譲受企業
株式会社温故知新
代表取締役 松山 知樹様インタビュー
M&Aを検討されたきっかけ
当社はホテルの運営業を行っているため、運営施設数を増やしていくのがメインです。運営施設を増やすパターンは主に2つあり、1つはホテルを建設して運営する方法、もう1つはオーナーチェンジをして運営を引き継ぐ方法です。オーナーチェンジの方法はいろいろありますが、必然的にM&Aを行うことになります。そのため、ホテル業界はM&Aと隣り合わせの存在というのが自然の流れと捉えています。今回のM&Aについては、オーナー及び運営どちらの引継ぎも兼ねるパターンでした。
Q1.コロナ禍で業績不振も多く、アセットを持つことを避けているケースも多くみられます。今回アセットを持つことを選択されたのはなぜでしょうか。
アフターコロナを迎え、ホテル業界は回復基調です。つまり、インフレになるとアセットを持ってた方が有利になるため、リスクが減っていると実感しています。タイミングを逃さず、今後も資金調達をしながら進めていきたいと考えています。
三井観光株式会社様との出会い
Q2.三井観光様に決められた理由を教えてください。
譲受をするにあたり、当社のスタイルには2つの側面があります。1つ目は、「デスティネーション」という言い方をしてるのですが、「旅の目的地になる宿」を増やしていくのが当社の基本的な方針です。高級な施設を増やしていく以外にも、一生に一度は行ってみたい場所であるという点を重視しています。三井観光様の場合、特に「礼文島」という日本最北端の秘境であるという点に魅力を感じ、ディスネーションになりうる場所であると確信しました。
もう一つの側面は、弊社には多くのファンがいらっしゃいます。そういう方たちに「すごい!」と思ってもらえる場所かどうかというのが判断の基準です。そういう意味で今回の礼文島という離島は、非常に意義のある場所でした。また、当社は社会貢献的な役割を重要なミッションとして掲げています。そういった側面から地方の地域活性化に少しでも貢献できればという考えがありました。つまり、デスティネーションのある宿泊施設を通じて、その地域に貢献しようというものです。こういった取組の中で、さらに温故知新ファンを増やしていければと思っています。
今後への思い
Q3.今回のM&Aで期待することや今後のビジョンを教えてください。
今回譲り受けをしたホテルの近隣に離れをつくり、そこに高級バージョンの施設を建てるなど検討しています。そして、既存の三井観光株式会社様は従来のお客様のニーズにあった経営を維持しながら継続していくという組み合わせがベストではないかと考えています。既存の母体が安定的に運営できるからこそ、離れの運営もできる。そういう意味では、母体があることの意義は非常に重要です。離れだけではビジネスとして成立しませんし、三井観光様があることによって横展開ができると思っています。いずれにしても、既存のお客様に「さすがだな!」と思ってもらえるような施設を、新しくつくりたいです。
Q4.今後、事業展開の1つとしてM&Aを活用されることは視野に入れていますか。その際の方針も併せて教えてください。
今後、運営施設は年に数件程度ずつ増やしていきたいと思っています。 既存のお客様が喜んでいただけるような場所や施設を増やしていきたいのと同時に、社会貢献的な意味合いを感じられるような場所で、事業運営を行っていきたいと思っています。今後も基本的な考え方は変わらず、丁寧に進めていく予定です。また最近は建設単価も上昇しているため、既存施設を譲り受けて、その施設ならではの良さを磨いていくことをメインに考えています。
ー既存の施設を活かす方法を教えてください。
歴史を持つ既存施設は、それぞれの良さがあるため大切にしていくべきです。そして保全と創造を進めながら、さらに魅力ある施設へと変えていくのが良いのではないでしょうか。売主様の大事にしている部分はそのまま引き継いでいくというのが当社の基本的な姿勢です。社会、地域にも貢献でき、デスティネーションにもなるというような方向性で進めていきたいと考えています。
ー 一方で難しさもあるのではないでしょうか。
新築には新築の、既存には既存の難しさがあり、どちらも難しいのには変わりはありません。ただ、既存の施設をスタートさせるまでには時間や労力がかなりかかります。長年築かれてきたものが、譲り受けた瞬間から変わるものではないので、何年もかけて丁寧にゆっくりと準備をしていかなければなりません。お客様へご紹介するタイミングも重要です。リブランディングをするのであれば、少なくとも2〜3年はかかりますね。
ー今、興味のある施設はどういったものでしょうか。
「大事にしてる何か」がある宿泊施設。古い文化財でもいいですし、何か光るものがあるといいですね。そういった施設だと引き継いでいく軸もあるため、コンセプトも思い付きやすいというのがあります。
弊社との出会い
Q5.弊社のアドバイザーはいかがでしたでしょうか。
担当アドバイザーの西村様がいなければ、この案件は成立していませんでした。両社の間に入っていただき、中立的な立場で落としどころを探っていただけました。スピード感だけではなくスキームの柔軟さや、財務、税務にも長けていて非常に頼りにさせていただきました。また、売主様にも心からご納得頂けるというのも、かなり粘りが必要だと思いますし、そこも丁寧に進めていただきました。
ーアドバイザーの印象に残っている具体的なエピソードなどあれば教えてください。
今回のM&Aを進めるにあたり一番の決め手となったのはスキームでした。不動産売買は、不動産を単純に所有権移転するだけです。しかし、M&Aの場合はさまざまなスキームがあります。譲渡する場合もスキームによってコストや税金等も大きく変わるので、その部分を担当アドバイザーの西村様が非常にわかりやすい提案をしてくれました。今回の施設は、そもそも立地がかなり特殊で、不動産価値の客観的判断も非常に難しいというのが特徴でした。そのような中、西村様は柔軟なスキームを提示してくれました。また、両社の立場を理解して間に入っていただき、仲介としての進め方が非常に素晴らしかったと思います。離島にはロマンがあっても、実際に事業を行うハードルは想像以上に高いですからね。
M&Aをご検討されている経営者の皆様へメッセージをお願いいたします。
ー譲渡側の経営者様へ
会社を売却すると喪失感もあるかと思いますが、売主様の思いを引き継いでもらえるケースは多くあります。そういったお相手企業への売却を検討するというのも、一つの選択肢として良いのではないでしょうか。
ー譲り受け側の経営者様へ
不動産売買ではない選択肢もあるというのを知っていただきたいと思います。M&Aであれば、柔軟なスキームが組めます。
担当者からのコメント
譲渡企業様は、北海道の礼文島という特殊な立地で、長年に渡り地場観光業の活性化と、多くの礼文島ファンのお客様のために事業を営まれてこられました。
後継者様がご不在であり、今後の事業継続へのご不安を頂戴し、ご支援させて頂くこととなりました。
そのような中で、譲受企業様は離島での事業経験が豊富であり、礼文島の良さだけでなく、離島での運営の厳しさを入口からご理解頂いていた為、お引合せ当初から譲渡企業様に寄り添った深いお話合いを進めることが出来ました。
後継者不足の解決と、日本の観光業を支える重要な役割を担う譲渡企業様の事業継続を守ることができた、非常に意義あるご成約となったことを嬉しく思います。
(企業情報第一本部第三部 部長 西村 祐)