紙・パルプ製品製造・卸売業界のM&A・事業承継動向|事例や案件例も紹介

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

紙・パルプ製品製造・卸売業界のM&A・事業承継について解説します。紙・パルプ製品製造・卸売業界のM&A・事業承継の動向や、M&A・事業承継時におすすめの相談先、M&A・事業承継を実施するメリット・デメリットなどもまとめました。

目次

  1. 紙・パルプ製品製造・卸売会社を取り巻く環境
  2. 紙・パルプ製品製造・卸売会社のM&A・事業承継の動向
  3. 紙・パルプ製品製造・卸売会社のM&A・事業承継の案件例
  4. 紙・パルプ製品製造・卸売会社のM&A・事業承継の事例
  5. 紙・パルプ製品製造・卸売会社によるM&A・事業承継のメリット・デメリット
  6. 紙・パルプ製品製造・卸売会社のM&A・事業承継を成功させるポイント
  7. 紙・パルプ製品製造・卸売会社のM&A・事業承継時におすすめの相談先
  8. 紙・パルプ製品製造・卸売会社のM&A・事業承継まとめ
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1. 紙・パルプ製品製造・卸売会社を取り巻く環境

日本の紙代理店業界では、日本紙パルプ商事、KPPグループホールディングス(旧国際紙パルプ商事)、新生紙パルプ商事、日本紙通商の4社が主要企業とされています。

現在、王子ホールディングス(HD)の製品は主に日本紙パルプ商事とKPPグループホールディングスが取り扱い、日本製紙の製品は新生紙パルプ商事と日本紙通商が中心となっています。また、KPPグループホールディングスは王子HDの持分法適用会社、日本紙通商は日本製紙の連結子会社です。

一方で、代理店の仕入れ先となる製紙業界は、業界再編が進まず、大手6社が競争を続ける状況が続いています。生産能力の過剰が解消されない中、印刷物のデジタル化や少子化により紙の需要が急速に縮小しており、業界全体として効果的な対策が追いついていないのが現状です。

紙・パルプ製品製造・卸売会社の市場規模

経済産業省の資料によると、2021年におけるパルプ・紙・紙加工品製造業の製造品出荷額等は72,144億円(産業中分類別構成比:2.2%)でした。同様に、パルプ・紙・紙加工品製造業の付加価値額は22,125億円(産業中分類別構成比:2.1%)でした。

参考:総務省・経済産業省「2022 年経済構造実態調査二次集計結果<製造業事業所調査>結果の概要 」

紙・パルプ製品製造・卸売業界が抱える悩み

紙・パルプ製品製造/卸売業界が抱える悩みとして、下記の点があげられます。

  • ペーパーレス社会により紙媒体の消費が減少している
  • 生産にかかるコストが増加している
  • 設備への投資を欠かせない

ここまで説明したように、紙・パルプ製品製造/卸売業界ではM&A件数が増加していますが、その背景には業界が抱える悩みがあります。この章では、紙・パルプ製品製造/卸売業界全体が抱える悩みには、どのようなものがあるか見ていきましょう。

ペーパーレス社会により紙媒体の消費が減少している

紙・パルプ製品製造/卸売業界は、ペーパーレス化の波によって国内需要が著しく低下しています。スマートフォンやタブレットなどの普及や技術の進化によるものです。

実際に、日本製連合会の資料によると、2023年における紙・板紙を合わせた内需実績見込みは、前年比で6.1%減少、2019年比で14.6%減少しています。

参考:日本製紙連合会「2024年 紙・板紙内需見通し報告」

生産にかかるコストが増加している

紙・パルプ製品製造/卸売業界は、製品製造の原料価格高騰にも悩まされています。原料となる木材チップ・パルプ・石炭などは、為替変動や環境などによって価格が大きく変動するからです。生産コストが増加すれば、当然その分、企業の収益は減少するため、コスト高に悩まされる企業が増えています

大手製紙メーカーによる航空燃料用バイオエタノール生産が始動

製紙大手4社が非可食性の持続可能な航空燃料(SAF)用バイオエタノールの生産計画を進めており、2027年度までに供給が開始される見通しです。例えば、大王製紙は古紙を活用してエタノールやバイオプラスチック原料を製造し、レンゴーは建築廃材を用いたエタノール生産に約195億円を投資します。

こうした取り組みは、木質バイオマスを活用し、食料と競合しない点や低い環境負荷を強調しています。紙需要の減少に対応し、パルプ設備の有効活用も図る方針です。

設備への投資を欠かせない

製紙製品の原料となるパルプを生産したり、原料から製紙製品をつくったりするには、大規模な設備・施設が必要です。紙・パルプ製品製造/業界の企業は、設備投資が欠かせません。

国内需要が低下しているにもかかわらず、設備投資は引き続き必要となるため、資金的に苦しくなるケースも少なくありません。海外市場などに新規参入する場合は、多額の初期投資も必要になります。

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2. 紙・パルプ製品製造・卸売会社のM&A・事業承継の動向

紙・パルプ製品製造/卸売業界のM&A・事業承継を行う際は、業界のM&A動向を把握しておくことも重要です。動向を把握しておけば、適切なタイミングや手法でM&A・事業承継の手続きを進められます。

  1. 近年大手・中堅によるM&Aが増加傾向
  2. 大手・中堅による関連業種へのM&Aも増加
  3. 海外企業へのクロスボーダーM&Aも増えている
  4. 経営者の高齢化が問題に

①近年大手・中堅によるM&Aが増加傾向

近年の紙・パルプ製品製造/卸売業界では、大手・中堅企業によるM&Aが増加傾向にあります。紙・パルプ製品の需要は縮小していく予測です。この市場縮小に対応すべく、顧客網や販路拡大を目的とした企業買収が見られます。

例えば、 2023年12月、王子ホールディングスは、森羽紙業を株式交換により完全子会社化しています。本M&Aの目的は、段ボール事業のシナジー効果の獲得です。

簡易株式交換による森羽紙業株式会社の完全子会社化に関するお知らせ

②大手・中堅による関連業種へのM&Aも増加

大手・中堅の紙・パルプ製品製造/卸売会社が、関連業種に対してM&Aを実施するケースも増加しています。なかでも、ネット通販事業への新規参入や、成長分野や異業種への新規参入を目的としたM&Aが多くなっているようです。

例えば、 2019年12月、日本製紙は、紙容器成形充填機の国内シェアNo.1の四国化工機と資本業務提携を締結しています。日本製紙は、四国化工機とのパートナーシップをより強固なものとし、両社の強みを活かしながら食品用紙容器の充填包装システムを進化させることを目指しています。

日本製紙株式会社と四国化工機株式会社が資本業務提携

③海外企業へのクロスボーダーM&Aも増えている

国内市場の縮小を背景に、紙・パルプ製品製造や卸売企業の間で、海外市場への進出を目的としたクロスボーダーM&Aが増えています。特に国内シェアを確保した大手企業が中心となり、海外企業の買収を進めています。

例えば、 2023年10月、王子ホールディングスは、フィンランドのWalki Holdingを買収しています。Walki Holdingは、原紙への塗工、ラミネート(プラスチック/アルミ)、印刷、その他加工の製造・販売事業手掛ける会社です。

本M&Aにより、環境に配慮した紙包装資材のソリューションを広げ、需要が高まる豪亜・インド市場での拡販を狙っています。

一方で、中小企業が単独で海外進出するのは、施設の建設や人材確保など多大な時間とコストがかかるため、非常に難しいのが現状です。海外企業を買収することで、既存の施設や販路、取引先を短期間で確保でき、効率的に海外市場での基盤を築くことが可能となります。

(欧州)包装資材加工会社 Walki 社の買収完了のお知らせ

④経営者の高齢化が問題に

紙・パルプ製品製造/卸売業界では、経営者の高齢化が進んでおり、特に中小企業は経営者の高齢化に伴う後継者問題が深刻化しています。そのような背景により、高齢となった経営者が事業承継を実施するケースが増えています。

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3. 紙・パルプ製品製造・卸売会社のM&A・事業承継の案件例

弊社M&A総合研究所が取り扱っている紙・パルプ製品製造・卸売会社のM&A・事業承継の案件例として、ベトナムのパルプ・紙・紙加工品製造業をご紹介します。

サッククラフト紙、感熱紙、クラフトカップストックの原材料の生産を行っています。
 

エリア 海外
売上高 25億円〜50億円
譲渡希望額 500~1,300万USD (約8億円~約20億円)
譲渡理由 資金調達

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4. 紙・パルプ製品製造・卸売会社のM&A・事業承継の事例

ここからは、紙・パルプ製品製造/卸売会社のM&A・事業承継の売却・買収事例をご紹介します。

レンゴーによるプロンク・インド社の買収

レンゴーの子会社であるトライウォール社(香港)は、インドの重量物包装資材メーカーであるプロンク・インド社の株式90%を取得しました。

トライウォール社は段ボールなど重量物包装資材事業をグローバルに展開し、インド国内で10拠点の加工工場を運営中です。プロンク・インド社は木材梱包を中心に事業を展開しており、複数都市に工場を有します。

本件M&Aにより、レンゴーグループはインド市場での供給体制を強化し、多様なニーズに対応した包装資材やサービスを提供する体制を構築します。

インドにおける重量物包装資材メーカーの株式取得について

トライウォール社によるジェイパックの買収

2024年10月、レンゴーの子会社であるトライウォール社(香港)は、子会社トライウォールジャパンを通じて、ジェイパック(神奈川県川崎市)の全株式を取得しました。

トライウォール社は重量物包装資材の製造・販売を統括し、トライウォールジャパンは包装資材製造や技術コンサルティングを行っています。一方、ジェイパックは梱包事業や倉庫管理、海外引越、運送事業を展開しています。

本件M&Aにより、トライウォールグループはジェイパックの販路やサービスを活用し、顧客ニーズへの対応力を強化しています。

トライウォールジャパン株式会社による株式会社ジェイパックの子会社化について

トーモクによる大和段ボールの買収

2024年10月、トーモクは、大和段ボール(千葉県野田市)の全株式を取得し、子会社化しました。

トーモクは段ボールや紙器の製造、住宅事業、運輸・倉庫事業などを展開しています。一方、大和段ボールは段ボール製造を専門とするメーカーです。

本件M&Aにより、埼玉、千葉、茨城および周辺地域でのグループ間の連携を強化し、生産・配送の効率化を図ることで、相乗効果による企業価値の向上を目指します。

大和段ボール株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

王子HDによる傘下チューエツのタイヘイへの譲渡

王子ホールディングスは、子会社の王子マネジメントオフィスを通じて、完全子会社であるチューエツの全株式をタイヘイ株式会社に譲渡することを決定しました。

チューエツは印刷、製本、包装資材製造などを行う企業で、一方のタイヘイは印刷関連事業に加え、食品販売や業務用食材の供給も手掛けています。

本件M&Aは、事業ポートフォリオの転換を進める王子グループが、変化する印刷業界の環境を踏まえ、タイヘイによる事業拡大が最適と判断したことが背景です。

子会社株式の売却に関するお知らせ

トーモクによるコスモス工業の買収

2023年4月、トーモクは、コスモス工業の全ての株式を取得し、子会社化しました。トーモクは、段ボール・紙器製品の製造・販売などを行う総合包装会社です。対象会社であるコスモス工業は、段ボール製造・加工・販売および梱包請負を行う会社です。

今回のM&Aによりトーモクは、長野県や周辺地域でのグループ会社の連携を強化し、事業拡大を目指します。

王子HDによるIPI S.r.I.の買収

2023年2月、王子ホールディングスは、Coesia S.p.Aが保有する、IPI S.r.I.へのM&Aを行いました。

王子ホールディングスは、王子製紙などの企業を傘下に持つ産業資材・生活消費財、機能材、資源環境ビジネスなどの王子グループの持株会社です。IPI社は、イタリアに拠点を置く液体紙容器事業会社で、アセプティック液体紙容器用加工紙や充填機の製造販売を行っています。

今回のM&Aにより、王子ホールディングスは、原紙・加工紙の生産、加工紙・充填機のセット販売が可能となり、新興国への事業拡大を目指します。グローバル市場においてはアセプティック市場が最も多く、新興国を中心に市場成長が伸びると予想しています。

大王パッケージによる吉沢工業の買収

大王製紙の子会社である大王パッケージは2022年4月、吉沢工業の全ての株式を取得し、子会社化しました。

大王製紙グループは、紙・板紙製品や家庭紙製品の製造販売を行う大手製紙メーカーです。大王パッケージは、原紙から段ボールまでの一貫生産体制による段ボール製品の製造、販売を行っている会社です。対象会社の吉沢工業は、新潟県の拠点を置く、段ボールシート・段ボールケース製造、販売を行う会社です。

今回のM&Aにより、グループとして新規生産拠点を確保し、段ボール原紙の販路拡大・生産性向上を目指します。

王子HDによるOji Fibre Solutionsの買収

INCJは2022年3月、子会社であるOji Fibre Solutionsの全ての株式を、王子ホールディングスへ譲渡しました。

王子ホールディングスは王子グループの持株会社で、産業資材・生活消費財ビジネス、資源環境ビジネス、印刷情報メディアなど幅広い事業を展開しています。

INCJは、オープンイノベーションにより次世代の産業を育成・創出するのを目的に設立された投資会社です。対象会社であるOji Fibre Solutionsは、ニュージーランドやオーストラリアにて、パルプ事業、板紙事業、パッケージング事業を展開している会社です。

今回のM&Aにより、INCJは王子ホールディングスの子会社になることで、シナジー効果創出と企業価値向上が図れると判断しました。

レンゴーによるヒロパックスの買収

レンゴーは2022年2月、ヒロパックスの全ての株式を取得し、子会社化しました。

レンゴーは、主力製品である段ボールをはじめ、製紙、段ボール、紙器、軟包装、重包装を中心とした、さまざまな事業を行っている会社です。対象会社のヒロパックスは群馬県に拠点を置く会社で、段ボールケース、化成品、ラベル・シールなどの製造・販売を行っています。

今回のM&Aにより、直営工場やグループ会社との営業面・開発面での連携強化を目指せるとしました。化成品やラベル・シール事業を活用して幅広い商品をそろえ、関東地区でのさらなる事業拡充を図ります。

ダイナパックによる城西および城西パックの買収

ダイナパックの子会社である旭段ボールは2021年12月、城西および城西パックの株式を取得し、子会社化しました。取得割合は、城西の全株式、城西パックの35%(7,000株)を株式取得しました。

旭段ボールは、段ボール製品の製造・販売を行う会社です。対象会社である城西は不動産の賃貸事業をメインとする会社で、城西パックは、包装資材の製造・販売を行っています。

今回のM&Aにより、城西や城西パックの持つ高い信用力と営業実績により、さらなる企業価値向上を目指します。

トーモクによるタマゼンの買収

段ボール・紙器事業、住宅事業、運輸・倉庫事業などを展開しているトーモクは、2021年3月、タマゼンの全株式を取得し、子会社化しました。取得後の称号は玉善に変更します。

このM&Aにより、住宅事業の持続的成長を図り、トーモクグループの企業価値向上を目指します。

三菱製紙によるプレスボード事業の売却

紙・パルプ・写真感光材料の製造、加工および販売を展開する三菱製紙は2020年8月、プレスボード事業について、王子エフテックスに事業譲渡するのを決定しました。

2019年3月の両社の資本業務提携後、新たなシナジー効果の創出を目指していました。このM&Aにより、電気絶縁紙事業において、さらなる事業基盤の強化と収益向上を見込んでいます。

ダイオーロジスティクスによるケイジ―物流の買収

大王製紙の子会社であるダイオーロジスティクスは2020年7月、ケイジ―物流の全株式を取得し、子会社化しました。

このM&Aにより、ケイジ―物流の物流ネットワークを活用することで、さらなる安定供給体制の強化を図り、収益力強化に向けた物流ネットワークの構築を目指します。

大王製紙によるウゼン社の買収

大王製紙は2020年5月、トルコの大手食品・消費財メーカーグループであるユルドゥズ社が保有するウゼン社の全株式を取得し、子会社化しました。取得価額は約30億円です。

ウゼン社は、イスタンブールに工場を持ち、ベビー用紙おむつ・ウェットワイプ・液体せっけんなどの衛生用品を生産・販売を行っていました。このM&Aにより、事業基盤強化と拡大をすることで、さらなる企業価値向上を図ります。

5. 紙・パルプ製品製造・卸売会社によるM&A・事業承継のメリット・デメリット

この章では、紙・パルプ製品製造/卸売会社がM&A・事業承継によって買収・売却する際に発生するメリット・デメリットを詳しく解説します。

メリット

紙・パルプ製品製造/卸売会社をM&A・買収・売却することで得られるメリットを説明します。

  • M&Aによる事業基盤を拡大できる
  • 燃料費などのコストを下げられる
  • 信用が高まり取引が有利になる
  • 後継者問題を解決できる
  • 従業員の雇用先を確保できる
  • 売却益を獲得できる

M&Aによる事業基盤を拡大できる

紙・パルプ製品製造/卸売会社をM&A・買収することで、事業基盤を拡大できます

大規模設備によって生産力のある企業を買収したり、海外市場である程度市場シェアを獲得している企業を買収したりすれば、スムーズな事業基盤拡大が可能です。売却側企業は、大手企業グループになれば資金力・人材・ノウハウなどを活用できます。スムーズな事業基盤の拡大に期待がもてるでしょう。

燃料費などのコストを下げられる

紙・パルプ製品製造/卸売業界を悩ませていることの一つが、燃料費や原料費などのコストです。紙・パルプ製品製造/卸売会社を買収することで、共同仕入れが可能となり、燃料費などのコストを削減できます

信用が高まり取引が有利になる

紙・パルプ製品製造/卸売会社をM&Aによって大手企業に売却し、資本力のある大手企業のグループ傘下となれば、信用が高まり取引を有利に進めることも可能です。

後継者問題を解決できる

中小規模の紙・パルプ製品製造/卸売会社では、経営者の高齢化と人材不足が相まって後継者問題が深刻化しています。後継者となるべき人物がいなかったり、子供や親族に事業を継ぐ意思がなかったりするなど、事業承継ができず、倒産・廃業を選択するケースも少なくありません。

M&Aにより第三者企業に事業を譲渡できれば、後継者問題を解決でき、廃業コストも不要になります。

従業員の雇用先を確保できる

M&Aによって、会社を売却したり事業承継したりすると、従業員は買収側企業に引き継がれるため、従業員の雇用先を確保できます

紙・パルプ製品製造/卸売会社の中には、国内需要の低下や後継者問題などにより、廃業・倒産を余儀なくされるケースもあります。そうなれば従業員を解雇しなければなりません。従業員の雇用を守るためにも、M&Aは有効です。

売却益を獲得できる

紙・パルプ製品製造/卸売会社をM&Aによって売却すれば、譲渡・売却益を獲得できます

得られる譲渡・売却益の額は会社によって異なります。市場動向や会社の規模によっては、億単位の売却益を獲得できることもあるでしょう。この売却益は創業者利益とも呼ばれ、経営から退いた後の生活費や新規事業を開始するための初期費用として使えます。

デメリット

紙・パルプ製品製造/卸売会社のM&Aを行う際は、メリットだけでなくデメリットも把握しておかなければなりません。ここでは、紙・パルプ製品製造/卸売会社のM&Aを行うデメリットを解説します。

  • 希望どおりの売却ができない可能性がある
  • 従業員が離職する可能性がある
  • 売却後に簿外債務などが見つかる可能性がある
  • 取引先などから反発される可能性がある

希望どおりの売却ができない可能性がある

紙・パルプ製品製造/卸売会社のM&Aでは、希望どおりの売却ができない可能性もあります。そのときの市況や交渉によっては、予想していた売却金額に至らなかったり、交渉が決裂してしまったりすることもあるからです。

自社の希望条件を満たすM&Aを行うためには、業界に関する知識や交渉力が必要になります。M&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼して進めるとよいでしょう。

従業員が離職する可能性がある

紙・パルプ製品製造/卸売会社のM&Aを進める際には、従業員が離職する可能性があることも頭に入れておかなければなりません。

M&A後は、買収側企業の待遇や報酬体系への不満・職場環境の変化への戸惑いなどにより、従業員が離職してしまうこともあります。能力・スキルのある人材の流出を避けるためには、事前に処遇・報酬の調整や職場環境の整備などを行っておくことが大切です。

売却後に簿外債務などが見つかる可能性がある

買収側企業が注意しておかなければならないのは、M&A後に簿外債務などが見つかる可能性があることです。

簿外債務とは、企業の貸借対照表上に記載されていない債務をさします。特に中小企業の場合、簿外債務が発覚するのは決して珍しいことではありません。

簿外債務の額があまりにも大きかったり、法に反していたりする場合は、買収側企業が背負うケースもあります。デューデリジェンスを徹底することにより、可能な限り簿外債務のリスクを下げておくことが重要です。

取引先などから反発される可能性がある

紙・パルプ製品製造/卸売会社のM&Aを実施する際は、取引先などから反発される可能性があることにも注意しておかなければなりません。

M&Aに関する説明が不十分な場合、取引条件が変わったり取引が打ち切られてしまったりすることを懸念し、取引先などが反発するケースもあります。M&A後も円満な関係を続けるためには、取引先に対して事前に丁寧な説明を行うなどの十分な対策が必要です。

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6. 紙・パルプ製品製造・卸売会社のM&A・事業承継を成功させるポイント

紙・パルプ製品製造/卸売会社のM&A・事業承継を成功させるためには、いくつか意識しておくべきポイントがあります。ここでは、成功させるポイントを解説します。

  1. 計画的にM&A・事業承継を行う
  2. M&A・事業承継の目的を明確にする
  3. 自社の製品・特許・設備などをアピールする
  4. 売却先をきちんと選ぶ
  5. M&A・事業承継の専門家に相談する

① 計画的にM&A・事業承継を行う

紙・パルプ製品製造/卸売会社のM&A・事業承継を成功させるためには、計画的に準備をして手続きを進めることが大切です。

準備が不十分なまま進めてしまうと、従業員の離職や取引先などからの反発を受ける可能性があります。これらのデメリットを避けてスムーズにM&Aを進めるためには、早めの段階からしっかりと準備をしておくとよいでしょう。

②M&A・事業承継の目的を明確にする

紙・パルプ製品製造/卸売会社のM&A・売却を成功させるためのポイント2つ目は、M&A・事業承継の目的を明確にすることです。

M&A・事業承継の目的を明確にしておけば、自社に適切な相手先を見つけやすくなります。交渉時には譲れない条件をしっかり提示できるため、理想的なM&Aが実現する確率も高くなるでしょう。

③自社の製品・特許・設備などをアピールする

自社の製品・特許・設備などをアピールすることも、紙・パルプ製品製造/卸売会社のM&A・売却を成功させるポイントの一つです。

自社の製品・特許・設備をしっかりアピールできれば、交渉がスムーズに進みやすくなるだけでなく、理想的な金額で売却できる可能性も上がります

④売却先をきちんと選ぶ

紙・パルプ製品製造/卸売会社のM&A・売却を成功させるためには、まず売却先をきちんと選ぶことが大切です。M&Aは、完了後にシナジー効果の発揮など、望んでいた効果が得られてこそ成功といえます。

自社に最適な相手先企業を選ぶことはM&Aを成功させるための第一歩でもあるため、じっくり検討することが必要です。

⑤M&A・事業承継の専門家に相談する

紙・パルプ製品製造/卸売会社のM&A・事業承継を成功させるには、M&Aに関する幅広い知識や高い交渉力も必要になるため、M&A仲介会社などの専門家に相談することがおすすめです。

紙・パルプ製品製造/卸売会社のM&A・売却を行う際は、できるだけ早い段階からM&A仲介会社などの専門家に相談しましょう。サポートを受けながら計画的・戦略的に進めることが重要です。

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7. 紙・パルプ製品製造・卸売会社のM&A・事業承継時におすすめの相談先

紙・パルプ製品製造・卸売会社のM&A・事業承継時におすすめの相談先をご紹介します。

金融機関

近年、企業の合併や買収(M&A)を支援するため、金融機関が専門部署を新設する動きが活発化しています。特に、大手投資銀行やメガバンクでは、資金調達の支援や取引戦略の策定など、幅広いサービスを提供し、M&Aを円滑に進めるためのサポートを行っています。

これらのサービスを利用することで、企業は事業承継や資金調達といった複雑な課題を効率よく解決し、専門家のアドバイスを受けながら取引の成功率を高めることが可能です。

ただし、大規模案件が優先される傾向があるため、中小企業が十分な支援を受けられない場合もあります。そのため、企業規模や目的に適した支援機関を選ぶことが重要です。

さらに、これらのサービスには高額な費用が発生する場合もあるため、料金体系を事前に確認し、費用対効果を慎重に検討することが欠かせません。

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公的機関

事業承継やM&Aを支援する公的サービスが、近年大きく充実しています。全国に設置された「事業承継・引継ぎ支援センター」では、後継者不足に悩む中小企業を対象に、無料で情報提供やアドバイスを実施しています。

さらに、企業間のマッチングを支援する体制が整い、地方企業でも専門的な支援を受けやすい環境が構築されています。個人事業主向けの支援も拡大しており、M&A仲介会社や専門家の紹介を受けることも可能です。

ただし、公的サービスは民間仲介会社に比べて対応速度や柔軟性が制限される場合があります。そのため、これらの特性を十分に理解し、自社の状況やニーズに合ったサービスを選ぶことが大切です。

公的支援は、リスクを抑えつつ事業承継やM&Aを進めるための信頼できる選択肢といえるでしょう。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、企業の買収や売却を円滑に進めるために、専門的なサポートを提供します。単に売り手と買い手をつなぐだけでなく、交渉の進行管理、企業価値の評価、契約書の作成など、多岐にわたる業務を支援します。このため、M&A経験が少ない企業でも安心して取引を進められる体制が整っています。

特に仲介会社の強みは、豊富なネットワークを活用して、最適な取引相手を迅速に見つけられる点です。これにより、M&Aの成功確率を高めています。また、初心者にも分かりやすい説明を心掛け、不安を軽減する丁寧な対応が高い評価を得ています。

ただし、仲介会社を利用する際は、着手金や中間報酬などの費用が発生する場合があるため、事前に料金体系を確認することが重要です。コストを抑えたい場合は、成功報酬型のサービスを選ぶことで、経済的で効果的なサポートを受けることができます。

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8. 紙・パルプ製品製造・卸売会社のM&A・事業承継まとめ

今回は、紙・パルプ製品製造/卸売会社のM&A・買収・売却・事業承継を詳しく解説しました。紙・パルプ製品製造/卸売業界では、製品需要の低下やコスト増加などの背景から、今後ますますM&A件数が増加していくと考えられます。

M&Aを成功させるためには、業界のM&A動向を注視しておくとともに、早い段階からM&A仲介会社などの専門家に相談をして、サポートのもと計画的に進めることもポイントといえるでしょう。

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