2021年03月06日更新
アパレル業界のM&A・買収の最新動向【2020年最新情報】

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。
最近、日本のアパレル業界では少なかった企業買収や合併によるM&Aが増えてきています。アパレル業界の経営戦略としてM&Aは大きく力を発揮します。今回は、アパレル業界のM&Aの動向や買収・合併などの実態を見ていきます。
1. アパレル業界の動向
アパレル業界の歴史は長く、メーカー・卸売業・小売業の間の垂直統合が多く、メーカーや卸売業などが経営する小売業もあれば、企画製造まで行うSPAと呼ばれる業態もあります。
このアパレル業界も、事業譲渡や買収などM&Aが活発な業界の一つです。現状のアパレル業界は市場の縮小や大手ファストファッションの台頭で競争が激しくなっていることから、アパレル業界が絡むM&Aは活発になっています。
日本におけるM&Aは2005年から2007年まで年間約2,700件行われてその後、2011年までは減少傾向にあったものの、2017年には3,000件超、2019年には4,000件超と増加しています。
これに伴い、アパレル業界でもM&Aが活発になっており、事業承継や国内市場での生き残りや世界進出してさらなる成長を図るというように、日本のアパレル業界はM&Aという新たな戦略で成長しようとしているのが現状です。
そこで、アパレル業界の現状や売却・譲渡や買収の動向を詳しく解説していきます。
参照:マールオンライン「グラフで見るM&A動向 1985年以降のマーケット別M&A件数の推移」
アパレル業界の基本情報
アパレル業界は服に携わる職業として、さまざまな職種の中でも人気のある職業の一つです。
買収や売却・譲渡の話の前に、ここでは「アパレル」という業界の定義や特性などを解説します。
アパレル業界の詳しい定義や特性を知ることで、なぜアパレル業界の事業譲渡や買収が盛んに行なわれているのかを把握できるので、しっかりと理解を深めましょう。
アパレル業界定義
アパレル業界とは、衣類(服)の製造・流通・販売を行う業界のことで、英語で「apparel」といいます。
このアパレル業は、メーカーや卸売業まで統合で行う企業もあれば、メーカーや卸売業から仕入れて店頭などで販売だけする企業、または衣類(服)のデザイン企画から流通まで一貫して行う企業など、業態はさまざまです。
ここでは、一般的なメーカーから商品(服)を仕入れして、店舗にて販売するアパレル業界の小売業について説明します。
「ファッション業界」と「アパレル業界」の違い
「アパレル」とは衣料・衣服・既製服という意味であり、基本的に「アパレル業界」というのはデザインや縫製などのような製造分野を中心とした衣料品業界をさしています。
一方でファッションとは「fashion=流行」という意味になるので、衣服や洋服という意味はありません。
そのため、ファッション業界というのは流行や装飾性を意識しながら身の回りの装飾する業界全般をさしています。
商流・事業の特性
アパレルの生産・流通の流れは「糸のメーカー」→「生地のメーカー」→「服の生産・卸売」→「小売」の大きく4段階に分かれております。
アパレル業界では川の流れに例えて3段階に分類しており、具体的には以下のように分かれています。
- 川上→紡績・加工業、服地の生産、染色加工業、化学繊維製造業
- 川中→供給される素材を元に服飾品を生産・企画する企業
- 川下→消費者へ販売する小売業者
このアパレル業界の特性として挙げられるのが、主に以下の4つです。
- 服のトレンドに左右されやすい
- 季節性のある服の売れ残り在庫や値引き販売
- 商品のライフサイクルが短く在庫リスクが高い
- バーゲン販売の実施
2019年に流行った服が2020年に流行る保証はなく、流行りのアパレルブランドがあれば消費者の動向がそのアパレルブランドに向いてしまって商品が売れなくなってしまうなど、在庫リスクが高いビジネスです。
また、春夏の服よりも秋冬の服の方が単価が高いなど、時期の動向を見ながらプロパー販売やセール販売と販売のスタイルを変えていく必要があります。
消費者・顧客の状況
ファッション性の高く低価格な商品を展開するSPA(製造小売業)が台頭しており、SPA(製造小売業)に見られる小売業の川上進出など、バリューチェーンを超えた相互進出が行われ競争率が上がっています。
低価格とファッション性を追求し販売する「ファストファッション」と呼ばれるアパレルブランドが増加しており、そのようなお手頃商品が消費者には求められています。
ただ、これらのアパレルブランドはSPA(製造小売業)という業態でコストの安い海外の地域で大量生産を行っているため、国内の外衣生産量は減少しているのが現状です。
仕入れの状況
アパレル業界の衣料小売業は卸売業と提携して複数メーカーの商品を仕入れることにより、ファッショントレンドへ柔軟に対応できる品揃えが可能になります。
卸売業界の市場が縮小しているにも関わらず、競争が激しくなっていることで企業数は減少しているのが現状です。
そのような中、大手アパレルメーカーは商品企画や素材手配、生産管理、川下への小売業への販売(卸業)が一括でできる機能を持っており、SPA(製造小売業)といった川上進出が行われて業界内参入が起こっているため競争力のない卸売業者は淘汰される傾向にあります。
競合や代替品による業界の変化
アパレルでは競合などが増えており、大手SPA(製造小売業)や大手のアパレルは低価格化や店舗展開を増やし高付加価値を打ち出しています。
また、ブランド拡大のためにM&Aを行っているので、付加価値を打ち出せない企業は淘汰されていくでしょう。
それに加え、収益を伸ばすべくグローバル展開に力を入れ、それが成功している企業も多くあることから、大きな収益を得るためには海外展開も視野に入れる必要があります。
主要プレーヤー
アパレル業界の主要プレーヤー(ブランド・メーカー・企業)の2019年売上高ランキングを見ていきましょう。
- ファーストリテイリング 2兆1,300億円
- しまむら 5,459億円
- 青山商事 2,503億円
- ワールド(非上場) 2,498億円
- オンワードホールディングス 2,406億
- アダストリア 2,226億円
- ワコールホールディングス 1,942億円
- AOKIホールディングス 1,939億円
- TSIホールディングス 1,650億円
- 良品計画 1,615億円
一般的に有名なアパレルブランドが揃っていますが、1位のファーストリテイリングは世界的に有名なユニクロやGUなどのブランドを持つ企業で売上高も群を抜いていることがわかります。
2018年、2019年の動向を見ると、アパレルブランドもインターネット通販で業績を伸ばしているところが多く見られ、ワールドやオンワードホールディングスは通販に力を入れているため、これからも業績は増加していくと予想されます。
2019年以降はさらにECサイトを充実させ、他ブランドとの差別化が求められることになるでしょう。
アパレル業界の市場状況
アパレル業界の市場はここ数年、横這い(よこばい)を続けていて伸び悩んでいる状況です。
消費者の動向が従来の販売チャンネルとは別の方向に向いていることもあり、従来の商品販売のまま経営をしている企業は辛い現状になっているでしょう。
そんなアパレル業界の市場状況がどんな変化をし、どのような経営改変が行われているのか見ていきます。
全体の市場規模は鈍化
ここ最近のアパレル業界は深刻な不振が続いており、消費者の衣服に関する家計消費は減少傾向にあります。
そのため、ファストファッションや価値の高いハイブランドを除いて国内のアパレルブランドはほぼ壊滅状態に近いといわれています。
業界の動向として、1990年代は15兆円を超えていた国内市場が10兆円を割っており、このような市場状況を象徴するかのように、大手アパレルブランドが小規模の企業を丸ごと飲み込むM&Aはあまり見られません。
逆に、業界変革を行うためにM&Aを活用するケースが増えています。
ECサイトは右肩上がり
失速が続くアパレル業界ですが、販売チャンネルは多様化して大手のアパレルブランドもインターネット通販などECサイトでの販売を強化しています。
インターネットの進化と消費者の動向に目をつけている企業は、アプリ開発やECサイトでの販路強化を行っていて、このインターネット通販やECサイトでの販売は好調を続けているのがアパレル業界の最近の動向です。
百貨店は低迷中
販売チャンネルの多様化によりECサイトでの販売が伸びている中、その影響で百貨店は低迷しています。
これまでの国内市場は百貨店に軒並みそろったアパレル販売で消費者が実際に手に取り、商品を購入していくのが主流でした。
ところが、従来より便利になったインターネット通販は商品の説明が丁寧に記載されていることや、SNS上でモデルを使うことでモデルの方の意見が取り入れられるようになったこと、配達産業の発達により商品が早く届くことも、この百貨店の市場状況が低迷している原因だともいえます。
海外企業は二極化
海外の企業が必ずしもそうであるわけではありませんが、日本のアパレル業界を見ると海外の外資系企業はカジュアルブランドかラグジュアリーブランドの2極化していることが見受けられます。
最近のアパレル業界の市場状況で低迷していないのが、ファストファッションとハイブランドということから、ターゲットを絞ったマーケティングを海外企業は日本国内で行なっています。
その背景にもSNSの流行や消費者の服にかけるお金の減少があることがいえ、それらに合わせた販路強化が求められているでしょう。
2. アパレル業界のM&A・買収の最新動向
最近ではアパレル業界でも市場の縮小やインターネット時代の流れに伴い、企業買収や事業譲渡・売却で新たな力を取り入れるためにM&Aが頻繁に行われるようになっています。
特に目立つのが、アパレルブランドが総合商社やIT企業に事業譲渡・売却することや、アパレルブランドを大手アパレル企業が買収する形です。
アパレルブランドのM&Aは急増中
アパレル業界のM&Aというと、2018年はビギホールディングスが三井物産とその関連企業に買収されるというニュースが注目を浴びました。
この「ビギ」の買収はアパレル業界でM&Aが加速している理由としてわかりやすく、三井物産は今後「ビギ」の企画や販売のプラットフォームを強化し、単一ブランドごとの事業展開とブランドポートフォリオの形成を目指しています。
三井物産の「ビギ」買収でわかるように、アパレル業界のM&Aではブランドマーケティング力やグローバルなネットワークを駆使し、新たなブランドの導入やECなどの成長市場に向けた戦略で販売チャンネルの強化や新規参入を目指すことが大きな目的だといえるでしょう。
アパレル業界でのM&Aが急増している要因を確認していきましょう。
- 他業界の買収が盛ん
- 他業界からの買収も盛ん
- 事業提携による構造変革が重要
他業界の買収が盛ん
ファストファッションが定着し、EC専業ブランドも登場する現代においては企画力だけではなく、生産・物流・店頭までのサプライチェーンを構築し、競争力のあるものを生み出すことがアパレル業界で生き残るためには重要です。
そのときに資金力のある企業やノウハウを持つ大手、新たな手法で問題解決を図るスタートアップ企業など異業種の買収によって、アパレル業界で生き残るための力を手に入れる企業が増えています。
最近注目されたアパレル企業による他業界の買収としては、2017年アパレル大手のオンワードホールディングスが自然派化粧品を取り扱うベンチャー企業を買収し、手始めにECサイトを販路として広げ、5年以内に売上高100億円を目指すという動きがありました。
また、ビームスやボロックジャパンもテクノロジー系企業を含めたM&Aを示唆しています。
このように市場が縮小され厳しいとされるアパレル企業が、親和性のある化粧品業界などを買収し事業譲渡を受けて売上高を伸ばしたり、市場を拡大したりする動きが盛んに行われています。
他業界からの買収も盛ん
厳しい現状にあるといわれているアパレル業界ですが、他業界への事業譲渡や売却を通して、アパレルブランドが磨かれるケースも多く存在します。
「ビギ」が事業売却をした三井物産は5ヶ年計画でリテール事業の強化を目標とし、M&Aもその手段の一つだとしていて、カナダのオーダーメイドスーツブランドへの投資や北米だけではなく、世界展開を広げるためにデジタル化や顧客データの活用など商品の調達基盤となるサプラチェーンの構築を支援してます。
他にも、アパレルブランドが総合商社やIT企業に事業譲渡・売却をし、もともとECサイトやインターネット販路が強い企業がアパレルブランドの力を手に入れ、アパレル業界に進出する動向が2005年〜2017年に多く見られました。
また、最近の注目では肉体改造ジム「RIZAPグループ」が2017年に「ジーンズメイト」の堀田丸正を買収するなど、アパレル業界のM&Aは加速を続けています。
事業提携による構造変革が重要
現在のアパレル業界の構造変革の主体としてあげられるのが、EC企業やマーケティング企業に移りつつあることです。
アパレル業界の主戦場はもはや店舗ではなくネット通販になっており、2018年・2019年のトレンドも変わっていません。
そのような状況の中で重要になるのが、デジタルマーケティングやAI、ビッグデータのテクノロジーです。店舗は商品を確認することやブランドストーリーを体感する場所になり、実際に商品を購入するのはネット上になるということです。
そのため、アパレル業界では今まで参入していなかった事業にチャレンジを強いられることになるので、事業提携やM&Aの需要が高まっています。
このように、アパレル業界ではM&Aが盛んに行われています。ブランドの統合や業務提携も盛んに行われており、アパレル業界で今後生き残っていくためには、経営戦略としてM&Aを視野に入れておく必要があるでしょう。
もし、アパレル業界でM&Aを検討しているのであれば、M&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所では、知識と経験が豊富なアドバイザーが案件ごとに専任体制でM&Aをフルサポートいたします。
ご相談はお電話またはWebより無料でお受けしておりますので、アパレル業界でのM&Aをご検討の際は、お気軽にお問い合わせください。
3. アパレル業界でM&Aを行うメリット
加速するアパレル業界のM&Aでは、企業やアパレルブランドの特徴によって得られる効果や利益が異なります。
そんなアパレル業界のM&Aをするメリットを、売却側(譲渡する側)と買収側(譲渡される側)それぞれで見ていきましょう。
買収のメリット
現在、アパレル業界の経営戦略のテーマとして企業規模の拡大とグループ力の強化の2つが大きく取り上げられています。
この2つの経営戦略を有効化できるのが、アパレル業界のM&Aで得られるメリットです。
アパレル業界のみならずM&Aによって得られるメリットは大きく、現在はほとんどの業界で経営改革の手段として取り入れられています。
事業拡大・多角化
企業規模の拡大としては、現代のECサイト販売中心のアパレル業界で今までは店頭での営業を続けている企業が、ECサイトやインターネット販売が強い企業を取り入れることで企業規模の拡大が見込めます。
また、アパレルブランドとしては申し分のない技術を持つ企業が店頭での販売を苦手としているのであれば、店頭販売に強い企業を買収することで売上高のアップとグループ力の強化が可能です。
このように、新たな要素を他の企業から取り入れることで事業の拡大と多角化を実現します。
ノウハウの取得
アパレル業界で収益を伸ばすためのノウハウは、人材はもちろん材料の受注先や販売スキルや企画などさまざまなグループの力が大事です。
このノウハウは老舗ブランドや大手企業でも作り上げるにはかなりの時間とコストをかけなければいけない問題であり、それに要する時間とコストが事業を拡大していくうえで大きな悩みとなります。
この解決方法として、M&Aを行って経営に必要な人材や資源、ノウハウを時間をかけずに得られるようになります。
売却のメリット
M&Aはアパレル業界のみならずほとんどの業界において経営戦略の一貫となっていますが、買収側だけではなく売却側にもメリットがないと成立しません。
ここでは、アパレル業界を売却するメリットを解説していきます。
良い商品やアイデアを持っているのに売却を検討する企業がなぜ存在するのか、その理由の一つでもありますのでこちらについても理解を深めていきましょう。アパレル業界で売却するメリットは以下のとおりです。
- 廃業コストの削減
- 事業存続
- 従業員の雇用存続
- キャピタルゲインの受け取り
それぞれのメリットについて、詳しく確認していきましょう。
①廃業コスト削減
アパレル業界で一番のリスクが在庫が残ることです。
そのため、思った収益が見込めずに廃業を余儀なくされるアパレル企業が多数存在しています。
アパレル業界では繊維業者やデザイナーなど取引先との契約、在庫の処分など廃業時にかかるコストが非常に高く、これらの取引先やノウハウをM&Aで売却すればコストを削減できます。
このように、廃業コストの削減のために事業譲渡や売却をするアパレルブランドも少なくありません。
②事業存続
良い商品や服を扱っているブランドなのに経営がうまく行かず、廃業となるケースはどの業界にもあることです。
その問題を解決するために売却、具体的には大手企業の傘下に入ることで苦労して作り上げたブランドや商品を消滅させなくて済みます。
アパレル業界では商品に思い入れがある企業が多く存在し、そのアパレルブランドをより拡大させるためにも事業譲渡・売却は効果的です。
③従業員の雇用存続
アパレルの場合はそのアパレルブランドやカルチャーに憧れて入社する従業員の人も多いでしょう。ですが、会社を存続させられなければ雇用は守れません。
このような雇用問題の解決のためにM&Aは活用されることも多く、ともに頑張ってきた従業員がより良い環境で活躍できるような場所を作るためにも、M&Aによる売却で新たな企業で雇用を存続させられます。
④キャピタルゲインの受け取り
アパレル業界ではデザイン企画やマーケットの開拓、材料の受注、ノウハウなど開発にかかる費用は多いです。
売却時には、これらも資産価値として売却額に反映します。
事業規模にあったキャピタルゲインを受け取れるため、企業を立ち上げてから培ったノウハウなどは無駄にりません。
アパレル業界でM&Aを行うのであれば、M&A総合研究所へご相談ください。
経験豊富なアドバイザーが相手との交渉や契約、クロージングに至るまでM&Aをフルサポートいたします。
ご相談は無料であり、費用についても当社は完全成功報酬(※譲渡企業のみ)を採用しています。
4. アパレル業界の最新M&A事例【2020年事例あり】
近年、アパレル業界のM&Aによる企業改変は多くなっており、大手企業の売却や買収がメディアにも多く取り上げられています。
ここでは、2017年から2020年に行われた事例をご紹介します。
- 花菱縫製とメルボグループが生産・販売事業を統合
- アングローバルがアンドワンダーを買収・子会社化
- ニッセンがマロンスタイルを買収・子会社化
- オンワードホールディングスが大和を買収・子会社化
- 三井物産がDCブランドビギを買収
- ライザップがカジュアルブランドジーンズメイトを買収・子会社化
- スタニングルアーがジャパンイマジネーションに事業譲渡
- TSIホールディングスがHUFを買収・子会社化
- スタートトゥデイがIQON(アイコン)の全株式を取得し子会社化
順番に確認していきましょう。
①花菱縫製とメルボグループが生産・販売事業を統合
2020年3月、花菱縫製とメルボグループは生産・販売事業を統合するとしました。花菱縫製はオーダースーツの企画や生産・販売を行う会社であり、メルボグループは紳士服やメンズウェアーなどの生産・販売をグループとして行っている会社です。
両社はいずれも品質に強みを持っていますが、業界環境が厳しくなってきたことを受けて、シナジー効果によってさらなる発展を目指して統合したとしています。
②アングローバルがアンドワンダーを買収・子会社化
2019年1月、アングローバルはアンドワンダーの株式を100%取得して買収して子会社化しました。アングローバルはTSIホールディングスの子会社であり、人気のブランド「マーガレット・ハウエル」や「エムエイチエル」を展開しています。
一方のアンドワンダーも人気ブランド「andwandar」を展開しています。アングローバルはECなどの分野で強みを持つアンドワンダーを取り込むことで規模拡大を図るとし、アンドワンダーとしても生産管理などに強みを持つアングローバルのノウハウを活かして生産環境の整備を図るとしています。
③ニッセンがマロンスタイルを買収・子会社化
2019年2月、ニッセンがマロンスタイルを買収して子会社化しました。ニッセンが展開しているブランドの「スマイルランド」は主に40代を中心に人気が高いのですが、経営が芳しくなく業績回復と成長のためのビジネスモデル再構築に取り組んでいます。
一方でマロンスタイルもニッセンの「スマイルランド」と同じサイズの大きい商品を販売する会社であり、ブランド「clette」という女性専用の通信販売サイトを展開しています。ニッセンはマロンスタイルを取り込むことで、自社ブランドよりも若い年齢層の取り込みを目指すとしています。
④オンワードホールディングスが大和を買収・子会社化
2019年3月、オンワードホールディングスは大和の株式を100%取得して買収して子会社化しました。オンワードホールディングスはアパレル事業やグルメなど生活に関連する事業を展開する持株会社です。一方で大和はギフト商品の企画や販売までを行っています。
もともと両社は、ギフトのカタログにおいて仕事の発注や請負をする間柄であり、オンワードホールディングスは大和を取り込むことで新規事業の拡大やサービスの強化を図るとしています。
⑤三井物産がDCブランドビギを買収
ビギは1970年に創業されアパレルブランド「ZARA」が日本に上陸したときに、スペインのインデックス社と合弁で「ザラジャパン」を設立して日本進出の支援を行ったとして有名です。
現会長の大楠氏も70歳半ばになり、アパレル製品の生産委託やブランドライセンスを通して30年以上の取引のある三井物産と手を組むことがベストだと判断しM&Aに至ったようです。
三井物産は今後ビギの企画・販売プラットフォーム機能を強化していき、単一ブランドごとの事業展開とブランドポートフォリオを作ることを目標としています。
また、三井住友銀行などと共同出資する会社・MSD企業投資の投資事業力と三井物産のブランドマーケティング力やグローバルなネットワークをフル活用して新たなアパレルブランドの導入や海外展開など成長する市場に向けて販路を強化していく方針を固めています。
⑥ライザップがカジュアルブランドジーンズメイトを買収・子会社化
キャッチーなCMで有名となった「ライザップグループ」ですが、この企業も近年ではM&Aに積極的で投資家にも注目を集めています。
ライザップの手がけるM&Aの中心となるのがアパレル業界であり、レディースアパレル通販業の「夢展望」、カジュアルブランド「ジーンズメイト」の買収が注目を浴びています。
このライザップは2016年の秋にアパレル業界に参入を発表し、2017年、2018年とECショップの展開を見せています。
⑦スタニングルアーがジャパンイマジネーションに事業譲渡
セシルマクビーなど若い女性をターゲットに事業を続けるアパレル企業「ジャパンイマジネーション」が2017年に瀧定大阪の子会社「スタニングルアー」のアパレル事業を譲受しました。
その2017年4月にはジャパンイマジネーションの子会社として、スタニングルアーを立ち上げウィメンズブランド「スタニングルアー(STUNNING LURE)」の全事業を運営しています。
ジャパンイマジネーションは顧客の嗜好が多様化する中でマルチブランド化を進めていて、「スタニングルアー」は既存のブランドのシナジー効果に加えて新規顧客の開拓にも期待して、瀧定大阪は売上高が9割を占める事業に集中する方針を打ち出しており、この事業譲渡もその一環だとされています。
スタニングルアー事業はもともと、2013年にリステアホールディングから吸収分割する形で瀧定大阪の子会社スタニングルアーが譲渡を受けたものですが、今回の瀧定大阪からジャパンイマジネーションへの譲渡に伴って、運営方針や販売拠点、取引先を承継しつつ独立した事業会社として運営しています。
⑧TSIホールディングスがHUFを買収・子会社化
2017年の11月に「TSIホールディングス」がスケーターブランドHUFの企画販売を行う「HUF Holdings LLC」の株式を90%取得し子会社化することを発表し、同2017年12月に持分譲渡実行をしました。
「ハフ」はスケーターのキース・ハフナゲルが設立し、アメリカ、欧州を中心に30ヶ国で事業展開しているアパレルブランドです。
日本ではアパレルブランド「STUSSY(ステューシー)」を展開しているTSIホールディングス子会社の「ジャック」が国内販売権を取得し2015年から代理店として販売しています。
この販売代理店としての2年間を通して同グループ企業のノウハウを積極的に投入し、従来以上に国内およびアジアを中心とした海外で成長できると見込んでいます。
TSIホールディングスの代表取締役・斎藤氏は東京五輪でスケートボードが正式種目になったことで競技人口の増加を考え、日本のみならず中国でも拡大していきたいと意気込んでおり、中国の大手アパレル企業との合併交渉を進めているようです。
現在、国内では3店舗で年間4億円の売り上げを2022年までに30億円まで伸ばし、海外では4,630万ドル(約51億)を100億円まで伸ばしていく方針だとしています。
⑨スタートトゥデイがIQON(アイコン)の全株式を取得し子会社化
大手アパレルECサイト「ZOZOTOWN」を手がけるスタートトゥデイが2017年10月にメディアサービス「IQON(アイコン)」を運用する「VASILY」の株式を取得し完全子会社化しました。
ZOZOTOWNは「6904」のアパレルブランドを取り扱うファッション通販サイトですが、そのZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイは国内でも有名な大手企業で現在のアパレル業界でもM&Aの取り組みを加速させています。
「VASILY」はテクノロジーとデザインの力を活用し、人類の進化に貢献するような発明を行い続けることを目的としたテクノロジー企業です。
200以上のECサイトからファッションアイテムをユーザーが自由にコーディネートできるサービス「IQON」をはじめ、ファッションメディアの運営やソフトウェアなどの受託開発を行なっている企業で、これらのサービスを利用してAI(人工知能)を駆使した分野においても高い技術力を持っています。
このようなVASILYの技術を使い、スタートトゥデイはEC分野でもアパレル分野でも成長する方針を見せています。
5. アパレル業界のM&A・買収の最新動向まとめ
アパレル業界のM&A・買収は増加傾向にあります。買収の目的はさまざまですが、一番は顧客層を広げ売り上げを拡大していくことです。そのため、アパレル業界外の事業を買収するケースも増えてきています。
ですが、アパレル業界のM&Aを検討しているのであれば、自社だけで完結させることは難しいでしょう。
M&Aを実現させるためには業界調査や相手企業選び、シナジー効果の検証、相手企業との条件交渉などさまざまなことを行う必要があります。
契約書の作成やデューデリジェンスなど、専門知識が必要となる場面も多いので、M&A仲介会社のサポート下で進めていくことをおすすめします。
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