会社分割(吸収分割・新設分割)とは?わかりやすく解説!

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

会社分割とは、事業の一部または全部を切り出して外部の会社に引き渡すM&A手法の一つです。本記事では、会社分割とはどのような手法なのかについて、特徴やメリット・デメリット、手続き方法などを事例も交えてわかりやすく解説します。

目次

  1. 会社分割とは
  2. 会社分割が活用される場面
  3. 会社分割のメリット・デメリット
  4. 会社分割の手続き
  5. 会社分割における労働契約の承継等に関する法律手続き
  6. 会社分割の際の簡易組織再編と略式組織再編
  7. 会社分割の税務
  8. 繰越欠損金を引き継ぐための要件
  9. 会社分割が行われた事例
  10. 会社分割の相談先
  11. まとめ
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1. 会社分割とは

会社分割とは

会社分割とは、事業を切り離して別の会社に引き渡す手法のことです。会社分割はM&Aの手法の一つですが、グループ企業の再編で多用されます。また、M&A手法の中には事業譲渡というものがありますが、会社分割と似て見えるため混同されがちです。

会社分割には吸収分割と新設分割があり、それぞれ目的や分割方法が違います。まずは会社分割について、吸収分割と新設分割の区別と、事業譲渡との違いなどを見ていきましょう。

吸収分割とは

吸収分割とは、会社の一部の事業、または全部の事業を既存の他企業に引き渡す手法です。吸収分割には、分社型吸収分割と分割型吸収分割があります。

分社型と分割型の主な違いは、事業を引き渡した対価を誰がもらうかという点です。ここでは、分社型吸収分割と分割型吸収分割について解説します。

分社型吸収分割

分社型吸収分割とは、事業を引き渡した対価を売り手企業が受け取る場合の呼び方です。事業の売り手企業が、対価として買い手企業の株式を受け取った場合、売り手企業は買い手企業の株主になります。

分社型吸収分割は、売り手企業と買い手企業の親子関係、言い換えると縦の関係を築く際によく用いられる手法です。

分割型吸収分割

分割型吸収分割とは、事業を引き渡した対価を、売り手企業の株主が受け取る場合の呼び方です。

売り手企業の株主が対価として買い手企業の株式を受け取ると、株主は売り手企業と買い手企業両方の株式を保有することになります。

分社型吸収分割は、売り手企業と買い手企業の兄弟関係、言い換えると横の関係を築く際によく用いられる手法です。

新設分割とは

新設分割とは、会社の一部の事業、または全部の事業を、新しく設立した会社に引き継ぐ手法です。

新設分割にも吸収分割と同様、分社型と分割型があります。分社型新設分割と分割型新設分割の違いもまた、事業を引き渡した対価のもらい先です。

分社型新設分割

分社型新設分割とは、事業を引き渡した対価を売り手企業が受け取る場合の呼び方です。売り手企業は、事業を引き渡した対価として新設会社の株式を受け取り、新設会社の親会社となります。

分社型新設分割は、持株会社化する際などに適した手法です。

分割型新設分割

分割型新設分割とは、事業を引き渡した対価を売り手企業の株主が受け取る場合の呼び方です。

売り手企業の株主は、事業を引き渡した対価として新設会社の株式を受け取り、売り手企業と新設会社両方の株式を保有することになります。

分割型新設分割は、グループ企業の再編を行う際に適した手法です。

共同新設分割

共同新設分割とは、2社以上の売り手企業がそれぞれ事業を分割し、新設会社に引き渡す手法のことです。

例えば、グループ企業の親会社と子会社から、それぞれ一部事業を切り離し、新設会社に引き継ぐといったケースが該当します。

分割会社とは

分割会社とは、会社分割における事業の売り手側の呼び方です。分割契約書などの公的な書面では、売り手企業を分割会社と呼びます。

本記事では、これ以降、売り手側の呼び方を分割会社で統一して解説します。

【関連】承継会社とは?意味や分割会社との違いを解説!

分割承継会社とは

分割承継会社とは、会社分割における事業の買い手側の呼び方です。単に承継会社と呼ぶこともあります。吸収分割の場合は買い手の既存企業であり、新設分割の場合は新設会社のことです。

本記事では、これ以降、買い手側の呼び方を分割承継会社で統一して解説します。

事業譲渡との違い

会社分割と似て見えるM&A手法として、事業譲渡があります。事業譲渡とは、会社の事業の一部または全部を、付随する資産や権利などとともに別個に選別し売却することです。

会社分割と事業譲渡には手続き面や税金面などに多くの違いがあります。その最も大きな違いは、組織再編行為か売買取引かという観点と、包括承継が可能か個別承継であるかという点です。

会社分割は組織再編行為に該当し、事業譲渡は売買取引になります。また、会社分割は事業とともに資産や権利を包括的に引き継ぐのに対して、事業譲渡は事業や資産を個別に選択し譲渡契約しなければなりません。

さらに、該当事業に許認可が必要な場合、会社分割ではその移転も可能ですが、事業譲渡では移転できないため再取得する必要が生じます。

【関連】事業譲渡のキホン!手続きの流れや従業員の処遇、譲渡範囲を徹底解説!

2. 会社分割が活用される場面

会社分割が活用される場面

会社分割は大きく分けて、以下の場面で用いられます。
 

  1. M&Aの手法として活用
  2. グループ内の再編を実行するために活用

①M&Aの手法として活用

会社分割はM&A手法の1つとして用いられます。分割会社の目的としては、会社のスリム化、不採算事業の切り離し、分割承継会社との協力関係の構築などです。

分割承継会社の目的としては、事業規模の拡大、新規事業の取得、技術・人材の獲得などがあります。

②グループ内の再編を実行するために活用

会社分割は、グループ企業内再編の際によく用いられる手法です。会社分割には、優遇税制や簡易手続きがあり、グループ企業内再編の場合、要件を満たせばこれらの恩恵を得られるメリットがあります。

また、事業譲渡よりも会社分割の方が、規模の大きい事業の承継に向いていることから、大企業の再編にもよく用いられる手法です。

3. 会社分割のメリット・デメリット

会社分割のメリット・デメリット

会社分割にはさまざまなメリットがありますが、当然デメリットも存在しています。会社分割を行う際は、主なメリット・デメリットを把握しておきましょう。

会社分割のメリット

会社分割には、主に以下のメリットがあります。
 

  • 株式を対価にするため資金が不要
  • 資産や契約関係を移転させる手続きが不要
  • 一部事業のみ譲渡することができる
  • 買収によるシナジー効果が得やすい
  • 他のM&A手法と違い税金の負担が少ない

株式を対価にするため資金が不要

株式譲渡や事業譲渡などの買収手法では、買収資金を用意しなければなりません。自社に資金がなければ金融機関から借り入れるなど、債務を抱えることになります。

しかし、会社分割では株式を対価として用いることができるので、現金を用意しなくても事業の買収が可能です。

資産や契約関係を移転する手続きが不要

類似手法である事業譲渡の場合は、従業員や取引先、許認可などの各種契約を、個別にし直さなければなりません。

しかし会社分割では、基本的に契約もそのまま引き継がれるので、事業譲渡に比べて手続きが少なくすみます。

そのため、規模の大きい事業を引き継ぐ際は、事業譲渡よりも会社分割の方が相応です。

一部事業のみ譲渡することができる

株式譲渡や株式交換、株式移転などの手法は会社の経営権を引き継ぐことはできますが、一部事業のみを引き継ぐことはできません。

そのため、必要のない事業も引き継ぐことになります。しかし、会社分割であれば必要な事業のみを引き継げるので、無駄のない譲渡が可能です。

買収によるシナジー効果が得やすい

会社分割では、分割承継会社側としては関連性の高い事業のみを引き継ぐことができるので、事業シナジーが得やすいがメリットがあります。

例えばアパレル企業が、アパレル事業と太陽光発電事業を営んでいる企業を買収した場合、太陽光発電事業は一般的に考えて事業シナジーは得難い事業です。

しかし、会社分割でアパレル事業のみを取得できれば、同種事業シナジーが期待できます。

他のM&A手法と違い税金の負担が少ない

事業譲渡の場合には会社分割のような優遇税制度はないので、基本的に税金を低く抑えることはできません。しかし、会社分割は適格要件を満たせば、税負担を低減できます。

また、事業譲渡では消費税が課せられる資産があるので、税金が高くなりがちです。一方、会社分割の事業資産には、消費税がかかりません。

会社分割のデメリット

会社分割には以下のデメリットがあります。
 

  • 買い手企業の株価が下落するリスクがある
  • 結果として買収された企業の株主が買い手企業の株主となる
  • 負債を引き継ぐ必要がある
  • 経営統合プロセスがスムーズに進まない可能性
  • 株主総会にて特別決議など多くの手続きが必要になる

買い手企業の株価が下落するリスクがある

会社分割では、株式を対価とすることがほとんどです。株式は価値が上下するものですから、場合によっては株価が下がる場合もあります。

分割承継会社が対価として新株を発行し、分割会社に交付した場合、株式数が増えているので1株あたりの価値は下がり、一時的に株価が下がるのも、その一例です。

結果として買収された企業の株主が買い手企業の株主となる

会社分割では、分割承継会社が株式を対価として分割会社の株主に交付することから、分割会社の株主は、結果的に分割承継会社の株主にもなります。

全員友好的な株主であれば問題ありませんが、敵対的な株主がいた場合には、後々問題になりかねません。

負債を引き継ぐ必要がある

事業譲渡を用いた場合、選別して事業資産を取得できるので、債務を引き継ぐ必要はありません。

それに対して、会社分割は引き継ぐ事業資産を選択できないので、債務も引き継ぐ結果になります。

しかし会社分割には、事業譲渡にはないメリットも多いので、専門家のアドバイスなどを基に、慎重に選択することが重要です。

経営統合プロセスがスムーズに進まない可能性

株式譲渡などの買収手法であれば、経営権が移るだけで、会社内の組織再編は基本的に必要ありません。

しかし会社分割では、事業が統合されるので、システムやルール・従業員の意識統合などを、綿密に行う必要があります。

統合プロセスが円滑に進まないと、事業シナジーが得られないばかりか、経営に支障が出ることにもなり得るので注意が必要です。

株式総会にて特別決議など多くの手続きが必要になる

会社分割では事業譲渡のように、株主や債権者などから個別に同意を得る手続きは必要ありませんが、債権者保護や反対株主への対応、労働者・労働組合との協議などの手続きは必要です。場合によってはこれらの対応に時間がかかることもあります。

一方、簡易会社分割や略式会社分割の要件を満たせば、株主総会の特別決議を省略することも可能です。

【関連】会社分割のメリット・デメリットを詳しく解説!

4. 会社分割の手続き

会社分割の手続き

ここからは会社分割の手続きについて、吸収分割と新設分割に分けて解説します。

吸収分割の場合

吸収分割では、主に以下の手続きを行う必要があります。
 

  • 吸収分割に関する基本合意書の締結
  • 各社の取締役会の承認
  • 吸収分割契約の締結
  • 吸収分割契約書などの事前開示
  • 株主総会の特別決議・承認
  • 反対株主の株式買取請求通知
  • 債権者保護手続き
  • 吸収分割書面などの事後開示
  • 各社の変更登記

吸収分割に関する基本合意書の締結

吸収分割を実施することが決まったら、分割会社と分割承継会社で基本合意書を締結します。以下は、基本合意書に記載する事項の一例です。
 

  • 吸収分割の目的
  • 吸収分割のスケジュール
  • 吸収分割の対価
  • 分割する事業の内容

各社の取締役会の承認

基本合意が締結されたら、本契約に進む前に、業務執行決定機関で承認を得なければなりません。取締役会がある場合は、取締役会での承認が必要です。

吸収分割契約の締結

合意内容に問題がなければ、吸収分割契約を締結します。吸収分割契約書の内容は、基本合意書と同じです。また、基本合意書の締結はせずに、直接本契約を行う場合もあります。

吸収分割契約書などの事前開示


分割会社と分割承継会社は、吸収分割契約書などの事前開示書類を会社の本店に備え置くことが、法令で定められています。事前開示書類は、吸収分割の効力発生日から6ヶ月の間、備え置かなければなりません。

株主総会の特別決議・承認

吸収分割を行うには、株主総会の特別決議で承認が必要です。株主総会の招集通知は開催日の1週間前まで、上場企業は、2週間前までに送付しなければなりません。

非上場企業でも書面投票や電子投票を行う場合は、2週間前までに送付する必要があります。

株主総会の承認

吸収分割実施の承認を得るには、株主総会の特別決議に議決権を持つ株主の過半数以上が出席し、3分の2以上の承認を得なければなりません。

なお、下記の要件を満たすと、株主総会の特別決議を省略できます。

  • 簡易組織再編による承認 = 分割会社と分割承継会社は、簡易会社分割に該当すると株主総会の特別決議を省略できる。簡易会社分割とは、分割事業の規模が分割会社総資産の5分の1以下などで、吸収分割によって株主に与える影響が少ない場合に適用される措置のこと。
 
  • 略式組織再編による承認 = 略式会社分割に該当すると、株主総会の特別決議を省略できる。略式会社分割とは、グループ内再編実施の際に、親会社が子会社の90%以上の株式を所有している場合、子会社側の株主総会決議を省略できる制度。

反対株主の株式買取請求通知

分割会社と分割承継会社は、吸収分割に反対の場合は株式を買い取る旨を反対株主に通知しなければなりません。

一般的に反対株主への通知は、吸収分割を実施する通知や、株主総会開催の通知とともに送付します。

債権者保護手続き

吸収分割では、債権者から個別に承認を得る必要がない代わりに、債権者保護手続きを行う必要があります。

債権者保護手続きとは、吸収分割によって、債権者が権利を行使できないなどの不利益を被らないようにするための手続きです。官報公告と個別催告によって、債権者に異議申立ての権利があることを周知します。

吸収分割書面などの事後開示

分割会社と分割承継会社は、吸収分割の効力発生日以降速やかに事後開示書類を本店に備え置かなければなりません。事後開示書類とは、吸収分割に関する重要事項を記載した各種書類のことです。

各社の変更登記

分割会社と分割承継会社は、効力発生日から2週間以内に登記を行う必要があります。登記の際には、登録免許税と、吸収分割を行ったことを周知するための官報公告費などが必要です。

新設分割の場合

新設分割の手続きは、以下の手順で行われます。
 

  1. 分割会社の取締役会の決議
  2. 新設分割計画書の作成
  3. 新設分割計画書などの事前開示
  4. 分割会社の株主総会の特別決議・承認
  5. 反対株主の株式買取請求通知
  6. 債権者保護手続き
  7. 新設分割書面などの事後開示
  8. 新設会社の設立登記・各社の変更登記

①分割会社の取締役会の決議

分割会社は取締役会での承認が必要です。取締役会決議では、新設分割契約書の承認や株主総会の開催について決議を行います。

②新設分割計画書の作成

新設分割では、新設分割計画書の作成を行います。新設分割計画書の内容例は以下のとおりです。
 

  • 新設会社の定款記載事項や役員など
  • 承継する資産や権利義務
  • 分割対価
  • 新設会社の資本金など
  • 新設分割のスケジュール

③新設分割計画書などの事前開示

分割会社は新設分割契約書など、会社法で定められた書類を本店に備え置かなければなりません。事前開示書類は6ヶ月間備え置きます。

④分割会社の株主総会の特別決議・承認

分割会社は株主総会の特別決議で、新設分割を行う承認を得る必要があります。

株主総会の招集通知は吸収分割と同様、開催日の1週間前まで、上場企業は2週間前までに送付しなければなりません。また、非上場企業で書面投票や電子投票を行う場合は、2週間前までが送付期限です。

また、分割会社が新設分割について株主総会の承認を得るには、吸収分割と同様、株主総会の特別決議に議決権を持つ株主の過半数以上が出席し、3分の2以上の承認を得る必要があります。

新設分割の場合、分割会社は下記の要件を満たすと、株主総会の特別決議を省略することが可能です。
 

  • 簡易組織再編による承認 = 新設分割では、承継資産が分割会社の総資産額の2割以下の場合、簡易新設分割を適用できる。
 
  • 略式組織再編による承認 = 吸収分割では略式組織再編が可能ですが、新設分割では略式組織再編は認められない。

⑤反対株主の株式買取請求通知

分割会社は、新設分割に反対の場合は株式買取請求を受けつける旨を株主に通知します。通知の際は、新設分割実施のお知らせや株主総会招集通知とともに送付可能です。

⑥債権者保護手続き

分割会社は、官報公告と個別催告で債権者の異議申立てを受けつける旨を通知します。ただし、新設分割後も債権者の権利に影響がない場合は、債権者保護手続きを省略可能です。

⑦新設分割書面などの事後開示

新設会社の設立日を迎えたら、新設分割書面などの必要書面を6ヶ月間本店に備え置く必要があります。

⑧新設会社の設立登記・各社の変更登記

新設会社の設立日を迎えたら、分割会社は変更登記、新設会社は新設登記を行います。変更登記と新設登記は、同じタイミングで行わなければなりません。

5. 会社分割における労働契約の承継等に関する法律手続き

会社分割における労働契約の承継等に関する法律手続き

会社分割では、労働契約承継法によって労働者保護手続きを行う必要があります。また、大企業・上場企業の場合、金融商品取引法や独占禁止法に抵触しないよう注意が必要です。

会社分割で必要な以下の手続きについて解説します。
 

  1. 公正取引委員会、監督官庁などへの事前確認
  2. 契約書類などの開示臨時報告書の提出
  3. 労働者・従業員から理解を得る
  4. 労働組合との事前協議
  5. 労働組合・労働者・従業員への通知
  6. 労働者の意見申述
  7. 公正取引委員会への事前届出

①公正取引委員会、監督官庁などへの事前確認

大企業の場合、会社分割によって事業規模が拡大し、独占禁止法に抵触するかもしれません。

独占禁止法に抵触すると、会社分割スケジュールが遅れたり、中止になったりする可能性があります。

そのため、独占禁止法に抵触する恐れがある場合は、公正取引委員会などにあらかじめ確認しておくことが重要です。

②契約書類などの開示臨時報告書の提出

上場企業で金融商品取引法の定める組織再編行為に当てはまる場合、その企業は臨時報告書や有価証券届出書、有価証券通知書を提出する必要があります。

③労働者・従業員から理解を得る

労働契約承継法では、会社分割を実施する際の労働者保護を重視し、労働者への理解を促すこと、また労働者から理解を得ることを義務づけています。

具体的には、労働者との協議や、労働者から異議申立てがあればそれを受けつけなければなりません。

④労働組合との事前協議

労働契約承継法では、分割会社は労働組合・労働者と事前協議を行うことを義務づけています。協議内容の例は以下のとおりです。
 

  • 労働者が働く会社の情報
  • 労働者が従事する仕事内容
  • 労働者の意思の聴き取り

⑤労働組合・労働者・従業員への通知

分割会社は分割契約に該当する労働者や労働組合に対して、労働者の意思決定に必要な情報を記載した書面とともに、異議申立てを受けつける旨を通知します。

⑥労働者の意見申述

分割契約に該当する労働者は、異議がある場合、会社に対して異議申立てを行うことができます。異議申立てができる条件は以下のとおりです。
 

  • 分割事業に専ら従事しているにもかかわらず、承継先に移る取り決めがされていない場合、異議申立てによって、承継先に移ることが可能
  • 分割事業に従事していないにもかかわらず、承継先に移る取り決めがされている場合、異議申立てによって分割会社に残ることが可能

⑦公正取引委員会への事前届出

会社分割によって独占禁止法に抵触する恐れがある場合、公正取引委員会へ事前に届け出をしておくことで、会社分割手続きを円滑に行うことができます。

公正取引委員会による調査は、時間がかかることがあるので、余裕を持って届け出ておくべきです。

6. 会社分割の際の簡易組織再編と略式組織再編

会社分割の際の簡易組織再編と略式組織再編

会社分割のような組織再編行為では、一定の要件を満たすと簡易組織再編や略式組織再編に該当し、手続きを簡略化できます。

簡易組織再編とは

分割会社と分割承継会社は、以下の要件を満たすと簡易会社分割を適用できます。簡易会社分割とは、以下の場合に株主総会の特別決議を省略できる制度です。
 

  • 分割会社:承継資産が分割会社の総資産額の2割以下の場合
  • 分割承継会社:承継の対価が分割承継会社の純資産額の2割以下の場合

略式組織再編とは

略式会社分割に該当すると、株主総会の特別決議を省略できます。略式会社分割とは、分割会社と分割承継会社が特別支配関係の場合に適用できる制度です。

特別支配関係とは、親会社が子会社の議決権を9割以上持つ親子関係が該当します。吸収分割が承認されることは間違いないため、子会社側は株主総会の特別決議を省略できるのです。

7. 会社分割の税務

会社分割の税務

会社分割では、一定の要件(適格要件)を満たすことで、適格組織再編と認められます。適格組織再編と認められれば、税制上の優遇措置を受けられるのです。

税制適格分割とは

税制適格分割とは、会社分割によって承継する資産や負債を簿価で引き継ぐことができる特例措置のことです。簿価で引き継げるということは、法人税の抑制につながり、事実上、法人税の猶予を受けたことになります。

ただし、グループ企業内の会社分割で、一定の要件を満たしていなければなりません。

税制非適格分割とは

税制非適格分割要件とは、会社分割によって承継する資産や負債を時価で引き継ぐ際の要件です。グループ企業外でのM&Aの場合などは適格要件が満たせない場合が多く、結果的に非適格組織再編となってしまいます。

共同事業適格要件とは

共同事業適格要件とは、グループ企業同士以外の会社分割であっても、一定の要件を満たすことで優遇措置を利用できる制度です。

共同事業適格要件では、事業の類似性や事業規模の同等性などが、判断基準になります。

【関連】M&Aの税務を解説!税制適格・非適格って何?

8. 繰越欠損金を引き継ぐための要件

繰越欠損金を引き継ぐための要件

会社分割では、一定の要件を満たすことで繰越欠損金を引き継ぐことができます。繰越欠損金とは、将来に繰り越せる赤字のことです。

繰越欠損金を引き継ぐことにより、節税が可能になります。

税制適格分割の場合

適格分割の場合、分割会社は繰越欠損金を制限なく利用できますが、既存の分割承継会社は利用に制限があります。また、新設会社は繰越欠損金を利用できません。

税制非適格分割の場合

非適格分割の場合、分割会社は繰越欠損金を制限なく利用できます。また、既存の分割承継会社は条件次第で利用可能です。新設会社は利用できません。

共同事業適格分割の場合

グループ企業以外同士の会社分割であっても、みなし共同事業要件で認められれば、繰越欠損金を利用することが可能です。

みなし共同事業要件とは、事業の関連性・事業規模の同等性・事業の継続性により、判断されます。

9. 会社分割が行われた事例

会社分割が行われた事例

実際に会社分割が行われた事例として、以下7件をご紹介します。
 

  1. GA technologiesが子会社に対し会社分割で事業承継
  2. フジがニチエーの新設分割会社を買収
  3. マイネットグループとINDETAILによる会社分割
  4. トーカイとイビデン産業による会社分割
  5. マーケットエンタープライズとプロトコーポレーションによる会社分割
  6. クラウディアHDと内田写真による会社分割
  7. パーソルHDと商船三井による会社分割

①GA technologiesが子会社に対し会社分割で事業承継

2020(令和2)年3月、不動産関連事業を行うGA technologiesは、投資用マンション向けリノベーション事業を含む不動産賃貸管理事業について会社分割し、100%子会社であるリーガル賃貸保証に事業承継させる発表をしました。

この会社分割スキームを用いた事業承継によって、GA technologiesとリーガル賃貸保証は人的資源と有形無形資産の有効活用が向上すると判断した模様です。そして、そのことによって、今後の賃貸管理事業と賃料保証事業分野での収益力向上を図るとしています。

②フジがニチエーの新設分割会社を買収

2020年1月、スーパーマーケットなどの総合小売業を展開しているフジは、広島県内でスーパーマーケット11店舗を運営するニチエーが、同事業を会社分割して新設する会社の全株式取得・子会社化を発表しました。

愛媛県を本拠とするフジは、愛媛県を中心に四国地方および広島県と山口県で計98店舗(上記広島の11店舗含む)のスーパーマーケット事業を展開しています。フジはニチエーの関連施設などの資産や負債、各種契約と従業員などの全て引き継ぎ、事業の拡大・強化・発展させることが狙いです。

③マイネットグループとINDETAILによる会社分割

オンラインゲームの運営などを行うマイネットグループは2019(令和元)年、子会社のマイネットゲームスを通じて、同じくオンラインゲームの運営などを行うINDETAILのオンラインゲーム事業を吸収分割により取得しました。

これにより、マイネットグループは、オンラインゲームサービスの種類をさらに充実させています。

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④トーカイとイビデン産業による会社分割

介護関連事業を営むトーカイは2019年、同じく介護関連事業を営むイビデン産業の福祉用具関連事業を、会社分割により取得しました。

全国で介護関連事業を行っているトーカイは、中部地方の事業基盤を固める計画でイビデン産業の事業を取得しています。

⑤マーケットエンタープライズとプロトコーポレーションによる会社分割

買取専門サイトなどを運営するマーケットエンタープライズは2018(平成30)年、生活系情報サイトの運営などを行うプロトコーポレーションの買取比較サイト「おいくら」事業を、会社分割により取得しました。

これにより、マーケットエンタープライズはメディア事業にも力を入れ、買取専門サイトとのシナジー効果を見込んでいます。

⑥クラウディアHDと内田写真による会社分割

リゾート挙式事業などを行うクラウディアHDは2018年、内田写真館から写真撮影事業を、会社分割により取得しました。

クラウディアHDは、挙式事業と関連性の高い写真事業を取得することで、シナジー効果や写真事業の拡大を目指しています。

⑦パーソルHDと商船三井による会社分割

パーソルHDは2018年、子会社のパーソルテンプスタッフを通じて、商船三井の子会社である商船三井キャリアサポートから人材関連事業を取得しました。

これにより、パーソルHDは人材関連事業を拡大し、商船三井キャリアサポートは、商船三井からの業務受託に注力する計画です。

10. 会社分割の相談先

会社分割の相談先

会社分割は、労働者や債権者への対応・税制の適用要件の判断など、法務・労務・税務などの幅広い知識や豊富な実務経験が必要となる場面の多い手法であり、円滑に進めるには専門家のサポートが不可欠です。

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11. まとめ

まとめ

本記事では、会社分割の特徴や手続き方法、メリット・デメリットなどについて解説しました。最後に会社分割の特徴を簡単にまとめます。

会社分割のメリット・デメリットは以下のとおりです。

【メリット】

  1. 株式を対価にするため資金が不要
  2. 資産や契約関係を移転させる手続きが不要
  3. 一部事業のみ譲渡することができる
  4. 買収によるシナジー効果が得やすい
  5. 他のM&A手法と違い税金の負担が少ない

【デメリット】
  1. 買い手企業の株価が下落するリスクがある
  2. 結果として買収された企業の株主が買い手企業の株主となる
  3. 負債を引き継ぐ必要がある
  4. 経営統合プロセスがスムーズに進まない可能性
  5. 株式総会にて特別決議など多くの手続きが必要になる

会社分割の手続きは主に以下の手順で進めます。

【吸収分割】
  1. 吸収分割に関する基本合意書の締結
  2. 各社の取締役会の承認
  3. 吸収分割契約の締結
  4. 吸収分割契約書などの事前開示
  5. 株主総会の特別決議・承認
  6. 反対株主の株式買取請求通知
  7. 債権者保護手続き
  8. 吸収分割書面などの事後開示
  9. 各社の変更登記

【新設分割】
  1. 分割会社の取締役会の決議
  2. 新設分割計画書の作成
  3. 新設分割計画書などの事前開示
  4. 分割会社の株主総会の特別決議・承認
  5. 反対株主の株式買取請求通知
  6. 債権者保護手続き
  7. 新設分割書面などの事後開示
  8. 新設会社の設立登記・各社の変更登記

会社分割では他にも以下の手続きが必要です。
 
  1. 公正取引委員会、監督官庁などへの事前確認
  2. 契約書類などの開示臨時報告書の提出
  3. 労働者・従業員から理解を得る
  4. 労働組合との事前協議
  5. 労働組合・労働者・従業員への通知
  6. 労働者の意見申述
  7. 公正取引委員会への事前届出

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