左官工事業界のM&A動向!売却のメリットと成功のポイントを解説!【2024年最新】

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

この記事では左官工事業界のM&A動向を紹介していきます。リフォーム需要の高まりを受け、左官工事業界の仕事も増えている一方で業界特有の課題が残されています。これを解決するために近年では中小左官工事会社の同士のM&Aが盛んに行われています。

目次

  1. 左官工事業界の概要と動向
  2. 左官工事業界のM&A動向
  3. 左官工事会社をM&Aするメリット
  4. 左官工事業界のM&Aの成功のポイント
  5. 左官工事業界のM&A・事業譲渡まとめ
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1. 左官工事業界の概要と動向

ここでは、建設業界を更に細分化した一分野である左官工事業界の概要と動向について説明します。

左官工事業界について理解しておくことで、今後、業界が成長産業となる可能性があるのかが理解できます。

左官工事業界とは

左官工事業界とは、工作物に壁土、モルタル、漆くい、プラスター、繊維等をこて塗り、吹付け、又ははり付ける工事を担う事業者が所属する業界です。

国土交通省の分類によれば、建設業は大工工事業や土木工事業など、16の特定分野に細分化されています。その中でも、建物の外壁工事を手掛ける業者は、ブロック工事業界、左官工事業界、屋根工事業界、塗装工事業界、防水工事業界など、それぞれの専門分野にわけられており、それぞれに専門的な会社が存在します。
(業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正))

建設業界には、特有の下請け体系があり、総合建設業(ゼネコン)が強い資本力を有している業界です。

建設業界の一つの分野である左官工事業界には、自己の事業を展開しながら下請け業務も担当する企業や、専門的に下請け業務に従事する企業などがあります。

左官工事会社による外壁工事の主な対象は住宅、事業所、店舗などの民間施設と公共施設で、その中でも住宅が最も大きな分野を占めるのが普通です。

近年では、外壁工事をメインとし、自社で元請けも行う左官工事会社は、新築よりも保守・修理、リノベーション工事の方が需要が高くなっています。

特にマンションの大規模な修繕工事が市場が急激に広がっており、その需要への対応が左官工事会社には求められています。

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左官工事業界の市場規模と動向

出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001577569.pdf

左官工事業界の市場動向としては、リフォームやリノベーションがトレンドとなっています。

国土交通省が毎年実施している建築物リフォーム・リニューアル調査報告によると、令和4年度第2四半期の建築物リフォーム・リニューアル受注高の合計は、2兆9,565億円でした。

この数字は、前年同期と比べて 2.3%減少しています。このうち、住宅に関する工事の受注高は1兆177億円で、同 2.8%増加しており、非住宅建築物に係る工事の受注高は1兆9,389億円で、同 4.8%減少しています。

このことから、リフォームやリノベーションについては、住宅に関する工事が成長産業であることがわかります。一方で、非住宅建築物に関する工事の受注は大幅に減少していることが確認できます。

リノベーションやリフォームが大きな成長の兆しをみせているものの、左官工事業界全体においては、原材料費高騰による住宅設備や建材値上げも懸念材料となっています。2022年には住設・建材メーカーの多くが値上げに踏み切るなど、値上げの波が押し寄せています。

こうした状況を背景として、経営効率化を目的としたM&Aが左官工事業界では進んでいます。
 

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2. 左官工事業界のM&A動向

左官工事会社に対する需要がリフォームやリノベーションへと変化していくなかで、左官工事会社には、業務の効率化や技術の革新、新技術の取り入れや品質の向上など、様々な課題を抱えております。

これらの課題を解決するために活用されているのがM&Aです。中小事業者が多い左官工事業界では、サプライチェーンの上流に位置し、資本力のある建設会社が左官工事会社を買収するというケースが多く見られます。

建設業界全体としても、市場の需要が減退しているなかで、新たな市場を開拓することや他の業界への展開など、新しいビジネス戦略の立案が求められています。

特に、左官工事業界では、専門技術を持つ労働者の確保が難しいため、労働力不足が深刻な問題となっています。こうした事情が、職人を獲得したり育成に力を注いでいる企業が左官工事会社を買収する主な要因となっています。

これに加えて、左官工事業界では工事期間の短縮が重要な課題となっています。建物のデザインや内装に対する顧客の要求が多様化しており、要求水準を満たしたうえで工期を短縮するのは容易ではありません。

そのため、M&Aによって多種多様な技術やスキルを持つ企業を買収し、様々な顧客要望に迅速に対応しようとしています。

こうした傾向は今後も続くと考えられるので、労働力の確保、工事期間の短縮、顧客の多様な要求への対応等を目指すM&Aの動きは続くと考えられるでしょう。

3. 左官工事会社をM&Aするメリット

左官工事会社をM&Aによって売却することには多くのメリットがあります。ここでは、売却側の視点から、代表的なメリットについて解説していきます。

売却利益の獲得

左官工事会社がM&Aを通じて会社や事業を売却することは、経営者に大きな売却益をもたらします。

経営者が廃業を選択した場合、資産の処分や雇用解除に伴う労働者への補償など、様々な経費が発生するのが普通です。

その意味で、M&Aと廃業を比較すると廃業はコストがかさみますが、売却は利益をもたらすと言えます。

多くの中小企業においては、会社の株式は現在の経営者が保有しているため、買収側と売却側となる経営者間の協議で取引額が決まることが一般的です。

売却する企業の価値を買収側が高く見積もるほど、得られる売却利益は増えることになります。

租税負担の軽減

企業を売却することは、所得税や相続税などの租税の負担を軽減できるというメリットがあります。

会社の売却益は法人として法人税を支払うことになりますが、経営者個人が売却益を受け取ると所得税が適用されます。

左官工事会社に多いオーナー経営者がM&Aを通じて株式を譲渡すれば、譲渡益は経営者の所得となります。

この場合、分離課税となるので、株式を譲渡して得た所得に対して所得税、復興特別所得税、個人住民税が課されることになります。

2023年6月の時点において、税率は20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+個人住民税5%)です。

株式譲渡所得は、「収入総額-取得費・譲渡費用」により計算することができます。

総合課税の最高税率はおおよそ56%なので、給与(役員報酬)とM&Aによる株式譲渡所得が同じ金額だとする場合には、税率の違いで、M&Aによる収入の方が経営者の手元に残る金額が多くなるということができます

経営の効率化

M&Aを通じて企業を売却すると、買収側の企業が保有する専門知識や営業リソースを活用して売上を増やしたり、スケールメリットによるコスト削減など、買収側企業との協力によるビジネス上のシナジーを期待でき、経営の効率化に繋がる可能性があります。

自社よりも大規模で安定した企業の下で、その企業が提供する資本やインフラを利用できる場合、スムーズな資金調達、生産体制の強化、販売チャネルの拡大など、買い手の強みを生かしながら、市場競争で生き残れます。

中小事業者同士の激しい競争となっている左官工事業界においては、M&Aを活用して経営の効率化を図ることで経営の効率化を効果的に進めることができるでしょう。

4. 左官工事業界のM&Aの成功のポイント

ここからは、左官工事業界において売却側でM&Aを成功させるためのポイントを説明していきます。

成功のポイントを理解しておくことによって、スムーズにM&Aの手続きができるようになります。

M&Aをする目的をはっきりさせる

左官工事業界においてM&Aを通じて事業を譲渡する場合には、明確な目標の設定が必要不可欠です。

M&Aを通じて何を達成したいのかを明らかにしておかなければなりません。

M&Aを行う背景には多種多様な目指すべき目的が存在し、その目的によって戦略やそれに基づくアクションプランが変わります。

たとえば、M&Aの目的を従業員の雇用を継続させることだと設定した場合、買収側の企業がM&A後も従業員を同様の職に就かせてくれる会社かどうかを確認しなければなりません。

そうでない会社に事業を売却してしまうと、M&A時に想定していた目的を達成できない可能性があるので注意してください。

専門家に相談する

M&Aを行う場合、売却先を慎重に選ばなければなりません。売却先の信用度や財政状態などを考慮したうえで、売却側としてもM&Aの目的が達成できそうか判断する必要があります。

しかし、自社のリソースだけでそれを実行するのは困難です。そんな時に活用したいのが専門家です。専門家に相談すれば、優良な売却先を探してきてくれるかもしれません。さらに、売却先となる会社の信用度などについても、専門家としての知見を用いて分析してくれます。

M&Aの契約書に記述される詳細な条件は、将来的な問題を防ぐために細心の注意を払って作成されるのが普通です。専門家がいることでM&Aの成立に向けた作業を安心して進めることが可能になるでしょう。

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M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ)随時、無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
 

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信頼できる売却先を探す

M&Aを成功させるためには、買収側にせよ、売却側にせよ、お互いを信頼できるかどうかが重要です。

M&A後にスムーズに事業の統合を進める意味でも、信頼関係はM&Aにおける重要なポイントです。

自分自身で分析することが難しい場合には、積極的に専門家に相談しましょう。

自社の強みを分析・アピールする

買収側が売却側の企業にどんな価値を見出すかは定かではありません。

たとえば、利益が伸びている、預金や不動産などの資産があることは買収側からすれば魅力的に映ります。しかし、M&Aにおいては、売却側の企業価値はそれだけに限定されません。

財産や利益は企業の顕在的な価値と考えられる一方で、社員や技術、顧客リストなどは企業の潜在的価値と言えます。売却側の企業価値は、本来、潜在的価値、つまり企業の強みを見つけ出し、強化することによって向上するものです。

左官工事業界の中小企業経営者の中には、自社の内部分析を十分に行っておらず、自社の強みが何なのか把握できていない企業も少なくありません。自社の強みを十分に分析し、買収側にアピールすることで、企業価値を高められます。

5. 左官工事業界のM&A・事業譲渡まとめ

左官工事会社は、従来、建設業界の一端を担う業界に属する存在であったものの、近年では、リフォーム業界にも活躍の場を広げています。時代の変化に柔軟に対応して需要に応えることが、これからの左官工事会社には必要です。

これを背景として、左官工事業界では、経営効率化のために中小の左官工事会社同士が合併したり、リフォーム業界などの他業界に属する会社に買収されたりするようになってきています。

左官工事業界では、経営者の高齢化に伴う廃業が業界全体の課題となっていますが、廃業する前にM&Aを検討することが大切です。左官工事会社が蓄積してきた技術やノウハウを承継していくためにも、M&Aの活用が求められています。

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