2024年02月03日更新
家具製造業界のM&A動向!売却・買収事例5選と成功のポイントを解説!【2024年最新】
家具製造業界は近年M&Aが活発な業界です。家具製造業界は異業種からの参入も多く、新規参入のためにM&Aを行うことも少なくありません。今回の記事では、家具製造業界のM&A動向や売却・買収事例、成功のポイントについて解説します。
目次
1. 家具製造業界の概要と動向
家具とは、室内で日頃から使用する道具のことで、具体的には椅子や机、シューズボックスソファー、ベッドなどが挙げられます。家庭で使われる家庭用家具のほかに、事業所などで使われるオフィス用家具があります。
ここからは、家具製造業界の概要や動向を見ていきます。
家具製造業界とは
家具製造業は、日常的に室内で使うベッドやソファー、棚などを製造している業界です。家庭用の家具はもちろん、事業所で使うデスクや椅子、キャビネットなどのオフィス用家具も含まれます。
家具製造業界は、企業ごとに基本概念が異なり、自社の対象となる顧客の需要に合わせて家具を開発・製造します。オーダーメイドの高級家具からリーズナブルな量産型家具を製造するメーカーまでさまざまです。
家具製造業界の市場規模と動向
一般社団法人日本家具産業振興会の調査によると、家具業界は1980年代から1990年代にかけてのピーク時には市場規模が2兆円を超えていましたが、2000年代に入ると1兆円台に戻り、近年では1兆円を切る年もありました。
高価格家具の代表な存在であった大塚家具の業績を見てみると、2007年に727億6,900万円の売上を記録して以降、売上減少が目立っており、2018年には373億8,800万円と半分にまで減少しています。
一方で、低価格家具を販売しているニトリ、無印良品で有名な良品計画、イケア・ジャパンなどは好調な業績を維持しています。
2. 家具製造業界のM&A動向
家具業界全体の動きとして、製造の分野にも踏み込み、自社のオリジナル製品の開発から製造、販売まで行うSPA型チェーン店が業績を伸ばしている傾向です。
このような現況を背景に、M&AによるSPA型チェーン店への進出、あるいは成長が見込まれる地域への海外進出を念頭に置いたクロスボーダーM&Aが活発化しています。
また、冒頭でも触れた通り家具製造業界では、異業種からの参入が増えています。代表的なところでは、2017年にヤマダ電機は家具業界への参入意向を表明し、2019年に大塚家具を子会社化しました。
他業種からの参入によって事業規模を拡大する場合、既存企業のM&Aは有効な手段となるので今後も継続的な需要が考えられます。
3. 家具製造会社をM&Aで売却・買収するメリット
M&Aを実行する際は、売却側と買収側では大きく立場が異なり、それぞれ得られるメリットも違います。交渉をスムーズに進めるためにも、相手のメリットを知ることは重要と言えます。
ここでは、M&Aに関するメリットを売却側、買収側双方の立場から解説します。
売却側のメリット
売却側としては、以下のようなさまざまなメリットが期待できます。ひとつずつ詳しく解説します。
売却利益の獲得
M&Aによる売却を行うと、多くのケースでは譲渡後に現金で売却利益を受け取れます。
上場していない株式は、中小企業の場合、買収側の経営者が株主であることが多い傾向です。そのため、買収側と売却側の経営者の話し合いで金額が決定します。その際、買収側が売却側企業の価値を高く評価するほど、譲渡後の売却利益が多くなる仕組みです。
一方、廃業や清算をする場合は、有形資産を処分する費用をはじめ、解雇する従業員に対する補償など、多くのコストがかかるので、M&Aと比較した場合株主への手取り額が大きく減少する可能性が高いのは否めません。
後継者不足の解消と従業員の雇用先の確保
日本国内で進んでいる少子高齢化の影響で、経営を引き継ぐ世代が少なくなっています。中小企業の廃業する際の理由で最も多いのが後継者問題で、家具製造業界でも後継者問題が深刻化しています。
既存の従業員や取引先のことを考えると、廃業はできない場合もあるでしょう。M&Aは、「親族」「役員」「従業員」の中に後継者がいない状況で、事業承継問題を解決するための有効な手段になります。
後継者の不足がこのまま続けば、いずれ廃業せざるを得なくなりますが、M&Aで買収先に会社を任せれば後継者問題は解決します。
経営の安定化や事業の拡大
家具業界において、M&Aの件数が多いのは、大手企業が中小企業を買収するケースです。買収される中小企業側としては、他業界の業者へ事業譲渡・売却するよりも、同業界の企業に事業譲渡した方が安心できます。
また、事業の継続性を考えた場合にも、中小企業にとって大きなメリットになる可能性が高く、大手企業にしても、製造や物流に関するノウハウを得ることができます。
自社よりも大きな規模の堅実な企業の傘下に入り、その企業の資本やインフラを活用できれば、スムーズな資金調達や生産体制の強化、販路拡大など買収先が持っている強みを活用しながら、市場での競争に勝ち残れます。
経営者の負担軽減
中小企業の場合、経営者あるいはその家族が、金融機関借入の連帯保証人になっていたり、個人資産を担保にしているケースがあります。
M&Aが成立し、経営権が買収側へ移ると、一般的にはその連帯保証や担保提供は解除されます。また、経営者は高齢になるにつれ、事業の承継や自身の体調面などを不安に感じ、大きなプレッシャーになっている場合があります。M&Aが成立すれば、そのような経営面の重責から解放され、第二の人生を歩むことが可能です。
買収先のメリット
ここまで売却側のメリットについて確認しましたが、ここからは買収先のメリットについて解説します。
人材・ノウハウや顧客の獲得
M&Aを実行すると買収側は、業界に精通した優秀な人材を確保可能です。新卒採用などで獲得した人材では、育成するのに多くの時間と資金が必要ですが、M&Aを実行すれば即戦力の人材を一挙に獲得できます。
各セクションの業務に関しても、買収側、売却側それぞれのノウハウを持ち寄れば、従来以上に効率的に業務運営できるでしょう。
また、自社で未進出のエリアの企業をM&Aすれば従来ビジネスチャンスがなかった顧客層へのアプローチも可能です。
他業界への進出
M&Aを行えば新規業界への進出が可能になります。ヤマダデンキによる大塚家具のM&Aがその一例です。
コロナ禍による家庭用家具の買い替えが進むと考える他業界の事業者は、M&Aを実行すれば、容易に家具業界へ進出可能です。また、業績低迷で苦しむ家具関係の事業者は、新たな収益源の確保を目的として他業界へ進出することも可能です。
4. 家具製造会社のM&A・買収・売却事例5選
家具製造会社のM&Aは、業界全体で活発に行われています。
ここでは、実際に実行された家具製造業界のM&A・買収・売却事例を5例紹介します。
コクヨがオリジンとエステイツクをM&Aした事例
2023年1月26日、コクヨ株式会社はオリジン株式会社と株式会社エステイツク両社の全株式を取得し子会社化しました。
コクヨは、オフィス家具や文房具の製造・仕入れ・販売を行っています。オリジンは、家具の製造から販売までを行う家具メーカーで、ソファーやダイニングを中心に製造しています。また、エステイツクは、家具の販売を行っており、多様な流通経路を通じてカバーリングソファなどの製品を製造販売しています。
このM&Aによりコクヨは、働き方改革および働く場所の多様化によるオフィスリニューアル需要の獲得につなげる狙いがあります。
参考:オリジンとエステイツクを子会社化
オカムラとTelexistenceがM&Aした事例
2021年6月、株式会社オカムラとTelexistence株式会社は、半自立型遠隔操作ロボットを用いた量販店の陳列関連業務用の什器・備品の共同研究および開発を目的とした、資本業務提携契約の締結を発表しました。
オカムラは、スチール家具全般の製造から販売、産業機械などの製造から販売、金属製建具取付工事の請負をはじめ、幅広い事業を展開しています。一方のTelexistenceは、遠隔操作と人工知能を搭載したロボットの開発、およびそれらを活用したビジネスを展開するロボット工学企業です。
今回の提携により、オカムラは人とロボットが協調して働ける理想的な店舗づくりや作業効率の工場を目指します。また、Telexistenceは人とロボットが協調して働ける理想的な店舗づくりや、遠隔操作ロボットに関わる知見を提供します。
参考:Telexistenceと資本業務提携
オカムラがオカムラ物流とシーダーをM&Aした事例
2020年7月1日、株式会社オカムラは当社の完全子会社である株式会社オカムラ物流およびシーダー株式会社の2社を吸収合併しました。
オカムラは前項で既出の通り、スチール家具全般の製造から販売、産業機械などの製造から販売、金属製建具取付工事の請負をはじめ、幅広い事業を展開しています。
オカムラ物流は、当社グループの製品を中心とした輸送・保管・流通加工を手がけています。また、シーダーは搬送装置の専業メーカーです。
今回の合併をうけて、生産・販売・物流が一体となったロジスティクス全体の最適化およびシーダーの技術力を生かした総合力の強化を目指します。
参考:オカムラ物流とシーダーを吸収合併
ヤマダデンキが大塚家具をM&Aした事例
2022年5月1日、株式会社ヤマダホールディングスは、連結子会社の株式会社ヤマダデンキが株式会社大塚家具を吸収合併しました。ヤマダデンキを存続会社、大塚家具を消滅会社とする吸収合併方式で実施しました。
ヤマダホールディングスは、家電をはじめ住建・環境・金融・その他の5つの事業区分で事業を行っています。
ヤマダデンキは、家電や情報家電などの販売や住まいに付随する商品販売を行っています。大塚家具は、高価格帯を主軸としたインテリアのコンサルティングサービスを行っています。2021年9月に株式交換により、ヤマダホールディングスの完全子会社になっています。
今回の合併によりヤマダホールディングスは、大塚家具が保有するノウハウと経営資源を集約し、両社が一体となっての営業の強化や顧客利便性の向上などの効率性を高めます。
参考:大塚家具を吸収合併
ニトリホールディングスが島忠をM&Aした事例
2021年1月6日、株式会社ニトリホールディングスは株式会社島忠の全株式を取得し、子会社化しました。
ニトリホールディングスは、主に家具・インテリアの小売業株式会社ニトリを傘下に持つニトリグループの持株会社です。一方の島忠は家具・インテリア雑貨の小売業やホームセンターを展開しています。
今回経営統合を通じてニトリホールディングスは、事業拡大および首都圏へのさらなる進出を図ります。
参考:島忠を子会社化
5. 家具製造会社をM&Aで売却する成功のポイント
ここでは、M&Aを成功させるためには何が大切なのか、成功のポイントを解説します。
情報漏えいに注意する
M&Aを行う上では、情報漏えいに注意が必要です。M&Aを検討している事実だけでも関係者に漏れると混乱を引き起こします。
中小企業の従業員にとって経営者の交代は非常に大きな出来事です。従業員の中には経営者の考え方や経営方針などに魅力を感じている人もいるでしょう。そのため、M&Aを実行するタイミングで退職する従業員が出てくる可能性も否定できません。
また、M&Aを行うかもしれないという情報が取引先に漏れると、取引量の減少や契約終了も起こり得る話です。検討段階において情報が漏れることのないよう、細心の注意を払いましょう。
専門家の活用
自社を売却する際は、現状をよく把握し、シナジー効果が生まれそうな買収先候補にコンタクトをとります。そのためには、買収先候補の企業とつながりが必要です。また交渉を行い、契約書を締結するまでには、法律の知識も必要となります。
M&Aを順調に進めるためには、専門的な知識や経験を持っている専門家に相談するのもひとつの方法です。M&Aは非常にデリケートな問題なので、専門知識や経験が豊富な専門家に任せるとトラブルなく進行できるでしょう。
M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください
M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。
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シナジー効果が期待できる買収先へ売却する
シナジー効果を発揮できれば、買収側は大きな利益を得られるでしょう。利益を期待できるということは、M&Aが成立しやすく、高額で売却できる可能性が高くなります。
自社を買収すればシナジー効果を期待できるのを買収側にアピールするには、自社の強み・弱みを明確にする必要があります。その上で強みを生かせる買収先候補をリストアップし優先順位をつけます。
自社の価値が正しく十分に伝われば、高額での売却も可能でしょう。
6. 家具製造業界のM&A・事業譲渡まとめ
家具製造業界は他業種からの進出が活発です。同様に家具製造業界から他業種への進出も見られます。このような新規参入を効率的に行うために、M&Aが実行されています。
M&Aでの売却側のメリットは、買収先に価値を認めてもらえれば、大きな売却利益が得られ、買収先企業とのシナジー効果を発揮することで、事業が更なる発展を望める点です。
今後も、経営安定化をはじめ、事業承継などの目的で積極的にM&Aの活用が広まるでしょう。
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