自動車教習所の動向とM&Aのメリット!売却・買収事例や流れと注意点も解説!

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

自動車教習所業界は厳しい状況に直面していますが、M&Aが新たな成長の機会を提供しています。この記事では、業界の動向やM&Aのメリット、具体的な成功事例、及びM&Aの手続きについて解説します。

 

目次

  1. 自動車教習所の動向
  2. 自動車教習所のM&Aのメリット
  3. 自動車教習所のM&A・売却・買収事例7選
  4. 自動車教習所のM&Aをする流れ
  5. 自動車教習所会社のM&A・事業譲渡まとめ
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1. 自動車教習所の動向

少子化や運転免許を取得しない若者の傾向もあり、自動車教習所を卒業する人口は平成25年から平成30年まで一貫して減り続け、一時は1,529,334人まで落ち込んでいました。しかし、コロナ禍の影響もあり令和元年以降は上昇に転じ、令和3年では1,723,923人まで増加しています。

また、近年の自動車教習所は大きく進化しています。オンライン教育の導入により、学習者は自分のペースで、どこからでも理論教習を行うことが可能になりました。

2. 自動車教習所のM&Aのメリット

それでは、M&Aのメリットについて、具体的に見ていきましょう。これから説明するのは、売却側と買収側それぞれが得られるメリットです。これらを理解することで、あなたの企業がM&Aを検討する際の参考になればと思います。

売却側のメリット

自動車教習所を運営する企業が売却側となった場合、以下のようなメリットがあります。

  1. 譲渡金の獲得: M&Aにより多額の譲渡金を得ることができます。このお金を使って他の事業に活用することもできます。
  2. 経営リスクの分散: 一定の規模以上の企業との合併により、経営環境の変動に対するリスクを軽減できます。
  3. 事業継続: 自社の事業やブランドを継承してもらえることで、社員や顧客への影響を最小限に抑えることが可能です。
  4. シナジー効果: 買収側企業との業務や資源の共有により、経営効率を高めることができます。

買収側のメリット

一方、自動車教習所を買収する企業側にも以下のようなメリットがあります。

  1. マーケットシェアの拡大: 競合する自動車教習所を買収することで、より広範な顧客層を獲得し、市場シェアを拡大できます。
  2. ビジネスモデルの多様化: 自社と異なる事業モデルを持つ教習所の買収により、ビジネスモデルの多様化とリスク分散が可能となります。
  3. ノウハウや人材の獲得: 買収対象の教習所が持つユニークな経営ノウハウや技術、人材を獲得することができます。
  4. シナジー効果: 教習所の運営ノウハウや資産を共有し、運営効率を高めることができます。また、購入する教習所が持つ地域のネットワークを活用して新たなビジネスチャンスを生み出すことも可能です。

以上のように、自動車教習所業界におけるM&Aは、売却側と買収側双方に多大なメリットをもたらします。

3. 自動車教習所のM&A・売却・買収事例7選

ここでは、自動車教習所業界で行われたM&A・売却事例を7つピックアップし、紹介します。

アサヒロジスティクスが川越自動車学校をM&Aした事例

アサヒロジスティクスは2022年10月、埼玉県川越自動車学校の全株式を買収しました。このM&Aにより、運転者の免許取得や教育をグループ内で支援する体制を整備。物流業界の2024年問題とドライバー不足対策に有用と期待されています。


参考:有限会社川越自動車学校をグループに迎えました

毎日コムネットがCLOの一部事業をM&Aした事例

株式会社毎日コムネットは、2022年12月1日を効力発生日として、株式会社CLOから合宿免許向け自動車教習所への生徒斡旋事業を吸収分割により承継することを発表しました。

これは、CLOが本事業から撤退し本業へ経営資源を集中させるニーズと、毎日コムネットが本事業の拡充・強化を図るニーズが一致した結果であります。吸収分割に関する金銭の額は公表されておりません。

参考:株式会社CLOの会社分割(簡易吸収分割)による 一部事業継承に関するお知らせ

コヤマドライビングスクールが東京日産ドライビングカレッジをM&Aした事例

2011年3月30日、株式会社東日カーライフグループは、取締役会の決議により、連結子会社である東京日産ドライビングカレッジ株式会社の株式と関連固定資産を株式会社コヤマドライビングスクールへ譲渡しました。

これは、免許取得人口の減少と市場競争の激化に対応し、中期計画の一環としてコア事業への経営資源を集中するためです。

譲渡価額は株式について100百万円、固定資産については3700百万円とされています。

参考:子会社株式譲渡及び固定資産の譲渡に関するお知らせ

オートバックスセブンが西武自動車学校をM&Aした事例

オートバックスセブンは、2006年1月6日に、株式会社マジオネットから株式会社西武自動車学校の全株式を取得することで合意したと発表しました。

「トータルカーライフサポート業」への変革を目指し、オートバックスの既存事業とのシナジー効果を追求し、「トータルカーライフサポート業」のブランド力を強化しました。今回の株式取得は、2006年1月11日に完了しています。

参考:株式会社西武自動車学校の全株式取得について

ソルクシーズがワイ・エス・アールをM&Aした事例

ソルクシーズは、自動車教習所向けソフトウエア開発会社ワイ・エス・アールの全株式を子会社のノイマンを通じて取得し、子会社化しました。

ワイ・エス・アールの予約配車システムとノイマンの教材ソフト「MUSASI」の連携により、経営効率化とサービスの差別化を目指すとともに、全国展開を推進しました。

参考:当社子会社による株式の取得(孫会社化)に関するお知らせ

4. 自動車教習所のM&Aをする流れ

M&Aの目的の明確化

M&Aを成功させるためには、まずその目的を明確にすることが重要です。

M&Aを成功させるのは容易ではなく、交渉を進める上で幾つかの妥協を迫られる場合が出てくることもあります。他にも経営に携わる者がいる場合には、それぞれの考える優先順位が異なることもあるため、何を一番に成し遂げたいのかをしっかりと初期から決めておきましょう。

売却先の選定

M&A仲介会社やM&Aのプラットフォームなどを利用して、売却先企業の選定を行いましょう。具体的には、まずは匿名での簡単な会社情報を提供し、その後に手を挙げた企業の中から候補を絞るという流れになります。

トップ面談・条件交渉

売却先の選定が進行し、候補が絞られた後はトップ面談へと移行します。この面談では、双方のトップマネジメントが直接対話し、互いのビジョン、戦略、価値観を共有します。

この過程では、互いの企業文化や経営方針、さらには人間性についても理解を深めることが重要です。これらの情報は、M&Aが成功するかどうかを大きく左右するため、十分な時間と労力を投じるべきです。

トップ面談が成功裡に終われば、次は条件交渉へと移行します。この段階では、M&Aの詳細条件を決定するための交渉が行われます。

この内容には、買収価格、支払い方法、移転時期、負債や責任の扱い、非開示契約などが含まれます。条件交渉は、M&Aが双方にとって公平で受け入れられる形にするための重要な過程です。この段階での交渉スキルと経験が、M&Aの成果に大きな影響を与えます。

専門的な知識と経験を持つアドバイザーの助けを借りることで、より良い交渉結果を得ることが可能となります。

基本合意の締結

条件交渉終了後、双方が基本合意書を締結します。この文書には買収の主要な条件が詳述され、事実上の「契約前契約」の役割を果たします。

合意書では、買収価格、支払い方法、買収範囲、デューデリジェンスの手続きなどが盛り込まれ、買収が具体的に進行する大前提となります。

ただし、デューデリジェンスや最終交渉の結果により、契約内容の修正が可能となる余地を残しておくことが重要です。

デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスは、売却対象企業の詳細な調査のことを指します。企業価値の正しい評価と潜在的リスクの特定に重要な役割を果たし、財務状況、法務事項、営業実績など多面的に調査します。

デューデリジェンスの結果は売却価格の決定や契約条件の調整に影響を与えます。この時に、不利になるからと言って一部の悪材料を隠しておく頃は絶対にしないようにしましょう。

最終交渉と最終契約の締結

デューデリジェンスの結果を受けて、売却価格や契約条件の最終調整が行われます。この段階では、デューデリジェンスで明らかになったリスクや問題点をどのように取り扱うか、それによる買収価格の減額や追加条件の設定など、具体的な交渉が行われます。

この最終交渉が終了すると、最終契約書の作成・締結に移ります。

最終契約には、売却価格、支払い条件、取得対象の詳細、契約の効力発生日、売買対象の所有権移転のタイミング、保証条項、責任制限条項、解約条件等が明確に記述されます。この契約の締結は、M&Aが完全に確定する瞬間であり、一つの大きなゴールでもあります。

クロージング

クロージングではM&A取引の終結点で、売買契約が全面的に実行され、所有権が買収側に移転します。この際に買収価格が支払われ、すべての条件が満たされたことが確認されます。

また、契約締結とクロージングは通常同時に行われますが、条件により別々に行われることもあります。クロージング後も、新たに統合された企業間での事業統合が重要となります。

5. 自動車教習所会社のM&A・事業譲渡まとめ

自動車教習所業界では、M&Aが新たなビジネスチャンスと競争力強化の手段となっています。資源の最適化や新規市場への参入、業務範囲の拡大などが目指されています。様々な業界からの参入者により、自動車教習所業界の新たな価値創出が試みられています。

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