2024年12月09日公開
空運業界のM&A動向!売却・買収事例5選とメリットを解説!【2024年最新】
空運業界は、コロナ禍の旅行客激減や燃料代の高騰などの影響を受けて、M&Aでの業界再編の動きがみられるようになりました。この記事では、空運業界で活発化しているM&Aによる会社の売却、買収についてメリットや事例を紹介します。
1. 空運業界の概要と動向
近年、業種を問わずM&Aでの会社の売却や買収が活発化していますが、空運業界は以前から幾度となくM&Aによる業界再編が繰り返されてきました。
2020年の新型コロナのパンデミックによる旅客の大幅減少や、経済の停滞による物流の混乱などの影響で、ここ最近も空運業界でM&Aを検討する会社が増加傾向にあるようです。
この記事では、空運業界の近年の動向とM&Aについて詳しくみていきましょう。
空運業界とは
空運とは、航空輸送のことをまとめていいます。飛行機やヘリコプターといった航空機を使って旅客、貨物、郵便物を輸送する業務を空運と呼びます。
飛行機やヘリコプターを使う業務には、輸送の他に自衛隊や軍隊で使う軍用航空と、航空測量、航空写真の撮影、薬剤散布などを空中から行う産業航空がありますが、これらは空運ではありません。
空運とは、他の人からの依頼に応じて、人や荷物を航空機で運ぶ事業のことです。
空運業界の市場規模と動向
業界動向サーチの分析によると、空運業界の市場規模は2022年は約1.8兆円でした。2020年から2021年は新型コロナの影響で大きな落ち込みがみられましたが、経済の回復とともに、市場規模ももとに戻りつつあります。
空運業界での総取扱量は、令和4(2022)年の国内航空旅客輸送は前年から約4,000万人増の9,066万人、国際航空旅客数は前年の約10倍の3,047万人、国内航空貨物輸送は前年から約10万トン増の109.9万トン、国際貨物輸送は前年から約50万トン減の349.1万トンでした。
貨物は、新型コロナの影響で2020年から2021年まで海運が減少したことで国際貨物輸送が増加していました。しかし、2022年には海運が正常化したことで、空運の取扱量が減少しています。
参考:業界動向サーチ「航空業界の動向や現状、ランキング等を解説」国土交通省「国内航空旅客輸送の動向 国際航空旅客輸送の動向」「我が国の国内航空貨物輸送の動向 我が国の国際航空貨物輸送の動向」
空運業界のM&A動向
日本では空運業界は戦後からM&Aを実施してきました。全日本空輸株式会社(ANA)は1958年に極東航空株式会社と合併しています。その後も、中小空運会社の合併や事業承継を繰り返して現在に至ります。
日本航空株式会社(JAL)も、2004年に当時の日本で3位の規模を誇っていた株式会社日本エアシステムと合併しました。日本エアシステムも1964年に航空会社3社が合併して設立された会社です。
世界に目を向けると、2004年にエールフランスとKLMオランダ航空が経営統合をして、2008年にデルタ航空とノースウェスト航空が、2010年にユナイテッド航空とコンチネンタル航空がアメリカでそれぞれ経営統合しています。
さらにアジアでも、2020年に大韓航空がアシアナ航空をM&Aで買収しました。
空運会社にとっては、M&Aによる経営統合、合併で事業規模を拡大することには大きなメリットがあります。今後も、円安や部品などの調達コストの増大の影響や航路拡大を目的としたM&Aが頻繁に実施されていくでしょう。
2. 空運会社をM&Aで売却するメリット
空運会社をM&Aで売却するとどのようなメリットを得られるのでしょうか。M&Aによる会社売却の4つのメリットについて解説します。
後継者問題の解決
空運会社をM&Aで売却するメリットのひとつは、後継者問題を解決できるという点です。
空運業界に限らず、現在日本の多くの会社で経営を引き継ぐ人がいなくて、将来的に廃業せざるを得ないかもしれない、という状況に陥っています。
しかし、M&Aで会社を売却することができれば、社内や親族に後継者がいなくても、他社に事業承継することで、会社や事業を存続させることができます。
近年、M&Aは後継者問題を解決する手段として注目されているのです。
売却益の獲得
空運会社をM&Aで売却するメリットのひとつは、売却益を獲得できるという点です。M&Aのスキームが株式譲渡であれば売却益は株主のものに、事業譲渡であれば会社のものになります。
売却金額から税金とM&Aの手数料を支払った残りは、株主や会社が自由に使うことが可能です。
上場していない中小企業であれば、経営者が株式を全て持っていることが多いので、売却益を引退後の生活費などに充てる事もできます。
もしも廃業することになると、解雇する従業員への退職金や、会社で所有している航空機や整備機器の処分費用など、多額の出費が必要です。しかし、M&Aで売却できれば、これらの出費は全く必要なく、プラスの収支になります。
個人保証・債務の解消
空運会社をM&Aで売却するメリットのひとつは、経営者が個人保証や債務から解放されるという点です。
中小企業の多くが、金融機関からの借り入れに対して、経営者が連帯保証人になり、自宅などを担保にしています。
経営不振や後継者問題で廃業した場合、廃業後も債務が残ってしまったら、経営者が自宅を失ったり、返済を続けなければいけないこともよくあります。
しかし、M&Aでは、売却側の経営者の個人保証を外して債務も買収側が引き継ぐことが多く、経営者は個人保証から解放されるのです。
M&Aで会社を売却できれば、売却側の経営者が負う債務はなくなり、売却益が得られるので、廃業よりも大きなメリットがあるといえるでしょう。
運送ルートの継続
空運会社をM&Aで売却するメリットのひとつは、運送ルートが継続できるという点です。
小規模な空運会社では、特定の離島などへの人やモノの搬送を担っている会社もあります。もしも、特手の運送ルートを担う会社が、経営不振や後継者不足で廃業してしまうと、その地域の住民の生活や産業に大きな影響が出てしまうでしょう。
現在の経営者の後継者が身内に居なくても、M&Aで会社を売却することができれば、運送ルートの継続が可能になり、地域への影響を抑えることができます。
3. 空運会社のM&A・買収・売却事例5選
空運業界で行われたM&Aの事例を紹介します。
(株)ミライト・ワンが国際航業(株)を子会社化した事例
2023年11月10日に、株式会社ミライト・ワンが、国際航業株式会社の全株式を取得して子会社化するM&Aを決議したことを発表しました。
ミライト・ワン社は、「みらいドメイン」を成長領域として環境にやさしく強い街づくりや、脱炭素化時代に貢献するエネルギー事業の拡大など、複数のエンジニア分野を組み合わせて、企画から運用まで一貫して提供できる事業展開を目指しています。
国際航業社は、空間情報を専門的に扱う会社です。宇宙から地上、水中、地中までの空間情報を取得して、その情報を生かした建設コンサルティングや地理情報システムの提供などを行っています。
ミライト・ワン社としては、国際航業社が持つ空間情報のデータ基盤やデータ解析エンジニアというリソースと一体化して、エンジニアリング分野におけるコンサルティングや、設計、施工、運用でより付加価値の高い事業を生み出していきたいとのことです。
参考:国際航業株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
ANAホールディングス(株)が日本貨物航空(株)を子会社化した事例
2023年3月7日に、ANAホールディングス株式会社から、日本郵船株式会社が保有する日本貨物航空株式会社の全株式を取得して、子会社化するためのM&Aの基本合意書を締結したことが発表されました。
ANAホールディングスは全日本空輸(ANA)を中心とする企業グループの持株会社です。日本貨物航空株式会社は、日本郵船グループの空輸部門を担当しています。日本で唯一の国際航空貨物専門航空会社です。
ANAホールディングスでは、貨客事業の他に貨物事業も行っており、特に全国に張り巡らせた航空ネットワークとのシナジー効果が期待できます。このM&Aにより、お互いの強みを補い合い、より高い収益性が将来的に望めるとのことです。
参考:日本貨物航空株式会社の株式取得に向けた基本合意書締結のお知らせ
(株)FPGが北日本航空(株)を子会社化した事例
2019年11月25日に、株式会社FPGから、北日本航空株式会社の全株式を取得して完全子会社化するM&Aを実施したことが発表されました。
FPG社は、2001年に創立した独立系金融サービス会社で、「持続性のあるQuality Growth戦略による企業価値の向上を目指すこと」を掲げて、事業の多角化に取り組んでいます。
北日本航空社は、沖縄で離島でのドクター搬送を行うチャーターフライト事業や、花巻本社で東日本大震災時の被災状況の空撮を行うなど、社会貢献のできる航空事業を展開している航空会社です。
FPG社としては、北日本航空社が持つ希少な航空ライセンスや航空ノウハウを活用しながら、今後、チャーターフライトや遊覧フライトなどの事業展開で、より収益性を高められるとしています。
参考:北日本航空株式会社の株式取得(完全子会社化)の完了及び新規事業参入に関するお知らせ
鴻池運輸(株)がBEL INTERNATIONAL LOGISTICS LTD.を子会社化した事例
平成30(2018)年8月10日に、鴻池運輸株式会社から、BEL INTERNATIONAL LOGISTICS LTD.の全株式を取得して完全子会社化するM&Aを決議したことが発表されました。
鴻池運輸は、1880年に大阪で創業した、物流や業務請負などを行っている会社です。BEL INTERNATIONAL LOGISTICS LTD.は香港の国際航空貨物フォワーディング事業会社です。
鴻池運輸では、成長戦略としてグローバル展開を図っており、中国、アジア、欧米を中心に国際航空輸送事業の強化を図っており、特に、海外の日系企業との取引を多く行っています。
このM&Aにより、特に香港、中国の非日系企業との取引を拡大して、同地での総合物流サービスの拡充に努めたいとしています。
SBSホールディングス(株)がTranspole Logistics Pvt. Ltd.を子会社化した事例
平成26(2014)年7月7日に、SBSホールディングス株式会社から、M&Aの実施が発表されました。
同社の100%子会社でアジア地域統括会社であるシンガポールのSBS Logistics Holdings Singapore Pte. Ltd.が、Transpole Logistics Pvt. Ltd.の発行済株式の66%を取得して、子会社化するM&Aの株式譲渡契約を締結したとのことです。
SBSホールディングスは、EC物流、輸配送、流通加工、国際物流など、幅広い物流ニーズに応える総合物流会社です。Transpole Logistics Pvt. Ltd.は、インドを拠点とする航空、海上フォワーダーとして2004年に設立されました。
SBSホールディングスとしては、Transpole Logistics Pvt. Ltd.がアジアで展開しているフォワーダー事業と、SBSホールディングスが持つ物流事業のノウハウを組み合わせることで、アジア各国における海外物流事業の基盤づくりができるとしています。
参考:当社子会社によるインドの国際物流会社 「Transpole Logistics Pvt. Ltd.」の株式取得に関するお知らせ
4. 空運会社のM&Aにおける成功のポイント
空運会社に限らず、日本ではM&Aで会社を売却したいと思っても、成功率は4割程度と言われています。会社売却を希望しても、約6割の会社は買い手が見つからずに、廃業することになっているのが現実です。
空運会社のM&Aを成功させるためには、いくつか注意しなければいけないポイントがあります。M&A成功のための4つのポイントについて解説します。
M&Aの専門家に相談をする
空運会社をM&Aで売却した方がいいのか考え始めたら、まずはM&Aの専門家に相談しましょう。経営について相談するのは金融機関が多いのですが、残念ながら日本の金融機関は中小企業のM&Aは扱っていません。
その代わり、中小企業のM&Aを専門的に扱う専門家がいます。専門家であれば、M&Aの豊富な経験と知識に基づいて、M&Aが妥当なのかの判断や、最適な売却先探しや、法律や財務の知識が必要な手続きのサポートをしてくれるでしょう。
M&Aは専門的な知識がない人が自分だけで進めても失敗する可能性があります。まずは専門家への相談から始めてください。
M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください
M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。
M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ)随時、無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
情報漏洩に気をつける
M&Aが成功するかどうかは、最終契約書を締結するまでに情報が漏洩しないかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。M&Aの情報漏洩で気をつけるべき点は2つあります。
一つは、買収側に開示する売却側の財務や人事、ノウハウなどの機密資料が流出することです。機密情報の流出は秘密保持契約の締結で防止しましょう。
もう一つは、会社売却の噂が流れてしまうことです。M&Aの専門家や売却先とのちょっとした会話を社員に聞かれてしまい、会社売却の憶測が流れて不安が広がり、従業員の離職を招くことがあります。
M&Aの情報は開示できるタイミングが来るまで、絶対に漏れないように気をつけましょう。
目的や戦略の具体化
M&Aにはスキーム(手法)がいくつもあり、目的によって選択するべきスキームが異なります。目的に沿わないスキームを選んでしまうと、経営統合がうまくいかなかったり、本来は支払う必要がない税金を納めることになってしまったりするので、注意が必要です。
目的の明確化が難しいようなら、売却先探しを始める前に、M&Aの専門家の力を借りて整理して、その目的を達成するための最適なスキームについて理解を深めておきましょう。
シナジー効果が見込まれる相手先の選定
M&Aは、クロージング(経営権の引き渡し)後の統合が最も難しいといわれています。結婚にも例えられることが多いM&Aでは、統合したことでそれぞれの会社の業績が伸びて、売却側からやってきた従業員もM&Aの結果に満足できるような状態になることが理想です。
そのためには、売却側と買収側の事業にシナジー効果が得られる相手を見つけることが最も大切になります。とにかく会社を買ってくれる相手ではなく、お互いが相乗効果で成長し続けられるような相手を選ぶようにしましょう。
5. 空運業界のM&A・事業譲渡まとめ
小規模な空運会社では、後継者問題が深刻化している会社もあるようです。しかし、他の業界であれば、その会社が廃業しても代わりになる会社はあるかもしれませんが、空運会社は代わりになる会社を見つけることは難しいでしょう。
空運会社も廃業するよりもM&Aで売却した方が、経営者にも従業員にも、その航路の利用者にも、大きなメリットがあります。会社の将来が不安であるなら、まずはM&Aの専門家に、会社売却の可能性について相談してみることがおすすめです。
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