警備会社のM&A動向と買収・売却の成功事例を解説【2024年最新】

企業情報第六本部長 兼 企業情報第六本部第一部 部長
小林 雄太

青山学院大学卒業後、The Prudential Gibraltar Financial Life Insurance Co.Ltd.にて会社業績の経営層向けのレポーティングや業績分析など経営層に近い位置での業務に従事。その後、Accenture Japan Ltdにて大手金融機関の大規模PJTに参画し、組織運営課題における提言や全体スケジュールの策定などを行う。
日本の中小企業の事業承継問題を強く感じ、中小企業の発展・存続に貢献するため、M&A業界に転身。
M&A総合研究所ではIT業界を中心に幅広い業種を担当。

他業種と同様、警備会社でもM&Aによる買収・売却・事業承継が盛んに行われている状況です。この記事では、警備会社業界の現状、M&A・買収・売却・事業譲渡の動向やメリット・成功のポイントとともに、警備会社の売買や事業承継の事例などを紹介します。

目次

  1. 警備会社とは
  2. 警備会社のM&A・事業承継の動向
  3. 警備会社同士のM&A・事業承継事例
  4. 異業種企業が警備会社を買収した事例
  5. 警備会社が異業種企業を買収した事例
  6. 警備会社のM&A・買収・売却・事業譲渡のメリット
  7. 警備会社のM&A・買収・売却・事業譲渡を成功させるポイント
  8. 警備会社のM&A・売却・買収・譲渡の案件例
  9. 警備会社M&Aの動向と今後の展望
  10. 警備会社のM&A・買収・売却・事業譲渡まとめ
  11. 警備業界の成約事例一覧
  12. 警備業界のM&A案件一覧
  • セミナー情報
  • 経験豊富なM&AアドバイザーがM&Aをフルサポート まずは無料相談
  • 警備会社のM&A・事業承継

1. 警備会社とは

警備業は法律上、生命や身体、財産への侵害を警戒・防止する業務を、他人の需要に応じて行うものと定義され、警備業に分類されるのは以下の4種類です。

  • 第1号業務…施設警備
  • 第2号業務…雑踏・交通誘導警備
  • 第3豪業務…運搬警備
  • 第4号業務…身辺警護

また、それぞれの業務の警備業者の割合は下記表をご確認ください。
各業務を1つずつ解説します。

警視庁「令和3年における警備業の概況」

出典:https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/r3keibigyougaikyou.pdf

第1号業務の内容

第1号業務と分類されるのは「施設警備」で、警備対象となる施設(百貨店・企業・病院など)での犯罪や事故を防ぐことが主な業務内容です。さらに、第1号業務は以下の種類に分類されており、業務の範囲や内容が異なります。
 

種類 業務内容
施設警備業務
  • 警備員が契約先施設に常駐して業務を行う
  • 主な業務…巡回、出入管理、開閉館管理、防災センター業務など
巡回警備業務
  • 警備員は常駐せず契約先施設を定期あるいは不定期に巡回する
  • 複数の契約先施設を車両などで移動し巡回にあたるケースが多い
保安警備業務
  • 家電量販店やスーパーなど商業施設の店内巡回やモニターによる監視
  • 店内での万引きや置き引きなどを防止することが主な役割
  • 私服警備員が店内巡回するケースも多い
空港保安警備業務
  • ハイジャックなどを防止するため飛行機内への持込制限品の有無を確認する
  • 金属探知機やX線透視検査装置を使用するため専門的知識と技能が必要
機械警備業務
  • 警備対象施設にカメラなどを設置して監視センターで侵入者や火災などを監視
  • 異常があった場合は警備員が急行して対応する

第2号業務の内容

第2号業務と分類されるのは「雑踏・交通誘導警備」で、道路の工事箇所や駐車場などで交通誘導を行い事故を防止することが主な業務内容です。さらに、第2号業務は以下の種類に分類されています。
 

種類 業務内容
雑踏警備業務
  • 祭りやライブ会場などで交通誘導や雑踏整理を行い事故やトラブルを防ぐ
  • 部隊を編成して警備業務にあたる
交通誘導警備業務
  • 道路工事箇所や施設の駐車場などで通行人や車両の誘導を行う
  • 通行人や車両による事故やトラブルを防止することが主な業務

第3号業務の内容

第3号業務と分類されるのは「運搬警備」で、現金や貴金属、美術品、核燃料物質などの輸送中の盗難や紛失を防止することが主な業務内容です。

第4号業務の内容

第4号業務と分類されるのは「身辺警備」で、契約者の安全を守ることが業務です。「ボディガード」と呼ばれることも多く、対象は政財界の要人や著名人だけでなく、一般市民である場合もあります。

警備業界の主要企業

業界紙「警備保障タイムズ」が行った調査による2022年の売上高ランキング上位企業は以下のとおりです。

  • セコム…3951億8100万円
  • 綜合警備保障(ALSOK)…2564億4900万円
  • セントラル警備保障…557億1800万円
  • アサヒセキュリティ…471億8408万円

首位のセコムと第2位の綜合警備保障とで警備会社業界のシェアを占めていることがわかります。

参考:警備保障タイムズ「本紙独自調査 2022年警備業売上高ランキング」

警備会社の現状

警備会社の現状としては以下の特徴が挙げられます。

市場規模

警察庁生活安全局生活安全企画課「令和5年における警備業の概況」

出典:https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/r5keibigyougaikyou.pdf

警察庁生活安全局生活安全企画課「令和5年における警備業の概況」のデータによると、警備業界の年間売上高は、近年は縮小傾向であることがわかります。しかし、警備業界は3.3兆円を超える巨大な市場となっています。

警備業者数・警備員数は横ばい

警察庁生活安全局生活安全企画課「令和5年における警備業の概況」

出典:https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/r5keibigyougaikyou.pdf

警察庁生活安全局生活安全企画課「令和5年における警備業の概況」

出典:https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/r5keibigyougaikyou.pdf

1990年代以降は人々のセキュリティ意識が高まり、警備会社業界の市場規模が急速に拡大しました。その後、以降はほぼ横ばいで推移しています。

昨今は、最近の治安情勢の深刻化の中、警備業に対する需要は拡大し、警備業者数や警備員数が微増傾向です。警備業は「国民の自主防犯活動を補完または代行するサービス」として位置づけられ定着してきているのがわかります。

ニーズの高まり

警備業界は、防犯意識の高まりを受けて多くの需要を得ています。オフィスビルや重要施設の出入管理、巡回、開閉館管理、鍵の管理、そのほか建物内部のモニタリング、一般家庭向けのホームセキュリティ、防災センター業務などが主な業務です。

インフラの整備に伴い、現金・貴重品運搬警備などもニーズが拡大しています。センサーの探知によって警備員が駆け付ける機械警備やコンビニエンスストアのATM導入による現金運搬業務などが当てはまります。このように、警備業界の業務は近年ますます拡大していくでしょう。

警備業界の課題・展望

人手不足は企業によって解決の難しい問題です。警備業界も、慢性的な人手不足に陥っているのが現状です。

警備員の数が不足している背景は、長時間労働の常態化や給与の低さ、処遇などのさまざまな課題があり、採用に苦戦しています。特に若手不足に課題のひとつです。人材不足を解消するには、「業務量の平準化などによる長時間労働の是正」や「給与・処遇の向上」などの施策が経営者に求められるでしょう。

テクノロジーの導入や警備員の働き方見直しなどにより、人材不足の問題は解消しやすくなります。

【関連】新型コロナによりM&Aマーケットはどうなる?業界別に動向を解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

2. 警備会社のM&A・事業承継の動向

警備会社業界はM&Aが活発に行われている業界です。警備会社のM&A・買収・売却・事業譲渡を検討している場合は、業界全体のM&A・会社売買の動向にも注目する必要があります。警備会社業界におけるM&A・買収・売却・事業譲渡の特徴は以下のとおりです。

①規模拡大を目指したM&Aが増加

最近は、警備会社の規模拡大を目的としたM&A・会社売買が増加しています。警備会社業界の売上高シェア第2位を誇る綜合警備保障は、積極的なM&Aによる企業買収を実施して、市場規模の拡大を図っている状況です。

また、2014年にALSOK双栄と日本ビル・メンテナンスを子会社化し、2015年はアズビル安心ケアサポートを子会社化、2017年には日立セキュリティーサービスをM&Aによって買収しました。

警備会社業界最大手のセコムも、M&Aによって市場シェア拡大を進めています。2012年には、防災品メーカーであるニッタンをM&Aによって子会社化し、防災事業を展開するなど、大手警備会社によるM&A・会社売買は活発化しています。

②異業種からの新規参入が増加

異業種の企業・会社が、M&A・会社売買によって警備会社市場に新規参入するケースが増えてきています。例えば、売上金回収サービスと機械警備サービスを提供する警備会社アサヒセキュリティは、ダイエーの店舗売上金を運搬するダイエー子会社でした。

しかし、M&Aをきっかけに、現在は警備会社業界で事業を展開しています。こうした異業種からの参入は、市場の激化をさらに加速させている要因といえるでしょう。

③異業種への参入も増加

M&A・会社売買によって、異業種から警備会社業界への参入が増えている一方で、M&A・会社売買を経て、異業種へ新規参入する警備会社が増えています。代表的な例として、警備会社業界売上高シェアトップのセコムが挙げられます。

セコムの2017年3月期における売上高のうち、およそ4割は保険業務・情報通信業務・不動産業務などで、警備業務以外における業種の売上が占めています。

東京電力やインテックなどの出資で設立されたアット東京をM&A・会社売買によって買収し、売却企業側のアット東京は、M&A後、国内最大規模のデータセンター事業会社となりました。

④事業承継を目的とした売却・事業譲渡の増加

中堅・中小規模の警備会社では経営者の高齢化が進んでいることが多く、人材不足も影響して事業承継ができなければ廃業を余儀なくされる場合も出てくるでしょう。

そこで、大手警備会社や異業種企業への会社売却・事業譲渡による事業承継問題の解決が行われています。

【関連】事業承継の手続きを解説!事業承継の方法と相談先も紹介

3. 警備会社同士のM&A・事業承継事例

買収側の企業・売却側の企業ともに警備会社のM&A・買収・売却・事業承継事例として、以下の事例を紹介します。
資本業務提携は会社や事業の経営権は移動しませんが、当事者間で資本移動が伴うため広義のM&Aとして取り上げています。

東洋テックによる五大テックの完全子会社化

2022年4月、東洋テックが五大テックの全株式を取得して完全子会社化した事例です。

東洋テックは、機械警備や輸送警備などの警備業、ビル総合管理業を主軸とする企業です。セキュリティサービスからビルメンテナンス業務、防災対策までビルの総合管理サービスをグループで一貫提供しています。

五大テックは、施設警備や機械警備などセキュリティ事業のほか、情報処理システムのコンサルティングや不動産事業、環境事業などを手掛ける企業です。

東洋テックは五大テックを傘下とすることで、施設警備業務のノウハウやリソースを相互活用でき、中核事業である警備事業・ビル管理事業との一体運営が可能になりシナジー発揮に期待できると判断し、本M&Aに至りました。

参考:東洋テック株式会社「五大テック株式会社の株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ 」
 

綜合警備保障による子会社ALSOKリースの吸収合併

2021年6月、総合警備サービスがALSOKリースを吸収合併した事例です。

警備とセキュリティサービスを手掛ける綜合警備保障は機械警備を主力としており、特に金融機関の警備に強みを持つ企業です。法人向けサービスだけでなく個人向けサービスも充実しており、個人向けホームセキュリティやみまもりサービスなど多様なサービスを展開しています。

ALSOKリースは綜合警備保障の完全子会社であり、警備機器や防災設備のリース業を手掛けています。

綜合警備保障はグループ体制の効率化を図るため、ALSOKリース吸収合併に至りました。

参考:綜合警備保障株式会社「完全子会社の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ 」
 

セントラル警備保障によるワールド警備保障の買収

2021年6月、セントラル警備保障はワールド警備保障の持株比率を増やし、連結化の検討を進めると発表しました。

セントラル警備保障は、常駐警備や機械警備、輸送警備の事業を行っている企業です。ワールド警備保障は、宮城県仙台市に拠点を置く警備会社です。セントラル警備保障は中期経営計画で「地方部門の見直し」を掲げており、東北地区の収益拡大が目標のひとつです。

今回の株式追加取得もその一環であり、セントラル警備保障・連結子会社のエスシーエスピー・ワールド警備保障の3社体制を敷き、収益最大化を目指すとしています。

参考:セントラル警備保障株式会社「 CSP 東北地区の再編に関するお知らせ」

セコムによる海外のセキュリティ会社2社の買収

2020年10月、セコムがマレーシアとシンガポールの警備企業2社を完全子会社化した事例です。

セコムは警備業を中核とし、自社開発の防犯・防災用品販売、情報セキュリティ分野のコンサルティングおよび各種サービスなど、さまざまな事業を展開する企業です。

子会社となるのは、ADTマレーシアとADTシンガポールの2社であり、どちらもアイルランドのジョンソンコントロールズインターナショナルPLCのグループ企業です。セキュリティ事業を展開しており、一般家庭や中小規模法人を中心に最先端システムを提供しています。

セコムは国内のみならず海外13の国と地域においてセキュリティ事業を展開しており、今回の子会社化によってアジアで増加しつつある富裕層へのアプローチが可能になるとしています。また、セコムグループ各社とのシナジ-発揮にも期待でき、海外での業容拡大を加速できるものと判断し本M&Aに至りました。

参考:セコム株式会社「 アジア地域のセキュリティ事業を強化 マレーシア、シンガポールのセキュリティ会社 2 社がグループ入り」

東洋テックによる明成の買収

2020年10月、東洋テックが明成の全株式を取得し、完全子会社化した事例です。

東洋テックは、機械警備や輸送警備などの警備業、ビル総合管理業を主軸とする企業です。セキュリティサービスからビルメンテナンス業務、防災対策までビルの総合管理サービスをグループで一貫提供しています。明成は、電気工事や施設警備、メンテナンスなどの事業を手掛ける奈良県の企業です。

東洋テックは、名声のもつ電気工事事業のノウハウ・リソースを得ることで、自社の警備業やビル管理事業との一体運営が可能となり、グループ内シナジー効果の発揮も見込めるとし、本M&Aに至りました。

参考:東洋テック株式会社「株式会社明成の株式取得(連結子会社化)に関するお知らせ」

セコムと共栄セキュリティーサービスの資本業務提携

2020年5月、セコムと共栄セキュリティーサービスが資本業務提携契約を締結した事例です。

セコムは警備業を中核とし、自社開発の防犯・防災用品販売、情報セキュリティ分野のコンサルティングおよび各種サービスなど、さまざまな事業を展開する企業です。

共栄セキュリティーサービスは、施設警備・イベント警備・ボディーガードなど幅広い警備サービスを提供しており、なかでも人的警備に強みをもつ企業です。

従来、セコムの警備業務を共栄セキュリティーサービスが受注する関係性がありましたが、世の防犯・防災ニーズの高まりに対応するため、両社の協業によるシナジー効果が有利と判断しました。

資本業務提携の内容として、セコム側が共栄セキュリティーサービスの株式45,000株(発行済株式総数の2.99%)を取得しています。

参考:共栄セキュリティー株式会社「セコム株式会社との業務提携及び資本提携に関するお知らせ」

  • 警備会社のM&A・事業承継

4. 異業種企業が警備会社を買収した事例

M&Aの買収側が異業種企業で、売却側が警備会社のM&A・買収・売却・事業承継事例を紹介します。

エルテスセキュリティインテリジェンスによるアサヒ安全業務社の子会社化

2020年12月、エルテス連結子会社のエルテスセキュリティインテリジェンスがアサヒ安全業務社の全株式を取得し、完全子会社化した事例です。

エルテスセキュリティインテリジェンスは、イベント安全対策やデジタル信用調査、海外リスク情勢分析を手掛ける企業です。エステスの連結子会社であり、親会社のエステスはデジタルリスク事業・AIセキュリティ事業・DX推進事業を展開しています。

アサヒ安全業務社は横浜市にある企業で、施設警備・常駐保安警備業務や雑踏・交通誘導警備業務、列車見張業務、ビル清掃業務を手掛けています。

エステスはデジタル新時代における新たな警備業を創出するために、自社で警備事業を手掛けたうえでの検証・開発が必要があると考えており、セキュリティ事業のデジタル化ニーズも高いと判断し、アサヒ安全業務社を傘下に加えセキュリティDX領域への進出を決定しました。

参考:株式会社エステス「連結子会社による株式会社アサヒ安全業務社の株式取得に関するお知らせ」

アイ・エス・ビーによるアートの子会社化

2017年1月、アイ・エス・ビーが警備関連事業を手掛けるアートの全株式を取得し、子会社化した事例です。

アイ・エス・ビーは、ソフトウェア開発事業やデータセンターサービス事業などを手掛ける企業です。

アートは、研究施設や公共施設などで導入されている防犯・防災関連機器の製造・開発や、電気錠出入システムの開発・販売などを行う企業です。子会社にはセキュリティーシステムの提案・販売などを手掛けるアートサービスがあります。

アイ・エス・ビーは、自社の無線通信分野とアートのセキュリティ分野を融合させることで、さらなる事業拡大が図れるとして本M&Aに至りました。

参考:株式会社アイ・エス・ビー「株式会社アートの株式取得(子会社化)に関するお知らせ 」

5. 警備会社が異業種企業を買収した事例

買収側企業が警備会社で、売却側企業が異業種企業であるM&A・買収・売却・事業承継の事例を紹介します。

綜合警備保障によるらいふホールディングスの買収

2020年4月、綜合警備保障がらいふホールディングスの全株式を取得して完全子会社化した事例です。

綜合警備保障は機械警備を主力とする警備とセキュリティサービスを手掛けており、特に金融機関の警備に強みを持つ企業です。らいふホールディングスは、介護事業を行うらいふと、食品検査事業を行うエムビックらいふの持ち株会社です。

綜合警備保障は従来、警備事業以外の事業領域拡大として複数の介護企業におけるM&Aを行っており、さらなる介護事業の拡大を図ることを目的として本M&Aに至りました。

また、エムビックらいふの食品検査事業は綜合警備保障とって新たな事業領域であり、既存顧客へサービスを提供することで今後の成長に期待できるとしています。

参考:綜合警備保障株式会社「株式会社らいふホールディングスの株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

セントラル警備保障によるシーティディーネットワークスの子会社化

2019年3月、セントラル警備保障がシーティディーネットワークスの子会社化した事例です。

セントラル警備保障は、常駐警備や機械警備、輸送警備の事業を行っている企業です。

シーティディーネットワークスは、電気設備や電気通信システムに関するの設計から施工、メンテナンスまでの総合的なサービスを展開する企業です。子会社には、監視カメラ・通信ネットワーク機器の開発・製造販売を手掛けるグラスフィアジャパンがあります。

「シーティディーネットワークスを傘下に加えることによって、顧客の機械警備ニースに対応できる工事施工体制の構築・強化を図るとし、本M&Aに至りました。

参考:セントラル警備保障「シーティディーネットワークス株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」

6. 警備会社のM&A・買収・売却・事業譲渡のメリット

ここからは警備会社におけるM&A・買収・売却・事業譲渡のメリットについて、売却側と買収側それぞれ解説します。
 

売却側のメリット 買収側のメリット
  • 従業員の雇用維持
  • 後継者問題の解消
  • グループ傘下への参入
  • 資金獲得
  • 債務解消
  • 警備スタッフの確保
  • 事業規模拡大

売却側のメリット

まずは、M&Aにおける売却・事業譲渡側のメリットから解説します。警備会社を売却するメリットは以下の5つです。

従業員の雇用維持

M&Aによる警備会社における売却・事業譲渡のメリットに、従業員の雇用維持が挙げられます。中小企業の警備会社には、非常に厳しい経営状態を強いられている警備会社も多いです。一方で経営状況が良好でも、後継者がいない警備会社もあります。

どちらのケースでも、何もしなければ最終的に倒産や廃業は避けられません。警備会社で働く従業員は、雇用を失って路頭に迷うでしょう。

しかし、M&Aを実施して、大手の警備会社に自社を売却・事業譲渡できれば従業員の雇用は守られます。従業員の雇用を維持できる点は、中小企業で特に重宝されるメリットです。

後継者問題の解消

後継者問題を解消できる点も売却側のメリットといえます。なぜなら、近年は、警備会社における経営者の高齢化や人材不足による後継者問題が影響して、事業承継がうまくいかず廃業してしまう警備会社が増えているからです。

M&Aによって、会社を売却・事業譲渡すれば、買い手側企業が事業承継してくれます。

グループ傘下への参入

M&Aによって大手警備会社の子会社となることで、大手企業が保有する経営資源を有効活用した売上向上が可能です。

例えば、大手企業のグループ傘下に入ればブランド力が上がり、その企業が持つ営業力や資金力も自社に取り入れられます。異業種の大手企業に自社を売却・事業譲渡すると、シナジー効果(相乗効果)が発揮されて売上・顧客の増加も期待できます。

資金獲得

警備会社がM&Aによって会社を売却・譲渡、事業承継すると、中小警備会社の経営者は多額の資金を獲得できるメリットもあります。経営者が警備会社の創業者であれば、ここでいう資金は創業者利益にほかなりません。

獲得した資金は、新事業の立ち上げや引退後の生活費などいろいろな使い道があります。

債務解消

警備会社をM&Aによって会社売却(株式譲渡)するメリットに、債務や個人保証の解除があります。M&Aを成約させる際の確認・取り決めは必要ですが、会社を丸ごと買収側に手渡す会社売却(株式譲渡)では、会社の債務が買収者へ引き継がれるでしょう。

経営者個人が金融機関などから融資を受けるために結んでいた個人保証や担保の差し入れは、会社売却と合わせて解除されます。M&Aでの会社売却で、個人の財産も守られるでしょう。

買収側のメリット

M&Aによる警備会社の売却・譲渡・事業承継における買収側の主なメリットは以下の2つです。

警備スタッフの確保

現在、警備会社業界は、慢性的な人材不足です。M&Aによって同業他社を買収できれば、警備スタッフ経験者の大量増員が実現します。

人材育成の教育費用や時間を必要としないため、買収企業にとって非常に大きなメリットです。

事業規模拡大

警備会社の大手企業は、事業規模の拡大を狙ってM&Aを実施し、中小規模の警備会社や異業種の会社を買収するケースが増加しています。

警備会社に限らず、M&Aで会社を買収する企業の多くは、ノウハウや経験、知識を持った人材を確保し、新たな顧客層の獲得によって、シナジー効果による売上増加が期待されました。

7. 警備会社のM&A・買収・売却・事業譲渡を成功させるポイント

警備会社のM&A・買収・売却を成功させるポイントは、以下の3点です。

  1. アピールポイントを持つこと
  2. 高い地域性や顧客リストを持っていること
  3. 会社売却の専門家に相談すること

3つのポイントを理解し、警備会社のM&Aを成功させましょう。

①アピールポイントを持つこと

よりよいM&A相手と契約するには、明確なアピールポイントが重要です。警備会社は、他社との差別化を行いにくい事業内容なので、明確な強みがあると最適なM&Aが可能となります。

②高い地域性や顧客リストを持っていること

警備会社の場合は、請け負っている業務が地域に根差しているケースがあります。こうした場合、地域性が高いことで顧客リストも自社独自のものである可能性が高いです。他社にいない顧客は買収側にとても魅力的です。

M&Aに成功する確率を上げるためにも、顧客をどれほど抱えているのかをうまく伝えましょう

③会社売却の専門家に相談すること

警備会社は買い手の需要が高い状況ですが、最適な売却・譲渡先の選定や円滑なM&A手続きを行うには専門家の協力を必要とします。

警備会社業界のM&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へお任せください。M&A総合研究所では、知識・支援実績ともに豊富なM&Aアドバイザーが、親身になって案件をサポートします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を受け付けていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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8. 警備会社のM&A・売却・買収・譲渡の案件例

警備会社のM&A・売却・買収・譲渡の案件例を紹介します。

【関西圏/業績拡大中の警備業】 創業者の経歴から、非常にクリーンな経営体制

近畿地方で2号警備、1号警備を手掛ける警備会社の案件です。

エリア 近畿
売上高 1億円〜2.5億円
譲渡希望価格 1億円〜2.5億円
譲渡理由 創業者利益確保のため)

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【北陸地方/安定した事業展開】警備・点検業

北陸地方で2号警備を中心とした警備業を展開する警備会社の案件です。

エリア 北陸地方
売上高 5,000万円〜1億円
譲渡希望価格 1,000万円〜5,000万円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

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9. 警備会社M&Aの動向と今後の展望

企業情報第六本部長 兼 企業情報第六本部第一部 部長
小林 雄太

青山学院大学卒業後、The Prudential Gibraltar Financial Life Insurance Co.Ltd.にて会社業績の経営層向けのレポーティングや業績分析など経営層に近い位置での業務に従事。その後、Accenture Japan Ltdにて大手金融機関の大規模PJTに参画し、組織運営課題における提言や全体スケジュールの策定などを行う。
日本の中小企業の事業承継問題を強く感じ、中小企業の発展・存続に貢献するため、M&A業界に転身。
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警備会社のM&A動向

国内での防犯意識の高まりにより、警備需要の増加が見込まれます。近年は特に人的警備において人手不足が深刻のなか、M&A需要は増加しています。警備業界においてM&Aが活発化している背景をご紹介します。

慢性的な人手不足

警備業界は慢性的な人手不足に直面しています。警備員の高齢化が進み、若年層の採用が難しくなっています。また、業界として長時間労働の状態化や労務管理、処遇などのさまざまな問題が原因だと考えられています。

企業は「長時間労働の是正」や「給与・処遇の向上」、「テクノロジーの導入による効率化」などの対応が迫られてきます。そのためこういった課題をM&Aで解決しようとする動きが活発化しています。

スケールメリットの追及

企業規模が大きくなると、その分管理コストが削減できる点や、大手のネームバリューにより優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。また全国展開している企業の場合、各地域での警備需要に対し適切な人員配置を行うことができ、ニーズに対しての機会損失を防ぐことに繋がります。

また同業種だけではなく、近年では異業種とのシナジー効果を期待したM&Aも増加しており、特に建設業界や介護業界など親和性が高い業種でのM&Aも増えています。

警備会社におけるM&Aの今後の展望

今後は同業界による事業規模の拡大や異業種からの参入などにより、M&Aが益々増加していくと考えられます。

譲渡企業にとっては、「後継者問題の解決」や、大手企業のグループ会社となることで「従業員の処遇の改善」等が見込まれます。譲受企業にとっては、譲渡企業から警備人材をそのまま引き継ぐため、「人材確保」や「教育にかかる時間・コストの削減」が可能となります。譲渡企業・譲受企業双方にメリットがあることもM&Aが増加している要因となっております。

警備業界は「人材」により成り立っております。業界動向やM&Aの状況は刻一刻と変化しているため、将来的にM&Aを検討されている経営者様はお早めにご相談いただき、着手することが多くの人にとって良い結果につながるものと考えられます。

現時点でM&Aを検討されていない経営者様も、「優秀な人材の獲得」や「事業の成長」が期待できるため、経営戦略の一環としてM&Aという手法が存在するとご認識いただければと思います。

資格を保有する人材の需要がますます増加するなかで、人材不足による人件費の高騰が続く状況を打破すべく、中小企業の経営者の方にとってはスピーディーな判断のもとM&Aに踏み出すことが求められています。

10. 警備会社のM&A・買収・売却・事業譲渡まとめ

警備会社業界は、現在成長中で、M&Aや事業承継が積極的に行われている業界です。警備会社をM&Aによって売却・買収するメリットを考慮し、M&Aによる売却・買収を検討しましょう。

11. 警備業界の成約事例一覧

12. 警備業界のM&A案件一覧

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