2023年06月06日更新
【2023】新聞業界のM&A動向と最新事例を紹介!現状と今後の課題は?
従来の新聞業界は経営基盤が盤石で安定していましたが、近年は社会環境の変化により苦境に立たされつつあります。米国ではM&Aによる再建事例もみられ、日本でも再編機運が高まりつつあります。本記事では、新聞業界のM&A動向と最新事例を紹介します。
1. 新聞業界の現状
私生活との関わり合いが深い新聞業界ですが、近年は社会環境変化の影響で経営状態が悪化しており、社員の大量リストラなども話題となっています。
新聞業界のM&A動向を解説する前に、まずは新聞業界の定義や現状を確認していきます。
新聞業界とは
新聞業界とは、新聞の発行を行う事業者が属する業界です。新聞のジャンルは、「一般紙」「スポーツ紙」「専門誌」の3つに大別されます。
従来は、紙媒体の新聞発行が主流でしたが、近年はデジタル化の促進によってインターネット媒体を使った新聞配信も行っています。
現状
新聞業界は経営基盤が安定している印象が強いですが、近年は市場規模の減少など雲行きが怪しくなってきています。
新聞業界でのM&Aを検討している場合は、業界の現状について把握しておくことが大切です。
【新聞業界の現状】
- 新聞を購読する若年層が激減している
- 発行部数の減少、特にスポーツ紙は著しい
- 広告収入が大きく減少している
- 業界内ではリストラも増えている
①新聞を購読する若年層が激減している
毎日新聞の調査では、新聞の購読者の48.9%が60代以上、次いで27.5%が50代というデータが明らかになっています。
少子高齢化とは別に、若年層の新聞離れが加速しており、購読者の減少とともに新規顧客の獲得が難しい業界になりつつあります。
②発行部数の減少、特にスポーツ紙は著しい
日本新聞協会のデータによると、新聞発行部数のピークは5376万5000部(1997年)です。それから年月を経て、現在は3509万1944部(2020年)で30%以上も減少していることが分かります。
市場規模は同協会のデータによると、2004年の市場規模2兆3797億円から2019年の市場規模1兆6526億円と、15年間で5000億円以上減少しています。
発行部数や市場規模の減少の主な原因はインターネットの普及と考えられており、スポーツ紙に至っては新型コロナの影響を強く受けており、一般紙や専門誌よりも減少幅が大きくなっています。
③広告収入が大きく減少している
日本新聞協会によると、2017年度の新聞業界の広告収入は3551億円で約10年前と比較すると約50%減少していることが分かります。
広告収入の減少にも、インターネットの普及が大きく影響しています。インターネット広告にシェアを奪われており、新聞業界のビジネスモデルが崩壊しつつあります。
④業界内ではリストラも増えている
近年は、国内大手新聞社の大量リストラが話題になることも多いです。前述した現状に加え、ネットニュースの台頭や若者の活字離れで新聞の発行部数は減少しており、新聞業界は苦境に立たされています。
大手新聞社では数百人規模の希望退職者を募っているなど、継続的な募集で経営を立て直す動きもみられます。
2. 新聞業界の課題
前章で述べたように、新聞業界にはいくつかの課題が突きつけられています。特に対策が急務とされている課題としては、以下の2つが挙げられます。
【新聞業界の課題】
- 収益を安定して確保できるビジネスモデルの構築が必要
- 喫緊の課題は新聞デジタル版の購読者を増やすこと
収益を安定して確保できるビジネスモデルの構築が必要
新聞業界の主な収益源は「販売」と「広告」の2つです。毎日決まった時間に新聞が配達される「戸別配達制度」は高い支持を得ており、多くの定期購読者により新聞業界の経営を支えていました。
広告に関しては、多くの定期購読者によって広告単価が高く維持されており、販売と合わせて新聞業界の収益の要となっていました。
しかし、近年はインターネット普及などで厳しい現状を迎えつつあり、従来のビジネスモデルが崩れつつあります。立て直すためには新たな収益構造の確立が急務とされています。
喫緊の課題は新聞デジタル版の購読者を増やすこと
新聞業界が取り組むべき課題は多いですが、喫茶の課題は新聞デジタル版の購読者の確保です。近年、若年層の購読者は、気軽に使える無料のニュースアプリなどに流れています。
無料のニュースアプリが浸透している昨今では、毎月数千円の定期購読者を確保するのは並大抵のことではありません。
しかし、インターネットの広告収入などを考えると、デジタル版の購読者を増やすことは必須とされています。
3. 新聞業界のM&A動向・特徴
新聞業界では、業界が抱える課題への取り組みとしてM&Aによる再編機運が高まっています。新聞業界で特に目立っているM&A動向としては以下の2つがあります。
【新聞業界のM&A動向】
- 新しい技術・ノウハウや顧客獲得を目的としたM&A
- 新聞事業衰退で業界再編を目的とするM&Aの可能性
新しい技術・ノウハウや顧客獲得を目的としたM&A
新聞業界は、デジタル版の購読者の確保が急務と考えられています。先に触れたように、紙媒体の若年層の購読者は減少する一方で、大半がスマートフォンのニュースアプリなどに流れているためです。
しかし、紙媒体を主戦場として戦ってきた新聞社にとって、いきなりデジタル版に進出するのは難しい部分もあります。
そこで、インターネットやアプリに知見のある企業をM&A買収で傘下に加えることで、新たな技術・ノウハウを獲得しようとする動きがみられます。
新聞事業衰退で業界再編を目的とするM&Aの可能性
新聞業界では、新聞事業の衰退で業界再編の必要に迫られています。少子高齢化で若年層は減る一方であるため、発行部数を大きく回復するのは難しいと見込まれており、事業の多角化が必要と考えられています。
今後は大手新聞社も含んだ業界再編により、新聞業界が大きく動き出す可能性が高いとみられています。
アメリカでのM&Aによる新聞社再建事例
新聞業界の業界再編が予測される根拠の一つとして、アメリカのM&Aによる新聞社再建事例があります。
最も印象的な事例は、2013年のAmazonCEOのジェフ・ベゾス氏による、米大手新聞社のワシントン・ポストの新聞部門の買収です。
本件にAmazonは関与しておらず、買収以降はベゾス氏がオーナーとなる非公開企業の下でワシントン・ポストの新聞発行を行っています。
ベゾス氏のネット戦略によって、買収前はほとんどいなかったデジタル版の購読者は300万人を超え、記者の人数は580人から1,000人を超える規模まで成長しました。
4. 新聞業界のM&A事例
実際に新聞業界で実施されてるM&Aはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、新聞業界のM&A事例を5つ紹介します。
【新聞業界のM&A事例】
- 朝日新聞社によるディーイーシー・マネージメントオフィスのM&A
- 日本経済新聞社によるディールストリートアジアのM&A
- ニューズ・ツー・ユーホールディングスによるジャパンタイムズのM&A
- 日本経済新聞社によるフィナンシャル・タイムズのM&A
- 日本経済新聞社とウィルソン・ラーニングワールドワイドの資本業務提携
1.朝日新聞社によるディーイーシー・マネージメントオフィスのM&A
2019年8月、朝日新聞社はディーイーシー・マネージメントオフィス(DEC)の全株式を取得して完全子会社化しました。
DECは、クライアントのブランディングや広告宣伝・ウェブサイトの企画制作などを手掛ける会社です。1992年に独立系プロダクションとして起業してから、徐々に業容を拡大させてきました。
朝日新聞社はDECを傘下に加えることで、さらなるジャンルの開拓による読者・クライアントに対するサービス拡充を、DECは朝日新聞社グループのメディアとの連携でさらなる企業成長を目指すとしています。
2.日本経済新聞社によるディールストリートアジアのM&A
2019年4月、日本経済新聞社はディールストリートアジア(ディール)の株式の過半数を取得して子会社化することを公表しました。
ディール社は、東南アジアの投資ファンド等の情報に強みを持つシンガポールの新興メディアです。資金調達を受けて成長するスタートアップの情報なども発信しており、世界から注目されてるメディアの1つです。
日本経済新聞社は、英文媒体「Nikkei Asian Review」などとの連携を深めて、アジア圏のスタートアップ情報をよりグローバルに発信していくことに注力するとしています。
3.ニューズ・ツー・ユーホールディングスによるジャパンタイムズのM&A
2017年6月、ニューズ・ツー・ユーホールディングスはジャパンタイムズの全株式を取得して完全子会社化することを公表しました。
ジャパンタイムズは、創刊120周年の日本で最も歴史ある英字新聞です。「日本の現状を英語で正確に発信する」を掲げており、インターネット普及やグローバル化が進む現代でも、その役割の重要性は増しています。
今後は、両社が培ってきたノウハウや顧客基盤を活用して、デジタル時代に相応しい形でジャパンタイムズの事業成長を目指すとしています。
4.日本経済新聞社によるフィナンシャル・タイムズのM&A
2015年11月、日本経済新聞社はフィナンシャル・タイムズ(FT)の全株式を取得して完全子会社化しました。取得価額は8億4400万ポンド(約1600億円)です。
FTは欧米を中心に読者基盤を持つ有力経済紙です。いち早いデジタル化の対応で電子版有料読者40万人を超しており、グルーバル経済報道にも定評があります。
本M&Aの目的について、日本経済新聞社は海外事業買収によるグローバル化やデジタル化技術の獲得としています。
今後はFTのノウハウや読者基盤を活用して、さらなるグローバル展開を推進していくとしています。
5.日本経済新聞社とウィルソン・ラーニングワールドワイドの資本業務提携
2013年3月、日本経済新聞社とウィルソン・ラーニングワールドワイド(WLW)は資本業務提携を締結しました。本提携により、日本経済新聞社はWLWの株式15%を所有することになりました。
WLWは、ビジネスパーソンを対象にした研修を世界各国で展開する会社です。1965年の米国での創業から事業規模を拡大し、提携当事には世界約50ヵ国に販売代理店を展開しています。
本提携は、WLWの海外拠点や講師を活かすことで、グローバル展開を目指す日本企業の海外研修事業を強化することを目的としています。
5. 新聞業界のM&Aを成功させるポイント
新聞業界のM&Aには、いくつかの成功ポイントがあります。M&Aを検討する際に特に押さえておきたいポイントは以下の2つです。
【新聞業界のM&Aを成功させるポイント】
- M&Aを行うタイミングを逃さない
- M&Aの専門家に相談する
1.M&Aを行うタイミングを逃さない
新聞業界のように、市場規模の縮小がみられる業界は、再編機運が高まっていることも示しています。
業界再編が活性化するとM&Aの売り手も買い手も集中するようになり、相手を探しやすくなって成約率も格段に上がります。
逆に業界再編のタイミングを逃してしまうと、相手をみつけることは難しくなります。たとえ魅力的な技術やノウハウを持っていても、相手がいなくては正当な評価を受けることもできません。
新聞業界のM&Aを検討する際は、業界動向に気を配りながらM&Aのタイミングを伺うことが大切です。
2.M&Aの専門家に相談する
新聞業界に属する事業者でも、業界全体の動向を察知し続けるのは並大抵のことではありません。日常の業務に支障をださないためにも、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。
新聞業界のM&Aで特におすすめの相談先はM&A仲介会社です。M&A仲介を専門的に扱っている会社なので、動向調査や専門的知見によるアドバイスなどのサポートを期待することができます。
6. 新聞業界のM&Aにおすすめの相談先
新聞業界のM&Aを検討する際は、専門家のサポートが必要不可欠です。業界の動向調査に加えて、M&A相手の選定・交渉や契約書の締結などがあり、多分野における専門的な知識が求められるためです。
M&A総合研究所は、さまざまな業種における中堅・中小規模の案件を得意とするM&A仲介会社です。創業から仲介実績を積み重ねており、経験とノウハウを培っています。
M&Aの実務経験・実績豊富なアドバイザーのフルサポートを行っており、長期化しやすいとされるM&Aも、最短3ヵ月での成約実績があります。
M&A総合研究所の料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
新聞業界のM&Aに関して無料相談をお受けしておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
7. まとめ
新聞業界は、インターネット普及の影響で経営状態が悪化しています。今後も紙媒体の購読者が増える望みは薄いため、デジタル版進出などによる新規顧客獲得が急務とされています。
再建の手段としてM&Aは有効であり、国内新聞社のM&A事例も徐々に増えています。業界動向をリサーチしておくと、いざという時も柔軟に対応することができます。
【新聞業界の現状】
- 新聞を購読する若年層が激減している
- 発行部数の減少、特にスポーツ紙は著しい
- 広告収入が大きく減少している
- 業界内ではリストラも増えている
【新聞業界の課題】
- 収益を安定して確保できるビジネスモデルの構築が必要
- 喫緊の課題は新聞デジタル版の購読者を増やすこと
【新聞業界のM&A動向】
- 新しい技術・ノウハウや顧客獲得を目的としたM&A
- 新聞事業衰退で業界再編を目的とするM&Aの可能性
【新聞業界のM&Aを成功させるポイント】
- M&Aを行うタイミングを逃さない
- M&Aの専門家に相談する
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