変化に対応できる柔軟な事業戦略が求められます。
厚生労働省の影響により価格の決定権が弱く、資金がなければ在庫負担などに耐えられない医療機器卸・商社業界は、市場拡大により順調に見えても楽観視はできません。
地域密着型
医療機器卸・商社(ディーラー)業界は、地域密着型の企業が多い特徴があります。各地域にある医療機関との密接な連携が必要となる業界だからです。
そのため、新しい地域へ参入する場合は、その地域における医療機関と密接に関わっている企業をM&Aによって買収する戦略が効果的です。
何も戦略を立てずに新規エリアに参入した場合、医療機関はすでに別の医療機器卸・商社と関係が深いため、参入に失敗する可能性が高くなります。事業エリアの拡大を成功させたいのであれば、M&Aや業務提携といった工夫をしなければなりません。
独占販売権による差別化が可能
現在、国内に流通している医療機器の半分近くが、海外からの輸入製品となっています。そのため、海外を拠点とする医療機器メーカーの独占販売権を獲得すると有力製品を確保・販売できるのです。競合他社と差別化できるでしょう。
複数の医療機関による共同購入
医療機器卸・商社業界で気をつけるべき点として、複数の医療機関による医療機器の共同購入が挙げられます。
日本の病院数は、1990年代から減り続けており、複数の医療機関が医療機器を共同購入するパターンが増えています。数少ない取引先を多くの医療機器卸・商社で奪い合っている状況であるため、医療機器卸・商社は収益を上げにくいです。
医療機器卸・商社が生き残るためには、医療機関から自社を選んでもらう方法を考えなければなりません。
中小規模の会社が多数
医療機器卸・商社(ディーラー)業界は、地域と密接にかかわる特徴があるため、一定の地域・取引先・商品に特化している中小規模の会社が多く存在します。
多くの中小規模の医療機器卸は、地域に根ざしたきめ細やかなサービスを強みとしています。しかし、近年は後継者不足が深刻化しており、事業の存続自体が課題となっているケースも少なくありません。
一方で、大手企業はM&Aを通じて営業エリアの拡大や取扱製品の拡充を図り、全国的なネットワークを構築する動きを加速させています。こうした背景から、事業承継や経営基盤の強化を目的とした中小企業と、成長戦略を描く大手企業とのM&Aは、今後も活発化していくと予想されます。
年間売上高1,000億円以上の企業例
グループ全体の年間売上高が1,000億円以上である企業例を見ていきましょう。
企業例として、エム・シー・ヘルスケア、シップヘルスケアホールディングス、セイエイ・エル・サンテホールディング、ムトウグループ(ムトウ)、メディアスホールディングスなどが挙げられます。
医療機器卸・商社は、一定の取引先や一定分野の商品に重点を置いた中小企業が多い一方、有力グループは地域におけるグループ化や全国展開を促進している状況です。
医療機器卸業界が抱える課題と今後の戦略
全国展開を進める事業者は、価格競争を強化することや、事業展開する地域のポートフォリオを構築することにより、経営の安定化を図っていく必要があります。一定地域で経営統合を進めることで、その地域における競合他社の参入を阻止し、強固な基盤を築いていくことは重要です。
中小企業にとって課題となるのは、専門性の高い特定の製品に特化するなどの差別化を図ったり、有力グループの下で経営を安定化させたりすることです。
病院・医療法人のM&A(売買)動向・価格相場については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
2. 医療機器卸・商社のM&Aの動向
ここでは、医療機器卸・商社のM&A動向を見てみましょう。主なM&A動向として、「大手による買収の増加」と「同業他社との合併増加」が挙げられます。
大手による買収増加
最近の医療機器卸・商社(ディーラー)業界では、大手企業がM&Aによって中小企業を買収する流れが強くなっています。例えば、2023年12月、ヤマシタヘルスケアHD、整形分野専門の医療機器卸売事業の鹿児島オルソ・メディカルを買収しました。
医療機器卸・商社業界の市場動向で解説したとおり、近年は、医療費の増加や医療機器メーカーの生産増加と相まって、医療機器卸・商社業界の市場規模も拡大中です。
それと同時に、市場シェアにおける4分の1を占める上位の大手企業が、企業規模の拡大によるスケールメリットによって競争力を強めたことで、地域密着型である中小企業の経営が困難になりつつあります。こういったことが背景となり、大手企業による中小企業の買収が増加しているのです。
特に、医療機器卸・商社業界の上位である大手5社は、他社をM&Aで買収し、事業規模を拡大しています。その理由は、規模のメリットを受けるためです。医療機器メーカーに価格交渉をしたり、効率の良い物流を考えたり、事業規模が拡がれば経営を行いやすくなります。
中小規模の医療機器卸・商社はこういったメリットを受けにくく、大手企業と中小企業の格差は広がりつつあるのが実態です。
同業他社との合併増加
医療機器卸・商社業界のM&A動向として、「同業他社との合併増加」も見られます。競争力を強めるために、大手企業同士が合併する例が増えているのです。今後ますます医療機器卸・商社の業界再編が進んでいくと推測できます。
以上が、医療機器卸・商社業界のM&A動向でした。
医療機器卸・商社業界は、今後厳しくなるおそれがある業界です。今までどおりの経営を続けるだけではうまくいかないケースも出てくるでしょう。医療機器卸・商社業界でM&Aを検討している経営者もいるはずです。
ここからは医療機器卸・商社がM&Aをするメリットを確認しましょう。
3. 医療機器卸のM&Aで用いられる主な手法
医療機器卸業界のM&Aでは、企業の状況や目的に応じてさまざまな手法が用いられます。ここでは、代表的な3つの手法について解説します。
株式譲渡
株式譲渡は、売り手企業の株主が保有する株式を買い手企業に売却することで、経営権を移転させる手法です。手続きが比較的簡便で、会社を包括的に承継できるため、中小企業のM&Aで最も多く用いられます。売り手にとっては、創業者利益を確保しやすいというメリットがあります。
事業譲渡
事業譲渡は、会社全体ではなく、特定の事業や部門、資産などを選んで売買する手法です。買い手は必要な事業や資産のみを引き継げるため、偶発債務などのリスクを遮断しやすいメリットがあります。売り手にとっては、不採算事業を切り離し、主力事業に経営資源を集中させたい場合に有効です。
合併
合併は、複数の会社を一つの法人格に統合する手法です。吸収合併と新設合併の2種類があります。シナジー効果を最大化しやすい、スケールメリットを享受できるといった利点がありますが、手続きが複雑で、従業員の処遇や企業文化の統合に時間を要する場合があります。グループ企業間の再編などで用いられることが多い手法です。
4. 医療機器卸・商社がM&Aするメリット
医療機器卸・商社がM&Aを実施し、会社を買収・売却したり、事業を譲渡・譲受したりするメリットを考えてみましょう。売却・譲渡側のメリットと、買収側のメリットに分けて解説します。
売却・譲渡側のメリット
医療機器卸・商社がM&Aで会社を売却したり、事業を譲渡したりするメリットを解説します。考えられる主なメリットは、以下の4つです。
【売却・譲渡側のメリット】
- 後継者問題が解決
- 雇用の継続
- 負債の解消と創業者の利益確保
- 大手の経営ノウハウの共有が可能
それぞれのメリットについて、順番に見ていきましょう。
後継者問題が解決
M&Aによって会社売却・事業譲渡するメリットとして、後継者問題の解決が挙げられます。近年、多くの中小企業は後継者問題に悩まされています。経営者の高齢化と、人材不足による後継者不足が原因です。
後継者がなかなか見つからず事業承継がうまくできなければ、会社の廃業や清算を行うしかありません。M&Aを実施して、会社売却・事業譲渡ができれば、この後継者問題を解消できます。
外部の第三者に事業承継することを不安に思う経営者がいるかもしれません。
しかし、医療機器卸・商社の業務内容は専門性が非常に高く、やる気のない身近な人に無理やり後継者になってもらっても経営がうまくいく可能性は低いです。会社の今後を考えれば医療機器卸・商社業界に詳しい第三者に引き継いでもらうほうが安心といえます。
雇用の継続
M&Aによって会社売却・事業譲渡を実施すれば、雇用の継続が実現します。現在、多くの中小企業は後継者問題に悩んでいる状況です。
後継者問題や経営状況の悪化によって、会社を廃業・清算せざるを得なくなると、働いている従業員は職を失います。
M&Aによって会社売却・事業譲渡に成功すれば、従業員の雇用を守れるのです。今まで自社で働いてくれた従業員を守りたい思いが少しでもあれば、M&A実施の可能性を検討しましょう。
負債の解消と創業者の利益確保
医療機器卸・商社がM&Aを実施して得られる会社売却・事業譲渡するメリットの一つは、負債の解消と創業者の利益確保です。M&Aによって自社が買い手企業に売却されるとき、資産や権利と同時に負債も移転します。会社が保有している負債を解消できるのです。
M&Aによる会社売却・事業譲渡を実現すれば、まとまった売却金額を獲得できます。売り手企業における創業者の利益確保につながるのです。
大手の経営ノウハウの共有が可能
M&Aによって大手企業の傘下に入れば、大手企業が持つ経営ノウハウが共有されるので、自分たちの財政状態・経営成績を改善することが期待できます。
医療機器卸・商社として生き残るためには、大手企業の傘下に入るのは非常に効果的です。経営ノウハウ以外に人的資源や資本力も共有できるので、今までより安定した経営が実現するでしょう。
今後、厳しくなっていく可能性がある医療機器卸・商社業界で生き残りたい場合は、M&Aを検討することも重要です。
買収側のメリット
医療機器卸・商社のM&Aによる買収側のメリットには以下のとおりです。
【買収側のメリット】
- 営業拠点が拡大
- 新たな医療機器の販売が可能
- スケールメリット
- 人材確保
それぞれのメリットについて、順番に見ていきましょう。
営業拠点の拡大
医療機器卸・商社には、地域密着型の特徴があることを説明しました。特に、中小企業は、特定の地域に絞ってディーラー活動をしているケースが多いです。地域密着型の中小企業をM&Aにより買収すれば、営業拠点の拡大が実現します。
M&Aを行わず新しいエリアに事業所を増やしても、そのエリアで取引先を見つけるのは非常に困難です。事業エリアを増やしたい場合は、M&Aによる買収や業務提携を検討してください。
新たな医療機器の販売が可能
医療機器卸・商社業界の中小企業には、特定の製品に特化している会社が多いです。そのため、特に大手企業は、自社が販売していない医療機器を取り扱っている中小企業を買収することで、新たな医療機器販売・顧客網を拡大できます。
スケールメリット
M&Aを実施して企業を買収することで、スケールメリットを実現できます。スケールメリットとは、会社の規模が大きくなるほど、一製品にかかる固定費が下がり、効率的な経営が可能になることです。規模の経済と称されることもあります。
仕入れ値を安くできる可能性や、効率的な医療機器の輸送ができることもスケールメリットです。
事業規模を大きくすれば、今までよりも固定費が下げやすくなります。M&Aで買収する資金があるなら積極的に検討しましょう。
人材確保
M&Aによって企業を買収すると、人材を確保できるメリットがあります。医療機器卸・商社業界に精通した人材や、営業力のある人材を確保できれば、買い手企業が持つ経営資産との相乗効果でより企業を強化できるのです。
以上が、医療機器卸・商社のM&Aで買収側が受けられるメリットでした。医療機器卸・商社のM&Aを成功させるには、ポイントをしっかり押さえなければなりません。
5. 医療機器卸・商社のM&Aを成功させる6つのポイント
医療機器卸・商社のM&Aを成功させるポイントをまとめます。これから医療機器卸・商社をM&Aによって買収・売却・事業譲渡しようと考えている方は、以下のポイントを意識することが大切です。
【M&Aを成功させるポイント】
- 相場
- 手法
- タイミング
- 保有している販売権
- 得意先病院
- 経営状況
それぞれのポイントについて、順番に見ていきましょう。
①相場
医療機器卸・商社のM&Aにおける相場価格をしっかり理解することが大切です。医療機器卸・商社に限らず、M&Aを実施する場合は、業界・企業規模の相場価格をきちんと把握しなければなりません。
相場価格を把握できなければ、相場価格よりも高い金額で買収したり、相場価格よりも安い金額で売却して損をしたりする危険性があります。
M&Aの相場価格は企業規模の違い、業界や市場の違いによっても左右され、一概にいくらと表現するのは難しいです。相場価格の判断は、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーなどの専門家に相談することをおすすめします。
M&A総合研究所では、豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーが、親身になって案件をフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の完全成功報酬制です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)
無料相談を随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
②手法
③タイミング
M&A成功のためにはタイミングも重要です。例えば、その業界・市場が落ち込んでいるタイミングでM&Aを実施しても、ポテンシャルよりも低い価格でしか会社を売却できない可能性があります。
会社の業績が悪いときに買い手を募集すると、どの企業も手を挙げないかもしれません。業界のM&A動向が活発になり、買収してもらえる魅力があるタイミングでM&Aを実施することが大切です。
④保有している販売権
M&Aの買収側にとって、対象企業が保有している販売権に着目することもM&A成功のポイントです。
医療機器卸・商社業界では、海外からの輸入製品が国内流通量の半分を占めています。そのため、海外医療機器メーカーが製造している製品の独占販売権を確保している企業をM&Aによって買収することは、国内市場シェアを大きく獲得できるチャンスです。
⑤得意先病院
各医療機器卸・商社は、得意先の医療機関・病院を持っています。M&Aで買収しようと検討している企業が、得意先病院と良好な関係を築けているか、得意先の医療機関を多数抱えているかは、M&A実施の際に注目すべきポイントです。
⑥経営状況
買収しようと検討している企業の経営状況も、しっかりチェックすべきポイントです。経営状況が良くない企業を買収すると、自社にも負担がおよぶので注意しなければなりません。
6. 医療機器卸・商社のM&Aの成功事例
医療機器卸・商社のM&A成功事例を紹介します。M&Aの手法や対象企業のメリットなどに着目しながら、以下の事例をチェックしてください。
ヤマシタヘルスケアHDによる鹿児島オルソ・メディカルのM&A
2023年12月、ヤマシタヘルスケアホールディングス株式会社(9265)は、有限会社鹿児島オルソ・メディカル(鹿児島県鹿児島市)の全株式を取得し、子会社化しました。
ヤマシタヘルスケアホールディングスは医療機器の卸売業を手掛けており、オルソ・メディカルは整形外科分野に特化した医療機器卸売事業を展開しています。
今回のM&Aにより、ヤマシタヘルスケアホールディングスは九州南部での事業拡大を加速し、グループ企業とのシナジーを強化する狙いです。また、オルソ・メディカルの持つ経営資源を活用し、それぞれの事業領域を広げるとともに、グループ全体の機能強化を進める方針です。
参考:有限会社鹿児島オルソ ・ メディカルの株式取得(子会社化)に関するお知らせ
メディアスHDによるマコト医科精機のM&A
2023年10月、メディアスホールディングスは、マコト医科精機(山梨県中央市)の全株式取得を目的とし、基本合意書を締結しました。
メディアスホールディングスは、医療機器の卸売を手掛け、消耗品から高度医療機器まで幅広く取り扱う大手企業です。一方、マコト医科精機は山梨県を拠点とする医療機器ディーラーで、医療機器の販売を行っています。
今回のM&Aにより、メディアスホールディングスは山梨県内のシェア拡大を図るとともに、グループの調達力を強化し、より一体的な事業展開を進める狙いです。
参考:(開示事項の経過)マコト医科精機株式会社の株式取得に関するお知らせ
オーソエッジジャパンによるメディアスHDのM&A
2023年2月、メディアスホールディングスの完全子会社である栗原医療器械店(群馬県太田市)は、整形外科領域事業を分社化し、オーソエッジジャパン(東京都中央区)へ承継することを決定しました。
この会社分割では、栗原医療器械店が吸収分割会社、オーソエッジジャパンが吸収分割承継会社となります。
メディアスホールディングスは、医療機器の専門性を強化し、医療機関の多様なニーズに対応できる体制を確立することを目指しています。これにより、医療現場の負担軽減と業界の発展に貢献する方針です。
参考:整形外科領域における会社分割(吸収分割)に関するお知らせ
フランスベッドHDによるホームケアサービス山口のM&A
2021年12月に医療機器卸・商社を子会社化した事例です。売却側・買収側、手法、双方のメリットを紹介します。
- 売却側:フランスベッドホールディングス(ベッド、家具類、療養ベッド・福祉用具などの製造・仕入、レンタル・小売および卸売)
- 買収側:ホームケアサービス山口(福祉用具のサービス事業、特定施設入居者生活介護事業など)
使用されたM&Aの手法は株式譲渡です。フランスベッドホールディングスはホームケアサービス山口におけるすべての株式を得ました。取得価額は公開されていません。
このM&Aにより、フランスベッドホールディングスは、ホームケアサービス山口が有する顧客基盤がプラスされるので、グループにおけるメディカルサービス事業の基盤がより強まり事業規模が拡がると見込んでいます。
参考:株式譲渡による完全子会社化についてのお知らせ
メディアスHDによる佐野器械のM&A
2021年10月に実施された医療機器販売会社同士のM&A事例です。売却側・買収側、手法、双方のメリットは以下のとおりです。
- 売却側:佐野器械(医療機器の販売および修理)
- 買収側:メディアスホールディングス(主な事業は医療機器販売や医療材料の物流管理を行うグループ会社の経営管理など)
使用されたM&Aの手法は株式譲渡です。メディアスホールディングスは佐野器械におけるすべての株式を取得し、子会社化しました。取得価額は非公開です。
佐野器械は、京都および滋賀で内視鏡などの医療機器販売を展開していました。メディアスホールディングスは、さらなる販売エリアの拡大と経営基盤の強化が可能になると考えました。このM&Aによって、グループ全体の持続的な成長・発展につなげます。
参考:佐野器械株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
ジー・スリーHDによるCファクトリーのM&A
2021年3月、再生可能エネルギー事業を展開する企業が新たに設立する100%子会社をとおして、医療機器・医療用消耗品販売事業を取得した事例です。売却側・買収側、手法、双方のメリットは以下のとおりです。
- 売却側:Cファクトリー(医療機器・医療用消耗品の販売、化粧品・健康食品の製造および販売、美容機器の製造および販売、医療経営コンサルタント業)
- 買収側新会社:ジー・スリーファクトリー(医療機器、医療用消耗品の販売、化粧品、健康食品の製造および販売、美容機器の製造および販売)
- 買収側親会社:ジー・スリーホールディングス(グループ経営管理、再生可能エネルギー事業および新規エネルギー事業)
使用されたM&Aの手法は事業譲渡です。
ジー・スリーホールディングスは、新たに設立する100%子会社「ジー・スリーファクトリー」をとおして、Cファクトリーから一部事業(医療機器・医療用消耗品の販売、化粧品・健康食品の製造および販売、美容機器の製造および販売)を取得しました。取得価額は非公開です。
取得価額はアーンアウト条項が採用され、一定売上高を超えた場合、追加で譲渡企業へ支払いが発生します。
ジー・スリーホールディングスは、再生可能エネルギー事業(太陽光発電事業者向けの発電商材販売、未稼働太陽光発電所への投資、太陽光発電所の売電事業など)を柱に、太陽光発電所のオペレーションやメンテナンス事業、非常用発電に関する事業を展開しています。
このM&Aによって、グループの収益構造強化と、さらなる事業拡大として第3の事業を確立させることを目指します。
参考:ジー・スリーホールディングス<3647>、Cファクトリーから医療機器・医療用消耗品販売事業などを取得
7. 医療機器卸・商社のM&A時におすすめの相談先
医療機器卸・商社のM&A時におすすめの相談先をご紹介します。
金融機関
投資銀行や商業銀行、証券会社などの金融機関は、M&Aのファイナンシャル・アドバイザー(FA)としての役割を担うことがあります。外資系投資銀行や日系証券会社は大規模なM&Aを得意とし、成功報酬の目安は外資系で2億円以上、日系証券会社やメガバンクで2,000万円以上、地方銀行で数百万円以上とされています。
金融機関は専門的な知識を持ち、資金調達に関する相談がしやすいことが強みです。特に、大型M&Aでは高度な財務戦略のアドバイスを受けられます。
中小企業のM&Aでは規模感が合わず、金融機関の専門性を十分に活かせない場合があります。また、成功報酬が高額な点も課題となるため、コスト面を考慮する必要があります。
公的機関
商工会議所などの公的機関は、中小企業向けのM&A支援を提供しており、政府が策定した「事業承継ガイドライン」でもM&Aが重要な手法として位置付けられています。
商工会議所は中小企業支援の経験が豊富で、買い手・売り手双方が中小企業の場合に適した相談先となります。また、中小企業特有の経営課題に対する理解があるため、スムーズな対応が期待できます。
M&Aの相談や手続きは商工会議所の会員であれば初期費用無料ですが、会員になるための費用がかかる点がデメリットです。そのため、非会員の場合は、他のM&A仲介機関と比較してコスト面を検討する必要があります。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、M&Aに特化した専門サービスを提供しており、企業の売却や買収をサポートします。ただし、仲介会社ごとに経験や得意分野が異なるため、自社に適した会社を選ぶことが重要です。
M&A仲介会社を利用する最大の利点は、幅広いネットワークを活用して最適な相手企業を探せることです。M&Aを専門とするため、適切なマッチングを期待できます。また、ファイナンシャル・アドバイザー(FA)の報酬が金融機関よりも安いケースが多いこともメリットの一つです。
一部の仲介会社では、M&A成立時の報酬を優先し、契約締結や成約を急がせるケースもあります。そのため、慎重に選定し、信頼できる仲介会社を見極めることが大切です。
8. 医療機器卸・商社のM&A・買収・売却のまとめ
医療機器卸・商社を買収しようと考えている企業や、会社を売却しようと考えている医療機器卸・商社の経営者は、業界動向やM&Aのポイントを押さえることが必要です。
M&Aは、専門家のサポートを受けることをおすすめします。その際は、医療機器卸・商社業界に詳しい専門家に任せるのが成功のコツです。
9. 医療機器卸・商社業界の成約事例一覧
10. 医療機器卸・商社業界のM&A案件一覧
【業歴50年以上/財務良好】九州・沖縄エリア×医療機械器具・歯科材料卸売業
医薬品卸・小売/その他の卸・小売/九州・沖縄案件ID:3437公開日:2025年11月26日売上高
2.5億円〜5億円
営業利益
〜1000万円
譲渡希望価格
5000万円〜1億円
医療機械器具・歯科材料・薬品の卸売や歯科医院の新規開業支援を行う企業
【介護福祉業界向け/ストック収益】ソフトウェア業
IT・ソフトウェア/SES・受託開発/医薬品卸・小売/近畿案件ID:3392公開日:2025年11月13日売上高
1000万円〜5000万円
営業利益
〜1000万円
譲渡希望価格
1円+未払給与26,958千円の返済
介護福祉事業所向けのソフトウェア販売業を営む企業
【譲渡対価:Net Cash相当額】関西地方の高度管理医療機器等販売業
医薬品卸・小売/ウェブサイト/近畿案件ID:3258公開日:2025年10月03日売上高
5億円〜10億円
営業利益
〜1000万円
譲渡希望価格
2億円(応相談)
関西地方の高度管理医療機器等販売業
【高収益 / 財務良好 / 自走可能】首都圏 × 医療・美容機器販売
その他の卸・小売/美容・健康食品/娯楽・スポーツ/関東・甲信越案件ID:3147公開日:2025年09月02日売上高
1億円〜2.5億円
営業利益
1000万円〜5000万円
譲渡希望価格
2億円
東京都を拠点に、高利益率の美容マシン販売とサロン経営を行う企業
【取扱メーカー・品目多数】北関東×理化学機器商社
医薬品卸・小売/その他の卸・小売/介護・福祉・医療/関東・甲信越案件ID:3101公開日:2025年08月20日売上高
2.5億円〜5億円
営業利益
〜1000万円
譲渡希望価格
1000万円〜5000万円
北関東にて理化学機器商社を営む企業
【総代理店商品複数・財務優良・首都圏】機械器具卸売業
その他の卸・小売/関東・甲信越案件ID:3053公開日:2025年07月29日売上高
5000万円〜1億円
営業利益
1000万円〜5000万円
譲渡希望価格
1億6,500万円
・ニッチながらも確実に需要のある国内外の商品を取り扱う老舗貿易会社。 ・複数商品の国内総代理店として、市場での競争優位性を確立している。 ・創業より40年以上の長年のご経営から、確固たる顧客...
【首都圏/品質・サービスに強み】治療院向けの医療機器販売
医薬品製造/医薬品卸・小売/関東・甲信越案件ID:3017公開日:2025年07月16日売上高
1億円〜2.5億円
営業利益
〜1000万円
譲渡希望価格
希望なし
対象会社は首都圏にて、整骨院・接骨院向けに医療機器の企画販売を手掛けている企業様です。
【海外/希少案件】シンガポールの動物病院運営
医薬品卸・小売/その他の卸・小売/介護・福祉・医療/海外案件ID:1799公開日:2024年04月24日売上高
2.5億円〜5億円
営業利益
1000万円〜5000万円
譲渡希望価格
5億円〜7.5億円
動物病院運営及び動物病院関連商品の卸売
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