家事代行サービス業界のM&A動向!売却・買収事例5選と成功のポイントを解説!【2023年最新】

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

近年、家事代行サービスの利用者は増加傾向にあります。そのような中で今後の市場拡大の期待を受けて事業の高額売却に期待してM&Aを検討する経営者も多いようです。そこで今回は家事代行サービス業界のM&A動向や成功のポイントについて解説します。

目次

  1. 家事代行サービス業界の概要と動向
  2. 家事代行サービス業界のM&A動向
  3. 家事代行サービス会社をM&Aで売却するメリット
  4. 家事代行サービス会社のM&A・買収・売却事例5選
  5. 家事代行サービス業界のM&Aの成功のポイント
  6. 家事代行サービス業界のM&A・事業譲渡まとめ
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1. 家事代行サービス業界の概要と動向

まずは、家事代行サービス業界の概要および動向について解説します。

家事代行サービス業界とは

家事代行サービスとは、家庭における家事を代行するサービスです。ハウスキーパーや家政婦、お手伝いさんなどと呼ばれ、家事経験豊富なスタッフが、掃除や炊事洗濯などの家事全般を代行するサービスです。

共働き家庭や高齢者世帯の増加に伴い利用者も増加しています。売上高も年々増加しており、今後もニーズの高い業界として注目されています。

家事代行サービス業界の市場規模と動向

家事代行サービス業界の市場規模は、2011年度が811億円、2012年度が980億円で事業社数は600社にのぼります。2014年に経済産業省が公表した調査によると共働き世帯の増加や高齢者の増加に伴い市場規模は将来的には6000億円まで拡大するとされています。

また、2022年10月に日本経済新聞社がまとめた「サービス業調査」によると、2021年度の家事支援サービス主要10社の売上高は前年と比較して7.9%増加している状況です。家事の手間を減らして時間を有効に使いたいという需要が大きくなっています。

一方で、この業界では、労働力不足および人件費の高騰といった問題に直面しており、特に人材確保が大きな課題です。外国人の家事代行サービスが許可され、家事代行サービスの供給の増大が期待されています。企業の中には外国人を正社員として迎え入れ、研修を実施し人材育成に力を入れている企業も存在しているのです。

女性の社会進出に伴い家事代行サービスのニーズは増加傾向の一途を辿っており、各社は業務委託として就労してもらう登録者数を増やすなどして人材確保に努めており、研修にも力を入れています。

家事代行サービスの内容は掃除をはじめ、洗濯や買い物調理などの一般的な家事全般であり、利用者が希望に合わせて選択可能です。高齢者に向けたサービスの場合はこのような一般的な家事以外にも通院や外出時の付き添いといった幅広い需要にも応えています。

家事代行サービスのメニューの中でも特にニーズが高いサービスは、掃除でフローリングの水拭きや窓拭き、トイレ清掃、掃除機掛けなどの日常的な掃除の代行です。

家事代行サービスの中心価格帯は1時間単位で3,000円から6,000円で若干高額な面が否めなかったですが、現在では1,000円〜2,000円程度の料金も増えており、気軽に利用できる価格帯になっています。また、富裕者層に向けて単価を上げてその分専門のスタッフが細かい注文に対応するサービスにも人気が集まっています。

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2. 家事代行サービス業界のM&A動向

家事代行サービス業界は歴史が浅いため、現在業界自体が成長過程です。そのため、再編のための大きなM&Aは見られません。それでも、M&Aによる異業種からの参入も増えてきています。

現在のところ家事代行サービス業界のM&A市場は売り手市場です。他の業界と比較してもよい条件での交渉が可能です。

その一方で、異業種からの新規参入が増えるので、競争の激化や業界再編が考えられます。そのため譲渡を検討されている場合は、すぐに譲渡しなければならない状態になる前の早めの準備がおすすめです。早めに検討すれば、よりシナジー効果を発揮できる相手と話し合いを重ねることが可能です。

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3. 家事代行サービス会社をM&Aで売却するメリット

家事代行サービス会社をM&Aを活用し売却する際のメリットは以下の点が挙げられます。1つずつ詳しく解説いたします。

売却益の獲得

創業者利益や事業や株式の売却益を獲得し、リタイア後の生活資金や事業投資に資金を使えます。家事代行サービスの規模および売上によって譲渡価格の相場は異なります。純資産プラス利益の数年分の金額が企業の価値とされるので、獲得できる金額は大きなものとなるでしょう。

多額の金額になれば、早期のリタイアも可能で、老後の生活が悠々自適に送れます。また、得られた売却益はさまざまな用途に自由に使えるので、新規事業の立ち上げや事業への投資、老後資金などに使えます。

後継者問題の解決

M&Aを活用すれば、後継者問題を解決でき、社会的信用を維持したまま安心してリタイアできます。中小企業白書によると、経営者の高齢化や後継者問題が原因で、年間で4万を超える企業が休廃業や解散しているのも事実です。しかもそれらの企業の半数以上が黒字経営であるにも関わらず後継者問題により事業からの撤退を余儀なくされています。

軌道に乗っている企業を後継者不足で廃業することなく、存続させるために有効な手段がM&Aを用いた事業承継です。家事代行サービスへの需要が大きくなるなか、M&Aを用いれば業界に対する理解力が高い企業に支配権を譲渡し、外部の経営者や企業に事業承継してもらえます。

個人保証の解消

M&Aを活用して会社を売却すれば、個人保証や担保を外すことができます。中小規模の家事代行サービスでは、経営資金を融資で調達する際には、経営者が個人保証や個人の資産を担保にすることがほとんどです。万一家事代行サービスがうまくいかないと、経営者個人が自己資金から弁済していく必要があり大きな精神的負担になります。

しかし、M&Aで会社ごと売却すれば、債務も買い手に引き継がれるので個人保証から解放されます。ただし、連帯保証や担保は自動的に引き継がれるのではなく、事前に金融機関と個人保証の解除について交渉しておかなければなりません。

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4. 家事代行サービス会社のM&A・買収・売却事例5選

家事代行サービス会社のM&Aや買収・売却への理解を深めるには、過去のさまざまな事例を参考にするのが一番です。

ここからは、家事代行サービスの実際のM&Aおよび買取・売却の事例について紹介します。

ポラリス・キャピタル・グループがHITOWA ホールディングスの株式を取得した事例

2019年3月、ポラリス・キャピタル・グループ株式会社は、HITOWAホールディングス株式会社の発行済株式のすべてを取得し子会社化しました。

ポラリス・キャピタル・グループは投資ファンドで、英投資ファンドのCVCキャピタルパートナーズなどから株式を取得します。一方のHITOWAホールディングスは東京都港区で介護や保育、家事代行事業などを手掛けています。

ポラリス・キャピタル・グループは高齢化に伴って事業拡大が見込めると判断し、株式を取得しました。

参考:HITOWAホールディングスを子会社化

フルキャストホールディングスがミニメイド・サービスをM&Aした事例

2018年8月31日、フルキャストホールディングスは、ミニメイド・サービス株式会社の発行済株式のすべてを取得し子会社化しました。

ミニメイド・サービスは家事代行業を手掛けており、ワイワイズ・コーポレーションの100%子会社でした。今回の株式売却に先立ち、ミニメイド・サービスを存続会社としてワイワイズコーポレーションを吸収合併しました。一方のフルキャストホールディングスは、家事代行業の隣接領域である「軽作業の人材サービス領域」が得意分野でシナジー効果を見込んでおり、さらなる成長を図ります。

家事代行サービス業は共働き世帯の増加および働き方の多様化を背景にニーズが高まっています。

参考:ミニメイド・サービスを子会社化

ニチイ学館が西安海鑫家政清潔工程有限公司をM&Aした事例

2016年3月、株式会社ニチイ学館は海外子会社である日醫香港有限公司を通じて、西安海鑫家政清潔工程有限公司を増資引き受けなどにより持分51.0%を取得し子会社化しました。

西安海鑫家政清潔工程有限公司は、清掃や火星サービスを行いながら、傘下の職業訓練学校で、人材育成も行う、地域での高い信頼を得ている事業法人です。一方のニチイ学館は長らく続いた一人っ子政策の影響で将来介護のニーズが高まると考えられる中国へ、認知症ケア、リハビリケアなどの日本の介護モデルの輸出を行っています。今回の子会社化によって中国西北地域の中心都市の西安市に強固な事業基盤の確保を図ります。

ニチイ学館は、日本で培ったノウハウや強みを活かし、中国における介護サービスの展開および国際化社会に対応できるグローバル人材の養成支援など、世界に向けてサービスを発信します。また、海外の優れたサービスや知見を国内で反映し、更によいサービスに活かしていく狙いがあります。

今回の子会社化によりニチイ学館グループのサービス提供網は16都市19社です。

参考:西安海鑫家政清潔工程有限公司を子会社化

ベアーズとFi NCが業務提携した事例

2016年11月11日、株式会社ベアーズと株式会社FiNCが業務提携契約を締結しました。

ベアーズは、家事代行業界の大手で、家事代行サービス、ハウスクリーニング、キッズ&ベビーシッターサービス、高齢者支援サービスを全国の主要都市で展開しています。日本初となる独自の優秀な教育研修システムを開発して顧客満足度アップを目指しています。一方のFiNCは法人向けのウェルネス経営サービスを展開し、従業員とその家族の心身の健康をサポートしています。

今回の業務提携を受けて、FiNCが手がける「FiNC for Business」でベアーズが提供する家事代行サービスが利用可能となりました。

参考:株式会社ベアーズと株式会社FiNCが業務提携契約を締結
 

センコーがイエノナカカンパニーを子会社化した事例

2017年1月16日、センコー株式会社は、株式会社イエノナカカンパニーの増資を引き受け子会社化しました。

センコーは大阪市に本社を構える物流大手ですが、家事代行やハウスクリーニングなどの事業を都市部を中心に全国展開を目指しています。一方イエノナカカンパニーは、東京23区での家事代行やアパートの管理や不動産仲介などの事業を展開しています。

当面は東京や横浜、川崎などを中心に関東地区でサービスを提供し、順次関西地区などの都市部でも事業展開の予定です。

参考:イエノナカカンパニーを子会社化

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5. 家事代行サービス業界のM&Aの成功のポイント

ここからは、家事代行サービス業界におけるM&A成功のポイントを紹介します。このポイントを理解していただければ、M&Aを有利に進めるためのヒントが得られます。

他社との差別化

どのようなコンセプトでどのような顧客を獲得するのかなど、他社と比較した自社の強みを明確にしましょう。家事代行業は、参入へのハードルが低く個人で開業するケースが多く、競合が増えやすいのも事実です。

そのため、他社との差別化や集客に関する情報が非常に重要です。新規客と常連客、紹介してもらった顧客の情報が明確な数字としてまとめられていることで売上アップを期待できます。そのことによる収益がアップし、高額売却につながる可能性があります。

また、新規開業の買収側企業であっても、他社との差別化は非常に重要です。開業エリアによってニーズの高い業態も異なるので、エリアでのニーズと競合にデータを準備できると喜ばれるでしょう。

顧客情報の整理と集客方法の仕組み化

強化しましょう。家事代行業は実際に顧客のもとに訪問しての作業なので、開業エリアでの集客が軸となります。

近隣エリアにおける集客施策が、仕組み化されていれば資産になります。また、常連客などの顧客情報もまとめておきましょう。

備品等の確認と改善

家事代行業は、少額の初期費用で開業できるのが大きな特徴ですが、備品一式の準備は必要です。事業を売却する際に、事業に要する備品一式を引き継ぐ場合には、その備品の経過年数と状態が重要なポイントです。そのため、現在使用中の備品を新しいものと買い替える、あるいはきれいで清潔に保つように心がけるなど改善に取り組むようにしましょう。備品を買い替えずに引き継げれば買収側企業のかかる開業コストを抑えることができます。

これらの事業に必要な備品について、買収側企業が新たに購入することなく引き継ぐことができるかがポイントです。

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6. 家事代行サービス業界のM&A・事業譲渡まとめ

近年、共働き世帯の増加や少子高齢化の影響を受けて、家事代行サービスに対する需要が大きく伸びており、家事代行サービス業界の業績も上昇しています。それに伴い事業の拡大や業種の多様化を目的としたM&Aだけではなく、シナジー効果に期待した異業種とのM&Aも増えています。

今回の記事がM&Aを検討されている方のお役に立てば幸いです。

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