2024年06月18日更新
クリーニング業界のM&A動向!売却・買収事例5選と成功のポイントを解説!【2024年最新】
この記事ではクリーニング業界のM&A動向を解説します。クリーニング業界では地域で成長著しい企業を資本力のある企業がM&Aを活用して買収するケースが多いです。この記事を読めば、最新の売却・買収事例を通じて、直近のM&A動向を確認できます。
目次
1. クリーニング業界の概要と動向
まずは、クリーニング業界の概要と動向について解説していきます。
クリーニング業界では、小規模事業者の数は少なくなっており、大手クリーニング会社の傘下に入って事業を継続するケースが多くなっています。独自のブランドをチェーン展開する事業者も、近年では宅配サービスをはじめ、新サービスの提供に力を入れています。
クリーニング業界の市場規模と動向
2024年現在、クリーニング業界は新型コロナウイルスの世界的な流行のために減少した需要回復の道を探している最中です。
そもそも新型コロナウイルスが世界的に流行する前から、クリーニング業界においては個人が運営するクリーニング店が急速に減少し、自社で洗濯工場を持った大手クリーニング店の直営店舗ネットワークが広がっている状況です。
クリーニング所施設数の年別推移を見ると、一般施設と取次所の合計が116,380施設あったのが、2023年には74,083まで減少しています。
大手クリーニング店もクリーニングに対する需要が減少する傾向にあり、以前のような低利益・大量作業のビジネスモデルが厳しい状況に直面しています。
こうした状況に、新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの増加や、ドレスシャツやスーツなどの衣料品の販売低迷の影響を受けて、クリーニング業界全体の市場規模が縮小しています。
この状況に対応するため、業界では新しいビジネスモデルを採用する動きが見られます。
具体的には、深夜でも利用可能なサービスを提供することで時間的な制約が大きい顧客に対応したり、自動化システムを導入して運営コストを削減したりするなど、利益を増大させるための新たな取り組みが行われています。
その結果、近年では、インターネットを活用した宅配クリーニング業者などの急速な成長が目立っています。宅配クリーニングは、店舗のないビジネスモデルであるため、投資額が少なくとも事業が始められるなど、新しいビジネスモデルとして注目されていました。
郊外に位置する大型店やカフェ・コンビニなどとの複合店舗が増えたことで、クリーニング店の利用客は増えており、大手チェーン店など、資本力のある事業者が売上を伸ばしている一方で、小規模事業者のクリーニング店については依然として苦境に立たされています。
2. クリーニング業界のM&A動向
近年のクリーニング業界では、資本力のあるクリーニング事業者による買収が盛んに行われています。
中小規模のクリーニング店は競争が厳しくなる中で日々の経営状況や事業承継に悩む一方で、豊富な経営資源を活用した大手チェーンが順調に事業を拡大しています。
その結果、小規模事業者や個人事業主は、大手クリーニングチェーンの一部となり、そのブランド名のもとに事業を続ける事例が増えています。買収側では、企業全体の価値向上を目指しているため、顧客リストや販売チャネルなどの経営資源を共有することが一般的です。
これにより、クリーニングの工場や専門的な技術を有していても顧客が少ない事業者にとっては、大きな成長の機会となる可能性があります。
買収側企業は、新たに店舗を開くことなく既存のクリーニング業者をM&Aすることで、新規出店の手間や人材の採用を省略できるため、事業規模を効率よく拡大することが可能です。一方、中小企業も大手チェーンの一部となることで、業界での生き残りを図る企業が増えているのが現状です。
クリーニング企業が他の業界からのM&Aを行う、あるいは他の業界がクリーニング業界に進出するM&Aはまだ顕著ではありません。
3. クリーニング店をM&Aするメリット
ここでは、クリーニング店やクリーニング事業をM&Aすることについて、売却側と買収側のメリットを説明していきます。売却側と買収側でそれぞれメリットを理解することで、クリーニング業界においてM&Aを行うことにどんな効果が期待できるかを解説していきます。
売却側のメリット
クリーニング店やクリーニング事業を売却する側にも多くのメリットがあります。
以下では、売却側の代表的なメリットを紹介していきます。
後継者問題の解消と屋号の継続
売却側がクリーニング店やクリーニング事業を売却するメリットとして、後継者問題の解消と屋号の継続が挙げられます。
クリーニング店の経営者は、個人事業主、もしくは中小事業者であることが多く、経営者の高齢化が進んでいます。
親族内承継や従業員承継も考えられますが、経営者として十分な能力と経験を有していないというケースも少なくありません。しかし、M&Aを通じて会社外部にクリーニング店、クリーニング事業を売却すれば、第三者が経営者となって会社は存続させられます。
さらに、M&Aを通じてクリーニング店、クリーニング事業を売却すれば、屋号もそのまま継続させられることがあります。特に、地域において店舗を多数持っているケースでは、屋号がブランドとなっているケースが多いです。
買収側は屋号のブランド力を活かした事業展開ができるメリットがあり、売却側も長年大切に守ってきた屋号を売却後も残しておくことができます。
従業員の雇用
売却後、オーナーや経営者が一線を退いた後でも従業員の雇用を継続させられることも大きなメリットです。
M&Aを通じて会社を残す意思決定をせず、廃業を選んでしまえば、雇用していた従業員も解雇しなければなりません。しかし、クリーニング店、クリーニング事業を売却すれば、そのまま事業は継続しますから、従業員の雇用は基本的に継続されます。
従業員の労働環境が十分に整備されていない場合、M&Aを通じて給与や待遇が改善される可能性もあります。
同業の大手企業によって買収されれば、従業員は大手企業の技術やノウハウを学ぶことも可能です。その結果、従業員は、仕事の範囲やキャリアの広がりに新たな可能性が生まれます。
また、M&Aによって同業界でも所属する組織が変わると、仕事の範囲やキャリアの広がりに新たな可能性が生まれるかもしれませんし、買収元の企業が異なる業界に属していれば、新しい業界での仕事に挑戦するチャンスが増えます。
借入金の連帯保証からの解放
M&Aを通じてクリーニング店やクリーニング事業を売却すれば、事業資金として借り入れた借入金の連帯保証から解放されます。
クリーニング店に限らず、多くの中小事業者は自分が私的に所有する現金預金や不動産などを担保にして事業資金の借入を行っています。この場合、もし事業が停滞してしまえば、多くの個人資産を失うリスクを伴います。
事業資金として借入れたお金は会社にそのまま引き継がれるため、M&Aで会社を売却することで経営者が借金を背負い続ける必要はなくなり、借入金の連帯保証からも解放されます。
売却益の獲得
クリーニング店やクリーニング事業を売却すれば、経営者はその売却益を獲得できます。
M&Aによる会社や事業の売却は、現金化による大きな収益をもたらすメリットとなります。
通常、未公開会社の株式は相続など特定の状況を除いては、売買のチャンスはほとんど存在しません。M&Aの過程では、企業の資産が市場価格で評価されます。これにより、企業の純資産価値を上回る株式評価を得ることがよくあります。
M&Aを利用して自社の株式を売却すれば、大きな現金収入の機会を生む可能性があります。
買収側のメリット
クリーニング店やクリーニング事業を買収する側にも多くのメリットがあります。
以下では、買収側の代表的なメリットについて解説していきます。
手間とコストの削減
クリーニング店やクリーニング事業を開始するためには、多くの設備投資と広告宣伝が必要です。事業を開始して、これらの費用を投じても、十分な収益が獲得できるかはわかりません。
したがって、クリーニング店やクリーニング事業を開始するのであれば、クリーニング店やクリーニング事業を買収してしまった方が、結果的に手間とコストを削減することができます。
M&Aを活用することで、事業の展開がより迅速に進められます。
優秀な人材の確保
買収側からしても、優秀なスキルを持つ従業員をそのまま引き継げるというメリットがあります。
衣料品のクリーニング業務には、高度な技術力と相当な経験が必須です。汚れを除去するといった特別な技能を持つ職人や、都道府県知事により認可される「クリーニング師」のような公認の資格を持つ人材を採用することが可能な利点もあります。
この意味で、買収を通じて人材を確保できるのは、クリーニング店やクリーニング事業を営むにあたって大きなメリットになります。
4. クリーニング店のM&A・買収・売却事例5選
次に、近年行われたクリーニング店のM&A・買収・売却事例を5つ紹介していきます。
実際に行われた事例を確認することで、近年のクリーニング店のM&A・買収・売却動向を把握できます。
トランコムがSergent Services Pte Ltdを子会社化した事例
2019年10月、BtoBの総合物流企業であるトランコムが、シンガポールでビルクリーニング事業を展開するSergent Services Pte Ltd.を子会社化することに成功しました。
Sergent Services Pte Ltd.は、シンガポールのチャンギ空港をはじめ、商業施設等のビルクリーニング事業を手掛けている企業です。
トランコムは、ASEAN地域への事業拡大を行っている最中であり、今回のSergent Services Pte LtdのM&Aも海外における事業展開を目指したものです。
参考: トランコムによるSergent Services Pte Ltdの子会社化
白洋舎が日本リネンサプライを吸収合併した事例
2020年6月株式会社白洋舍は、日本リネンサプライ株式会社を吸収合併することに成功しました。
もともと、日本リネンサプライ株式会社が、株式会社白洋舍の子会社として活動していましたが、今回の吸収合併によって消滅しています。
吸収合併の目的は、日本リネンサプライ株式会社が担当していた横浜エリアにおけるリネンサプライ事業が業績が悪くなり、そこにコロナウイルスの世界的な流行が重なってさらに業績が悪化したため、これを改善するためです。
株式会社白洋舍に合併したことで、日本リネンサプライ株式会社は消滅しますが、その事業は、株式会社白洋舎のノウハウを活かして継続され、経営の立て直しが図られる予定です。
参考: 白洋舎による日本リネンサプライの吸収合併
二葉がきょくとうにクリーニング取次所を譲渡した事例
2021年11月、株式会社きょくとうは、クリーニング事業を展開する株式会社双葉からクリーニング取次所について事業譲渡を受けました。
クリーニング取次所とは、洗濯物の受取及び引渡しのみを行う施設のことを言います。今回の事業譲渡で、きょくとうは、東京都杉並区、中野区及び武蔵野市に分布する合計7つのクリーニング取次所をM&Aしています。
きょくとうによるふたばのクリーニング事業のM&Aは、関東地区における効率化ときょくとうの営業基盤を一層固めることを目的としたものです。今回の譲り受けた7店舗について年間の合計売上高は8,000万円と見込んでいます。
参考: きょくとうによる双葉からのクリーニング事業の譲受け
清洗舎がきょくとうにクリーニング取次所を譲渡した事例
2019年10月、株式会社きょくとうは、東京都心を中心とした3区でクリーニング事業を展開する有限会社清洗舎から事業を譲り受けることに成功しました。
株式会社きょくとうは、関東地区における営業基盤を強化するために、多くのクリーニング事業者とのM&Aを成功させています。積極的なM&Aを進めてきた株式会社きょくとうは、日本全国に工場を有しており、様々な地域で、自社ブランドのチェーン展開を進めているところです。
今回の有限会社清洗舎とのM&Aについても、東京都心に近い3区に分布する合計4店舗のクリーニング取次所を譲り受けました。この事業譲受で、1億1,400万円の売上増を見込んでいます。
参考: きょくとうによる清洗舎のクリーニング事業の譲受け
新幸がきょくとうにクリーニング取次所を譲渡した事例
2019年5月、株式会社きょくとうは、首都圏においてクリーニング業を展開する株式会社新幸から事業を譲受けることに成功しました。
今回の事業譲受けによって、主に首都圏に立地するクリーニング取次所を引き継ぎ、東京23区のうちの8区、および埼玉県新座市に分布する合計20店舗を取得しました。これにより、2億4,000万円の売上増を見込んでいます。
福岡の企業である株式会社きょくとうは積極的に関東への事業展開を進めており、このM&Aで関東地区に店舗数は82店舗から102店舗へと増加しています。
もともと、九州地域において事業を展開していた株式会社きょくとうは、クリーニング需要の減少を受けて、潜在的な利用者が多く見込める首都圏への事業展開を加速させています。
参考: きょくとうによる新幸のクリーニング事業の譲受け
白洋舎による北海道リネンサプライの子会社化
2016年6月、株式会社白洋舍は、北海道リネンサプライを子会社化することに成功しています。
当時、北海道リネンサプライは、北海道旅客鉄道株式会社の子会社であった北海道クリーン・システム株式会社の子会社(北海道旅客鉄道株式会社の孫会社)として活動していました。
北海道リネンサプライは、北海道旅客鉄道株式会社が運営するホテルを対象としたリネンサプライ事業に加えて、北海道新幹線などの旅客車に係る鉄道リネンサプライ事業や法人向けクリーニング事業も展開している企業です。
もともと、株式会社白洋舍は、北海道における事業会社として、個人向けクリーニング事業やコンビニエンスストア向けユニフォームレンタル事業などを担う札幌白洋舍株式会社と、ホテル向けのリネンサプライ事業などを担う北洋リネンサプライ株式会社の2社を展開していましたが、今回の子会社化でさらなるクリーニング事業の効率化を図る狙いです。
参考: 白洋舎による北海道リネンサプライの子会社化
きょくとうが神戸ホープ(有)を買収した事例
2013年12月、株式会社きょくとうは、神戸ホープ有限会社を買収することに成功しました。
神戸ホープは神戸地区においてクリーニング業を営む事業者で、神戸進出を加速させる目的で今回の買収が実現しました。もともと、神戸地区への事業展開に遅れていた株式会社きょくとうは、今回の買収で神戸地区の顧客を取り込む狙いです。
参考: きょくとうによる神戸ホープの合併
5. クリーニング業界のM&Aの成功のポイント
クリーニング業界においてM&Aを成功させるためには、以下のポイントをおさえておくことが大切です。特に、クリーニング業界の商圏は特定の地域に限定されます。したがって、その地域の特性や顧客層を十分に検討しておく必要があります。
専門家に相談する
クリーニング業界に限らず、M&Aには専門的な知識やノウハウが必要となります。そのため、専門家の力を借りることが不可欠です。弁護士、公認会計士、税理士、中小企業診断士、M&A仲介企業など、様々な主体がM&Aを希望する事業者をサポートしてくれます。
そのなかでも、近年では、M&Aに関するコストが他と比べて安いという理由で、M&A仲介企業に相談する方が増えています。
M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください
M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。
M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ)随時、無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
デューデリジェンス前の準備をする
クリーニング店やクリーニング事業を売却する前に、しっかりとデューデリジェンスの準備を行うことが大切です。
デューデリジェンス(Due Diligence)とは、企業のM&Aや投資前に行われる詳細な調査のことで、その企業の財務状況、業務運営、法的問題、市場環境などのあらゆる観点から評価を行うプロセスのことを言います。デューデリジェンスそのものは買収側が行うものです。
売却側は、デューデリジェンスが行わる前に、自身の事業を見直し、問題がないか精査しておく必要があります。売却準備の一環として、自身のビジネスや運営を改善(磨き上げ)し、売却時の評価を高める取り組みが行われます。
売却側は財務状況、契約、従業員の状況、資産、法的問題などについて完全な透明性を持つことが求められます。
適正な売却価格で交渉する
売却側は、適正な売却価格で交渉ができるように事前に準備をすべきです。
売却する事業の強みと弱み、そして業界の動向を理解することがまずは重要となります。これにより、具体的な価額設定を行うことが可能となります。
また、複数の買い手が存在する場合は競争環境も考慮しなければなりません。市場において競争的な環境を作り出すことで、価格を押し上げる可能性があります。
さらに、M&Aの経験が豊富なM&A仲介会社の助けを借りることで、公正な価格設定や交渉が可能となります。自身だけで価格交渉が難しい場合には、積極的に専門家を活用しましょう。
シナジー効果が最大化できる相手を探す
M&Aは会社や事業を売却して終わりというわけにはいきません。会社はそのまま継続していきますから、実際にそこで働く従業員がいます。したがって、M&Aの結果、今後も事業が継続して成長できる相手を買収先として選ばなければなりません。
売却側と買収側が互いに良い影響を与えあって成長していける関係を築くことがM&Aの究極的な目的です。
6. クリーニング業界のM&A・事業譲渡まとめ
クリーニング業界は、地域において活動していた個人事業主や小規模事業者が高齢化していることもあり、資本力のある企業によるM&Aが進んでいる業界です。
近年では、宅配クリーニングサービスが人気を博しており、付帯サービスとしてクリーニング後の洋服を倉庫で預かるサービスも展開されています。伝統的なクリーニングサービスだけでは競争に勝てなくなっており、新規参入者が多い業界ではありません。
クリーニング業界のこうした特徴を踏まえてM&Aを行う必要があります。M&Aをスムーズに進めたい場合には、M&A仲介企業を積極的に利用するようにしましょう。M&Aに際して適切なアドバイスをしてくれます。
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