自動車教習業界の進化と連携
■インタビュー
譲渡企業:教育、学習支援業A社 代表取締役 T.A. 氏
譲受企業:株式会社RTホールディングス 代表取締役 寺岡 晋作 氏
神奈川県横浜市で60年以上にわたり地域に根差してきた自動車教習所を運営するA社。
その事業を引き継ぐ形で、M&Aにより連携を図ったのが、広島を拠点に自動車・クレーン・小型船舶など多岐にわたる教習所運営を手がけるRTホールディングスだ。
業界をリードしてきた両社が出会い、共に歩むことになった背景と、これからのビジョンを聞いた。
他社からも参考にされた指導法
A社の代表は、業界内でも知られる指導のプロフェッショナル。過去には教習方法に関する書籍も出版しており、他校の指導員が参考にするほどだった。
「これまで長く一人で会社を運営してきましたが、今回のM&Aで共に考えてくれる仲間ができたことを、非常に心強く感じています。業界においても“指導技術”で信頼されてきた自負があり、その技術をこれからの人たちに伝えていける機会ができたことが何より嬉しいです。」
譲受企業が語る、指導技術への高評価とシナジー
RTホールディングス寺岡代表もその指導力に強く惹かれた一人だ。
「A社さんは、技能講習の合格率や教習の質において非常に高い水準を維持されていました。指導力が高く、教習所業界にとっても模範となる存在だと感じていました。お人柄もよく、代表とお会いした際に“自分たちと同じ空気感”を感じました。」
関東進出の起点に
今回のM&Aは、RTホールディングスにとって「関東進出」の戦略的な第一歩でもある。
「2030年に売上100億円を目指している中で、非連続的な成長が必要だと考えました。自動車学校だけでなく、マリーナや食品事業など異業種も含めたコングロマリット経営を進めていますが、自動車学校分野では関東に拠点を持ちたかったのです。A社さんの存在はその中心になると確信しました。」
思いやりが決め手に
A社代表は、M&Aの過程で寺岡代表の人柄に深い安心感を覚えたと話す。
「一つひとつの言葉や行動に“血が通っている”と感じました。理屈や建前ではなく、思いやりや人情に裏打ちされた姿勢が印象的でした。」
“共に学ぶ場”としての教習所へ

今後の展望について寺岡代表は、
「A社をAI教習を実証する拠点とし、将来的な自動化に対応した新しい教習モデルを構築していきたい」と語る。
「いずれAIを使った教習が本格化していくはず。人手不足という業界課題に対応するためにも、“人がいなくてもある程度運用できる”仕組みを早いうちに試していきたい」と意欲を見せる。
一方、A社代表は、「これまで培ってきたノウハウを他校にも共有しながら、若い指導員の育成につなげていきたい」と語る。
こうした技術と人材、両面での進化を見据えながら、今後は定期的な戦略会議を通じて、長期的な成長と組織の一体化を進めていく。
M&Aは「信頼」で成り立つ
M&Aを検討する経営者様へのアドバイスとして、
A社代表は「信頼できるかどうかは、短時間ではわからないものです。だからこそ、時間をかけて、その人となりをしっかり見極めていくことが大切だと思います」と語る。
寺岡代表も、「やはり経営方針が似ていないと、M&A後の運営は難しくなると感じます」と実感を込めて話した。
信頼を支えたアドバイザー
本件の橋渡し役を担ったのは、M&A総合研究所のアドバイザー・板谷。
A社代表は、「板谷さんが安心できる方だったからこそ、こちらも信頼してお任せすることができました。話の流れを自然に導いてくれたこともありがたかったです」と信頼の厚さを滲ませた。
また、「書類や手続きの多さには正直大変さもありましたが、それを通じて会社の課題を見直す機会になりました。土地の問題など、長年そのままになっていたことにも取り組むきっかけになりました」と振り返る。
“誰と組むか”が、未来を変える──
信頼と技術のバトンパスが、
ここからまた新たな価値を創り出していく。
担当者からのコメント

「三方よし」の理念をモットーに、代表取締役として20年以上も経営されてきたオーナー様の事業承継のご支援をさせていただきました。
ご支援にあたっては、オーナー様より、承継にあたっての課題についても率直にご相談していただけました。そのため、私としてはその課題がいかに解消できるかを考え、譲受企業にとっても検討しやすい進め方、譲受企業と譲渡企業の双方が合意できる条件などを検討しながら取り組みました。
M&Aにあたりオーナー様が重視されていたのは、地域社会への貢献も大事にしていただける、よりよい経営者への承継と後悔しない選択でした。今回のご決断が、オーナー様の今後の人生にとって、有意義なものとなっていただければ幸いです。
(企業情報第六本部第三部 マネージャー 板谷 憲志)