2023年02月01日公開
ゴルフ練習場のM&A動向や流れ、ポイントを解説!
ゴルフ練習場は経営者の高齢化による事業承継の必要性が高まっています。その一方、土地の相続税が高額になりやすいなどの問題もり、M&Aがより重要になってくる業界の一つといえるでしょう。本記事ではゴルフ練習場のM&A動向やメリット・流れを解説します。
1. ゴルフ練習場とは
ゴルフ練習場とは、ゴルフの練習をするための施設の総称です。大きく分けると、屋外のいわゆる「打ちっぱなし」と室内練習場があり、パター練習場も一般にゴルフ練習場に含まれます。
定義は多少あいまいな部分もあり、ホール数やコース距離が短いいわゆる「ミニコース」もゴルフ練習場に含めたり、ゴルフ場の完全な付帯施設はゴルフ練習場に含めなかったりすることもあります。
2. ゴルフ練習場業界の動向
ゴルフ練習場のM&Aを行うには、ゴルフ練習場業界の動向を押さえておくことが重要です。ここでは、ゴルフ練習場業界の近年の動向・特徴や市場規模を解説します。
市場規模
ゴルフ練習場の市場規模は、2020年で約1300億円です。2000年の市場規模が約2000億円、2010年は約1480億円となっており、1990年代から縮小傾向が続いてきました。
しかし、2018年は約1240億円、2019年は約1250億円なので、直近数年間はやや拡大傾向にあります。
近年の動向・特徴
ゴルフ練習場業界の近年の主な動向・特徴としては、コロナの影響による利用者の増加、若年層や女性利用者の増加、インドア練習場の増加の3つがあります。
【ゴルフ練習場業界の近年の動向・特徴】
- コロナの影響で利用者が増加
- 若年層や女性利用者の増加
- インドア練習場(打ちっぱなし)の増加
①コロナの影響で利用者が増加
コロナの影響で多くのレジャー産業が打撃を受けましたが、ゴルフ練習場は3蜜を避けて運動ができるということもあり逆に利用者が増加しました。
経済産業省の調査でも2020年のゴルフ練習場の売上は前年より増加しています。特に緊急事態宣言のあった2020年3月から6月にかけては、前年同月比で大きな増加がみられました。
②若年層や女性利用者の増加
近年のゴルフ業界およびゴルフ練習場業界の特徴は、若年層と女性の利用者が増加している点です。これまでのゴルフ練習場の主な利用者は60代前後の高齢者でしたが、近年は若者と女性が増え、結果として高齢者の割合は相対的に低下しています。
増加要因のひとつは、ゴルフが3蜜を避けて誰でも楽しめるスポーツであるという認識が広まりつつあることです。また「トップトレーサー・レンジ」を始めとする測定機器の導入などによるサービス向上も増加要因としてが考えられます。
③インドア練習場(打ちっぱなし)の増加
ゴルフ練習場は屋外の打ちっぱなしはやや減少傾向ですが、逆にインドア練習場は増加傾向です。
全日本ゴルフ練習場連盟の調査によると、2021年のゴルフ練習場数の増減は、屋外ゴルフ練習場が前年比マイナス26、インドア練習場が前年比プラス241となっています。
3. ゴルフ練習場業界の問題点
ゴルフ練習場業界の主な問題点としては、経営者の高齢化やアウトドア練習場の事業承継など、以下の4つがあります。
【ゴルフ練習場業界の問題点】
- 経営者の高齢化が進んでいる
- アウトドア練習場は事業承継が難しい
- 客単価を上げるためには付加価値が必要
- 事業継続が難しく廃業を選択するケースも多い
経営者の高齢化が進んでいる
近年、日本はどの業種も経営者の高齢化が問題になっていますが、ゴルフ練習場業界も決して例外ではありません。
ゴルフ練習場の経営者は70代以上も多く、今後10年間で多数の経営者が引退すると考えられます。
アウトドア練習場は事業承継が難しい
ゴルフ練習場経営者の高齢化対策としてM&Aによる事業承継は大変有効ですが、十分な世代交代が進んでいないのが現状です。
ゴルフ練習場は室内練習場よりアウトドア練習場のほうが事業承継が難しい面があり、いかに対策していくかが重要な課題になります。
相続税が足かせ
アウトドア練習場の事業承継の問題点はいくつか考えられますが、個人経営や同族会社の場合は相続税が大きな足かせになることも多いです。
アウトドア練習場は大きな土地を持っていることが大半なので、特に東京など地価の高いエリアでは相続税が高額になってしまいます。
さらに相続人が複数いる場合は、アウトドア練習場の財産を誰にどう分配するかといった問題も生じることもあるでしょう。
客単価を上げるためには付加価値が必要
今後ゴルフ練習場業界で生き残るには、客単価を上げることが非常に重要です。特にインドアのゴルフ練習場は家賃負担などもあるので、客単価が上がらないと成立しにくくなります。
客単価を上げるためには、最新機器の導入やレッスンプロによる指導など、付加価値をつけることが重要です。
事業継続が難しく廃業を選択するケースも多い
ゴルフ練習場の経営が継続できなくなり、M&Aによる売却先もみつからず最終的に廃業するケースも少なくありません。
個人経営だけでなく法人経営の場合も深刻な問題であり、後継者不在や設備の老朽化などを理由にゴルフ練習場を廃業するケースがみられます。
4. ゴルフ練習場M&Aのメリット
ゴルフ練習場のM&Aのメリットは、譲渡側と譲受側でそれぞれ異なります。両者のメリットを理解しておくことが、M&Aを成功させるには不可欠です。
譲渡側のメリット
ゴルフ練習場M&Aの譲渡側の主なメリットには、後継者問題の解決や従業員の雇用維持など、以下の4つがあります。
【ゴルフ練習場M&Aの譲渡側のメリット】
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用維持
- 創業者利潤の獲得
- 個人保証や担保の解消
①後継者問題の解決
M&Aは、親族や社員等による事業承継ができない時に、後継者問題を解決する手段として非常に有効です。
今まで面識のなかった相手と会社を売買するのは経営者にとって不安な要素ですが、親族・社員以外に幅広く相手を探せるのは大きなメリットといえます。
②従業員の雇用維持
倒産・廃業の危機にあるゴルフ練習場をM&Aで売却して、従業員の雇用を維持することができます。
倒産・廃業の危機にあるゴルフ練習場の買い手をみつけるのは黒字の場合より難易度が上がるものの、独自の強みなどが評価されて買い手がつくのは決して珍しいことではありません。
③創業者利潤の獲得
ゴルフ練習場の経営者はほとんどの場合その会社の株式を保有しているので、M&Aで売却すれば創業者利潤を獲得できます。
近年、M&Aは株式上場(IPO)に代わる創業者利潤の獲得手段として認知されてきました。実際、ベンチャー企業ではM&Aによるイグジットが活発に行われています。
④個人保証や担保の解消
個人事業や中小企業のゴルフ練習場では、経営者が個人保証や担保をしていることが大半です。
個人保証や担保は経営破綻が自身の破産につながることが少なくありません。そのため、経営者にとって負担が大きいものです。
ゴルフ練習場をM&Aで売却すると個人保証や担保は一般に譲受側が引き継ぐので、譲渡側の経営者はプレッシャーから解放されます。
譲受側のメリット
ゴルフ練習場M&Aの譲受側の主なメリットには、スケールメリットの享受や新たな顧客の獲得など以下の3つがあります。
【ゴルフ練習場M&Aの譲受側のメリット】
- スケールメリットの享受
- 新たな顧客の獲得
- ノウハウや人材の獲得
①スケールメリットの享受
一般にM&Aで事業を買収すると、大量仕入れによるコスト削減やブランドイメージによる広告効果といった、いわゆるスケールメリットを享受できます。
ゴルフ練習場は製造業に比べるとコスト削減効果は高くないかもしれませんが、譲渡側に知名度やブランドイメージがある場合はそれを活用して事業拡大を目指すことも可能です。
②新たな顧客の獲得
M&Aでゴルフ練習場を譲受すると、譲渡側の顧客を獲得できます。特に、譲受側が進出していないエリアのゴルフ練習場を買収するのは有効な手段です。一から進出するのが困難な新しいエリアでも、顧客獲得までの時間を軽減できます。
③ノウハウや人材の獲得
譲渡側のゴルフ練習場が独自のノウハウや優秀な人材を持っていると、譲受側はM&Aによってそれらを獲得できます。
ノウハウや人材の育成は一から行うと時間とコストがかかるので、M&Aによって手早い獲得を試みるケースも多いです。
5. ゴルフ練習場のM&Aを行う際の流れ
ゴルフ練習場のM&Aを行う際の流れは、基本的に他業種のM&Aと同じです。ただし、必ずしも全てのプロセスが行われるとは限らず、特に小規模なM&Aではいくつかのプロセスが省略されることもあります。
【ゴルフ練習場のM&Aを行う際の流れ】
- 専門家に相談する
- 相手先候補の絞り込み・交渉の打診
- 秘密保持契約の締結
- トップ面談
- 基本合意の締結
- デューディリジェンスの実施
- 最終条件の交渉
- 最終契約の締結
- クロージング
1.専門家に相談する
M&Aは経営者が自分だけの力で行うのは難しいので、M&A仲介会社などの専門家に相談するケースが一般的です。
M&A仲介会社以外にも、金融機関のM&A部門や事業承継・引継ぎ支援センターなどに相談したり、M&Aマッチングサイトを利用したりする方法があります。
2.相手先候補の絞り込み・交渉の打診
M&Aを相談する専門家が決まったら、その専門家のサポートのもとで相手先候補の絞り込みと交渉の打診を行います。
相手の絞り込みをするためには、M&Aの目的を明確にしておき、適切な戦略の策定が必要です。
3.秘密保持契約の締結
M&Aはお互いの会社の内部情報を開示することになるので、秘密保持契約を締結するのが一般的です。
M&Aは開示する情報が非常に多くなるので、秘密を保持する情報の範囲と期限、違反した場合の対処方法などを明確にしておく必要があります。
4.トップ面談
M&Aのトップ面談とは、譲渡側と譲受側の経営者や役員、主要株主などが顔を合わせて話し合うことです。
M&Aを行う相手企業をおおむね絞り込んで、相手からも交渉の意志を確認した段階でトップ面談を行います。トップ面談はお互いの経営者の人間性などを知る重要な機会です。
5.基本合意の締結
トップ面談が終わったら、ここまでの合意内容や独占交渉権の付与、デューデリジェンスへの協力義務などを盛り込んだ基本合意を締結します。
M&Aでは基本合意を締結するケースが一般的です。しかし、ごく小規模な室内ゴルフ練習場のM&Aなどの場合は、締結を省略するケースも考えられます。
6.デューディリジェンスの実施
デューディリジェンスとは、譲受側が譲渡側企業の財務・税務・法務などを調査することです。
M&Aはお互い面識がなかった会社同士で行うことがほとんどなので、契約締結前にデューディリジェンスでしっかり調査しておかなければなりません。
ただし、非常に小規模なゴルフ練習場のM&Aの場合は、本格的なデューディリジェンスは行わず財務諸表などの簡単な調査で済ませるケースも考えられます。
7.最終条件の交渉
デューデリジェンスの結果を踏まえて、最終契約に向けた交渉を行います。
基本合意ですでに大まかな条件は決めていますが、従業員や譲渡側経営者のM&A後の処遇、譲渡代金の支払い方法、会社名義の個人資産の処分など、ここでは詳細まで決定していきます。
8.最終契約の締結
最終条件交渉で契約内容の詳細が決まったら、最終契約を締結してM&Aが成約となります。最終契約書の実際の名称は用いるスキームによって変わり、例えば株式譲渡なら「株式譲渡契約書」事業譲渡なら「事業譲渡契約書」です。
基本合意と違い最終契約は法的拘束力があるので、違反すると損害賠償などで解決しなければならないケースも出てきます。
9.クロージング
クロージングとは、譲渡代金の支払いなど最終契約の内容を実行することです。
一般にM&Aの最終契約書には、誓約事項の履行や取引先との合意などの「クロージング条件」が定められており、これが満たされていることを確認してからクロージングを実行します。
6. ゴルフ練習場のM&A・売却は専門家に相談
ゴルフ練習場のM&A・売却をご検討中の方は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。経験豊富なアドバイザーが、満足のいくゴルフ練習場M&Aをフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。ゴルフ練習場のM&A・売却に関して、無料相談をお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。
7. まとめ
ゴルフ練習場は、若年層・女性客の取り込みや最新機器の導入など業界動向の変化がみられる中、相続税などによる事業承継の難しさもあり、今後M&Aがより重要になってくると考えられます。
M&Aのメリット・流れや業界動向を踏まえて、満足できるM&Aを行えるように準備しておくことが大切です。
【ゴルフ練習場業界の近年の動向・特徴】
- コロナの影響で利用者が増加
- 若年層や女性利用者の増加
- インドア練習場(打ちっぱなし)の増加
【ゴルフ練習場業界の問題点】
- 経営者の高齢化が進んでいる
- アウトドア練習場は事業承継が難しい
- 客単価を上げるためには付加価値が必要
- 事業継続が難しく廃業を選択するケースも多い
【ゴルフ練習場M&Aの譲渡側のメリット】
- 後継者問題の解決
- 従業員の雇用維持
- 創業者利潤の獲得
- 個人保証や担保の解消
【ゴルフ練習場M&Aの譲受側のメリット】
- スケールメリットの享受
- 新たな顧客の獲得
- ノウハウや人材の獲得
【ゴルフ練習場のM&Aを行う際の流れ】
- 専門家に相談する
- 相手先候補の絞り込み・交渉の打診
- 秘密保持契約の締結
- トップ面談
- 基本合意の締結
- デューディリジェンスの実施
- 最終条件の交渉
- 最終契約の締結
- クロージング
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