金型設計・製造業界のM&A動向!売却・買収事例5選とメリットを解説!【2024年最新】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

経営者や熟練の職人の高齢化や後継者不足、海外企業との競争などにより金型設計・製造業界ではM&Aを検討する会社が増加しています。この記事では、金型設計・製造業界でのM&Aのメリットや事例、M&A成功のためのポイントなどを解説します。

目次

  1. 金型設計・製造業界の概要と動向
  2. 金型設計・製造業界のM&A動向
  3. 金型設計・製造会社をM&Aで売却するメリット
  4. 金型設計・製造会社のM&A・買収・売却事例5選
  5. 金型設計・製造会社のM&Aにおける成功のポイント
  6. 金型設計・製造業界のM&A・事業譲渡まとめ
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1. 金型設計・製造業界の概要と動向

製造業界ではM&Aによる事業再編の動きが活発化していますが、製造業界のマザーツールとも呼ばれる金型設計・製造業界でも、M&Aを行う会社が増えています。この記事では、金型設計・製造業界の動向とM&Aについてみていきましょう。

金型設計・製造業界とは

金型とは、金属製品やプラスチック製品を、塑形加工や射出成形で大量生産するときに欠かすことができない型のことで、金型設計・製造業界ではその金型の製造を行っています

金型にはプレス金型、プラスチック金型、ダイカスト型、ゴム型、ガラス型等があり、金型設計・製造会社によって製造している製品や得意分野がさまざまです。

金型設計・製造業界の市場規模と動向

金型設計・製造業界の市場規模は、NIKKEI COMPASSの分析によると2022年は前年比3.3%増の3,556億円でした。

近年は半導体やEV向けの需要が多くなり、業界全体としてみれば業績は堅調です。しかし、中国企業の技術の追い上げにより日本企業の優位性は低下しつつあります。

また、3Dプリンタの普及で、将来的には金型需要が減少する可能性が高いことから、長期的な視点に立った戦略構築が必要な業界です。

参考:NIKKEI COMPASS「金型

【関連】電子機器・回路基板・部品製造のM&A・事業承継の動向!事例10選/異業種事例3選や売却相場も紹介

2. 金型設計・製造業界のM&A動向

金型設計・製造業界でのM&Aの傾向としては、主に次の3つを目的としたM&Aが盛んに行われるようになっています。
 

  • 海外進出を図るためのM&A
  • 関連事業を傘下に収めるためのM&A
  • 新技術へ対応するためのM&A

海外進出では、今後インフラ需要が伸びる新興国への進出の足掛かりとするために、現地の金型設計・製造会社を買収する動きがみられます。

今まで外注してきた金型設計・製造事業を内製化するためのM&Aもあるようです。また、IoT技術など新技術を見据えたM&Aも行われています。

3. 金型設計・製造会社をM&Aで売却するメリット

金型設計・製造会社をM&Aするメリットとはどのようなものがあるのでしょうか。4つの主なメリットについて解説します。

後継者問題の解決

金型設計・製造会社を含む製造業界の中小企業では、経営者の高齢化と親族内に後継者がいない後継者問題を抱えている企業が増えています。

現在の経営者が経営できなくなった時に、廃業を選択するしかない、という事態を避けるためのM&Aを探る動きが活発化しています。

従業員の雇用確保

後継者問題などで会社を廃業することになると、従業員は全員解雇となります。若くて技術のある職人であれば簡単に次の職場が見つかるでしょうが、定年が近い高齢の職人や、事務職員は再就職できるとは限りません。

M&Aでは、基本的に従業員の雇用も買収側に引き継がれるので、経営者が経営を続けられないという事態になっても、従業員の雇用を守ることができます。

売却、譲渡益の獲得

M&Aで会社を売却することができれば、経営者には売却した譲渡益が入ってきます。

もしも、会社を廃業することになると、従業員への退職金や設備の処分費用などの出費があります。一方、M&Aで会社を売却できれば、従業員も設備もすべて買収側へ譲渡できるので、出費はありません。

M&Aでの会社売却により収支はプラスになるというメリットがあるのです。

資本力のある企業の傘下で経営安定・海外進出

金型設計・製造会社の中には、海外へ進出したいと考えている会社や、DX化への対応を急ぎたいという会社もあります。しかし、中小企業では日々の業務に負われてしまい、なかなか対応が難しいというところが多いようです。

M&Aによって大手企業の傘下に入り、大手企業のリソースを活用できるようになれば、経営が安定して、海外進出やDX化による業務効率化も大幅に進められるでしょう

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4. 金型設計・製造会社のM&A・買収・売却事例5選

金型設計・製造会社でM&Aが実施された事例にはどのようなものがあるのでしょうか。近年実施されたM&Aの事例を5つ紹介します。

石塚硝子(株)が日本機械金型(株)を子会社化した事例

2023年5月に、石塚硝子株式会社から、日本機械金型株式会社の全株式を取得して子会社化するM&Aが発表されました。

石塚硝子は愛知県岩倉市に本社のあるガラス製品と、プラスチックや紙の容器を製造しているメーカーです。

日本機械金型は、ガラス成形用金型、ペットボトル成形用金型などを製造している会社であり、石塚硝子とは元々取引関係にありました。

石塚硝子としては、新型コロナやウクライナ危機により地政学リスクが高まる中で、長期的な経営体制を強化することを重点ポイントとしています。

日本機械金型をグループ企業に迎え入れることで、両社の知見を活用してより技術力の向上を目指せるとのことです。

参考:石塚硝子株式会社「日本機械金型株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

(株)コアコンセプト・テクノロジーがSOLIZE(株)から金型設計製造事業を取得した事例

2022年6月に、株式会社コアコンセプト・テクノロジーから、SOLIZE株式会社が持つ金型設計製造NAVIシステム「KATANAVI」事業を譲り受けるM&Aが発表されました。

コアコンセプト・テクノロジーはDV支援サービスなどを展開している会社です。KATANAVIは、金型設計・製造に向けた業務支援、生産管理システムで、製造状況や作業順序を可視化して、製造工程の徹底化の支援などができるシステムです。

コアコンセプト・テクノロジーとしては、KATANAVI事業は、同社の製造・建設業向けのDX開発支援事業と親和性が高く、KATANAVIの顧客も引き継ぐことで、新規顧客獲得というメリットもあるとしています。

参考:株式会社コアコンセプト・テクノロジー「事業譲受のお知らせ

(株)エフテックがIndia Steel Summit Private Limitedを子会社化した事例

2022年3月に、株式会社エフテックから、India Steel Summit Private Limitedの全株式を取得して子会社化するM&Aが発表されました。

エフテックは、埼玉県に本社のある本田技研工業系列の大手自動車部品メーカーです。

India Steel Summit Privateは、インドにある鋼材加工、プレス部品製造、金型製造などを行う会社で、2016年からエフテックの子会社が10%出資して金型事業に参画してきました。

India Steel Summit Privateの90%の株式を所有していた住友商事株式会社が、全持ち分を売却することになり、エフテックがその株式を取得して事業承継することになったとのことです。

参考:株式会社エフテック「India Steel Summit Private Limitedの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

アルインコ(株)が(株)ウエキンを子会社化した事例

2021年11月に、アルインコ株式会社から、株式会社ウエキンの全株式を取得して子会社化するM&Aが発表されました。

アルインコは、建設用の足場などの仮設資材や脚立、フィットネスマシンなどの製造、販売、リースを行う会社です。

ウエキンは、金型の設計、製作からプレス加工、検査まで一貫して生産ができる体制を構築している会社で、特に物流機器、建築材料、家電製品、生産機械などの金属部品の成形の高い技術と、コストダウンなどのノウハウを持っている会社です。

アルインコとしては、同社の製造部門や製造開発部門において、ウエキンのノウハウを活用することによる高いシナジー効果を期待できるとしています。

参考:アルインコ株式会社「株式会社ウエキンの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

富士紡ホールディングス(株)が(株)東京金型を子会社化した事例

平成30(2018)年8月に、富士紡ホールディングス株式会社から、株式会社東京金型の全株式を取得して子会社化するM&Aが発表されました。

富士紡ホールディングスは、研磨剤事業、化学工業品事業、生活衣料事業、化成品事業の4つの事業の柱を持ち、高付加価値な製品の開発、製造を行っている会社です。

東京金型は、プラスチック用射出成形金型の設計・製造・販売を行っている会社で、高い技術力による高品質なものづくりに定評があります。

富士紡ホールディングスとしては、4つの事業の柱の中でも化成品事業の拡大に向けた取り組みを進めており、東京金型のプラスチック用射出成形金型の技術による品質向上と、将来的な事業拡大が期待できるとしています。

参考:富士紡ホールディングス株式会社「株式会社東京金型の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

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5. 金型設計・製造会社のM&Aにおける成功のポイント

金型設計・製造会社でM&Aを成功させるためにはどのようなポイントに気を付けたらいいのでしょうか。特に注意したい3つのポイントについて解説します。

M&Aの専門家に相談をする

金型設計・製造会社をM&Aした方がいいのかどうか迷い始めたら、自分で売却先を探したり、手続きを進めようとはせずに、まずはM&Aの専門家に相談しましょう

M&Aの専門家なら、会社の状況を判断した上でM&Aが最善の策かどうか、といった点から親身になって考えてくれます。

M&Aを進めることになったら、M&Aに関する高度に専門的な知識が必要な手続きや、最適な相手探しもサポートしてくれるでしょう。

M&Aの専門家に頼らないと、買い叩かれてしまったり、手続きでつまずくかもしれません。M&AのことはM&Aの専門家におまかせするのがおすすめです。

M&Aのご相談はお気軽にM&A総合研究所までお問い合わせください

M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ)随時、無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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シナジー効果が見込まれる相手先の選定

金型設計・製造会社をM&Aするときには、シナジー効果を期待できる相手を見つけることが大切です。

M&Aを進めていると、当初の目的を忘れてしまって、とにかく会社の売買が目的化してしまうことがあります。しかし、シナジー効果が期待できない相手と一緒になっても、お互いの業績向上に貢献することはできません。

特に、金型設計・製造会社は、会社ごとに持っている技術や得意分野が大きく異なります。自社が持っている技術を活かせる相手を見つけることが、M&A後も従業員が安心して働き続けられる環境を保証することにも繋がります。

情報漏洩に気をつける

M&Aの成否は情報が守られるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。

M&Aでの会社売却の噂が立ってしまうと、従業員や取引先の間に不安が広がり、離職や取引停止を招いてしまう可能性があります。

M&Aについて話をする時には周囲の状況に気をつけて、会社売却の情報が漏れないように気をつけましょう。

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6. 金型設計・製造業界のM&A・事業譲渡まとめ

金型設計・製造業界は、製造業にとって欠かすことができない業界でありながら、価格破壊などの影響で厳しい状況に置かれている会社が少なくありません。

しかし、M&Aで会社を売却することができれば、会社を存続させることが可能です。M&Aで売却が可能かどうか、まずはM&Aの専門家へ相談することから始めてみましょう。

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