“技術の火”を絶やさぬために―
日本溶研がM&Aで描く
「継承」と「進化」のストーリー
■インタビュー
譲渡企業:株式会社日本溶研 代表取締役 草野 真一 氏
神奈川県相模原市で鍛圧機部品の溶接補修を手がけてきた株式会社日本溶研。
同社は、特殊合金に対応する高い技術力と長年の信頼を強みに、金型など製造設備の延命・再生に貢献してきた。
今回、その日本溶研が事業承継の選択肢として選んだのは、非鉄金属の鋳造・溶接に強みを持つP社。
草野代表が見据えた決断の背景と、未来への期待とは──。
父の背中を継ぎ、技術を磨き続けた半生
「もともとは父が創業し、機械のメンテナンス業から始まりました」。
自身も溶接メーカーでの勤務を経て、現場での経験を重ねてきた草野代表は、「この仕事は機械ではできない。人の手だからこそ価値がある」と語る。
特殊合金への対応や、タイアップによる難易度の高い溶接にも対応できる技術力が、同社の最大の強みだ。
外注から内製化へ──効率と品質を両立
近年、事業の中心である溶接の後工程“熱処理”を外注から内製化したことが大きな転機となった。
「納期短縮やコスト削減に直結しました。結果的に、お客様からの信頼もより厚くなりました」。
溶接だけにとどまらず、一連の工程に責任を持つ体制へ。顧客の満足度と効率の両立を実現させた。
“技術を残したい”──事業承継という選択肢
事業譲渡を考えたきっかけは、自身の年齢と後継者不在だった。
「息子が継がないと分かったとき、まず考えたのは“お客様に迷惑をかけたくない”ということでした。そして、長年培ってきた技術を絶やしたくなかった」。
従業員の雇用も含め、「会社として生き残らせること」が草野代表にとっての最優先事項だった。
人柄と理解力で決めたパートナー

「譲受企業P社の代表は、初対面から親しみやすく、誠実な方でした」。
単に会社の規模や実績ではなく、「従業員とお客様を大切にする姿勢が感じられた」と語る草野代表。
また、自社の事業に対する理解度が高く、「機械化が難しい職人技である」ことをしっかりと評価してくれた点も大きかった。
「これまでのやり方を尊重するという姿勢も嬉しかったです」。
M&Aで広がる技術と可能性
本件に期待することは、「足りない部分を補完しあえる共創関係」だと草野代表は語る。
「これまでできなかった新規案件の獲得や、過去に中断した事業の再開も見据えています。自社の技術もどんどん伝えていきたいですね」。
技術者の高齢化が進むなか、若手人材への技術伝承も進めていく意向だ。「関東での新たな仕事が生まれる可能性もあり、楽しみです」。
不安もあったが、誠実な対話が支えになった
「M&Aは初めてで、不安も正直ありました」。
そんな中、トップ同士の面談を重ねることで安心感が芽生えたという。
「大切なのは、お客様を大事にしてくれる相手かどうか。トップの人柄や、成長を一緒に目指そうという姿勢を見極めることが大切だと思います」。
“一緒に走ってくれた”アドバイザーの存在
アドバイザーを務めたのは、M&A総合研究所の髙橋千秋。
「最初に資料を出す時点から、本当に大変でした。でも、髙橋さんが一つひとつ丁寧に確認してくれて、安心できました」。
何より驚いたのはスピード。「こんなに短期間でM&Aが成立するとは思っていませんでした。工程のどれもがスムーズで、ストレスがありませんでした」。
“技術を守る”という決断が、未来へ導く──
草野代表が選んだ事業承継のかたちは、
過去を大切にしながら、未来に向けて挑戦し続ける姿勢そのものだった。
担当者からのコメント

譲渡企業様は確かな溶接技術と業務対応スピード、真摯な対応からもお取引様からも絶大な信頼があるご法人様ですが、従業員の高齢化と後継者がご不在であった為、当初譲渡のご相談を頂戴しました。オーナー様のお客様と従業員様に対する想い、そしてお父様から会社を残したいという強い想いがご成約に繋がったと考えております。
譲受企業様には状況を初期段階からよくご理解頂き、ご決断もスピーディーに行って頂いた為、オーナー様の負担も最小限に止め、進めることが出来ました。
今後の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
(企業情報第二本部第一部 マネージャー 髙橋 千秋)