空調設備工事会社のM&A動向とは?13の事例や業界動向を徹底解説!

執行役員 企業情報第一部 部長
辻 亮人

大手M&A仲介会社にて、事業承継や戦略的な成長を目指すM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、経営者が抱える業界特有のお悩みに寄り添いながら、設備工事業や建設コンサルタント、製造業、医療法人など幅広い業種を担当。

空調設備工事会社のM&Aでは、事業譲渡や売却・買収などが活発に行われています。本記事では、空調設備工事会社のM&Aや市場の動向、事業譲渡や売却・買収などの事例と併せて解説します。M&Aの注意点や成功ポイントなどもご紹介しましょう。

目次

  1. 空調設備工事会社とは
  2. 空調設備工事会社のM&A最新動向
  3. 空調設備工事会社のM&A・買収・売却・譲渡事例13選
  4. 空調設備工事会社がM&Aをする3つのメリット
  5. 空調設備工事会社のM&Aの6つの流れ
  6. 空調設備工事会社のM&Aにおける売却価格の相場
  7. 空調設備工事会社のM&Aにおける2つの注意点
  8. 空調設備工事会社がM&Aをするときの相談先
  9. 空調設備工事会社のM&A動向まとめ
  • 空調設備工事会社のM&A・事業承継

1. 空調設備工事会社とは

空調設備工事会社とは、冷暖房などの空調設置工事を手掛ける会社のことです。工事を行う建物は、一般の住宅や会社、工場などを対象としています。空調設備工事会社の工事は2種類です。発注者によって、元受け工事と下請け工事に分類されます。

空調設備工事会社の特徴は、関連する事業の展開という点です。冷暖房の空調工事のほか、吸排気の工事、室温湿度を調整する工事などを行っています。

M&A動向を見る前に、空調設備工事会社業界の定義を確認しておきましょう。

空調設備工事会社業界の定義

空調設備工事会社業界には、冷暖房の設置工事をはじめ、建物設計・施工や、電気・ガス工事、建物の保守点検などの事業を行う会社が属しています。それぞれの空調設備工事会社は、空調設備の工事に合わせたサービスを提供することで、他社との差別化を図っているのです。

一度の工事でより多くの利益が上げられるように、冷暖房の設備工事と並行して、吸排気・電気・ガス工事などを行っています。工事を終えた後の保守点検など、付帯するサービスを提供するのも一般的です。

空調設備工事会社業界に属する会社は、自社で行える工事を増やしています。工事を終えた後のフォローにも対応することで、業界の中で生き残れるポジションを確立させているのです。

空調設備工事会社業界に見られる特徴

空調設備工事会社業界の工事は、一般的に3パターンで受注されます。

  • 一式請負(ゼネコンが工事の一式を受注し、各設備工事会社に発注)
  • 別途工事(ゼネコンと設備工事会社が別々に受注)
  • コストオン工事(発注側が設備工事会社を選び、その費用も上乗せしてゼネコンに発注)

この業界は、地球環境やエネルギー問題に対して、関連するインフラ整備で急速に拡大しています。2011年の東日本大震災などの自然災害に伴う復旧工事の増加も、業界全体の受注増加に影響を及ぼしています。

ゼネコンとの関係が非常に重要です。ゼネコン1社が倒れれば、売り上げに大きく影響します。リスクを避けるために複数のゼネコンと関係を築き上げる会社が多くなっているのが、この業界の特徴です。

空調設備工事会社業界の市場規模

オリンピック需要に加え、都市の再開発が影響して、この業界の受注件数は増加しています。空調設備工事の大手4社は、「高砂熱学工業」「大気社」「三機工業」「ダイダン」です。このうち、「高砂熱学工業」と「大気社」の経常利益は、前年同期比で30%増でした。

オリンピック後に減少するのではないかと懸念されましたが、非常に順調です。老朽化したインフラの改良工事、オフィスビルの建て替えやリノベーションなどが増加の要因です。今後も、設備工事会社業界の市場規模はさらなる拡大が期待されるでしょう。

空調設備工事会社業界の課題と展望

この業界は、災害復旧工事やオリンピック需要で受注件数が増えています。

一方で、慢性的な人出不足という課題を抱えているのが現状です。ベテランの60歳以上の労働者が引退することも間近に控え、人出不足はより一層深刻化が懸念されます。人出確保のための人件費高騰も大きな問題となっています。中国や中東などの海外の建設ラッシュにより、建築資材が高騰しているのも経営を圧迫している重要課題です。

このような人件費や建築資材の高騰が、工事コスト高騰の要因です。何より人手不足は深刻で、各企業は人材確保に追われています。今後も災害復旧工事や都市再開発によって、この業界の需要は安定的な増加が見込まれます。

上記の課題をいかに解決できるかが分岐点になってくるといえるでしょう。

2. 空調設備工事会社のM&A最新動向

近年、空調設備工事会社のM&Aは活発化してきています。以下の業界の動きが関係しているからです。

  1. 業界の多くは中小企業のため競争が激化
  2. 規模拡大を目指したM&Aは増加傾向
  3. 周辺事業を買収しワンストップ経営を目指す企業も増加
  4. 業界全体の後継者問題が顕著

以上の4つのポイントを押さえ、空調設備工事会社のM&Aについての理解を深めましょう。

①業界の多くは中小企業のため競争が激しい

近年、空調設備工事業界の中でも中小企業による競争が激化しています。中小企業庁によると、日本企業の99.7%を中小企業が占めているという報告があります。そのため、空調設備工事会社業界でも、中小企業同士の競争が激しくなっているのです。

一方で大企業は全てのサービスを自社で提供することがトレンドとなっています。中小企業はますます太刀打ちできなくなってきているのが現状です。

②規模拡大を目指したM&Aは増加傾向

空調設備工事業界の大企業が規模の拡大を目的としたM&Aを行うケースが増えてきています。上場を果たしている企業では、M&Aを利用したサービスの強化を図っているのです。
 

主なM&A事例を2つ挙げてみましょう。
 

1つ目は、四電工による菱栄設備工業の買収です。東京オリンピック後に予想される建設需要の低下を見越して、電気工事に付帯する空調設備工事会社などを買収しています。他県の企業を獲得することで県下における需要の低下を補い、他社との競争に打ち勝つ計画です。


2つ目は、ミライト・テクノロジーズによる西日本電工の買収です。M&Aを利用した買収により、電気設備・空調設備・太陽光発電設備工事などを獲得できました。買収により空調設備工事事業の強化を図り、付帯工事事業(エネルギー・ビル事業)を拡大させることを目的としています。

上記2例のように、大企業が規模拡大を目的としたM&Aを実施する傾向がみられます。

③周辺事業を買収しワンストップ経営を目指す企業も増加

空調設備工事会社のトレンドとして、付帯事業の買収による包括経営があります。空調設備工事会社が、電気設備や給排水工事の事業を獲得し、一括したサービスの提供をしようという考えが広まっています。

店舗の企画から保守点検まで一貫したサービスをするため、M&Aで関連会社を買収する例が増えているのです。冷凍冷蔵設備工事会社や、空調設備工事会社、ガス空調機器の設置・保守を手掛ける会社を獲得しようとしています。

買い手企業が欲しい事業だけを売却することも可能です。一部の事業を切り出して譲渡することを、事業譲渡といいます。事業譲渡は、残った事業の経営が続けられるという点がメリットです。

空調設備工事会社の事業譲渡については、関連記事で詳しく説明しています。メリットとデメリットをしっかり把握して、M&Aの手法を決定していきましょう。

④業界全体の後継者問題も顕著

後継者問題は業界全体で顕著となっています。2019年の帝国データバンクの調査では、65.2%の企業が後継者がいないとしており、建設業界は71.4%と深刻です。空調設備工事会社の業界も、技術を承継したり会社を継いだりする人が減っていることがわかります。

後継者に悩んでいる企業がM&Aを実施して解決する例が増えています。親族や従業員に会社を引き継がなくても、第三者の企業へ会社を売却することで会社が事業継続できるのです。

空調工事会社の事業承継にお悩みであれば、下記の記事を参考にしてください。メリットや事業承継先の探し方、事業承継の流れについて詳しく解説しています。

【関連】空調工事会社は事業譲渡をするべき?手続きやメリットを詳しく解説
【関連】空調工事会社は廃業よりも事業継承すべき!動向や手続きの方法を詳しく解説

3. 空調設備工事会社のM&A・買収・売却・譲渡事例13選

実際にどのようなM&Aが実施されているのか気になるところです。近年に行われた取引事例を13選ご紹介します。

  1. 九電工による中央理化工業のM&A
  2. ジーネクストによるBPMとの資本業務提携
  3. アウトソーシングによるCalPacのM&A
  4. ユアテックによる空調企業のM&A
  5. 四電工による有元温調のM&A
  6. 日立製作所による日立コンシューマ・マーケティングと日立アプライアンスのM&A
  7. ラックランドによる大阪エアコンほかのM&A
  8. ラックランドによる光立興業のM&A
  9. 新コスモス電機によるフィガロ技研
  10. 三菱電機によるデルクリマ社のM&A
  11. 東京競馬場による株式会社タックのM&A
  12. アサヒHDによる紘永工業のM&A
  13. 橋本総業による若松物産のM&A

空調設備工事会社のM&Aの事例を確認し、具体的なイメージを膨らませていきましょう。

①九電工による中央理化工業のM&A

九電工の事例です。

2021年8月に、中央理化工業および子会社8社を買収しました。

M&Aの詳細は以下のとおりです。
 

譲渡・売却価額 非公開
M&Aの手法 株式譲渡
M&Aの目的 消防・防災事業分野の強化・営業基盤獲得による相乗効果

②ジーネクストによるBPMとの資本業務提携

ジーネクストの事例です。

2021年7月に、ジーネクストとクラウド型CMMS(設備保全管理システム)の開発を行うBPMが資本業務提携を発表しました。

M&Aの詳細は以下のとおりです。
 

譲渡・売却価額 非公開
M&Aの手法 資本業務提携
M&Aの目的 マネジメント強化・システム連携によるメンテナンスDX推進

③アウトソーシングによるCalPacのM&A

株式会社アウトソーシングの事例です。

2021年4月、株式会社アウトソーシングの連結子会社AECが、California Pacific Technical Servicers LLC (CalPac) を子会社化しました。

M&Aの詳細は以下のとおりです。
 

譲渡・売却価額 非公開
M&Aの手法 株式譲渡
M&Aの目的 事業安定化・業容拡大によるシナジー効果

④ユアテックによる空調企業のM&A

ユアテックの事例です。

2020年7月に、冷暖房・空調設備工事の空調企業を買収しました。

M&Aの詳細は以下のとおりです。
 

譲渡・売却価額 非公開
M&Aの手法 株式譲渡
M&Aの目的 施工体制の強化・営業面における相乗効果

➄四電工による有元温調のM&A

各種の設備工事を手掛ける四電工の事例です。

2018年の2月に、関西圏を中心に空調・管工事事業を展開する有元温調を買収しました。

M&Aの詳細は以下のとおりです。
 

譲渡・売却価額 非公開
M&Aの手法 株式譲渡
M&Aの目的 関西圏の空調・管工事事業の強化と、シナジー効果の獲得

⑥日立製作所による日立コンシューマ・マーケティングと日立アプライアンスのM&A

日立製作所の事例です。

子会社の日立コンシューマ・マーケティングと日立アプライアンスを合併させ、新しい会社を設立させています。

合併の詳細は以下のとおりです。
 

譲渡・売却価額 非公開
M&Aの手法 合併
M&Aの目的 多様化する生活スタイルに対応したサービスの提供

⑦ラックランドによる大阪エアコンほかのM&A

ラックランドの事例です。

2017年の9月に、大阪エアコンとオーエイテクノの買収を発表しており、この買収により2社を子会社化しました。
 

譲渡・売却価額 非公開
M&Aの手法 株式譲渡
M&Aの目的 空調設備工事事業・関西圏の地盤強化によるシナジーを得るため

⑧ラックランドによる光立興業のM&A

続いても、ラックランドの事例です。

2017年の7月に、光立興業の買収を発表しました。

M&Aにより、対象企業の株式をすべて取得し、子会社化しています。
 

譲渡・売却価額 非公開
M&Aの手法 株式譲渡
M&Aの目的 首都圏における事業強化と、既存事業とのシナジー効果を得るため

⑨新コスモス電機によるフィガロ技研

新コスモ電機による事例です。

2016年の5月に、フィガロ技研の株式を取得し、買収することを発表しています。M&Aによって、対象企業を子会社としました。
 

譲渡・売却価額 43億2,900万円
M&Aの手法 株式譲渡
M&Aの目的 協力体制を取り、ガスセンサ・ガス警報器市場での生き残りを図るため

⑩三菱電機によるデルクリマ社のM&A

三菱電機の事例です。

2015年の12月と2016年の2月に、イタリアの業務用空調事業会社・デルクリマの株式を取得し、子会社としました。尚、現在ではデルクリマ社はMELCO Hydronics & IT Cooling S.p.A (メルコ ハイドロニクス アンド アイティークーリング社)へと2016年3月15日に社名変更されています。
 

譲渡・売却価額 約885億円
M&Aの手法 1回目:株式譲渡 2回目:株式公開買い付け
M&Aの目的 世界市場における業務用空調・冷熱事業の強化

⑪東京競馬場によるタックのM&A

東京競馬場(JRA日本中央競馬会)の事例です。

2015年の7月に、タックの全株式を取得し、子会社とすることを発表しています。
 

譲渡・売却価額 非公開
M&Aの手法 株式譲渡
M&Aの目的 空調設備事業の内製化

⑫アサヒホールディングスによる紘永工業のM&A

アサヒホールディングスの事例です。

2014年の3月に、アサヒホールディングスの子会社・インターセントラルが、紘永工業の株式取得を発表しています。

このM&Aによって、アサヒホールディングスの子会社・インターセントラルは紘永工業を子会社化としています。
 

譲渡・売却価額 非公開
M&Aの手法 株式譲渡
M&Aの目的 空調設備事業の強化

⑬橋本総業による若松物産のM&A

最後は、橋本総業の事例です。

2013年の9月に、空調設備の販売・施工を手掛ける若松物産の株式を取得し、子会社とすることを発表しています。

M&Aの詳細は以下のとおりです。
 

譲渡・売却価額 非公開
M&Aの手法 株式譲渡
M&Aの目的 中部地区における営業基盤の強化

  • 空調設備工事会社のM&A・事業承継

4. 空調設備工事会社がM&Aをする3つのメリット

空調設備工事会社がM&Aをするメリットは次の3つです。

  1. 会社を安定させられる
  2. 選択と集中ができる
  3. 後継者不在を解決できる

それぞれのメリットを詳しく確認しましょう。

①会社を安定させられる

空調設備工事会社をM&Aで売却することで、会社を安定させられます。M&Aによって大手企業の傘下になれば、さまざまなメリットを生みます。資本業務提携をして資金を調達することが可能です。親会社が持つ顧客にサービスを提供できます。人材不足の解消にもつながるでしょう。

資金を得て、空調工事周辺のサービスを取り入れることも可能です。空調設備工事会社がM&Aをすると、顧客基盤や事業を強化でき、収益アップや経営安定につながります。

②選択と集中ができる

空調設備工事会社の経営における選択と集中ができます。

例えば、複数ある事業の中で不採算事業があったとしたら、この赤字事業だけをM&Aで売却できるのです。売却することでまとまった資金が手に入るので、経営資源を他の事業に投資できます。会社の安定した経営が実現するでしょう。

空調設備工事会社は一部のサービスだけを手にしたいと考えることも多いです。手放したい事業があるならM&Aを活用しましょう。

③後継者不在を解決できる

M&Aで空調設備工事会社の経営者を変えることで、後継者がいなくても会社を存続させられます

後継者不在のために廃業を考えているなら、M&Aを行う方が良いでしょう。なぜなら、会社を残すことで従業員の雇用を守れるからです。廃業すれば、従業員や取引先に迷惑をかけてしまいます。

後継者不在で悩んでいるなら、M&Aを視野に入れて専門家に相談してみましょう。

5. 空調設備工事会社のM&Aの6つの流れ

空調設備工事会社のM&Aの事例やメリットを見ていると「うちの会社もM&Aしたら良いかもしれない」と考える経営者もいるでしょう。検討を始める前に、空調設備工事会社のM&Aの流れを知っておくとスムーズにM&Aを実行できます

以下の6つの流れを確認しましょう。

  1. 買い手企業の選定
  2. 条件交渉
  3. 基本合意書の締結
  4. デューデリジェンス
  5. 最終譲渡契約の締結
  6. クロージング

①買い手企業の選定

買い手企業の選定から始めます。空調設備会社は、業界内でのM&Aが多い傾向です。買い手企業は同業者の中から選ぶことをおすすめします。

いきなり企業を選出するのではなく、以下のように条件を洗い出すと良いでしょう。

  • 業種
  • 会社の規模
  • 活動エリア
  • 経営者の考え方

これらの条件に合う企業を洗い出していくとM&Aは成功しやすいです。買い手企業の選定で困ったらM&A仲介会社へ相談しましょう。M&A仲介会社であれば、ネットワークの中から最適な買い手企業を選定してくれます。

気になる企業があればアプローチし、面談を繰り返し行いましょう。

②条件交渉

買い手企業がM&Aに前向きな姿勢を見せたら、条件交渉を行いましょう。売却価格やM&Aの手法、従業員や経営者の処遇、M&A実施までのスケジュールなどを決めます

多くの場合、買い手企業から意向表明書が提示されます。意向表明書とは、M&Aを実施する意向とM&Aの条件が記載された書類のことです。あくまでも、意向表明書は買い手側の意向です。それを基に条件をすり合わせていくことになります。

③基本合意書の締結

条件がまとまったら、基本合意書を締結しましょう。基本合意書とは、互いに納得した条件でM&Aを実施することを約束する書類です。基本合意書は仮の契約に過ぎません。この後行われるデューデリジェンスにおいて、売り手企業が提示した資料などの事実確認が行われます。

デューデリジェンス後、再度条件交渉が行われることを覚えておきましょう。

④デューデリジェンス

基本合意書の締結後は、買い手企業によるデューデリジェンスが行われます。デューデリジェンスとは、売り手企業の経営状況や持っている資産・特許などの確認を行うことです。取引先や契約状況、キャッシュフローの状況など細かくチェックされます。

質問をされたときに受け答えができるように、弁護士などを頼りながら体制を整えておきましょう。特に、空調設備会社のM&Aでは従業員の持つ経歴やスキルなどが重視されます。すぐに資料を提出できるようリストにまとめておくと良いでしょう。

デューデリジェンスにおいて、嘘をついたり隠し事をしたりするのは絶対にやめましょう。隠し事をしたままM&Aを成立させてしまうと、後々トラブルの原因となるからです。デューデリジェンスで隠し通せても、いずれは必ず見つかってしまいます。後ろめたいことがあったとしても正直に話すようにしてください。

⑤最終譲渡契約の締結

デューデリジェンス後、再度条件交渉を行い最終譲渡契約を締結します。基本合意書の内容で進めていくことが一般的です。企業価値の算定などはデューデリジェンスによって変わることもあります。安易に最終譲渡契約を結ばないよう気をつけましょう。

不安や疑問に感じることがあれば、買い手企業に納得のいく説明をしてもらうことが大切です。契約書の内容について、M&A仲介会社などにリーガルチェックしてもらうことも忘れずに行いましょう。

⑥クロージング

無事に最終譲渡契約の締結が終われば、クロージングをしましょう。買い手企業による売却対価の支払い、売り手企業から買い手企業への所有権の移行や名義変更などを行います。

アフターフォローとして、売り手企業の従業員のケアもしっかりと行ってください。売り手企業の従業員は突然のM&Aに驚くかもしれません。「このまま働き続けて大丈夫だろうか?」と不安を感じさせてしまうと、離職につながる恐れもあります。従業員には納得のいくM&Aの理由や目的、今後の展望を話しましょう。

買い手企業のシステムや社風に馴染めるよう、経営者は買い手企業と協力するべきです。1日でも早く働きやすい環境を提供しましょう。

以上が、空調設備工事会社がM&Aをするときの流れでした。事前に知っておくことでスムーズに準備が始められます。

M&Aをご検討の場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には、空調設備工事業界に詳しいM&Aアドバイザーが在籍しており、親身になってフルサポートいたします。

当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。

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6. 空調設備工事会社のM&Aにおける売却価格の相場

M&Aの事例や流れを確認しましたが、「実際にどれくらいの価格で売れるのだろうか」というのが経営者としては気になるところです。空調設備工事会社のM&Aにおける売却価格の相場は、対象事業・企業の資産や、企業価値評価の仕方によって異なります。そのため、平均的な相場は決められません。


空調設備工事会社のM&Aを望む方は、過去の案件を参考にしてみましょう。同じ業種はもちろん、事業・会社の規模や、売上高、従業員の数、M&Aのスキームなどから、自社と類似する案件を調べておおよその相場を把握してください。

高い価格で会社や事業を売却したいのであれば、自社ならではの強みを明確にしましょう。買い手企業にアピールすることが大切です。「強みと言われてもわからない」と思う経営者もいるかもしれませんが、しっかり自社のことを分析してみましょう。

以下の内容について分析することで、自社ならではの強みが見えてくるかもしれません。

  • カバーしているエリア
  • 従業員の技術力
  • 展開しているサービス・商品
  • 顧客
  • ブランド力

これらの観点から自社を分析してみましょう。ほかの企業にはない自社の強みが出てくるはずです。強みがわかれば、その強みを魅力的に感じてくれる買い手企業を探しましょう。

例えば関西エリアをカバーしているのであれば、首都圏だけで展開している同業会社は、エリア進出のために「買収したい」と思うはずです。最適な買い手企業を見つけることが、高い価格で取引をすることにもつながります。

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7. 空調設備工事会社のM&Aにおける2つの注意点

空調設備工事会社のM&Aでは、管工事の建設業許可の取り扱いに注意しなければなりません。管工事の建設業許可とは、空調設備工事会社が営業するにあたって欠かせない許可です。管工事の建設業許可がなければ空調設備工事会社は事業運営できません。

注意点は、以下の2つです。順番に確認しましょう。

  1. M&Aで管工事の建設業許可を引き継げないことがある
  2. M&A実施後も管工事の建設業許可の要件を満たす必要がある

①M&Aで管工事の建設業許可を引き継げないことがある

M&Aを実施するとき「事業譲渡」という手法を活用すると、買い手企業へ管工事の建設業許可を引き継げないことがあります。事業譲渡とは、事業の一部または全部を譲渡するM&Aの手法です。事業譲渡では、何を譲って何を会社に残すのか決められます。事業譲渡は会社そのものを譲渡する手法ではありません。そのため、管工事の建設業許可を引き継げないのです。

管工事の建設業許可を取得している買い手企業であれば、問題なく営業が続けられます。しかし、買い手企業が管工事の建設業許可を取得していない場合、管工事の建設業許可を改めて取らなければ営業ができません。管工事の建設業許可を取得するには、約3ヶ月かかります。

事業譲渡でM&Aをすると管工事の建設業許可を引き継げません。買い手企業の取得状況や取得にかかる時間を逆算して事業譲渡を実施しましょう。

ちなみに、株式譲渡という手法であれば管工事の建設業許可は引き継がれます。株主の名義が変わるだけだからです。空調設備工事会社の株式譲渡については、下記の関連記事で詳しく説明しています。参考にしてください。

②M&A実施後も管工事の建設業許可の要件を満たす必要がある

当然ですが、M&A実施後も管工事の建設業許可の要件を満たしていなければ営業ができません。管工事の建設業許可の要件を満たしているのは、現在の経営者自身であることが多いです。経営者が変わることで管工事の建設業許可の要件を満たせなくなるケースが出てきます。

管工事の建設業許可の要件は以下のとおりです。

  • 1級・2級管工事施工管理技士などの資格を保有する専任技術者になれる人物
  • 5年以上の役員経験がある経営業務の管理責任者

この2つの役割は1人で担うことが可能です。現在の経営者が2つの役割を担うことで要件を満たしていることも珍しくありません。

しかし、M&Aを機に要件を満たしている経営者が引退してしまうと、管工事の建設業許可は認定されなくなってしまいます。引退後もこれらの要件を満たしている状態で経営ができるように、事前に買い手企業と調整しておくことを忘れないようにしましょう。

以上のように、空調設備工事会社がM&Aを実施するときは、管工事の建設業許可の引き継ぎに気をつけなければなりません。同業者であれば、管工事の建設業許可を既に取得している可能性も高いです。取得していなくても、管工事の建設業許可について知っている可能性もあるでしょう。

全くの別業界とのM&Aの場合、こちらから話をしなければ、M&A成立後に問題が発覚することになります。困るのは営業できなくなる従業員や契約している取引先です。迷惑をかけないよう、管工事の建設業許可の取り扱いには十分注意しましょう。

【関連】空調工事会社の株式譲渡(会社譲渡)を解説!動向・事例・メリットなど

8. 空調設備工事会社がM&Aをするときの相談先

空調設備工事会社のM&Aでは管工事の建設業許可の取り扱いなど、気をつけなければならないことがあります。初めてM&Aを実施するのであれば、専門家に相談すべきです。空調設備工事会社のM&Aを相談するなら、M&A仲介会社を選びましょう

M&A仲介会社は、専任のスタッフが就いたり、交渉からクロージングまでをしっかりサポートしてくれます。専門知識を必要とする交渉や契約の場面で、適切なアドバイスを受けられるので頼れる存在です。

M&A仲介会社によっては、地方の案件も取り扱ってくれます。近隣では買い手が見つからない場合でも、譲渡・譲受先を見つけることが可能です。

M&A仲介会社をとおさずにM&Aを進めてしまうと、想像以上の労力と時間がかかってしまいます。M&Aを実行するには業界知識だけでなく、法務・税務などの専門知識が不可欠だからです。料金体系や、取り扱う案件の規模などを確かめて、M&Aの仲介会社に相談をしてみましょう。

空調設備工事会社のM&A・買収・売却・譲渡の相談先には、M&A総合研究所をお選びください。M&A総合研究所では、M&Aアドバイザーが親身になってフルサポートいたします。

当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。

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9. 空調設備工事会社のM&A動向まとめ

近年、空調設備工事業界ではM&Aを実施するケースが増えてきています。中小企業同士の競争の激化や後継者不足といった問題が業界内で蔓延しているからです。

大企業ではサービスの一元化がトレンドとなっています。多くのサービスを取り込もうとする動きが顕著です。大企業が中小企業をM&Aで買収し、相互にメリットをもたらしています。

空調設備工事会社のM&Aをするときは、気をつけなければならないことがあります。専門家に頼りながら、空調設備工事会社のM&Aを成功させましょう。

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