食品製造業界のM&A・事業承継の動向!最新の事例や相場を徹底解説【2024年最新】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

昨今、食品メーカー・食品会社のM&A・買収・売却(譲渡)が盛況です。本記事では、食品メーカー・食品会社のM&A動向や買収・売却価格の相場を分析するにあたって、関連する製油業界や、代表的商品である冷凍食品、工場などとの兼ね合いも含めて解説します。

目次

  1. 食品製造業界の市場動向
  2. 食品製造業界のM&A・事業承継の動向
  3. 食品製造業界におけるM&Aメリット
  4. 食品製造業界のM&A相場価格
  5. 食品製造会社のM&A・事業承継の流れ
  6. 食品製造会社・食品メーカー関連企業同士のM&A成功事例12選
  7. 食銀製造会社と異業種によるM&A事例4選
  8. 食品製造会社のクロスボーダーM&A事例2選
  9. 食品製造会社のM&A案件一覧
  10. 食品製造会社のM&A成功ポイント
  11. 食品製造会社の工場売却方法
  12. 食品製造業界のM&Aまとめ
  13. 食品メーカー・食品加工・食品工場業界の成約事例一覧
  14. 食品メーカー・食品加工・食品工場業界のM&A案件一覧
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1. 食品製造業界の市場動向

食品製造業界の市場規模や競合・代替品、市場動向を紹介します。

市場規模

農林水産省 「令和4年農業・食料関連産業の経済計算(概算)」

農林水産省 「令和4年農業・食料関連産業の経済計算(概算)」

出典:https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/keizai_keisan/r4/index.html

農林水産省の発表によると、2022年における農業・食料関連産業の国内生産額(概算値)は、前年に比べて4.7%増加し114兆2,178億円となりました、なお、これは全経済活動(注)の10.2%を占めている状況です。

また、経済産業省が実施している工業統計調査の「2020年確報 産業別統計表」によると、2020(令和2)年における食料品製造業の市場規模概要は以下のとおりです。

  • 市場規模(製造出荷額):29兆8,571億8,800万円(前年比0.3%増)
  • 企業数従業員4名以上の事業所:23,648社(前年比3.2%減)
  • 従業者総数(従業員4名以上の事業所):1,136,951人(前年比0.8%減)

参考:
農林水産省 「令和4年農業・食料関連産業の経済計算(概算)」
経済産業省「2020年確報 産業別統計表」令和3年8月13日公表・掲載

競合・代替品

今後は、環太平洋戦略的経済連携協定の影響輸入価格の下落が考えられるものの、これと併せて国内の食品製造業にとっての代替品である輸入食品の価格も安くなることから、決して楽観視はできません。

食品業界では世界的規模での様々な要素が影響をもたらすことから、自社が製造している製品への注目だけでなく、安定的な事業経営をするための事業構成も重要視されます。

業界動向

食品メーカー・食品会社を取り巻く動向は、主に以下のとおりです。

市場は成長鈍化

農林水産省 「食品産業動態調査」

農林水産省 「食品産業動態調査」

出典:https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_doutai/attach/pdf/doutai_top-141.pdf

食品製造業の生産額指数は、平成23年以降ゆっくりと上昇していましたが、令和2年には新型コロナウイルスの影響で低下しました。しかし、令和3年には回復し、令和5年には物価上昇の影響もあり、前年比8.3%という大幅な増加を見せました。

一方、食品製造業の生産指数は、令和元年以降緩やかに低下していましたが、令和5年には前年比1.0%とわずかながら増加しました。

原料価格上昇に伴い値上げ

食料品は原材料の多くを輸入に頼っています。小麦や大豆・食肉などといった食材は価格変動や為替動向の影響を大きく受けてしまうのが実情です。

近年の世界的な食料品原料の市場におけるトピックとして、中国の市場拡大があります。これにより、原材料価格が高騰しているほか、為替の円安進行によってコストが増加傾向です。値上げが難しい食料品製造業者にとって、こうした価格変動は経営上の大きな課題だといえます。

食品表示偽装などによる安全性への意識拡大

近年、食品表示偽装問題の報道が相次いでいます。不適切な情報を提示し食料品を製造・販売していた業者が存在したため、消費者における食の安全性に対する意識がますますシビアな状況です。

衛生管理が徹底していない食品メーカー・食品会社や、消費者からの信用が薄い食品メーカー・食品会社は競争に負けてしまう可能性が高く、食品に関する消費者の安全意識を裏切らない経営が求められています。

健康ブーム、環境への配慮など多様なニーズの出現

食品における安全性の観点から、トレーサビリティにも注目が集まっています。

トレーサビリティとは、物品の流通経路を生産段階から最終消費段階もしくは廃棄段階まで追跡できる状態のことです。日本では牛肉・コメ・コメ加工品に対して、こうした対応がすでに義務付けられています。

健康ブームによる健康に対する意識が向上したことへの対応なども迫られている状況です。

労働生産性の課題

農林水産省「農林水産省における食品産業の 生産性向上に向けた取組 」

出典:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/soumu/attach/pdf/seisansei-63.pdf

食品製造業の労働生産性は、ほかの製造業と比べ低いのが現状です。労働生産性とは1人当たりの年間付加価値額を表したものですが、2023年の労働生産性をみると製造業全体が8800万円であるのに対して、食品製造業は5900万円と大きな差があります。

食品製造業の労働生産性が低い理由のひとつは、痛みやすかったり腐りやすかったりする食品は生産の調整が難しく安定した生産が困難であるためです。また、小さく、柔らかくて形状が不安定な食品に関しては機械化が難しいことも理由のひとつであり、食品製造業では自動化・省人化がほかの製造業より遅れていることがわかります。

現在、労働生産性を高める取り組みとともに、食品ロス、海洋プラスチック問題などの対応も求められており、食の安全・安心とともにどのように労働生産性を高めていくのかが大きな課題です。

参考:農林水産省「農林水産省における食品産業の 生産性向上に向けた取組」

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2. 食品製造業界のM&A・事業承継の動向

消費者の求めるクオリティは年々高くなっています。食品製造会社・食品会社にとっては消費者のニーズを満たせる事業運営が必要であり、その手段としてM&Aが活用されるケースも多いです。

食料品製造業は素材型と加工型に大きく分類され、それぞれ以下のような特徴があります。
 

  • 素材型:加工メーカーや外食産業への原料供給が主要業務(製糖、製粉、製油、飼料など)
  • 加工型:原料を仕入れ加工品を製造し家計へ供給することが主要業務(パン・菓子、調味料、冷凍食品、めん類など)

食品メーカー・食品会社のM&Aには、以下のような動向がみられます。
 
食品メーカー・食品会社同士のM&A
売り手企業にみられる特徴 買い手企業に多くみられる目的
買い手主力事業と同分野で異なる強みを持つ食品会社や食品メーカー
  • 清算・物流・調達など効率向上
  • 強みや弱みの相互補完による主力事業の強化
買い手側とは違う分野に強みを持つ食品会社や食品メーカー
  • ニーズ変化や原料高騰に対応できる事業体制の構築
  • 事業ポートフォリオの拡大によるリスク分散
  • 新たな食品分野への事業進出による業容拡大
新食品素材の開発を手掛けるベンチャー企業やフードテック企業
  • SDGsや環境・健康へのニーズに対する対応力強化
  • 次世代商品の開発スピード加速化
海外の食品会社や食品メーカー
  • 海外展開事業の強化

多角化を目指す同業他社の買収が活発化

「素材型」の食品製造企業では、多角化を目指したM&Aが活発です。一般的に素材型では商品の差異化が難しいうえに、加工メーカーへの原料供給は規模が大きいほど効率的であるため、スケールメリットが非常に大きくなります

その一方で、関税引き下げなどに伴う輸入品との競争激化や、加工メーカー・外食産業からの値下げ圧力が働いている状況を受けて、同業他社の買収による再編が進みました。

近年の事例では、2014(平成26)年10月に砂糖大手の三井製糖が、病院・介護施設向け栄養補助食品メーカーのニュートリー(三重県)を買収したケースがあります。

海外進出のための海外メーカーとのM&A増加

日本国内は市場が飽和状態にあり競争が厳しいため、積極的に海外に打って出ようとする動きもみられます。加工型の食料品製造企業が実施しているクロスボーダーM&A(海外企業とのM&A)はその典型例です。

2014年9月、味の素は米国におけるアジア食の冷凍食品トップであるウィンザー・クオリティ・ホールディングスを買収しました。

本M&Aの狙いは、ウィンザーの持つ「冷凍食品における米国消費者に精通したマーケティング力」「冷凍食品における全米に広がる流通ネットワークと営業力」「冷凍食品における全米をカバーする生産拠点」を獲得することです。

近年は、大手企業を中心に海外メーカーとのM&Aが増加傾向にあります。資金力に余裕があるなら、海外企業とのM&Aを積極的に検討するのもよいでしょう。

異業種からの新規参入M&Aが増加

 

食品メーカー・食品会社と異業種(買い手側)のM&A
買い手企業の業種 買い手企業の主な目的 売り手企業の主な目的
外食チェーン
  • 自社のブランド力を生かして新規事業へ進出
  • 買い手のブランド力や店舗網を生かした販売拡大
  • 受注力の安定化・強化
食品卸売会社・
商社
  • 成長が見込める分野へ投資
  • サプライチェーン(川下側)への事業拡大
  • 生産・調達・販売の拡大
食品小売会社
(スーパーなど)
  • PB商品の新開発や生産力強化
  • 惣菜事業などの拡大拡充
  • 買い手のブランド力や店舗網を生かした販売拡大
  • 受注力の安定化・強化
ファンド
  • 成長が見込める分野への投資
  • 生産体制強化や開発を行うための資金調達

異業種からの新規参入M&Aの動向を見ると、近い将来に増加が見込まれるのは健康食品を製造する企業の買収です。なぜなら、昨今は健康志向が高まっているためです。

食料品製造企業には、老舗ながら後継者不在や経営不振に陥っていたり、特定地域のマーケットに強みを持っていたりする企業も多くあります。こうした企業の買収には、今後さまざまな業種が目を付ける可能性が十分に考えられます。

もしも自社がこうした状況なら、M&Aの際は幅広い視野で買い手を探すと良いでしょう。同業者以外から自社にふさわしい買い手が見つかる可能性も非常に高いです。

地域密着型ファンドなどの参入

一般的にファンドでは、経営関与を目的として株式を取得して、その企業の経営に関与することで株式価値を高めようとします。

通常、ファンドは株式価値向上後に、株式の新規上場・ 再上場や他社への転売をつうじた投資利益の獲得を目指しますが、後継者難をカバーするケースもあります。これに該当するのが、「地域密着型ファンド」や「事業承継ファンド」などです。

主な流れとしては、ファンドが会社の株式を取得し新たなオーナーとして経営を行いながら、人材を育て適任者を見つけて後継者の育成も並行します。その後、後継者に会社を任せて存続させる形です。

製販一体を目指すM&A

近年は、食品製造業と食品小売業とでM&Aを行い、製販一体を目指すケースも増えてきました。実際に行われたM&Aでは食品小売を手掛ける企業が食品製造事業者を傘下に収め、製造ラインを内製化した事例などがあります。

製販一体化の大きなメリットは、商品調達に生じていた中間マージンを削減できることです。それ以外に自社独自の商品を開発も可能となるため、競争力の強化を図ることもできます。

コスト高を受けた業界再編

食料品業界では、原料費が高騰傾向にあることに加えて、加工メーカーや外食産業からの値下げ圧力も受けています。こうしたなかで、「素材型」の食料品製造企業では、M&Aによる業界再編が進んでいます。統合により、原材料調達や間接業務の効率化・工場統廃合などによるコスト削減・販売先との価格交渉力向上を目指しました。

業界再編で最も象徴的だった業界が、製油業界です。2000年代前半に、それまでの製油上位7社が製油3社(J-オイルミルズの製油企業、日清オイリオグループの製油企業、昭和産業の製油企業)に集約されました。

このように、値下げ圧力に対抗するために、M&Aによる業界再編が進んでいます。自社が素材型の食品会社であれば、M&Aで業界が変わることを念頭に入れて経営しましょう。

3. 食品製造業界におけるM&Aメリット

食品製造会社・食品メーカーがM&Aするメリットを把握し、自社が実施する際に多くのメリットを受けられるようにしましょう。本章では、譲渡側と買収側のメリットに分けて、順番に解説します。
 

譲渡側のメリット 買収側のメリット
  • 後継者問題の解決
  • 雇用の継続
  • 負債の解消と創業者の利益確保
  • グループに入ることによる経営の安定
  • 市場の拡大
  • 商品開発力・商品群・ブランド力の強化
  • 製造拠点の拡大
  • 販売チャネルの獲得
  • 人材確保
  • スケールメリットの享受

譲渡側のメリット

食品製造会社・食品メーカーのM&Aにおける譲渡側のメリットには主に以下が挙げられます。

後継者問題の解決

後継者不在の問題を抱える会社にとって、M&Aによる会社売却は問題解決手段のひとつです。後継者がいなければ会社を存続できずに廃業を検討せざるを得ないするケースもでてきます。

しかし、M&Aで売却すれば他社へ経営を引き継ぐことができるため、経営者の後継者候補がいなくても活用できる方法です。

雇用の継続

株式譲渡を用いた場合、譲渡側の会社・工場、従業員の雇用はそのまま買収側へ引き継がれます。経営者のとって、これまで会社や工場に貢献してくれた社員を廃業によって解雇するのは非常に心苦しいものです。

しかし、M&Aで自社を売却すれば従業員の雇用を継続することができます。実際に中小企業の場合は、M&Aによる事業・会社売却の目的が、雇用の維持に置かれることも多いです。

負債の解消と創業者の利益確保

個人事業主や中小企業などでは、代表者が個人保証を利用しているケースが多いです。これらは廃業を選んでも残り続けるため、リタイア後の生活が苦しくなる可能性が高いと考えられます。

しかし、M&Aで会社を売却すれば、個人保証も買収側へ引き継がれます。また、廃業を選択した場合は廃業コストがかかりますが、M&Aで株式を譲渡すれば売却益が得られます。

株式譲渡の売却益は経営者(創業者)が得るため、負債の解消だけでなく利益を得られる点は大きなメリットといえるでしょう。

グループに入ることによる経営の安定

経営不安を抱えていたり業績の見通しがよくなかったりする場合、自社よりも規模が大きく資本力のある会社の傘下となることで、経営の安定化を図れます。

また、買収側の経営資源を活用することによって、事業体制の強化や販路拡大も可能です。中小企業の場合、自社の経営資源だけでは事業の発展が難しいケースも少なくありませんが、M&Aを活用することで経営の安定と事業の成長に期待できます。

買収側のメリット

食品製造会社・食品メーカーのM&Aにおける買収側のメリットには主に以下が挙げられます。

市場の拡大

買収側企業は、M&Aによって譲渡側企業を傘下とすることで、相手の所有する工場などの設備、取引先との関係や従業員の雇用を引き継ぐことができます。

同業他社を買収した場合は相手の顧客を獲得できるので、一気にシェアを拡大することも可能です。市場規模は大きいほどプレゼンスが高まるだけでなく、市場における発言力の強化にもつながります。

商品開発力・商品群・ブランド力の強化

シナジー効果(相乗効果)発揮を目的のひとつとして、買収を行うケースは非常に多くみられます。シナジー効果とは、相手会社におけるマーケット(エリア、対象顧客)、技術やノウハウを自社の事業と合わせて、プラス以上の効果を発揮させることです。

食料品製造業のM&Aでシナジーが発揮されれば、商品開発力が強化や商品群の充実、ブランド力強化に期待でき、売上拡大にもつながります

製造拠点の拡大

食品の種類にもよりますが、加工型の食料品製造業の場合、製造拠点(工場)の拡大が大きなメリットになります。

一般的に、食料品は品質を維持できる期間が工業製品などに比べてはるかに短いため、製造拠点(工場)から遠方への配送などが難しいケースが多いです。

自社商品を販売するエリアを広げるためには、エリア内に製造拠点(工場)が必要ですが、自社で工場を新設するとなれば、立地の獲得から設備投資・従業員の採用まで非常に多くの手間・時間がかかります。

しかし、M&Aによる企業買収であれば、手間や時間を大きく省略して迅速な製造拠点の拡大が可能です。

販売チャネルの獲得

大手企業は国内での市場シェアを拡大が難しい状況に立たされており、M&Aによって海外市場をへの進出を目指す動きが活発化しています。

海外で商品を展開するには輸出する方法もありますが、ブランディングを構築できていない地域でゼロの状態から販売先を探し、その国の市場でプレゼンスを獲得するまでには膨大な手間と時間が必要です。

M&Aによって海外メーカーを買収すれば、相手先の持っている販売チャネルやノウハウをまとめて獲得することができます。初期段階で販売先を探す時間が大きく省略でき、効率的なプレゼンス強化が可能です。

人材確保

自社で工場を新設した場合、次に必要なるのは人材の確保です。十分な人材を採用できても新しい業務に慣れさせて、望ましい生産水準まで向上させるまでには、それなりの時間を要します。

M&Aによる企業買収であれば、すでにその会社・工場で働いている人材を確保できるためスムーズな事業展開が可能です。最初から食料品業界および会社のノウハウを持つ人材を集められるので、教育にかかる手間・時間を軽減できます。

スケールメリットの享受

スケールメリットとは、事業規模の拡大によって生まれる生産性向上・効率性上昇・知名度向上・バイイング・パワー向上などの効果のことです。特にスケールメリットを享受しやすいのが、製造業だといえます。

M&Aによって企業をまとめて買収することで、経営ノウハウから生産能力・収益までをすべて手に入れることが可能です。

1社による大量仕入が可能になるため、原材料の仕入れコスト削減・部品調達コストを削減できます。製造機械の稼働率に余裕があるなかで製品の市場シェアを拡大できれば、生産量増加によって製品1つ当たりの生産固定費の削減が可能です。

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4. 食品製造業界のM&A相場価格

M&Aは交渉によって最終的な価額が決定されるため、明確な相場というものはありません。ですが、価額交渉は企業価値をベースに進められるため、事前に企業価値を算定しておけば大まかな目安を把握することができます。

相場

M&Aで企業を売る際の価格は「相手がどれだけ欲しがっているか」によって決定します。つまり、相手が高く評価すれば価格は高くなり、買いたい相手がいない場合はたとえ相場価格がゼロでも売れない可能性もあるということです。

M&Aでの譲渡価格は算出された企業価値をベースに交渉で決めることが基本です

価格のベースとなる企業価値評価方法には、インカムアプローチ・マーケットアプローチ・コストアプローチの大きく3種類があり、以下のように評価時に着目する点やベースとする点が異なります。
 

企業価値評価の方法 評価方法・特徴 メリット・デメリット
インカムアプローチ 将来獲得すると期待される収益性に
着目した評価方法
(キャッシュフローや配当など)
  • 企業(事業)の将来性を企業価値に反映できる
  • 事業計画書などを基に将来予測をするため客観性に乏しい
マーケットアプローチ 規模・事業内容などが類似する上場企業の
時価総額や取引事例を基にした評価方法
  • 客観性が高く市場動向が反映できる
  • 類似企業の選定に恣意性が入りやすく客観性に乏しい
コストアプローチ 評価対象企業の時価総額を基にした評価方法
  • 貸借対照表の数字を使用するため客観性が高い
  • 企業(事業)の将来性や固有性質が反映されない

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簡易的な価格の目安の計算法

大まかなM&A価格の目安を把握しておくことで、相場よりも低く買いたたかれることを避けることができます。さらに、M&Aが最も適な選択肢なのか判断する際にも役立つでしょう。

食品製造業界のM&Aで用いられることの多いスキームは株式譲渡と事業譲渡です。それぞれの大まかなM&A相場は以下の計算式で求めることができます。

  • 株式譲渡の相場=時価純資産額+営業利益×2年~5年分
  • 事業譲渡の相場=時価事業純資産額+事業利益×2年~5年分

業種の特性や対象企業の特徴により営業利益・事業利益に掛け合わせる年数は違ってきますが、一般的には、2年または3年で算出するケースが多いようです。

5. 食品製造会社のM&A・事業承継の流れ

M&Aの目的・方向性の明確化

M&Aは成約までに多くの行程を経ますが、成功させるためには自社がM&Aを行う目的や方向性を常に意識しておくことが重要です。そのため、M&Aの具体的な行動に移る前に、自社のM&Aの目的や方向性を明確にしておく必要があります。

その際は、自社がM&Aによってどのような効果を得たいのかについて、将来のビジョンも念頭におきしっかり確認することが重要です。また、M&A以外の選択肢がないのかという点も含めて、よく検討しておくようにしましょう。

M&Aの専門家へ相談

M&Aの工程には専門的な知識が不可欠なものも多いため、M&Aの専門家のサポート下で進めていくと円滑に手続きを行うことができます。

また、M&Aの交渉や手続きは通常の事業運営を行いながら進めていくため、専門家に支援業務を依頼することで経営者の負担を軽減できるので、M&A実行を決断したら早期に相談しておくとよいでしょう。

M&A支援を手掛ける専門家はM&A仲介会社・士業事務所・銀行などいろいろありますが、得意とする業種や案件規模、サポート範囲、手数料体系が異なるので支援実績と併せて判断し、自社に合った専門家を選ぶことがポイントです。

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M&A候補先の選定

売り手側の場合、M&Aアドバイザーが事前に希望条件に合う企業やシナジーが見込める企業をリストアップしてくれるので、そこから交渉先を絞り込んでいく流れが多いです。

最初の段階では「ロングリスト」と呼ばれる数社から数十社程度リストアップされた資料を受け取るので、規模・事業内容・業種・エリアなどの条件で数社に絞り込み「ショートリスト」を作成します。

そして「ショートリスト」からM&Aで期待できるシナジーなどを考慮して交渉したい候補先を選定したら、M&Aの専門家を介して交渉を打診します。

秘密保持契約

M&Aの候補先に交渉を打診するときは、「ノンネームシート」という資料を用います。ノンネームシートとは、社名や自社が特定されうる情報は伏せて、大まかな地域・簡単な事業内容・財務状況などをまとめたものです。

M&Aの候補先が交渉に前向きであれば、当事者間で秘密保持契約書を締結してから企業概要書を提出して詳細情報を開示します。秘密保持契約書の締結は情報漏洩を防止するためです。

企業概要書には、会社名・所在地・具体的な事業内容・財務状況のほか、役員構成や主要取引先などの情報も含まれるため、開示する前に必ず秘密保持契約を締結します。

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トップ面談

トップ面談では、売り手側と買い手側の経営者(オーナー)同士が直接会い、経営理念やM&A後のビジョン、互いの人柄などを確認し合います。

また、相互理解を深めて信頼関係を築くことがトップ面談の主な目的であるため、価額・条件などの具体的な交渉は行わないのが一般的です。

トップ面談後、買い手側がM&A成立に前向きであればから「意向表明書」が売り手側へ提出される場合が多いですが、意向表明書は必須でないため省略されるケースもあります。

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基本合意契約締結

トップ面談が終わり、売り手側・買い手側がともにM&A成立を目指す意向であれば、M&A手法・価額・条件・スケジュールなどについて協議を進め、双方がM&A内容に大筋合意した段階で基本合意契約を締結します。

基本合意書は大きな問題がなければ最終合意に向けた交渉を続けるという意思確認の意味合いが大きく、その時点までに取り決めた内容を記載しますが、最終合意(M&A成立)を確約するものはありません。

そのため、基本合意書に記載した事項は、独占交渉権などの一部を除き、法的拘束力は持たせないのが一般的です。

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買い手企業によるデューデリジェンス

M&Aのデューデリジェンスは買い手側が売り手側に対して行う調査で、買収監査とも呼ばれます。デューデリジェンスの目的は、買い手側が売り手側の実態を把握し、M&A実行可否や価額の妥当性などを判断するためです。

デューデリジェンスには財務・法務・人事・ITなどの種類があり、各方面の専門家が買収リスクの有無および程度、企業概要書などで事前開示された情報の正確性を調査します。

売り手側に費用負担などが基本的にありませんが、調査に協力を求められた際は誠実に対応することが重要です。また、デューデリジェンスによって大きな問題やリスクが発覚した場合、M&A交渉が白紙撤回される可能性があることも理解しておく必要があります。

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最終交渉・ 最終契約締結

デューデリジェンスの結果、買い手側がM&Aを実行すると判断したら最終交渉へ進み、取り決めたすべての内容に双方が最終合意したら最終契約を結びます。

最終契約書には、両社で取り決めたM&A内容(M&A対象および範囲・M&A手法・価額・条件・対価の決済方法・スケジュール・表明保証・クロージング条項・競業避止義務など)が記載され、すべての事項が法的拘束力を持ちます。

そのため、締結以降に一方的な破棄あるいは変更することは認められないため、内容をよく確認したうえで締結することが重要です。

クロージングの実行

M&A対象の経営権を売り手側から買い手側へ移転し、対価の決済手続きを行う工程をクロージングといいます。クロージングはM&Aが成立したらすぐに行えるものではなく、最終契約で定めた条件(クロージング条項)を売り手側が満たしていることが前提です。

そのため、最終契約締結日からクロージング実行日までは、一般的に準備期間として一定期間を設けます。また、クロージングの手続きは使用したM&A手法によって異なる部分があるため、事前にしっかり確認しておくことも重要です。

そして、クロージングによってM&A工程は完了となり、法的にM&Aの有効性が認められることとなります。

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6. 食品製造会社・食品メーカー関連企業同士のM&A成功事例12選

この章では、食品製造会社・食品メーカーのM&A成功事例を解説します。

エバラ食品工業による丸二の子会社化

売り手企業の概要

丸二株式会社は、1967年に設立された粉末・液体調味料などを製造・卸売りする企業で、特に小容量の粉末と液体製品を中心に製造経験を持っています。また、西日本エリアの味覚と嗜好に合わせた商品開発を得意とし、少量多品種の生産に適応できる柔軟かつ機動的な生産体制が整備されています。

買い手企業の概要

エバラ食品工業は「こころ、はずむ、おいしさ。」の提供を経営理念とし、中期経営計画「Unique 2023 ~エバラらしさの追究~」において、主力事業の収益増強と戦略事業の基盤構築に焦点を当てています。この提案は、モノづくり機能と生産体制の強化を通じて、コア事業と将来の成長ドライバーである戦略事業を推進するためのものです。

M&Aの背景・目的

粉末調味料の製造技術や小容量商品の生産能力を向上させ、多様なお客様のニーズに応えます。将来の市場拡大を見据え、積極的に投資し、競争力を高める予定です。

M&Aスキーム

実行時期:2023年8月(株式譲渡契約締結)
手法:株式譲渡
結果:丸二株式会社の株式を取得し、子会社化
譲渡金額:2000万円

参考:丸二株式会社の株式取得(子会社化)

山崎製パンによる神戸屋の包装パン事業等の取得

売り手企業の概要

神戸屋は、包装パン事業を主軸とする業界4位の製パンメーカーです。包装パン事業のほか、フレッシュベーカリー、レストラン事業や冷凍パン事業なども手掛けています。

買い手企業の概要

山崎製パンは、国内シェア1位の製パン企業です。人気商品「ランチパック」や「ダブルソフト」などのパン部門のほか、コンビニエンスストア「デイリーヤマザキ」も展開しています。

M&Aの背景・目的

人口減少や少子高齢化が進むなか、神戸屋は事業構成の見直しを行い、今後はフレッシュベーカリー・レストラン事業と冷凍パン事業に注力していくとし、包装パン事業と子会社が手掛けるデリカ食品事業の売却を決定しました。

本M&Aによって、山崎製パンはが神戸屋が持つ関西地方の基盤を引き継ぎ、生産体制の強化を図るとしています。

M&Aスキーム

実行時期:2022年8月(株式譲渡契約締結)
手法:事業譲渡
結果:包装パンの製造販売事業及び同社 子会社の営むデリカ食品の製造販売事業譲渡
譲渡金額:非公開

参考:株式会社神戸屋の包装パン事業等の譲受けに関するお知らせ

日清製粉による熊本製粉の子会社化

売り手企業の概要

熊本製粉は1947年に設立され、九州地方で高い知名度と顧客信頼を持つ製粉会社です。小麦粉やそば粉、米粉などの穀粉事業および関連事業を展開し、高い技術力と開発力を誇ります。

買い手企業の概要


当社グループの中核事業である小麦粉の製造・販売は、国民の主要食糧である小麦粉の安定供給を担い、食のインフラを支える使命を担っています。

M&Aの背景・目的

日清製粉と熊本製粉は2011年に業務提携し、小麦粉や米粉の供給などで協力してきました。2016年の熊本地震時にも協力し、緊密な関係を築きました。今回の取得は、両社が統合して事業運営を行い、相互補完のメリットとシナジー効果を追求し、競争力を高めるためのものです。日清製粉と熊本製粉は協力し、小麦粉供給の責任を果たし、顧客の発展を支え、持続的な成長と企業価値の拡大を目指します。

M&Aスキーム

実行時期:2022年6月(株式譲渡契約)
手法:株式譲渡
結果:日清製粉により熊本製粉の発酵済株式の85%を取得
譲渡金額:非公開

参考:熊本製粉株式会社の株式取得

エバラ食品工業グループによるヤマキンの子会社化

売り手企業の概要

ヤマキンは、液体調味料などを製造する1948年創業の企業です。主に小袋製品を製造しており、小ロットの生産体制を持っています。

買い手企業の概要

エバラ食品工業は、家庭用や業務用の調味料を主軸として事業展開しています。エバラビジネス・マネジメントはグループ内の経営管理を行う子会社です。
 

M&Aの背景・目的

現在、エバラ食品工業は、主軸である家庭向けの食品事業と戦略事業を進めるべく、生産体制の強化を図っています。国内の少子高齢化が進むなか、小容量製品の需要拡大が見込めるとしており、ヤマキンの子会社化を決定しました。

本M&Aによって、柔軟で効率的な生産体制を築き、 小容量製品の製造・供給体制を強化し、競争力の強化を図るとしています。

M&Aスキーム

実行時期:2022年5月
手法:株式譲渡
結果:エバラ食品工業グループがヤマキンの全株式を取得し子会社化
譲渡金額:非公開


参考:当社子会社によるヤマキン株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

ダスキンによる蜂屋乳業の売却

売り手企業の概要

ダスキンは、大阪府吹田市に本社を置く日本の企業です。清掃業務を中心に外食産業なども展開しており、ミスタードーナツの事業本部でもあります。蜂屋乳業は、大阪市を拠点に、主にアイスクリームなどのOEM製造を事業とする業歴50年を有する老舗企業であり、大手乳業メーカーに安定した製品供給を行っていました。

買い手企業の概要

買収側のバンリューは、兵庫県姫路市を拠点に、出資企業株式の保有管理を事業として手掛けている企業です。

M&Aの背景・目的

本件M&Aにより、ダスキンでは、事業の選択と集中による事業ポートフォリオの適正化を進めており、食肉の加工・販売・外食を手掛ける子会社を傘下に持つバンリューと蜂屋乳業によるシナジーの獲得を図っています。

M&Aスキーム

実行時期:2021年11月
手法:株式譲渡
結果:バンリューがダスキン(蜂屋乳業)の全株式を取得。蜂屋乳業はダスキンの連結子会社から除外。
譲渡金額:譲渡企業の意向により非公表

参考:連結子会社の異動を伴う株式譲渡締結に関するお知らせ

三井物産による五洋食品産業の子会社化

売り手企業の概要

五洋食品産業は、福岡県糸島市に本社を置き、フローズンスイーツの製造販売を手掛けている企業です。

買い手企業の概要

三井物産(Mitsui & Co., Ltd.)は、日本を拠点とする大手総合商社の一つです。三井物産は世界各国に広がる事業ポートフォリオを持ち資源・エネルギー事業、食品・農業事業、化学品事業、自動車・産業機械事業、情報通信事業、不動産・不動産開発事業、金融事業の分野において活動しています。国際的なネットワークを駆使し、さまざまな業界でグローバルなビジネスを推進しています。

M&Aの背景・目的

本件M&Aにより、買収側では、高付加価値の冷凍スイーツへの関心がアジア・太平洋市場で高まっていることなどを踏まえ、海外展開の拡大につなげると発表しています。
 

M&Aスキーム

実行時期:2021年10月
手法:TOB(株式公開買付)
結果:三井物産による五洋食品産業のTOB
譲渡金額:1株当たり買付価格:879円

参考:五洋食品産業株式会社株券(証券コード2230)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ

ミツウロコグループHDによる静岡ジェイエイフーズの子会社化

売り手企業の概要

静岡ジェイエイフーズは、大手飲料メーカーからの依頼を受けて清涼飲料のOEM製造を手掛けているJA系列の企業です。

買い手企業の概要

ミツウロコグループHDは、東京都中央区に本社を置く石油製品・LPガス・固形燃料の販売などを手掛ける企業グループの持株会社です。

M&Aの背景・目的

本件M&Aにより、買収側では、清涼飲料水の生産能力を獲得することで、新たな事業分野において事業規模のさらなる拡大を図ると発表しています。

M&Aスキーム

実行時期:2021年9月
手法:株式譲渡
結果:ミツウロコグループHDによる静岡ジェイエイフーズの全株式を取得し子会社化
譲渡金額:非公開

参考:静岡ジェイエイフーズ株式会社の株式取得(子会社化)及び 特定子会社の異動に関するお知らせ

DM三井製糖HDによる関門製糖の子会社化

売り手企業の概要

関門製糖は、福岡県北九州市を拠点に、砂糖およびその副産物の製造・加工、糖蜜の保管業務、食品加工技術の研究・開発・調査などを手掛けている企業です。

買い手企業の概要

買収側のDM三井製糖HDは、東京都中央区を拠点に、グループ経営管理事業・不動産事業・資産管理事業・日本国外の駐在員事務所の運営および管理に関する事業などを展開しています。

M&Aの背景・目的

日本甜菜はこれまで関門製糖に精製糖の製造を委託していますが、全保有株の譲渡後も大日本明治を通じ関門製糖への製造委託を継続すると発表しています。

M&Aスキーム

実行時期:2021年9月
手法:株式譲渡
結果:関門製糖に折半出資する日本甜菜製糖から株式50%を取得、持ち株比率を100%とし完全子会社化
譲渡金額:7億7,600万円

三光マーケティングフーズによる海商の全事業取得

売り手企業の概要

海商は、大阪市中央区を拠点に、煮魚や鮮魚など各種食料品小売業を手掛けている企業です。

買い手企業の概要

三光マーケティングフーズは、東京都新宿区を拠点に、飲食店経営・水産業などを展開しています。

M&Aの背景・目的

本件M&Aにより、買収側では、海商が培ってきた事業の強みを生かし、飲食事業の業態および商品強化・新たな販路の開拓・沼津での水産事業とのシナジー効果を生かし、早期に事業の確立していくと発表しています。

M&Aスキーム

時期 2021年8月(実施は同年11月)
売却側 海商(民事再生手続き中の海商が新設分割し設立した新会社)
買収側 三光マーケティングフーズ
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価格 非公開


参考:株式会社海商が会社分割により設立する新会社の 株式取得(子会社化)に関するお知らせ

ファーマフーズによる明治薬品の子会社化

売り手企業の概要

明治薬品は、東京都千代田区に本社を置き、医薬品・医薬部外品・医療用具・食料品(健康食品)・化粧品の製造およびその販売・輸出入、劇毒物の販売などを手掛けている企業です。

買い手企業の概要

ファーマフーズは、京都市を拠点に、機能性素材、機能性製品の開発・販売およびバイオメディカル事業、Life Science Information事業を行っています。

M&Aの背景・目的

本件M&Aにより、買収側では、ファーマフーズの有する研究開発力・商品開発力および通信販売プラットフォームと明治薬品が有する製造・販路などの経営資源を融合させることで、収益拡大やグループの持続的成長と中長期的な企業価値向上の実現を図っています。

M&Aスキーム

時期 2021年8月
売却側 明治薬品
買収側 ファーマフーズ
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価格 15億円〜23億円程度


参考:明治薬品株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

昭和産業によるサンエイ糖化の子会社化

売り手企業の概要

サンエイ糖化は、主力がぶどう糖であり、その他の糖化製品についても開発から製造、販売まで一貫して行っており、医療用途の厳しい品質基準をクリアする高い技術力を持つ競争力を持っています。

買い手企業の概要

昭和産業は、小麦粉、植物油、糖化製品、二次加工食品などの製造販売、配合飼料の販売のほかに倉庫業や不動産賃貸を行う会社です。

M&Aの背景・目的

国内での供給体制を強化し、生産性を向上させます。また、販売チャネル、原料調達、技術力、研究開発、マーケティングなどを統合し、事業間のシナジーを追求し、オープンイノベーションを進め、新たな価値を生み出します。

M&Aスキーム

実行時期:2020年12月
結果:昭和産業がサンエイ糖化の全株式を取得し子会社化
手法:株式譲渡
譲渡金額:150億円

参考:サンエイ糖化株式会社の株式取得(子会社化)

不二製油グループ本社によるトーラクの売却

売り手企業の概要

トーラクは、不二製油グループ本社の100%子会社でした。不二製油グループ本社はグループとして、乳化・発酵素材、植物性油脂や業務用チョコレート、大豆加工素材などの開発・生産・販売事業を行っています。食品会社のトーラクは、「神戸プリン」「らくらくホイップ」など知名度が高い代表的商品を持つ会社です。

買い手企業の概要

丸大食品は、食肉加工品であるハム・ソーセージなどや、各種惣菜類を製造・販売する大手食品メーカーとして知られています。

M&Aの背景・目的

不二製油グループ本社は、この子会社売却(譲渡)によりトーラクのさらなる発展を鑑み、コアコンピタンス追及の一環として決断しました。

丸大食品は、現事業のデザート部門でさらなる収益向上を目指すうえで、トーラクの商品力・企画開発力・販売力は大きなシナジーが得られると判断しています。

M&Aスキーム

時期 2020年7月
売却側 トーラク(不二製油グループ本社)
買収側 丸大食品
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価額 12億円

7. 食銀製造会社と異業種によるM&A事例4選

異業種による食品業界のM&A事例を解説します。

三井物産によるオランダ・機能性食品素材製造との株式譲渡

売り手企業の概要

Nutrinovaはアセスルファムカリウム(高甘味度甘味料)とソルビン酸・ソルビン酸カリウム(保存料)の製造・販売を行う企業です。アセスルファムカリウムは高い甘味度を持ち、糖質を削減した製品に利用されます。ソルビン酸・ソルビン酸カリウムは食品・飲料の保存期限延長に貢献し、フードロスを減少させます。Nutrinovaはこれらの製品を高品質で世界の大手飲料・食品メーカーなどに供給しています。

買い手企業の概要

三井物産(Mitsui & Co., Ltd.)は、日本を拠点とする大手総合商社の一つです。三井物産は世界各国に広がる事業ポートフォリオを持ち資源・エネルギー事業、食品・農業事業、化学品事業、自動車・産業機械事業、情報通信事業、不動産・不動産開発事業、金融事業の分野において活動しています。国際的なネットワークを駆使し、さまざまな業界でグローバルなビジネスを推進しています。

M&Aの背景・目的

三井物産は中期経営計画2026で、Wellness Ecosystem Creationを攻め筋の一つとして位置づけ、医療、未病・予防、健康に関連する食品提供を通じて、消費者のライフスタイル向上に貢献します。この株式取得により、食と健康を結びつけ、人々の豊かで輝く人生をサポートします。

M&Aスキーム

実行時期:2023年6月
手法:株式譲渡
結果:三井物産がNutrinovaの株式を70%を取得
譲渡金額:非開示

参考:機能性食品素材事業の株式取得

ニイカタによるバイオバンクの子会社化

売り手企業の概要

バイオバンクは、岡山市に本社を構え、乳酸菌発酵製品の製造・販売を行う企業です。植物原料を乳酸菌で発酵させたエキスを製造し、それを用いた健康食品や化粧品などを、国内と海外約30カ国に提供しています。

買い手企業の概要

ニイタカは業務用洗剤・洗浄剤・除菌剤・漂白剤の製造販売、固形燃料の製造販売、食品添加物(殺菌料)の製造販売、医薬部外品の製造販売、衛生管理支援サービス等の提供、化粧品原料の製造を行う会社です。

M&Aの背景・目的

ニイタカは新型コロナウイルス感染症に対応し、ウイルス対策製品を拡充して衛生的な環境を提供してきました。今回の子会社化により、さらなる健康支援事業展開が期待され、当社の業容拡大と企業価値向上に寄与すると判断しました。

M&Aスキーム

実行時期:2023年3月
手法:株式譲渡
結果:ニイカタによるバイオバンクの株式の90%取得
譲渡(増資)金額:不明

参考:子会社の異動を伴う株式取得

不二製油と通販サイト運営cottaの資本業務提携

企業の概要

cottaは日本最大級の製菓製パン材料のECサイトを運営しています。会員数は170万人、月間アクセス数は約3,500万PV、SNS総フォロワーは100万人に達し、商品、レシピ、コラムなど充実のコンテンツを提供しています。さらに、著名なパティシエやお菓子研究家、インスタグラマーを活用し、幅広い層に独自の情報を提供しています。

企業の概要

不二製油は、植物性油脂や業務用チョコレート、大豆加工素材などを製造する企業です。一方のcottaは、約3万点もの商品を販売するほか、有名パティシエやインスタグラマーを起用したレシピやコンテンツ配信が人気となっています。

M&Aの背景・目的

両社は、業務用素材を主軸とする不二製油とcottaの情報発信力を組み合わせることで、新製品開発につなげていく考えです。

M&Aスキーム

実行時期:2022年5月
手法:資本業務提携
結果:不二製油とcottaが戦略的パートナーとして資本参加
譲渡(増資)金額:不明

参考:国内No.1製菓製パンのECサイトcottaと資本業務提携を締結

味の素とおいしい健康の資本業務提携

企業の概要

おいしい健康社は、2016年にクックパッド株式会社から独立し、「誰もがいつまでもおいしく食べられる社会の実現」を掲げ、健常者や生活習慣病患者など、さまざまな人々の食習慣に関する課題に対応しています。管理栄養士によるエビデンスに基づいたレシピ開発やAIによるレシピ・献立提案アプリなどのデジタルサービスを提供し、医療機関や薬局、製薬会社と連携した患者支援や食品企業の健康領域事業を展開しています。健康に関するさまざまな事業を通じて、人々の健康をサポートしています。

企業の概要


味の素株式会社(Ajinomoto Co., Inc.)は、日本を拠点とする大手食品会社です。主要な事業として、食品及び調味料の製造・販売、食品サービス事業、バイオテクノロジー事業などがあります。

M&Aの背景・目的

本提携は、双方の技術やアセットを活かしたヘルスケアと食に関する分野のイノベーション推進が目的です。今後は、ヘルスケアと食に関するプラットフォームの構築やエビデンスの拡充・高度化、デジタル技術による新しい食体験サービスなどを展開していくとしています。

M&Aスキーム

実行時期:2022年1月
手法:資本業務提携
結果:味の素とおいしい健康の資本業務提携
譲渡(増資)金額:不明
 


参考:味の素㈱、健康課題別の献立とレシピで健康な食生活を提供する ㈱おいしい健康に出資

8. 食品製造会社のクロスボーダーM&A事例2選

食品業界のクロスボーダーM&Aから、2事例を解説します。

サッポロホールディングスによるストーンブリューイン社の子会社化

売り手企業の概要

ストーン・ブリューイングは1996年に設立された米国クラフトビールメーカーです。米国のIPA市場の先駆者として長年にわたり市場をリードしてきました。

買い手企業の概要

サッポロビールは、日本の大手ビールメーカーです。1876年に政府の開拓使が北海道札幌市に札幌麦酒醸造所を設立し、そこで作られた「冷製札幌ビール」が社名の由来とされています。

M&Aの背景・目的

ストーン・ブリューイングは近年の業績は低迷しており、2019年12月期には営業利益が赤字となっていました。サッポロビールは、この買収により、酒類卸事業を除くビール製造販売事業と飲食店事業を取得し、カリフォルニア州とバージニア州の2つの製造拠点を獲得することで、物流費の大幅削減を実現し、事業の安定化と効率化を図ります。

さらに、これらの工場でサッポロプレミアムビールを製造し、工場稼働率を現状の2倍に引き上げることを見込んでいます。カリフォルニア州、テキサス州、ニューヨーク州、フロリダ州での販売を強化し、2024年までに米国市場全体での販売数量を約800万函にすることを目指しています。

M&Aスキーム

時期 2022年6月24日
売却側 ストーン・ブリューイング
買収側 サッポロビール
M&Aスキーム 持分売買
譲渡価格 1億6,500万ドル

Stone Brewing Co.,LLC の持分取得(子会社化)に関するお知らせ

森永乳業による米国Turtle Island Foods, Holdings, Inc.社の子会社化

売り手企業の概要

Turtle Island Foods社は米国を中心に、大豆原料を主とした PBF の製造・販売事業を 展開しています。

買い手企業の概要

森永乳業グループは1978 年より、日本から米国に向け当社独自のロングライフ製法により常温保存可 能な豆腐の輸出販売を開始し、40 年以上にわたり米国で豆腐事業を行ってきました。

M&Aの背景・目的

両立を目指す方向性の合致、全米で認知度の高い Tofurky(トーファーキー)ブランドを保有しており、全米へ販売チャネル網を保有している点からも、将来の成長へ向けた相乗効果の高い有望な企業と考えいます。

本M&Aによって、森永乳業は米国市場において PBF 事業の更なる拡大を目指すとしています。

M&Aスキーム

時期 2023年2月
売却側 Turtle Island Foods, Holdings, Inc.
買収側 森永乳業株
M&Aスキーム 株式譲渡
譲渡価格 1240万USD


参考:米国 Turtle Island Foods, Holdings, Inc.の買収(子会社化)に関するお知らせ

【関連】M&A成功事例30選!【2023年最新】買収・合併の失敗事例も併せて紹介!

9. 食品製造会社のM&A案件一覧

本章では、弊社M&A総合研究所が取り扱っている食品製造会社のM&A案件をご紹介します。

【中部】豆腐等の大豆食品製造販売

中部地方において、大豆食品の製造販売を営む会社です。一部商品がメディア紹介実績を有しており、今後も売上の柱になるものと考えています。
 

エリア 中部・北陸
売上高 1億円〜2.5億円
譲渡希望額 1,000万円〜5,000万円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)、戦略の見直し

【関連】【中部】豆腐等の大豆食品製造販売(ものづくり・メーカー) | M&A総合研究所

【借入なし/3期連続増収】食品製造販売・給食事業

民間・公共の施設と「給食業務提携契約」を締結しており、1億円ほどの安定収入を得ています。豊富な実績と優秀な人材を抱えており、上記契約期間は更新され続ける可能性が高いです。
 

エリア 東北
売上高 1億円〜2.5億円
譲渡希望額 希望なし
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【関連】【借入なし/3期連続増収】食品製造販売・給食事業(ものづくり・メーカー) | M&A総合研究所

10. 食品製造会社のM&A成功ポイント

ここからは、食品製造会社・食品メーカーにおけるM&Aを成功させるためのポイントを解説します。

M&A実施の理由を明確に

どのような業種の場合でも、M&Aを実施する際「なぜM&Aを行うのか」を明確にしておくことが大切です。事業承継を目的としているのか、事業規模の拡大を目指すのか、M&Aの理由によって相手先選びの判断基準が変わります。まずはM&Aを行う理由を明確にし、その上で希望条件などを決めていくとよいでしょう。

M&A先の選定

M&A先の選定をしっかり行うことも大切です。どんなに規模の大きい企業へ売却できたとしても、自社の目的や希望に合う相手先でなければ満足度の高いM&A実現は難しいでしょう。

M&Aを実施する前に自社の希望条件とその優先順位を明確にさせておくと、相手先の選定がしやすくなります。また、サポートをM&Aの専門家に依頼する場合は、自社の風土や価値観などを伝えておくのもよい方法です。

事業シナジー

どのような事業シナジーが見込めるかを考えることも必要です。スケールメリットによって材料コスト低下が見込めたり、顧客の認知度が上がったりなどのさまざまなシナジーが考えられます。

相手先の事業内容を分析して想定されるシナジーをイメージしておくことは、双方にとって満足度の高いM&A実現にも繋がるでしょう。

タイミング

M&Aで企業を売却するタイミングで重要なのは、主に以下の3点です。

業界再編が進行中のとき

再編が進行中の業界では、現在が会社を高く売るために適したタイミングだといえます。なかでも最も適したタイミングは、業界再編が進行し、売主候補企業が少なくなった段階です。

売り手市場となるので高く売れる可能性が高まるメリットがありますが、業界再編は永久には続かないため売り惜しみに注意しましょう。

景気のよいとき

当然ですが、景気のよいときほど企業は高く売れます。逆に、たとえ買収したい会社が複数現れても、景気が悪くなればその意欲は何事もなかったかのように胡散霧消するケースがあります。

経営者が元気なとき

M&Aで企業を売却するなら、経営者が元気なときにできるだけ早めに計画を立てながら進めることもポイントのひとつです。

経営者の身に何かが起こってから急に会社を売却する必要に迫られた場合は、とにかく早く売ることが最優先となります。そうなれば、価格の要求をほとんどできなくなる可能性もあるでしょう。

【関連】中小企業M&Aの現状や流れを徹底解説!注意点や成功事例もわかりやすく説明

業務改善の余地

中小規模の企業はリソースが限られているため、業務改善をしたくとも自社単独では難しいケースも少なくありません。

売り手側に業務改善の余地があり、リソース投入による合理化や効率向上で収益力向上が見込める場合、買い手側企業からみれば投資効果が高いということです。

反対に、売り手側企業からすると高額でのM&A成立や好条件でのM&A成立に期待でき、自社(事業)のさらなる成長を図ることができます。

収益性や将来性

買い手側にとって、M&A後の事業展開や収益性の見込みがつきやすいほど買収の実行可否を判断しやすくなります。そのため、売り手側企業の収益性や将来性は、M&Aの検討時に買い手側が重視するポイントのひとつです。

継続して高い収益性が期待できる企業、業績が安定している企業、成長期にある企業などは、買い手側が買収後のビジョンを描きやすくなるため、好条件でM&Aが成立する可能性があります。

経営資産の保有

売り手企業の持っているノウハウ・独自技術・顧客や取引先などのリソースも、M&Aにおいては買い手側の評価ポイントとなる要素です。そのため、ほかにない強みを持っている企業は高い評価につながりやすく、買い手候補もみつかりやすくなります。

売り手側の注意点は、このような要素が自社の特定従業員に依存している場合、万一その従業員が離職してしまうと引継ぎが難しくなることです。そのようなことにならないよう、ノウハウなどは社内でしっかり共有しておき、キーマンとなる従業員が離職しないよう対策を講じておく必要があります。

M&A仲介会社等に相談する

M&Aの工程は非常に多いため、日常の事業運営をしながら自社のみで進めていくのは現実的に難しい部分が多いでしょう。M&Aを仲介会社等では手続き面をサポートすれば、業務への支障を最小限にとどめながらM&Aを進めることができます。

M&A仲介会社をお探しの場合は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所には、M&Aアドバイザーが在籍しており、親身になって案件をフルサポートいたします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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11. 食品製造会社の工場売却方法

食品製造会社の工場売却方法は、主に以下のとおりです。

  • 建物・敷地の売却
  • 更地にして売却
  • 建物・借地権の譲渡
  • セール&リースバック
  • 不動産M&A

それぞれの方法を順番に解説します。

建物・敷地の売却

敷地と建物を一緒に売却する方法は手間も少なく、2つ分の価値となるため売却益も高くなることが多いです。反面、買い手が限られてしまうというデメリットもあります。

一般的には、建物がさまざまな用途に転用しやすい標準的な構造である、建築関係法令に適合している、などの条件を満たしていると買い手がみつかりやすいことが多いです。

更地にして売却

更地にすれば用途が限定されないため、買い手がつきやすく短期間で売却することも可能です。ただし、土壌汚染対策法に基づく土壌調査を事前に行っておく必要があります。

売却予定の土地に土壌調査の法的義務がない場合もありますが、売却後に土壌汚染が発覚すると大きなトラブルに発展しかねないため、自主的に検査を行っておくほうが安心です。

一般的に高い値段がつきやすいのは、幹線道路・高速道路や幹線道路へのアクセスがよい・隣接している道路幅が十分にある・土壌汚染の心配がない・駐車スペースが十分確保できる、などの条件を満たしている土地であり、買い手もみつかりやすいうえ高値での売却にも期待できます。

建物・借地権の譲渡

更地にして借地権だけを譲渡する方法もあります。借地の建設した建物を売却する場合、その土地の借地権も譲渡が必要です。

借地権だけを譲渡する場合、当事者間で交渉のうえ売却価額決定しますが、交渉時の目安となるのは相続税計算時の借地権評価額です。相続税計算時の借地権評価額は、まず国税庁が公表している公示価格や路線価や公示価格を基準に譲渡対象となる土地の時価を求め、それに30%~90%の借地権割合を乗じて算出します。

注意点は、借地権の譲渡には地主から承諾が必要(民法612条)となることです。また、その際は、借地権譲渡額の10%程度を承諾料として地主に支払います。

セール&リースバック

セール&リースバックとは、不動産をリース会社などに売却したうえで新たに買主と賃貸借契約を結び、その後も不動産を賃借料を支払うことで利用継続することです。

工場などで比較的みられることが多く、不動産売却で資金を確保しつつ事業運営ができたり、将来的に廃業を考えている場合も一定の売却益を確保したいうえで時期を決めることができたりなどのメリットがあります。

その反面、不動産運用の自由度が低下することや賃貸借契約の更新できるかは買主の判断によること、賃料負担が重くなる可能性があることなどがデメリットです。

不動産M&A

不動産M&Aでは、買い手が不動産の取得を目的として売り手企業(事業)を買収します。不動産M&Aは税金面でメリットの大きな方法です。

不動産として売却した場合は売却益に対して事業税や法人税が課されるうえ、建物部分は消費税の対象となります。対して、不動産M&Aを活用した場合、株式譲渡であれば売り手側に課されるのは株式譲渡所得に対する所得税のみです。

株式譲渡所得税は申告分離課税方式であり、税率は一律約20%なので不動産として売却するよりも税額を大幅に抑えることができます。

12. 食品製造業界のM&Aまとめ

食料品製造業の市場規模は、少子高齢化の影響で縮小傾向にあります。また、コロナ禍の影響で業務用食品の需要は大きく減少し、その一方で家庭用食品の需要は増加しましたが高止まりの状況です。

そのような状況で、競争力や経営基盤の強化を目的とするM&Aが増えており、同業種間だけでなく異業種による買収なども多くみられるようになりました。

食品製造業界では今後もM&Aが活発に行われると考えられます。M&Aを検討している場合は、実施タイミングを逃さないよう早い段階から準備しておくとよいでしょう。

13. 食品メーカー・食品加工・食品工場業界の成約事例一覧

14. 食品メーカー・食品加工・食品工場業界のM&A案件一覧

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