建材卸売業界のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイント・事例14選を徹底解説【2024年最新】

執⾏役員 兼 企業情報部 本部⻑ 兼 企業情報第一本部 本部長
辻 亮人

大手M&A仲介会社にて、事業承継や戦略的な成長を目指すM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、経営者が抱える業界特有のお悩みに寄り添いながら、設備工事業や建設コンサルタント、製造業、医療法人など幅広い業種を担当。

本記事では、建材卸売業界の特徴やM&A動向、売却・買収の相場やM&Aを行うメリットをわかりやすく解説しています。そのほか、建材卸売業界の売却・買収を成功させるポイントや手続きの流れについても紹介しています。

目次

  1. 建材卸売業界とは
  2. 建材卸売業界の現状
  3. 建材卸売業界のM&A動向
  4. 建材卸売のM&Aメリット
  5. 建材卸売会社のM&Aの成功ポイント
  6. 建材卸売会社のM&Aの流れ
  7. 建材卸売業界のM&A成功事例14選
  8. 建材卸売業界のM&Aまとめ
  9. 建材・住宅設備機器の卸業界の成約事例一覧
  10. 建材・住宅設備機器の卸業界のM&A案件一覧
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1. 建材卸売業界とは

建材卸売業界は木材・金属などの建設資材や外装建材を扱う企業が属しています。建材卸売業界のM&Aについて触れる前に、業界定義や特徴など基本的な情報を確認しておきましょう。

建材卸売業界の定義

建材卸業とは、メーカーから資材を仕入れ企業へ販売する事業をいいます。主に、以下の卸売で営む企業で構成されています。

  • 建材(壁・天井・屋根などの外装となる材料)
  • 建設資材(木材・金属等)

建材卸売業界の特徴

建材卸売業界には、以下4つの特徴があります。業界特性を把握しておくことはM&A時にも役立つことが多いです。ここでは、4つの特徴を解説します。

取扱商品が多種多様

建材卸業では顧客ニーズが多様化しており、品目が多岐にわたる特徴があります。

例えば、素材や形状1つとっても多くのニーズがあるため量産体制が難しく商品別の管理も難しい特徴があります。さらに、商品別の採算・在庫管理などにも工数がかかります。

ローカルビジネス

建材卸業は、工務店やハウスメーカーが取引相手となるため商圏内顧客の利用が多いビジネスモデルだといえます。

基本的に地域密着型になるため、それぞれの建材卸売業者も地域ごとに存在しています。新設住宅着工数・リフォーム件数に売り上げが大きく左右されてしまう難点もあります。

契約形態の多様化

一部の建材卸売業者は加工も請け負っていることがあるため、契約形態が以下のように多様化しています。

  • 購買契約:規格品・市販品を対象とする売買契約
  • 製造委託契約:最終的な製品の仕様を指定し、製造を委託する契約
  • 材工一式契約:建築資材・工事作業を、建材卸業者が手配する契約

差別化が難しい

卸売業という性質上、加工を請け負っていない業者は商品の差別化ができません。

そのため、「いかに安く販売するか」という価格競争に巻き込まれやすくなっています。売り上げ総利益率が軒並み低い業界でありますが、リードタイムの短縮・アフターサービスなどで価格の差別化を図る業者も増えてきています。

2. 建材卸売業界の現状

建材卸売業界のM&Aによる買収や売却・譲渡などの動向を見る前に、まずは建材卸売業界の状況などを解説します。

建材卸売業界の市場規模

総務省・経済産業省の統計資料「2022年経済構造実態調査」によると、2022年における建材卸売業界の年間販売額は約21兆7099億4800万円であり、小売業全体(約412兆5580億円)の5.3%となっています。

参考:総務省・経済産業省「2022年経済構造実態調査」

新築は減少傾向

国土交通省 「建築着工統計調査報告 令和 4 年度計」

出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/kencha414.pdf

新型コロナの影響により2020年度の建材卸売の国内市場は大きく減少しましたが、2021年度はコロナ禍の反動や在宅時間が増えたことで住み替え需要が伸びたことなどで市場が拡大しました。

しかしながら、今後の国内人口は減少する見込みであり、さらに地価や建設コストが上昇して新築住宅の需要は高止まりしていることなどを踏まえると、中長期的には新築は減少傾向で推移すると考えられます。

参考:国土交通省「建築着工統計調査報告 令和4年度計」

リフォームの需要増加

国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(概要)」

出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001614296.pdf

国土交通省の調査によれば、2023年度第4四半期における建築物リフォーム・リニューアル工事の受注高は2兆9350億円であり、前年度同期に比べ6.5%の増加となりました。そのうち、住宅に係る工事受注高は1兆551億円であり、前年度同期に比べ30.5%増加しています。

また、2023年度の合計受注高は建築物リフォーム・リニューアル工事全体で11兆5545億円で、前年度に比べると1.2%減少していますが、住宅に係る工事受注高は4.6%増加の3兆9200億円となりました。

近年は、不動産取引価格の上昇で住み替えから持ち家リフォームへとシフトする動きがみられ、さらに団塊ジュニア世代が持ち家のリフォームタイミングに差し掛かっていることなどから、今後はさらにリフォームの需要が増加する可能性が考えられます。

参考:国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査報告(概要)」

地元密着型の中小企業が多い

取り扱っている商材が多様な建材卸売業界は、地域に密着した中小企業が多い点も特徴です。大手の建材・住宅設備機器の卸売メーカーは、地場の商社と手を組むことで、細かい地域まで商圏を伸ばしています。

建材卸売業界のライバル

建材卸売業界では、激しい価格競争が行われています。価格競争のライバルは業界内だけではありません。以下に挙げる異業種からの価格競争が、建材卸売業界建材・住宅設備機器の卸・問屋業界にはあります。

住設機器メーカー

住設機器を取り扱っている大手メーカーでは、昨今のストック市場によるリフォームの売上上昇を見込み、需要を囲い込み始めています。その手法は、メーカーが店舗を開設したり、オンラインショップの開業でユーザーに直接販売したりする方法などです。

住設機器を取り扱っているメーカーには、直接販売での価格に対する優位性があるだけではありません。コマーシャルなどを積極的に行うことでエンドユーザーに認知され、市場でのシェアを広げられる強みもあります。

大手の住設機器メーカーが豊富な資金を投入して参入する動きに対して、建材卸売業界の主流となる地域の中小企業は、今まで培った人脈と販売網を駆使して対抗するしかありません。

家電量販店

建材卸売会社のライバルに家電量販店があります。家電量販店のなかには、住宅メーカーをM&Aにより買収し、住宅業界に参入している企業もあるほどです。

家電量販店には、日々多くのエンドユーザーが買い物に訪れているため、直接営業をかけられるメリットがあります。販売店は各地に点在しており、潜在的なユーザーを取り込める可能性も高いです。

家電量販店で住宅を契約すると、家電の割り引きやポイントサービスを得られるなど、住宅設備プラスアルファのメリットもあります。建材卸売会社からは、家電量販店参入による顧客の流出が危惧されています。

オンラインによるリフォーム事業

最近では、インターネットに関連している企業が、オンラインを活用してリフォームを行うサービスがみられます。こうしたサービスは今後、成長を見せるのではないかと注目を浴びている状況です。

例えば、Amazon.co.jpが積水ハウスグループ、大和ハウスリフォーム、ダスキンといったリフォームに関連した商品を取り扱う専門サイトを開設したり、ソーシャルゲーム大手のグリーがオンラインでリフォームサービスを開始したりしています。

こうしたサービスに対して、消費者もインターネットでリフォームを行える容易さからニーズがみられます。それだけでなく、インターネットで資材価格を提示されることにより、商社が扱う商材の値崩れにもつながるのではと危惧されています。

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3. 建材卸売業界のM&A動向

ここでは、建材卸売業界におけるM&Aでの売却・買収動向を解説します。

事業承継がらみのM&Aが増加

日本の人口減少は非常に大きな問題です。人口減少は事業の担い手不足を招いています。地域に根ざした商社が多い建材卸売業界では、後継者不足が深刻な問題です。

後継者不足により事業承継ができない建材卸売業界の中小企業が、M&Aにより商社などの事業を売却する事例が多くみられています。M&Aによる売却や買収は、事業承継で有効的に働いているといえます。

同業他社による買収増加

建設業者である工務店などが、建材卸売会社をM&Aによって買収や事業譲受するケースが目立ってきています。

激化する価格競争を生き残るため、より消費者に近い工務店などが、建材卸売事業も手掛けることで、価格低下を実現させている状況です。取り扱う商材の販売価格をより押さえるために、大手資本に入るなどといった動向もみられます。

サプライチェーン拡大のためのM&A

建材卸売業はサービスなど他社との差別化が図りにくい業種です。他社との差別化が難しい場合、価格競争が激化しやすくなり、事業者にとっては厳しい状態となってしまいます。

業界内での過度な価格競争を避け、利益を確保するためにはサプライチェーン拡大も効果的です。建材卸売業はサプライチェーン拡大のを図るためにM&Aを行うケースも多く、商流の複数階層をおさえれば、利ざやのコントロール力を強化することができます。

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4. 建材卸売のM&Aメリット

建材卸売のM&Aにはどういったメリットが考えられるでしょうか。ここでは売却・譲渡側と買収側のメリットに分けて解説します。

売却側のメリット

建材卸売のM&Aでの売却側の主なメリットには、以下のようなものがあります。

後継者問題が解決

後継者がいないために廃業を考える経営者も少なくありません。その場合、M&Aで経営権を譲渡することで後継者問題は解決します。

特に地方での後継者問題は深刻です。課題に対処するために、M&Aによる譲渡に踏み込む動向もみられます。

雇用の継続

廃業や経営不振に陥った場合、従業員を雇用し続けることは困難です。こうした状況にもM&Aによる事業譲渡や会社売却(株式譲渡)を行うことで、従業員の雇用を継続させられるメリットがあります。

負債の解消と創業一族の利益確保

M&Aで会社を売却した場合、負債は買い手に引き継がれます。それに伴い、売却側経営者の個人保証や担保も解消されます。それだけでなく、創業者や経営者は、売却の対価として相応の現金を獲得できます。

買収側のメリット

建材卸売のM&Aでの買収側の主なメリットには、以下のようなものがあります。

営業拠点の拡大

買収側の大きなメリットは、商圏が拡大することです。特に地元に根ざしている商社が多い建材卸売は、顧客との関係性も強いので、該当地域でしっかりとした基盤が作れます。

スケールメリットを得られる

買収により企業が大きくなれば、スケールメリットが得られます。事業拡大がもたらすスケールメリットの一例としては、銀行からの融資や地域での知名度向上などです。

新たな顧客を獲得できる

同業他社との競争のなか、新たな顧客を得ることは簡単ではありません。M&Aで買収を実施すれば、売却側の持っている顧客を新たに獲得して事業を展開できます。

【関連】建材事業売却のメリットは?注意点やポイントなども解説

5. 建材卸売会社のM&Aの成功ポイント

建材卸売会社のM&Aを行うにあたり、重要なポイントとして以下の3点を解説します。

相場

M&Aによる売却や買収などは、業種や事業によって市場相場があります。建材卸売会社の場合は、抱えている施設や商材、資材、顧客、売上といった総合的な観点から買収価格が決定する仕組みです。

取り扱っている資材の量や商圏の広さによって、相場以上の売却価格になることもあります。一概にはいえませんが、建材卸売会社のM&Aによる相場は、数千万円から数億円程度です。

地元の商社であっても、店舗を多く構えていたり、自社でしか取り扱えない商品があったりすると、相場以上の価格になります。

手法

建材卸売会社を、売却または買収するM&Aの方法にはさまざまな方法が考えられます。一般的には、株式譲渡による売却・買収が多いようですが、事業譲渡や吸収合併などのM&A事例もあります。

M&Aの手法はさまざまで、一概にこれが適しているとはいいきれません。売却側や買収側に合ったM&Aを取り入れて、双方にメリットのあるスキームを選ぶべきです。

そのためにも専門家などを交えて、M&Aの相場や価格について話を進めていくと安心です。専門家であれば、豊富なM&Aの事例から、現在の動向や相場を総合的に見て価格や条件を設定してくれます。

タイミング

売却側のM&Aを行うタイミングは、事業承継に適した時期や、売上が危うくなってきた時期が望ましいです。あまりに大きな負債を抱えてからでは、売却先をみつけられない場合もあります。それ以外にも、相手がみつかっても、売却価格が低くなるのは必定です。

M&Aで買収する側の企業は、対象商社の利益を見極めることが望ましいです。今後、新築住宅は減少する一方で、ストック住宅の改修などは市場が一定以上伸びていくことが見込めます。ストックに強い商社を選択するのも良策です。

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6. 建材卸売会社のM&Aの流れ

M&A実施の検討

M&Aを実施すべきかを検討する際はなぜM&Aを行うのかを明確にし、目的達成のためにM&Aがベストなのかという点も含めて判断することが重要です。

検討の結果、M&Aを実施を決断したら希望譲渡価額・買収側への希望条件・売却希望時期などをある程度決めておきます

また、M&Aを行う相手先の業種は初めから限定せず、同業種だけでなく関連業種も含めるなどある程度の幅を持たせておくと、よい相手先がみつかるケースも多いです。

M&Aの専門家へ相談

M&Aを行うと決定したら、次はM&A仲介会社などM&A支援を手掛ける専門家へ相談して、戦略策定や交渉先探しなどを始めます。

M&A仲介会社を決める際は、サポート範囲・手数料体系・支援実績のほか、アドバイザーとの相性なども確認して判断するとよいでしょう。

また、相談をする際は希望条件などを伝えますが、その際に3期分程度の財務諸表や事業内容がわかる資料などを持参すると、効率よく進めることが可能です。そして、サポートを依頼するM&A仲介会社を決めたら、アドバイザリー契約を結び次の段階へ進みます。

交渉先企業の選定

次はM&A交渉を行う相手先を決めていきます。あらかじめ伝えておいた希望する業種・エリア・条件などに合った企業をアドバイザーがまとめたリストを作成してくれるので、期待できるシナジーなどM&A後を想定して絞り込んでいくとよいでしょう。

交渉したい企業が決まったらアドバイザーを通して交渉の打診をしますが、この段階では「ノンネーム(ノンネームシート)」という社名や詳細な情報は伏せた資料を使います。

そして、打診した相手先企業が交渉に進む意向であれば、秘密保持契約書を締結してから社名・所在地・事業内容など詳細情報を記載した企業概要書を提出します。

秘密保持契約の締結

秘密保持契約は、目的以外で知り得た情報を使用しないこと、および第三者へ漏洩しないことを取り決めるもので、M&Aでは完了までに何度か締結する場面がでてきます。

M&Aでは自社の技術や独自ノウハウに関する内容はもとより、役員構成や財務情報、主要取引先など秘密情報も相手先企業へ開示しますが、交渉がまとまらずM&Aが不成立となることも少なくありません。

そのような場合にもし秘密情報が漏洩すれば企業価値を損なう恐れもあるため、リスク回避のために秘密保持契約を結びます。

トップ面談

トップ面談では、売り手側・買収側の経営者が人柄・経営理念・将来のビジョンなど、企業概要書や資料ではわかりにくい部分を互いに確認します。

M&Aの成功は売り手側・買収側で信頼関係がなければ難しいものです。トップ面談は信頼関係を築くことが大きな目的でもあるため、この場では価額交渉などは一般的に行われません。

トップ面談後、買収側がM&A成立に前向きであれば、「意向表明書」が売り手側へ提出されることが多いです。ですが、意向表明書は必ず提出しなければならないという書面ではないため、省略されるケースもあります。

基本合意書の締結

トップ面談後、売り手側・買収側の双方がM&A成立に向けて交渉を進める意向であれば、譲渡価額・条件・大まかなスケジュール・使用する手法などを話し合い、双方が大筋合意した時点で基本合意書を締結します。

基本合意書には譲渡価額・条件・大まかなスケジュール・使用する手法などを記載しますが、法的な拘束力はなくM&A成立を約束するものではありません。

そのため、買収側が行うデューデリジェンスの結果によってはM&A交渉が中止となる可能性もあります。なお、基本合意書そのものには法定拘束力はありませんが、例外的に独占交渉権などの一部条項には法的拘束力を持たせるケースが多いです。

買収側によるデューデリジェンス

デューデリジェンスでは、買収側から派遣された専門家が人事・財務・法務などの分野を調査し、リスクの程度や問題点を洗い出します。デューデリジェンスの目的は、M&A実行可否や買収価額の妥当性を判断することです。

買収側はデューデリジェンスの結果をもとにM&Aを行うかを最終的に判断します。売り手側は、洗い出されたリスクや問題の程度によっては価額の引き下げとなる場合やM&A交渉の中止となる場合があることを理解しておきましょう。

最終交渉・最終契約締結

デューデリジェンスの結果によって買収側がM&Aを実行すると判断したら、M&A成立に向けた最終交渉へ移ります。最終交渉ではデューデリジェンスの結果を考慮して買収価額や条件を話し合い、内容すべてに双方が合意したら最終契約の締結を行います

最終契約書の主な記載内容は、M&A対象とその範囲・M&A価額・諸条件・対価の決済方法・表明保証・競業避止義務・クロージング条項などです。

最終契約書に記載されるすべての内容には法的拘束力があるため、締結後は原則として破棄や条件変更は認められません。そのため、締結を行う前に内容をよく確認しておくことが重要です。

クロージング

売り手側の経営権(M&A対象の経営権)を買収側へ移転させ、対価の決済手続きを行う工程をクロージングといいます。クロージング手続きは株式譲渡であれば株式の引き渡し・対価の決済手続き・役員の改選などですが、M&A手法によって必要手続きが異なるため、アドバイザーを確認しながら進めていくとよいでしょう。

クロージングは売り手側が前提条件を満たしていなければ実行できないため、一般的には最終契約の締結から一定期間(1か月程度)空けて行われます。

もし売り手側がクロージング条件を満たせなかった場合はクロージング日が延期されたり、理由によってはM&Aが白紙撤回されたりする可能性もあるため、しっかり準備を進めることが重要です。そして、クロージングが終わればM&Aは完了となります。

PMI

クロージング後はPMIと呼ばれる経営統合作業を買収側と協力して進めていきます。PMIはシナジーなどの最大化とリスクの最小化が主な目的です。

経営面・業務面・意識面のすべてを統合する必要があり、PMIが失敗すればM&Aの効果が十分に得られないため、本当の意味でM&Aが成功するためには計画的かつ慎重にPMIを進めていかなければなりません。

また、PMIを成功させるためには買収側だけでなく売り手企業の協力が不可欠です。PMIをどう進めていくかをよく話し合っておき、計画的に進めていくようにしましょう。

7. 建材卸売業界のM&A成功事例14選

ここでは、建材卸売業界のM&Aにおける成功事例を紹介します。

①ブルケン関東

2023年1月、JKホールディングス傘下のブルケン関東は日新電機から電設資材販売事業を譲受すると発表しました。ブルケン関東は健在や合板製造のJKホールディングスの子会社で、内外装建材・アルミ建材・住宅設備などの建材小売事業を手掛けています。

本M&Aで譲受するのは、江戸川区で電力・環境システム事業などを手掛ける日新電機の一部事業(電設資材販売事業)です。

JKホールディングスは電設資材販売事業を取得することで、中核である木質建材販売事業のほかに範囲を広げ、売り上げ拡大と企業価値向上を図るとしています。

参考:JKホールディングス株式会社「当社子会社による日新電機㈱の事業譲受および新営業所開設のお知らせ」

②アルコニックス

2022年4月、アルコニックスはリチウムイオン電池向けの金属部品を製造するソーデナガノの株式を取得し、連結子会社化すると発表しました。取得価額は、約88億3,700万円です。取得予定日は2022年11月30日の予定です。

アルコニックスは、非鉄金属、レアメタル、レアアースなどの製品の販売、原材料の輸出入などを行っています。このM&Aは、中期経営計画のビジョンである「商社機能と製造業を融合する総合企業」を加速させ、グループ内でのシナジー効果向上と、企業価値向上を目的としています。

参考:アルコニックス株式会社「株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

③サーラコーポレーション

2022年4月、サーラコーポレーションは連結子会社であった豊橋のアスコを吸収合併存続会社とし、エイ・エム・アイを吸収合併消滅会社とする吸収合併を行うと発表しました。アスコとエイ・エム・アイは、いずれも動物用医薬品等を販売しています。

今回のM&Aは、北関東地区で、アニマルヘルスケア事業の営業力強化、業務効率化により、収益向上とシェア拡大を図るために行いました。

参考:株式会社サーラコーポレーション「当社連結子会社間の吸収合併に関するお知らせ」

④伊藤忠エネクス

2022年3月、伊藤忠エネクスはホームライフ部の産業ガス販売事業を、連結子会社である伊藤忠工業ガスに承継させると発表しました。これは、会社分割によるものです。伊藤忠エネクスを分割会社とし、伊藤忠工業ガスを承継会社とします。

伊藤忠エネクスは、国内トップクラスのエネルギー商社です。伊藤忠工業ガスは、工業用・医療用など各種ガス容器の耐圧検査・充填・配送の製造物流事業などを展開しています。

本件は、連結子会社と行うため、株式の割り当てなどの対価の交付は行いません。このM&Aは、経営資源を集約し、一元化を図ることで効率的に事業を推進することを目的としています。

参考:伊藤忠エネクス株式会社「会社分割(簡易吸収分割)による当社産業ガス販売事業の 連結子会社への承継に関するお知らせ」

⑤タムラ建材

2021年11月、福岡県久留米市のタムラ建材は、同県同市のタムラから建築資材販売事業を譲受しました。タムラ建材は、JKホールディングスの連結子会社であるブルケン・ウエストが、このM&Aのために同年10月に設立した会社です。取得価額は公表されていません。

JKホールディングスグループは、総合建材卸売、フランチャイズ、合板製造・木材加工、総合建材小売、建設工事、旅行・保険・金融業、倉庫・運送業などを行っています。グループとして福岡県および九州地区での建材卸売事業を拡大させることがM&Aの狙いです。

参考:JKホールディングス株式会社「当社子会社設立および㈱タムラ事業譲受に関するお知らせ」

⑥ダイキアクシス

2021年10月、愛媛県松山市のダイキアクシスは、愛媛県新居浜市のアルミ工房萩尾の全株式を取得し、完全子会社化しました。取得価額は非公表です。アルミ工房萩尾は、住宅サッシ・エクステリア建材の施工・販売を行っています。

ダイキアクシスは、建材・住宅設備機器の販売・施工、排水処理装置の設計・施工・維持管理、合成樹脂製品などの製造・販売・設計・施工、バイオディーゼル燃料の精製・販売、飲料水の製造・販売、太陽光発電による売電事業などを行っている企業です。

ダイキアクシスとしては、シナジー効果によって、より質の高い商材・サービス提供を可能としています。

参考:株式会社ダイキアクシス「株式会社アルミ工房萩尾の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

⑦コンドーテック

2021年10月、大阪府大阪市のコンドーテックは、愛知県名古屋市の栗山アルミの株式75.7%を取得し、子会社化しました。取得価額は非公表です。コンドーテックは、産業資材・鉄構資材の製造・仕入・販売、電設資材の仕入・販売を行っています。

栗山アルミは、非鉄金属の押出、アルミ押出型材などの製造開発、型材・板材・ステンレスなどの加工、アルミニュームの表面処理加工などの事業を行っている企業です。コンドーテックとしては、今後に需要が見込まれるアルミ商材をグループ内に取り込むことがM&Aの目的でした。

参考:コンドーテック株式会社「栗山アルミ株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

⑧前田工繊

2021年9月、福井県坂井市の前田工繊は、東京都新宿区のセブンケミカルの全株式を取得し、完全子会社化しました。取得価額は非公表です。前田工繊は、土木資材・建築資材・各種不織布の製造・販売を行っています。

栗山アルミは、外壁用の防水材や保護・仕上げ材の製造・販売を行っている企業です。前田工繊としては、グループとしてシナジー効果が得られるとともに、事業領域の拡大も実現すると判断しました。

参考:前田工繊株式会社「株式会社セブンケミカルの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

⑨ナイス

2021年8月、神奈川県横浜市のナイスは、群馬県高崎市のヤマダホールディングスと資本業務提携契約を締結し、ヤマダホールディングスが引き受け手となる第三者割当増資を実施しました。ヤマダホールディングスはナイスの株式18.49%を取得し、筆頭株主となっています。

ナイスが調達した資金は39億2,070万円です。ナイスは、企業グループとして建築資材事業、住宅事業、建築工事事業、情報サービス事業、コンサルティング事業などを行っています。

ヤマダホールディングスは、電化製品の小売販売事業、住宅建設事業、金融事業などを行っているグループの持株会社です。ナイスとしては、自社とは異なる経営資源を持つパートナーとの提携によって、企業価値向上を目指すための決断です。

参考:株式会社ナイス「株式会社ヤマダホールディングスとの資本業務提携、 第三者割当による新株式の発行及び主要株主の異動に関するお知らせ」
 

⑩西武ホールディングス

2021年7月、東京都豊島区の西武ホールディングスは、100%子会社である埼玉県所沢市の西武建材の全株式を埼玉県さいたま市の東和アークスに譲渡しました。譲渡価額は公表されていません。

西武建材は、建築材料や鉱物・金属材料などの製造・卸売業を営んでいます。東和アークスは、建築材料や鉱物・金属材料などの製造・卸売業を行っている企業です。

西武ホールディングスとしては、グループ内のノンコア事業の売却を計画的に進めており、今回の株式譲渡もその一環となります。

参考:株式会社西武ホールディングス「子会社株式譲渡に関するお知らせ」

⑪小野建

2019年10月、福岡県北九州市の鉄鋼・建材商社である小野建は、大阪府門真市の鉄筋販売・切断・加工・鉄筋工事を行う森田鋼材の全株式を取得し、完全子会社化することを発表しました。

小野建は所在地の福岡県だけでなく、全国展開で事業を行っています。森田鋼材をグループに加えることによって、京阪神エリアの事業展開を強化できると判断しました。

小野建の会社設立は1949年、森田鋼材は1958年と、どちらも長いキャリアがあり、それぞれが培ってきたノウハウや技術の交流も大きなシナジーになるとしています。

参考:小野建株式会社「森田鋼材株式会社の株式の取得(完全子会社化)に関するお知らせ」

⑫キムラ

2018年3月、住宅資材の卸売の事業や不動産事業などを手掛けている札幌市のキムラは、帯広・十勝地区で住宅用足場や仮設材のレンタル、施工を行っているテクノ興国の全株式を取得し、完全子会社化しました。

キムラとしては、帯広市を含む十勝地域において、足場レンタル事業のさらなる展開が期待できるとしています。

参考:株式会社キムラ「株式会社テクノ興国の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ」

⑬OCHIホールディングス

2017年12月、建材・生活・加工・その他の4つの事業を手掛けている福岡県福岡市のOCHIホールディングスが、長野県で建材・住設宅設備機器の卸売と建築工事を手掛ける丸滝の全株式を取得し、完全子会社化することを発表しました。

OCHIホールディングスとしては、丸滝を中心に甲信越地域の事業展開を広げるとともに、人材と技術の交流や事業サポートを行うことでグループシナジーを向上させるとしています。

参考:OCHIホールディングス株式会社「株式会社丸滝の株式取得に関するお知らせ」

⑭サンゲツ

2017年12月、内装材販売の商社であるサンゲツは、シンガポールで内装材量販売を手掛けるGoodrich Global Holding Pte. Ltd.の過半数の株式を取得し、子会社化することを発表しました。

株式を買収されたGoodrich Global Holding Pte. Ltd.は、東南アジアを中心に6カ国12事務所を展開しており、内装材料の販売市場で多くのシェアを持っています。サンゲツはこのM&Aによって、日本・米国・中国の市場に加えて東南アジアまでも販売圏域にしました。

参考:株式会社サンゲツ「Goodrich Global Holdings Pte. Ltd.社の 株式取得に関するお知らせ」

住宅建設業界のM&A動向については下記の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

【関連】【2022年最新】住宅建設業界のM&A動向【ハウスメーカー/ビルダー/工務店】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

8. 建材卸売業界のM&Aまとめ

建材卸売会社がM&Aする場合のメリットは、売却側・買収側の双方にあります。ただし、売却・買収の価格相場は変動するのが一般的です。M&A仲介会社などの専門家と相談しながら、タイミングをしっかりと見極めてM&Aを進めることが非常に重要です。

9. 建材・住宅設備機器の卸業界の成約事例一覧

10. 建材・住宅設備機器の卸業界のM&A案件一覧

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