2024年01月19日公開
不動産仲介業のM&Aの動向や事例を解説!価格相場やメリット・デメリットは?
不動産仲介業は、人口減少やコロナウイルスの影響で大幅な需要縮小が問題になっているため、業界全体でM&Aが活発化してきています。
今回は、そんな不動産仲介業のM&Aの動向や事例について解説します。
目次
1. 不動産仲介業のM&Aとは?
不動産仲介業は、人口減少やコロナウイルスの影響によって、多くの地域で需要が縮小傾向にあります。
そんな不動産仲介業のM&Aの動向や目的には何があるのか気になります。
ここでは、不動産仲介業のM&Aについて解説します。
不動産仲介業って?
不動産仲介業とは、不動産オーナーと不動産の借り手もしくは買い手の間を仲介し、売買・賃借を行う事業のことです。
この不動産仲介業は、宅地建物取引法に基づいて国土交通大臣もしくは都道府県知事の免許を受けなければ事業を運営することができません。
また、賃貸アパート・マンションの仲介を専任している業者から住宅や大規模な建物の売買を行う業者まで幅広く存在します。
そのため、不動産仲介業は不動産業界の動向に大きく左右される特徴があり、今後の動向も不動産業界によって大きく変化していくことでしょう。
不動産仲介業の最近のM&Aの動向
不動産仲介業は、人口減少や都市集中による地域格差などのさまざまな社会問題によって、需要が低下傾向にあります。
その結果、不動産仲介業は廃業や競争力の強化を目的にM&Aを実施する企業が多くなってきており、特に小規模事業者のM&A事例が増加傾向です。
さらに、近年ではコロナウイルスの影響もあり利益率や需要の低下は深刻化しているため、今後の動向としてM&Aを実施する不動産仲介業がさらに増加し続けていくことが予想されています。
実際に、競争力強化や後継者選定などを目的に不動産仲介業のM&A事例は年々増加し続けています。
不動産仲介業のM&Aが行われる背景とは?
不動産仲介業のM&Aが行われる背景には、主に以下のものが挙げられます。
- 人口減少や都市集中による需要の低下
- コロナウイルスの影響による減収
- 後継者不在
- 不動産テック産業の拡大による競争激化
以上のような要因から、不動産仲介業の多くは事業拡大や競争力強化を目的にM&Aを実施するケースが増加し続けています。
さらに、不動産仲介業のほとんどが小規模事業者に当たるため、以上のような要因は大きな打撃になります。
2. 不動産仲介業は買収側と売却側ではM&Aの狙いが違う
さまざまな狙いでM&Aは行われており、その中でも買収側と売却側ではM&Aの狙いがそれぞれ違います。
不動産仲介業のM&Aでは、買収側と売却側でそれぞれどのような狙いがあるのでしょうか。
ここでは、不動産仲介業のM&Aの買収側と売却側の狙い・メリットについて解説します。
買収側のメリット
不動産仲介業の買収側のメリットには、主に以下のものがあります。
- 事業拡大が期待できる
- 低コストで不動産を獲得できる
- 節税効果が高い
- 顧客ごと譲受できる
- 当該地域へスムーズに参入できる
不動産仲介業の買収側は以上のような狙いを持ってM&Aを実施することが多く、実際にこれまでにM&Aを実施した不動産仲介業者は以上のようなメリットを得ているケースが多くあります。
さらに、不動産仲介業は免許や許可、登記などさまざまな手続きやコストがかかるため、M&Aによって不動産を獲得できることは大きなメリットの1つです。
そのため、これから不動産仲介業でM&Aを検討している場合は、以上のメリットを参考にしてみましょう。
売却側のメリット
不動産仲介業の売却側のメリットには、主に以下のものがあります。
- 売却益を獲得できる
- 廃業よりも低コスト
- 節税効果がある
- 従業員の雇用を確保できる
- 経営者はリタイアできる
不動産仲介業の売却側は、M&Aによって以上のようなメリットを期待することが可能です。
M&Aによって、自社や従業員の雇用を維持できるだけでなく多額の売却益を獲得した後に、スムーズなリタイアを実現できます。
そのため、経営者が高齢の場合はM&Aによって自社を売却することも効果的な手段の1つです。
また、売却益の獲得以外にも節税効果も期待できるため、廃業するよりも大幅にコストを抑えられます。
3. 不動産仲介業がM&Aをする目的
M&Aは企業が抱えている課題を解決させたり目的を達成させるために実施されるため、不動産仲介業がM&Aをする場合も目的が存在します。
これからM&Aを検討している企業は、不動産仲介業がM&Aをする目的について理解しておくことが大切です。
ここでは、不動産仲介業がM&Aをする目的について解説します。
後継者不足による事業継承問題を解決する
不動産仲介業は、少子化や人口減少に伴う後継者不足を抱えている企業が多く存在しています。
自社内に後継者を見つけられない場合、今の経営者が引退したタイミングで廃業になってしまいますが、M&Aによって第三者から後継者を見つけられれば廃業を免れられます。
自社の後継者を見つけるためにM&Aを検討している不動産仲介業は年々増加傾向にあります。
また、実際に後継者を見つけて自社を存続させられている事例は多くなっています。
従業員の雇用維持ができる
従業員の雇用維持ができるという目的で、M&Aを実施する企業も多くいます。
自社が廃業してしまうと、そこで働いている多くの従業員の雇用が失われてしまいますが、M&Aによって自社を存続させられれば従業員の雇用も維持させることが可能です。
さらに、場合によってはこれまでよりも高待遇で雇用される可能性もあるため、従業員にとって大きなメリットになります。
そのため、M&Aは企業や経営者だけでなく従業員にとっても重要なことの1つです。
事業の成長が見込まれる
M&Aによって自社とM&A相手企業の経営資源やノウハウが共有されます。
その結果、さまざまな技術や知識の増加や人員や資源、商圏の獲得による事業拡大や企業価値の向上が期待できます。
さらに、経営や事業が1つになることで、これまで以上に業務が効率化され新たな事業やサービスを誕生させられる余裕も生まれる可能性があります。
そのため、自社や事業を成長させることを目的としたM&A事例も、これまでに数多く行われています。
4. 不動産仲介業のM&Aの成功事例を知ろう
不動産仲介業では、これまでに数多くの企業がM&Aを実施しており、成功事例も多く存在しています。
これからM&Aを検討している企業は、自社のM&Aを成功させるためにもこれまでのM&A成功事例を知っておくことが大切です。
ここでは、不動産仲介業のM&Aの成功事例について紹介します。
飯田グループホールディングスのM&A
1つ目のM&A事例は、2013年11月に不動産仲介業を行う6社が経営統合して飯田グループホールディングスが誕生した事例です。
経営統合した企業は、以下の6社です。
- タクトホーム
- アーネストワン
- アイディホーム
- 東栄住宅
- 一建設
- 飯田産業
経営統合を実施した後は、6社の既存事業である戸建て・分譲マンション・注文住宅などを展開し、仕入れコスト削減や業務効率化、従業員の育成などを実現しました。
その結果、飯田ホールディングスはM&Aによって事業拡大・事業の多角化・海外展開などを成功させました。
今度も、飯田ホールディングスのように不動産仲介業同士での経営統合を行うM&A事例は増加し続けていくことが予想されています。
ハウスフリーダムのM&A
2つ目のM&A事例は、2017年6月にハウスフリーダムがアイデムホームの全株式を取得して完全子会社化させた事例です。
ハウスフリーダムは不動産仲介業を関西・福岡・中部地域で展開している企業で、アイデムホームは愛知県 名古屋市を拠点に不動産仲介業を行う企業です。
ハウスフリーダムは、同業種でのM&Aを行うことで事業拡大や中部地域での経営基盤の強化を目的にアイデムホームを買収しました。
今後も、以上のM&A事例のように事業拡大や特定地域での経営基盤強化や商圏拡大を目的にM&Aを行う不動産仲介業者は増加していくことでしょう。
ハウスコムのM&A
3つ目のM&A事例は、2021年3月にハウスコムが宅都の株式を取得し子会社化及び宅都ホールディングスとの業務提携を行った事例です。
ハウスコムは賃貸物件の仲介・管理や損害保険の代行を行う企業で、宅都ホールディングスは賃貸物件の仲介や不動産賃貸事業、ホテル事業を展開している宅都の親会社です。
ハウスコムは、不動産テックを活用した経営や事業拡大、人材育成や組織の活性化などを目的に宅都の買収及び宅都ホールディングスとの業務提携を行いました。
今後は、不動産仲介業以外にも不動産テック産業への参入など事業の多角化が期待されています。
5. 不動産仲介業のM&Aのメリットとデメリット
M&Aには、さまざまなメリットとデメリットが存在しており、不動産仲介業のM&Aも例外ではありません。
また、しっかりとM&Aのメリットとデメリットを理解した上でM&Aを実施しなければ失敗してしまう可能性があります。
ここでは、不動産仲介業のM&Aのメリットとデメリットについて解説します。
メリット
不動産仲介業のM&Aのメリットは、買収側と売却側でそれぞれ以下のものがあります。
買収側
- 事業拡大ができる
- 事業の多角化になる
- 低コストで不動産を獲得できる
- 不動産オーナーや賃借者も譲受できる
- 節税効果が期待できる
- 新たに土地や地域を獲得できる
不動産を通常通りの契約で売買する場合は、登録免許税や不動産取得税が課せられますが、M&Aによって不動産を獲得する場合は課せられません。
さらに、M&Aによる節税効果や不動産オーナーや賃借者、地主などの顧客と一緒に譲受できるなどのメリットもあります。
そのため、M&Aによって不動産だけでなく顧客や取引先ネットワークの拡大、売買地域の拡大などが実現します。
売却側
- 売却益を獲得できる
- 自社を存続させられる
- 従業員の雇用を確保できる
- 廃業するよりも低コストになる
- 経営者はリタイアできる
自社を廃業する場合や後継者が見つからない場合などは、積極的にM&Aを取り入れることがおすすめです。
廃業コストや不動産売買にかかる税金などを考慮してみると、M&Aによって自社ごと不動産を売却した方が税負担やその他手続きにかかる費用が抑えられます。
さらに、売却益を獲得し円満にリタイアすることも可能なため、高齢の経営者の場合は非常に効果的な手段になります。
そのため、後継者不足や廃業リスクを抱えている不動産仲介業者はM&Aを検討してみることをおすすめします。
デメリット
不動産仲介業のM&Aのメリットは、買収側と売却側でそれぞれ以下のものがあります。
買収側
- 買収に多額の費用がかかる
- シナジー効果が期待できない
- 顧客が離れてしまう場合がある
- 従業員の大量離職
- 経営統合が失敗する
- 潜在債務が発覚する
M&Aには、さまざまなメリットがありますが、その反対にさまざまなデメリットも存在しています。
特に、M&Aにかかるコストに見合った利益を得られないケースは企業にとって大きな損失になってしまうため、十分に注意する必要があります。
そのため、これからM&Aを検討している企業は、以上のようなデメリットを発生させないために慎重に検討してM&Aを進めていきましょう。
売却側
- 希望の価格で売却できない
- 売却先が見つからない
- 希望の売却先が見つからない
- 従業員の待遇が悪くなる
- 売却後に買収側が不祥事を起こす
自社をスムーズに売却することができれば、上記で解説したようなメリットを得ることができます。
ただ、十分にM&Aの検討・準備ができていない場合や自社の企業価値が高くない場合などは、以上のようなデメリットが発生する可能性があります。
特に、自社の事業や文化に適している買収先を見つけることは、M&Aを成功させるための非常に重要なポイントの1つです。
自社に適さない企業へしか売却できない場合は、従業員の大量離職やシナジー効果が得られない、企業の不祥事による廃業・企業価値低下などのリスクが高くなります。
そのため、これから自社の売却を検討している企業は、以上のデメリットを発生させないためにも十分にM&Aの検討・準備を行うようにしましょう。
6. 不動産仲介業のM&Aの価格相場
不動産仲介業のM&Aでは、いくつかの評価方法によって価格が決まります。
自社がM&Aを実施する際の価格相場がどれほどなのか気になる場合は、その評価方法を知り算出してみることをおすすめします。
ここでは、不動産仲介業のM&Aの価格相場について解説します。
3つの株価算定方法があることを知ろう
不動産仲介業のM&Aの株価算定方法には、主に以下3つがあります。
- 修正純資産法
- DCF法
- 類似会社比準法
修正純資産法とは、M&Aをする企業の財務諸表に記載されている資産と負債から評価する算出方法です。
総資産額から総負債額を引いた純資産額を元に企業価値を計算して株価算出するため、将来的な価格は含まれません。
ただ、M&Aではよく用いられる算出方法です。
DCF法とは、「Discounted Cash Flow」という言葉の略称で、買収後の利益を考慮した上で現在価格から引いて価格を決定する算出方法です。
将来的な価格も評価されるため、修正純資産法よりも納得のいく経営者が多くいます。
類似会社比準法とは、M&A相手と同一業種で類似している事業内容・規模の上場企業の株価を元に価格を決める方法です。
そのため、評価対象の企業の価値が低い場合でも類似企業の価値が高い場合は、価格相場も高くなる場合があります。
ただ、類似企業がない場合は、価格算出が行えないというデメリットがあります。
事業売買と会社売買の価格差にも注意を
不動産仲介業のM&Aに限らず、M&Aでは事業売却と会社売却で価格差があります。
事業売却は、事業に関する資産や権利のみが売却されるため、会社の資産や権利が全て売却される会社売却より価格が低くなります。
そのため、M&Aを検討している企業ができるだけ高額な売却益を獲得したい場合は、M&A手法を検討することが大切です。
実際に、売却益を高くするために売却対象の事業を子会社化させて、M&Aを行う事例も少なくありません。
これからM&Aを検討している企業は、以上の価格差に注意して行いましょう。
7. 不動産仲介業のM&Aを実施する際に注意するポイント
M&Aには、注意しなければいけないポイントが多く存在しているため、それぞれのポイントをしっかり理解した上で進めていくことが大切です。
十分に注意できていなければ、多くのデメリットが発生してしまいM&Aが失敗に終わる可能性があります。
ここでは、不動産仲介業のM&Aを実施する際に注意するポイントについて解説します。
目的や経営統合のイメージを明確に
M&Aを実施する際は、必ず目的や経営統合のイメージを明確にした上で実施しましょう。
M&Aは目的を達成させるための手段の1つでしかないため、M&Aを実施すること自体を目的として考えてしまうのはリスクが大きいです。
しっかりと「どのような目的でM&Aを検討するのか」「M&Aによるシナジー効果」「経営統合を成功させるための準備や対策」などを行い、明確にイメージができた状態で実施しましょう。
万が一、M&A・経営統合が失敗してしまうと大きな損失を抱えてしまうため、十分に注意が必要です。
デューデリジェンスを行いリスク回避しよう
デューデリジェンスでは、売却側の財務・税務・資産・業務内容・法務・雇用・負債などの情報を調査して、M&Aによる買収リスクや適正価格の算出を行います。
このプロセスが、弁護士や税理士、会計士などの専門家に依頼して徹底して行う必要があり、万が一怠ってしまうと潜在債務や給料未払いなどの問題を見逃したまま買収することになってしまいます。
そのため、M&Aではデューデリジェンスを行いリスクを回避することが大切です。
デューデリジェンスを詳しく説明!
デューデリジェンスは、主に買収側が売却側の実態を正確に把握した上で、取引価格や取引条件などを決定するために行われる調査です。
M&Aでは、必ず行われるプロセスの1つであり怠ってしまうことで潜在債務や雇用トラブル、事業の欠点などさまざまなリスクを見逃した状態で買収することになります。
そのため、このデューデリジェンスでは、以下6種類の調査によって徹底して行われます。
- セルサイドデューデリジェンス
- ビジネスデューデリジェンス
- 財務デューデリジェンス
- 法務デューデリジェンス
- 人事デューデリジェンス
- ITデューデリジェンス
それぞれの調査では、弁護士や会計士、税理士などの専門家に依頼して慎重に進めていきます。
このデューデリジェンスで万が一問題が発覚した場合は、取引の破綻や取引価格・条件の交渉が行われます。
そのため、売却側と買収側のどちらにとっても、非常に重要なプロセスの1つです。
M&Aを実施するときは専門家に依頼する
M&Aには、多くの専門知識や業務が必要になるため、自社のみでは十分に実施することが困難です。
M&Aを成功させるためには、M&A仲介会社などの専門家に依頼して、さまざまなアドバイスやサポートを受けて慎重に進めていくことが効果的になります。
さらに、豊富な経験を持った専門家から多くのアドバイス・サポートを受けられるため、自社業務に専念しながらM&Aを進めることも可能です。
そのため、M&Aを検討している場合は、自社のみで進めずに専門家への依頼も行うようにしましょう。
8. 不動産仲介業のM&Aを成功させよう!
不動産仲介業のM&A件数は、年々増加傾向にあり今後も業界全体で活発化していくことが予想されています。
また、これからM&Aを検討している不動産仲介業者の方も多くいますが、M&Aにはさまざまなデメリットや注意点も存在しています。
しっかりと準備や対策をしてM&Aを実施しなければ、大きな損失が発生してしまいます。
そのため、不動産仲介業のM&Aを検討している方は、成功させるために徹底した準備や対策を行いましょう。
M&A・事業承継のご相談ならM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談なら経験豊富なM&AアドバイザーのいるM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
- 上場の信頼感と豊富な実績
- 譲受企業専門部署による強いマッチング力
M&A総合研究所は、成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A仲介会社です。
M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。