垂直立ち上げとは?メリットやデメリット・水平統合との違いなど徹底解説!

提携本部 ⾦融提携部 部⻑
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

一気に市場を掌握することができる垂直立ち上げ。製品ライフサイクルが短命化している昨今において垂直立ち上げ戦略を採用する企業が多くなっています。本記事では垂直立ち上げについてやメリット・デメリット、垂直統合と水平統合の違いを解説します。

目次

  1. 垂直立ち上げとは?
  2. 垂直立ち上げのメリット・デメリット
  3. 垂直立ち上げを成功させるポイント
  4. 水平統合M&Aと垂直統合M&Aの違い
  5. 水平統合M&Aと垂直統合M&Aの目的
  6. 垂直立ち上げに必要な要素はM&Aで補おう
  7. まとめ
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1. 垂直立ち上げとは?

垂直立ち上げとは、新製品販売のタイミングで生産体制を整えて売上を最大化させる戦略のことをいいます。

一般的に新製品を販売する際に必要な生産ラインは段階的に拡大していきます。これは生産設備の故障が相次いだり製品不良が起こる可能性が高いことから段階的に拡大していくものです。しかし、垂直立ち上げではこういった経過観察期間を無くし、初速から生産設備をフル稼働させる体制を構築します。

垂直立ち上げが注目されている背景

垂直立ち上げが注目されている背景は以下の2点が挙げられます。
 

  • 製品ライフサイクルの短縮化
  • 収益性の最大化

それぞれ解説します。

製品ライフサイクルの短縮化

近年は昔と違い、顧客が求めるものが多様化しています。

そのため、新製品を販売しても昔のように長く愛される製品になる可能性は限りなく低くなっています。製品が長く使われるケースが少ないため、ライフサイクルに合わせて生産設備の用意も短縮化しなければなりません。今までのように順序立てて生産体制を整えられる時間がないのです。

製品のライフサイクルは一般的に以下の過程を辿ります。

  • 導入期
  • 成長期
  • 成熟期
  • 衰退期

このライフサイクルが短縮化したことにより導入機から成長期においての売り上げや販売量が急激に伸びる傾向にあります。早めに設備投資費用を回収し新製品を販売する必要があるのです。

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収益性の最大化

導入期から成長期にかけて売り上げや販売量が急激に伸びることから、収益性はかなり高くなっています。

ここまでは導入期から成長期は生産設備への投資や宣伝広告費が発生してしまうため、黒字よりも赤字になりやすい時期です。そして、成長期に入ると先行投資分を回収でき、黒字化へ事業の舵を切ることになります。しかし、成長期から成熟期へ進むにつれて売上は鈍化していき、値下げ競争が起こってしまい利益率が低下します。顧客が求めている製品とも乖離が生まれ始め、採算が取れなくなり徹底せざるを得なくなるのが今までの製品開発の実情でした。

しかし、垂直立ち上げにより導入期から成長期にかけて一気に売り上げや販売量を増やすことができますので、生産体制も一気に整えることが可能です。成熟期によく見られる大幅な値下げをせずとも販売を鈍化させずに済むので収益性を最大化できます。

2. 垂直立ち上げのメリット・デメリット

ではここからは垂直立ち上げのメリット・デメリットをご紹介します。

製品を開発するにあたり垂直立ち上げは非常に有効な手法です。しかし、メリットばかりに目を向けていては思わぬところで挫けてしまうかもしれません。メリット・デメリットを把握した上で自社で垂直立ち上げによる生産体制の整備をすべきかどうかを検討しましょう。

垂直立ち上げのメリット

垂直立ち上げのメリットは以下の3点があります。

  • 短期間で利益を最大化できる
  • シェア・競合優位性を確保できる
  • 機会損失の恐れを抑えられる

下記でそれぞれ解説します。

短期間で利益を最大化できる

先ほどもありましたが、新製品のライフサイクルは徐々に短命化しています

今までは数年、市場を掌握していたような製品も数ヶ月で衰退してしまうケースが後を経ちません。そのため、徐々に生産体制を整えていく従来の手法では今の市場とマッチしない可能性があります。

垂直立ち上げでは、初期段階で一気に生産体制を整えてしまうため、短期間で利益を最大化することができます。導入期から成長期の一番製品需要が高まっているところで一気に製品を市場に浸透させることができるのです。これにより製品の認知度や愛用度もUPしますし、売り上げ・利益を最大化させることができます。

シェア・競合優位性を確保できる

導入期から成長期の段階で一気に製品を市場へ浸透させていくため、市場シェアや競合優位性を確保することができます

ユーザーが製品を見つけて使ってくれるかどうかはスピード勝負でもあるため、垂直立ち上げにより一気に製品を市場へ浸透させていく方が良いのです。注目度が高い初期段階から最速でシェアを確保することができますし、利益を生産側へ還元させることで商品価格を抑えることが可能にもなります。値下げ競争に巻き込まれることなく、自社が設定した価格で勝負できるようになります。

多くの企業が倒産してしまう原因の1つに「値下げ競争に巻き込まれた」がありますが、垂直立ち上げではその恐れがほとんどありません。一気に市場を埋めていくことで価格に関する懸念点を払拭することができます。

機会損失の恐れを抑えられる

売り上げや利益が最大化されるだけでなく、機会損失の恐れも抑えることができます。

一気に市場を抑えることができるため、ユーザーからの需要に対して適切な供給をすることが可能です。つまり、「欲しているユーザーがいるけれど製品を供給できない」状態になる可能性がほとんどありません。また、競合の供給が追いついていない市場へ参入することでさらに市場を拡大することができます。

垂直立ち上げのデメリット

一方で、垂直立ち上げのデメリットには以下の2点が挙げられます。
 

  • リスクが高くコストが高くなる
  • 開発力に左右される

それぞれ解説します。

リスク・コストが高くなる

当然ではありますが、垂直立ち上げでは一気に生産体制を整えるためコストが高くなります

徐々に生産体制を整えていく場合は利益を還元していくことができますが、垂直立ち上げでは製品を販売する前に一気に体制を整えてしまうため還元ができません。さらに、市場に対して販売ができるかどうかの確証を100%持つことができないまま参入していくことにもなりますのでハイリスクです。

例えば、市場分析をしっかりしていたとしても思ったよりユーザーの反応が悪かったとします。このケースだと垂直立ち上げを採用していたことが欠点となり、撤退を余儀なくされる可能性があります。垂直立ち上げは多くのメリットを持っていますが、市場にマッチした場合にのみ絶大な効果を発揮します。

市場とのミスマッチが起きたときのダメージが大きい側面を無視してはいけません。

開発力に左右される

垂直立ち上げは、開発力に優れた企業に適した戦略といえます

もちろん、市場分析やマーケティング力に長けていることが前提条件です。たとえ市場分析が完璧でマーケティングも秀逸にしたとしても、肝心な製品がユーザーに刺さらないと意味がありません。ユーザーが求めているものをしっかりと分析し、結果を実現できるだけの開発力を有する企業のみが垂直立ち上げ戦略を導入すべきです。

逆に、開発力がない企業は垂直立ち上げ戦略を導入しても良い効果は得られないでしょう。

3. 垂直立ち上げを成功させるポイント

扱いが難しい垂直立ち上げを成功させるポイントは以下が挙げられます。

  • 製品ライフサイクルを見極める
  • マネジメントシステムを導入する
  • M&Aで自社に足りない要素を補う

それぞれ解説します。

製品ライフサイクルを見極める

新製品を販売し、どれくらいで売り上げ・利益のピークが来るのか製品ライフサイクルを見極めましょう

先ほどもありましたが、製品ライフサイクルは以下の4ステップで分けられます。

  • 導入期
  • 成長期
  • 成熟期
  • 衰退期

一般的には成長期で売り上げ・利益が最大化されていましたが、近年では導入期・成長期あたりで売上・利益のピークが来ることが多いです。新製品の販売から逆算しいつまでにコストを回収すれば採算が合うのかどうかもここで判断しなければなりません。

マネジメントシステムを導入する

新製品の生産根底となる、生産体制をうまくマネジメントする必要もあります

垂直立ち上げでは生産体制をうまく整えていくことも重要ですが、整えた後のマネジメント面も重視しなければなりません。例えば、以下の工程を考えてみましょう。
 

  1. 原料調達
  2. 製品開発
  3. 完成品販売
  4. 完成品取引

この場合、各工程でミスや少しのロスが生まれてしまうとサプライチェーン全体でミスやロスが生まれてしまうことになります。そうならないようにマネジメントシステムを導入し、工程を最大効率化させていくことが必要です。また、顧客の需要は常に変化するものと考え、すぐに生産体制を変更できるだけの柔軟さも求められます。

M&Aで自社に足りない要素を補う

垂直立ち上げでは、立ち上げに必要なノウハウやスキルを既に保有している必要があります。

しかし全ての企業が垂直立ち上げに必要なノウハウやスキルを保有しているとは限りません。そういった場合に有効なのが「M&A」での補完です。例えば、生産設備が不足している場合だとM&Aにより生産設備のみならずノウハウやスキルを企業ごと買収してしまうという手法があります。また、M&Aのやり方次第では買収先企業の人材ごと引き入れることが可能なので、垂直立ち上げが非常にスムーズに進みます。

事業規模拡大やシナジー効果を期待しM&Aを行う企業は増えていますが、初期段階でのスピード感を最大化させるためにM&Aという選択肢を採用する企業も増えています。

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4. 水平統合M&Aと垂直統合M&Aの違い

さて、ここからは垂直立ち上げに必要なノウハウや設備をM&Aで補完するケースを考えていきます。

「M&A」と一言で言っても、水平統合M&Aと垂直統合M&Aの2つがあります。それぞれの違いを解説していきます。

水平統合M&Aとは

水平統合M&Aとは、同じ業種・業態の企業同士で行われるM&Aをいいます。

垂直立ち上げではよく水平統合M&Aが行われており、新製品の販売を行うための補完として採用されるケースがほとんどです。例えば、製造業の企業であれば同じ製造業の企業を買収することを水平統合M&Aといいます。

水平統合M&Aでは、スケールメリットを享受したり競争力を強化することが可能です。また、事業規模の拡大にもつながり原材料や商品の仕入れコストをぐんと下げることができるのも良い点でしょう。さらにはもともと競合同士だった企業が一つの企業となり同じ目標に向かって成長をしていくため、市場における競争力を高めることにもつながります。

垂直統合M&Aとは

垂直統合M&Aとは、ビジネスの上流と下流の企業同士が行うM&Aのことをいいます。

例えば、製造・流通・販売を担っていたそれぞれの企業がM&Aにより統合することを垂直統合M&Aといいます。垂直統合M&Aを行うことでサプライチェーンを一貫化できるため手数料がかからなくなり全体的なコストカットにつながります。また、製造や流通企業は販売という限りなく顧客に近い企業と統合することで消費者ニーズやリスクを事前に回避することができます。一貫して製品を開発できるようになるのは垂直統合M&Aのメリットでしょう。

5. 水平統合M&Aと垂直統合M&Aの目的

それぞれのM&Aの違いについて解説をしましたが、それぞれの目的は何があるのでしょうか。水平統合M&Aと垂直統合M&Aの目的について解説します。

水平統合M&Aの目的

水平統合M&Aの目的は以下が挙げられます。

  • 市場規模を拡大する
  • 業界再編を目指す

水平統合M&Aでは、同じ業種・業態の企業が統合することになるため市場規模が拡大します。水平統合M&Aを行う多くの企業の目的が市場規模を拡大することであり、水平統合M&Aに求めているものです。また、買収先企業が既に開拓している販路へ参入することができるのも水平統合M&Aの目的の1つです。

さらに、水平統合M&Aの目的に業界再編を目指すことも挙げられます。M&Aにより企業規模が大きくなることにより一括仕入れが可能になったり物流の統一ができるようになります。重複機能の削減につながり全体的なコストカットにもつながるでしょう。

垂直統合M&Aの目的

垂直統合M&Aの目的は以下が挙げられます。
 

  • バリューチェーンの強化
  • 新市場への参入

それぞれの企業でバリューチェーンが弱い部分がありますが、それらをM&Aにより補うことができます。これにより製品やサービスの競合優位性を高めることができますし、より多くのシナジーを得ることができるでしょう。例えば、製品開発力に長けている企業とマーケティング力に長けている企業が垂直統合M&Aにより統合することでより強固な企業が完成します。

また、新市場への参入も垂直統合M&Aの目的の1つです。ビジネスの上流と下流の企業がそれぞれが抑えている市場への参入が可能になるためより市場を拡大することができますし、今まで開拓することができなかった市場への参入も可能になります。

6. 垂直立ち上げに必要な要素はM&Aで補おう

垂直立ち上げでは、製品ライフサイクルを見極めたりマネジメントシステムを導入したりして滞りなく進める必要があります。

しかし、現段階での企業力では垂直立ち上げができないと判断した場合はM&Aも検討視野に入れてみましょう。M&Aではノウハウやスキルだけでなく人材ごと買収することができるケースが多くあります。垂直立ち上げに必要な要素はM&Aで補うことも考えましょう。

7. まとめ

今回は、垂直立ち上げについて解説しました。

垂直立ち上げは一気に市場を掌握することができるメリットのある手法ではありますが、ハイリスク・コストである点を無視してはいけません。メリット・デメリットを抑えた上で垂直立ち上げ戦略を採用するかどうかを判断しましょう。

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