お弁当・惣菜屋のM&A動向!会社売却のメリットや成功のポイント・事例17選を徹底解説【2024年最新】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本記事では、お弁当・惣菜屋業界の市場動向や、M&Aによる売却・買収動向、M&Aを成功させるポイントなどを解説します。お弁当・惣菜屋のM&Aを行うメリット・デメリットを紹介しつつ、M&Aによる売却・買収事例も詳しく解説します。

目次

  1. お弁当・惣菜屋とは
  2. お弁当・惣菜屋の動向
  3. お弁当・惣菜屋のM&A動向
  4. お弁当・惣菜屋でM&Aを行うメリット
  5. お弁当・惣菜屋でM&Aを行うデメリット
  6. お弁当・惣菜屋でM&Aを行う際の注意点
  7. お弁当・惣菜屋のM&A成功ポイント
  8. お弁当・惣菜屋のM&A流れ
  9. お弁当・惣菜屋のM&A相場・費用
  10. お弁当・惣菜屋のM&A事例
  11. お弁当・惣菜屋のM&Aまとめ
  12. お弁当・惣菜屋業界の成約事例一覧
  13. お弁当・惣菜屋業界のM&A案件一覧
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1. お弁当・惣菜屋とは

本記事では、お弁当・惣菜屋など中食業界のM&A動向を解説しますが、まずは中食業界とはどのような業界をさすのか、その定義や販売形態の特徴などを紹介します。

お弁当・惣菜屋の定義

食品業界は、外で食べる外食業界・持ち帰って食べる中食業界・家で作って食べる内食業界の3つに分かれており、お弁当・惣菜屋は中食業界に該当します。

昼食業界の中心に位置するのは、持ち帰り弁当・惣菜などのテイクアウト専門店、および宅配ピザや宅配すしなどの宅配専門店を運営する会社です。ただし、最近では、コンビニエンスストア・スーパーマーケット・デパートなどの小売業も中食業界に参入しています。

中食業界でも、食材を加工したうえで提供するには、食品衛生法に基づく食品営業許可が求められます。たとえ調理加工しない場合であっても、取り扱う食材に応じて、乳類販売業・食肉販売業・魚介類販売業など販売業としての営業許可が必要です。また、上記のほか、都道府県の条例によって規制を受けるケースもあります。

お弁当・惣菜屋の販売形態

販売形態には、実店舗で販売しているお弁当や惣菜を持ち帰る「テイクアウト形式」と、電話やインターネットなどで注文し宅配してもらう「デリバリー形式」が存在します。

近年の動向を見ると、消費者ニーズの高まりからテイクアウト形式のサービスを導入する企業が増加していました。一方、デリバリー形式のサービスは、人手不足や効率の低さから導入を控える企業が多かったのが、コロナ禍の中、現在は注目を集めています。

お弁当・惣菜屋と居抜き物件

お弁当・惣菜屋が店舗数の拡大や事業参入を行う際に、居抜き物件を活用するケースが増えています。居抜き物件とは、過去に入っていた店舗の内装・厨房設備・空調設備・什器などの設備が残ったままの状態の物件のことです。

居抜き物件の買い手からすると、外観や内装の手入れが最低限で済むため、コストを抑えられます。中食業界では好立地の物件獲得が重要となる中で、居抜きの活用により良物件の獲得機会を増やせるでしょう。

2. お弁当・惣菜屋の動向

次は、お弁当・惣菜屋の市場がどように推移しているのか、近年の動向を解説します。

お弁当・惣菜屋の市場推移

一般社団法人「日本惣菜協会 2024年版 惣菜白書ダイジェスト」

出典:https://www.nsouzai-kyoukai.or.jp/wp-content/uploads/hpb-media/hakusho_2024digest.pdf

お弁当・惣菜屋の市場推移を見ると、年々拡大傾向にあることがわかります。この背景には、生活スタイルの変化に伴う1人当たりの消費量の増加や、消費者ニーズの多様化による単価の上昇などが深く関係しています。以下は、近年の惣菜市場の推移をまとめたものです
 

2019 2020 2021 2022 2023
市場規模 10兆3200億円 9兆8195億円 10兆1149億円 10兆4652億円 10兆9827億円

参考:一般社団法人日本惣菜協会「2024年版惣菜白書ダイジェスト」

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①在宅介護なども含めた高齢者向けサービスが活況

お弁当・惣菜屋では、高齢者向けサービスに参入する企業が増えています。高齢者向けサービスの具体例を挙げると、買い物に行けない1人暮らし世帯や高齢夫婦世帯向けのサービス・介護施設向けのサービスなどです。今後も高齢者向けサービスは、数・種類ともに増加するものと見られます。

②弁当需要の増加に伴う競争の激化

一般社団法人日本惣菜協会「 2024年版 惣菜白書ダイジェスト」

出典:https://www.nsouzai-kyoukai.or.jp/wp-content/uploads/hpb-media/hakusho_2024digest.pdf

お弁当・惣菜屋などの中食事業は今後も底堅く推移すると考えられ、コンビニエンスストアやスーパーではお弁当・惣菜のラインナップを充実させているところが非常に多いです。市場構成比をみると、コンビニエンスストアとスーパー(食料品スーパー)がともに前年比で伸長しており、市場をけん引しています。

このような動向から将来的な需要拡大を見込んで、お弁当・惣菜屋に新規参入する企業が増えていますが、業界の売上自体は伸びているものの、競争の激化により厳しい経営を強いられる企業が少なくありません。

参考:一般社団法人日本惣菜協会「 2024年版 惣菜白書ダイジェスト」

③宅配を利用する消費者増加

近年はお弁当・惣菜の宅配サービスを利用する消費者が増えており、スマホなどで手軽に利用できる「ウーバーイーツ」「出前館」などのネットオーダー系宅配が人気です。

なかでも「ウーバーイーツ」は事業者が宅配人員を確保しなくても運営できるため、企業だけでなく個人事業者も多く市場に参入しています。

そのほか、コロナによってお弁当・惣菜など中食を利用する消費者が増加したことや、時間短縮営業などで売上が減少した飲食店も宅配サービスを始めるケースも増加しました。

コンビニエンスストアやスーパー、ネットオーダー系宅配など、中食形態が増えたことで競争は激化しており、事業者が勝ち抜くためには消費者のニーズを捉えた魅力ある商品・サービスの提供が必要だと考えられます。

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3. お弁当・惣菜屋のM&A動向

お弁当・惣菜屋のM&Aによる売却・買収動向には、以下5つの特徴が見られます。

①大手だけではなく中小企業も参入しやすい

お弁当・惣菜屋は、大手企業のシェアが他業界と比べてそれほど高くないうえに、初期投資も比較的安く抑えられる業界でもあるため、新規参入がしやすいです。ただし、たとえ参入しやすいとしても、長く生き残っていくことは容易ではありません

なぜなら、すでに参入している企業が多いためです。その状況の中で生き残っていくには、「価格で勝負する」もしくは「特徴のある商品を販売する」のような戦略と、顧客のニーズに応える企業努力が必要とされます。

②同業種間のM&Aも多い

お弁当・惣菜屋では、外食業界や内食業界とのM&Aや、中食業界内の他業種によるM&Aも多く実施されています。特に近年では、多様化する消費者のニーズに対応するため、同業種間のM&Aによって関係を強化するケースが多くなってきました。

③設備や店舗を得るためのM&Aも増加している

お弁当・惣菜屋を含めて、飲食業界は物件の確保に多くの時間がかかるのが特徴の1つです。特に好物件の場合は運に左右されるケースも多いため、すでに設備が整っている店舗を手に入れる目的でM&Aによる買収を行うケースが増えています。

④周辺業界からの業界参入も多い

お弁当・惣菜屋は、他業界とのシナジー効果が得やすい業界であるため、周辺業界からの参入も多く見られます。特に近年は、女性向けや高齢者向けの需要が高まっていることから、健康関連業界からの参入が増加している状況です。

⑤時流に合わせる必要があるため、M&Aは増え続ける

消費者ニーズの変化サイクルが速くなっていることから、今後もお弁当・惣菜屋のM&Aは増えるでしょう。お弁当・惣菜屋のトレンドは、周辺業界の動向に影響されます。

中でも変化の激しい外食産業の動向から大きな影響を受けるため、企業には柔軟な対応力が求められるでしょう。こうした理由により、お弁当・惣菜屋業界では、大手企業を中心にM&Aによる再編が続くと予測されます。

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4. お弁当・惣菜屋でM&Aを行うメリット

本章では、お弁当・惣菜屋がM&Aによる売却・買収を行うメリットについて、売却側・買収側それぞれの立場から解説します。

売却側のメリット

売却・譲渡側では、M&Aによって以下5つのメリットが得られます。

従業員の雇用確保

お弁当・惣菜屋業界は、店舗従業員の流動性が高い業界です。M&Aによる売却・譲渡によって店舗従業員の雇用を確保できれば、従業員やM&Aの当事会社間だけでなく、お弁当・惣菜屋業界全体にとっても人材流出を防げる点でメリットです。

後継者問題の解決

小規模企業や自営業者が多いお弁当・惣菜屋でも、他業界と同じく後継者問題が深刻化しています。そこで、売却・譲渡によって事業を引き渡せば、これまで大事に育ててきたお弁当・惣菜屋の経営を継続させることが可能です。

売却・譲渡益の獲得

お弁当・惣菜屋業界でも経営者の高齢化が進んでいます。そこで、M&Aによって売却・譲渡益が得られれば、引退後の生活資金に充てることが可能です。売却・譲渡益は、新たな事業を開始する際の資金源としても使用できます。

大きな資本の下で安定した経営

変化の速いお弁当・惣菜屋業界で安定して生き残るには、時流に乗り遅れないよう事業への投資が必要とされます。そこで、売却・譲渡によって大手資本傘下に入れれば、豊富な経営リソースの活用による安定した経営を実現可能です。

個人保証・債務・担保などの解消

店舗を畳む際や親族に店舗を任せる際、経営者や後継者にとっては個人保証や債務が大きな負担です。しかし、M&Aによる売却で第三者にお弁当・惣菜屋の事業を譲渡すれば、負債は買い手に引き継がれるため個人保証・担保を解消できます。

買収側のメリット

次に、買収側のメリットを取り上げます。買収側で得られるメリットは、主に以下の5つです。

屋号の獲得が可能

買収側は、M&Aによってお弁当・惣菜屋の屋号を獲得できます。新規参入の場合、顧客が定着するまでに時間がかかります。しかし、買収先のブランドの獲得により知名度と信頼性を得られれば、買収後すぐに顧客を獲得して収益を上げることが可能です。

従業員や人材を獲得

お弁当・惣菜屋業界では人材不足が続いているため、新店舗を開店しようと考えても人材が集まらずに苦労するケースは少なくありません。しかし、M&Aによる買収で人材を獲得できれば、円滑な店舗運営を目指せます。

新規事業へ低コストで参入

他業界からお弁当・惣菜屋に参入する場合、参入障壁自体は高くないものの、事業として軌道に乗せるには資金と時間が必要です。しかし、M&Aによる買収での参入ならば、参入コストを抑えられるだけでなく、余剰資金を事業運営に充てられるメリットもあります。

新たな顧客・取引先・ノウハウなどの獲得

お弁当・惣菜屋を経営していくには、固定客・信頼できる取引先・地域性に合わせたノウハウなどが必要です。M&Aによる買収であれば、これらの要素を即座に獲得できるため、買収直後から事業を軌道に乗せられます。

事業エリアの拡大

店舗を拡大する際、好物件の取得と人材の確保に苦労しやすいです。場合によっては、物件や従業員がなかなか決まらずに、開店まで時間がかかるケースもあります。

しかし、M&Aにより、ターゲットエリアの店舗を買収できれば短期間で参入できるため、事業エリアをスムーズに拡大できるでしょう。

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5. お弁当・惣菜屋でM&Aを行うデメリット

お弁当・惣菜屋のM&Aでは、さまざまなメリットがある反面、デメリットも存在します。できるだけリスクを避けられるように、デメリットもよく把握しましょう。

売却側のデメリット

お弁当・惣菜屋業界のM&Aでは、売却側に以下のようなデメリットが生じる可能性があります。

従業員の離職 M&Aに対してネガティブなイメージを持つ層もいます。会社に対する愛着の反動でM&Aに不安感や反発を抱いた結果、退職を選択する従業員が現れる可能性があります。
取引の停止 M&Aで急に経営主体が変わることに対して不信感を抱く取引先がいるかもしれません。そのような場合、関係が悪化し取引契約が解消される可能性があります。
M&A相手への妥協 M&Aはタイミングの取引でもあるため、必ずしも理想的な買収相手と出会えるとは限りません。何らかの妥協をしないとM&Aが成立しないこともあり得ます。

買収側のデメリット

お弁当・惣菜屋業界のM&Aでは、買収側にも以下のようなデメリットが生じる可能性があります。

経営リスクの存在 株式譲渡で買収した場合、包括承継であるため、偶発債務などの簿外債務が潜んでいた場合、それを引き継いでしまいます。内容次第では大きな経営ダメージを受けるかもしれません。
経営統合の難しさ 買収側にとってのM&Aの成功は、想定どおりの業績向上です。そのための経営統合がうまくいかないと、M&Aが失敗に終わる可能性があります。
M&A相手への妥協 M&Aはタイミングの取引でもあるため、必ずしも理想的な売却相手と出会えるとは限りません。何らかの妥協をしないとM&Aが成立しないこともあり得ます。

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6. お弁当・惣菜屋でM&Aを行う際の注意点

お弁当・惣菜屋業界でM&Aを行うにあたっての注意点は、「M&Aの目的を明確にしておく」ことです。悪い例としては、M&Aが目的のようになってしまい、本来の「何のためにM&Aを行うのか」といった主旨が抜け落ちてしまうケースです。

M&Aの成約には妥協が必要な場合もあります。しかし、M&Aが目的化してしまった状態では、取引すべきではない相手に対し、十分な検討も行わず成約を決めてしまいかねません。M&Aの検討初期段階に十分な考慮をして目的を定め、それを初志貫徹するのが肝要です。

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7. お弁当・惣菜屋のM&A成功ポイント

ここでは、お弁当・惣菜屋業界でM&Aによる売却を成功させるための5つのポイントを取り上げます。内容をしっかりと確認し、お弁当・惣菜屋のM&A成功につなげましょう。

①提供する商品に魅力・アピールポイントがある

お弁当・惣菜屋業界では、知名度のある大手企業でも、定番商品が売れない悩みを抱えています。「明確なアピールポイントのある商品を開発する企業」や「魅力のある商品などを持つ企業」の買収が進んでいる状況です。

このような理由から、強みのある商品を持つお弁当・惣菜屋であれば、良い買い手が見つかりやすい傾向にあります。

②特定の顧客・ターゲット層・取引先などがある

お弁当・惣菜屋は1店舗当たりの商圏が狭いため、特定の顧客・ターゲット層、取引先などをしっかり取り込むことが重要です。したがって、お弁当・惣菜屋が店舗周囲の地域に定着している場合、売却・譲渡が円滑に進みやすくなります。

③認知力・ブランド力を持っている

中食業界の特徴の1つに、「消費者はよく知っている店舗や何度も行っている店舗に通う傾向にある」点が挙げられます。つまり、消費者の認知度が高くブランド力のあるお弁当・惣菜屋であれば、好条件での売却・譲渡が可能です。

④衛生的であり従業員の教育も行き届いている

近年はSNSによりうわさが広まりやすいうえに、従業員による不祥事が相次いでいるため、買い手側は衛生面や従業員のマナーなどに神経をとがらせています。このため、衛生面や従業員教育を徹底しているお弁当・惣菜屋の場合は、買い手との交渉がスムーズに進みやすいです。

⑤M&Aの専門家に相談する

M&Aによる売却・譲渡は、戦略の策定・売却価額の算定・法務や税務面の手続き・買い手との交渉など、さまざまな手続きを遂行しなければなりません。スムーズかつ確実に手続きを進めるためにも、M&Aの専門家に相談・依頼するとよいでしょう。

M&A総合研究所では、お弁当・惣菜屋の売却・買収に精通するM&Aアドバイザーが専任について、手続きをフルサポートします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談をお受けしていますので、お弁当・惣菜屋業界でのM&Aを検討している場合には、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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⑥M&Aのマッチングサイトなどの募集案件を探す

最近ではM&A需要の高まりからM&Aマッチングサイトの数が増えており、サイトの質も向上しています。M&Aマッチングサイトは、小規模案件に特化したサイトや飲食店専門のサイトなど、お弁当・惣菜屋業界のM&A相手を豊富な案件から探せる点が魅力です。

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⑦金融機関や行政機関などに相談する

近年では、地元金融機関や行政機関へのM&A相談もしやすくなりました。なぜなら、日本では中小企業の後継者問題が深刻化しているためです。

金融機関では、職員に事業承継アドバイザーの資格を取得させてアドバイスを提供するほか、外部の専門家を紹介するなどサービス体制を強化しています。

各都道府県には中小企業庁からの委託事業として事業承継・引継ぎ支援センターが設置されており、各地域の中小企業の事業承継を支援しており、無料相談が可能です。

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8. お弁当・惣菜屋のM&A流れ

M&Aを行う目的の明確化

具体的なM&Aの準備を始める前に、どのような目的でM&Aを行うのかを明確にしておくことが大切です。その際は、自社(事業)の方向性や将来のビジョンなどを踏まえて検討したうえで、M&Aを実行すべきかを判断する必要があります。

また、M&A実行を決断したら売却時期・譲渡価額・諸条件など相手先企業への希望条件を大まかに決めておくとよいでしょう。

M&Aの専門家へ相談する

M&Aは成立までに多くの工程があり、専門的な知識が必要となる手続きも多いです。これらを通常の事業運営と並行して進めていくので、M&Aの専門家へサポートを依頼すると効率的かつ負担を少なくすることができます。

M&A仲介会社など相談先はいろいろあるので、サポート範囲・得意業種・支援実績・手数料体系などから総合的に判断し自社の目的に合ったところに決めるとよいでしょう。

交渉相手の選定

譲渡側の場合、交渉相手先の選定はM&Aアドバイザーが希望条件に合う企業を事前にリストアップした「ロングリスト」を作成してくれるので、そこから絞り込んでいくのが一般的な流れです。

「ロングリスト」には条件に合う企業やシナジーが期待できる企業が数社から数十社程度リストアップされるので、そこから業種・エリア・規模・事業内容などの条件で数社に絞り込みます。

ロングリストから絞り込んだものを「ショートリスト」と呼び、そのなかから交渉相手先を選定していきますが、その際は社風や経営理念なども確認しておくとM&A後のPMIがスムーズに進みやすくなります

秘密保持契約の締結

交渉したい企業へM&A交渉を打診する際は、簡単な事業内容や大まかな地域、財務状況などを社名を伏せてまとめた「ノンネームシート」と呼ばれる資料を用います。

相手先がM&A交渉に前向きであれば、秘密保持契約の締結後、売り手側の企業概要書を提出して詳細情報を開示します。

企業概要書には、社名や詳細な所在地のほか、役員構成・財務情報・主要取引先・自社の独自技術やノウハウに関する内容など秘密情報が多く含まれるので、情報漏洩防止のため秘密保持契約の締結が不可欠です。

トップ面談

譲渡側・譲受側はM&Aまで面識がなかった場合がほとんどです。そのため、双方のオーナー経営者同士が顔を合わせ、互いの人柄や経営理念などを確認する目的で、トップ面談の場を設けます。

トップ面談では企業概要書などの資料では分かりにくかった点を確認するほか、M&A後のビジョンや想定されるシナジーなどについて話し合うことが多く、一般的にこの場では価額などの具体的な交渉は行われません。

面談後に譲受側からM&A(譲受)に進む意向であることを示す「意向表明書」が提出されることが多いですが、必須でないためケースによっては省略されることもあります。

基本合意書の締結

トップ面談後はさらに交渉を進め、譲渡価額・条件・スケジュール・使用するM&A手法など、M&Aの内容に双方が大筋合意した時点で基本合意契約を結びます。

基本合意書にはその時点までに取り決めた内容を記載しますが、一部条項(独占交渉権など)を除いて法的拘束力は持たせないのが一般的です。

M&A取引を中止せざるを得ない諸問題がなければ最終合意に向けた交渉を進めるという意思確認という意味合いを持ちますが、M&A成立(最終合意)を確約するものはありません。

デューデリジェンス

基本合意締結後は譲受側がデューデリジェンスを行い、譲渡側の法務・人事・財務・ITなどさまざまな方面から買収リスクの有無や程度、事前開示された情報の正確性などを調査します。

譲受側がデューデリジェンスを行うのは、M&A実行可否や価額・条件の妥当性などを判断するためです。そのため、大きなリスクや問題が発覚した場合、M&A取引が中止となる可能性もあります。

最終交渉・最終契約書締結

譲受側がM&Aを実行すると判断したら、デューデリジェンスの結果も含め最終交渉を行い、取り決めたすべての内容に双方が最終合意したら最終契約を結びます。

最終契約書には、M&A対象の範囲・価額・M&Aの条件・対価の支払い方法・表明保証・競業避止義務・クロージング条項などが記載され、すべての事項に法的拘束力があるため以降は一方的に破棄または変更することは原則認められません。

締結前は内容をよく理解しておくとともに、譲渡側はクロージング条項を確認しておくことが重要です。クロージング条件とはクロージングを行うために満たしておかなければならない前提をいい、予定日までに条件を満たせなければクロージング実行が延期されたり、場合によってはM&A成立が白紙撤回されることもあります。

クロージング

クロージングとは、M&A対象の経営権を譲受側へ移転させ、対価の決済手続きを行う工程を指します。必要な手続きはM&A手法によって多少違いますが、いずれのケースでも譲渡側がクロージング条件を満たしていなければクロージングを実行することはできません。

そのため、M&Aの最終契約からクロージング実行までは一定期間をあけることが多いです。そして、このクロージングをもってM&Aの有効性が法的に認められ、M&A取引は完了となります。

9. お弁当・惣菜屋のM&A相場・費用

お弁当・惣菜屋業界でM&Aを実施するにあたっては、相場や費用が気になるものです。しかし、M&Aの場合、個々のケースで売上高・利益額・事業規模・所有資産・設備などが異なるため、不動産のような体系的な相場が存在しません。

自社(お弁当・惣菜屋)がどの程度の売却額になるかは、M&A仲介会社などに評価を依頼すると算定が可能です。気になるものとして、M&A仲介会社の手数料がありますが、これも各社各様となります。相談時に確認するとよいでしょう。

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10. お弁当・惣菜屋のM&A事例

最後に、お弁当・惣菜屋M&Aの事例を紹介します。それぞれの成功事例からポイントをつかみ、お弁当・惣菜屋M&Aのイメージを膨らませましょう。

①まん福ホールディングス

まん福ホールディングスは、後継者不足、コロナ禍によって大幅な売上減により企業存続の危機に瀕(ひん)する中小企業を救うために設立された、食に特化した事業承継プラットフォーム会社です。

まん福ホールディングスは2021年5月に、創業60年の老舗お弁当屋「ちがさき濱田屋」の事業承継を実施しました。

両社の協業により、ちがさき濱田屋の伝統をそのまま受け継ぎつつも、新商品の開発から、デリバリー新規開拓・エリア拡大、ECサイト最適化などを導入し、新規顧客獲得・売り上げ向上を目指します。工場労働生産性の改善や、仕入先の見直しなど、抜本的な改革も行う予定です。

参考:後継者不足に苦しむ中小の老舗飲食店を救う ”売らないファンド” まん福 HD 第一号案件「ちがさき濱田屋」 リニューアルオープンし、5/6(木)から新商品を発売

②ぐるなび

2021(令和3)年4月、ぐるなびは、楽天グループより、楽天デリバリーと楽天リアルタイムテイクアウトを会社分割の方法を用いて譲受すると発表しました。本件の取得価額は1,300万円です。ぐるなびは、飲食店の情報を集めたWebサイト「ぐるなび」を運営しています。

楽天デリバリーはテイクアウト支援サービスであり、楽天リアルタイムテイクアウトは近隣の飲食店のテイクアウトをWebで簡単に注文できて店頭で待たずに受け取れるサービスです。本件M&Aの目的を、外食領域でのシステム拡大および市場シェアの獲得としています。

参考:株式会社ぐるなびとの会社分割(簡易吸収分割)による「楽天デリバリー」 事業及び「楽天リアルタイムテイクアウト」事業の承継に関するお知らせ

③レパスト

2020(令和2)年11月、レパストは、マシモの事業を譲受しました。本件の取得価額は非公開です。レパストは、病院や学校の給食、社員食堂の運営および食事配達事業といったフードサービスを提供しています。マシモは、寿司・弁当を製造して大手食品スーパーなどへ販売する企業です。

本件M&Aの目的として、コロナによる食を取り巻く環境変化への対応および給食受託・在宅配食など既存事業の付加価値向上にあります。中食分野に参入するために、マシモの食品系工場を取得しました。

参考:株式会社マシモより食品工場取得に関するお知らせ

④ダスキン

2020年6月、ダスキンは、いちごホールディングス及び同社子会社のストロベリーコーンズが行う宅配ピザ事業を譲受すると発表しました。本件の取得価額は非公開です。ダスキンは、清掃業務だけでなく、ミスタードーナツの事業運営を行っています。

一方、いちごホールディングスは、ピザ関連事業を行う企業です。本件M&Aの目的は、食品デリバリーのノウハウ獲得によるフード事業の拡大であるとしています。

参考:新会社設立及び事業譲受に関するお知らせ

⑤明治

2020年3月、明治は、連結子会社である明治ライスデリカの全株式を藤本食品に譲渡しました。明治ライスデリカは、炊飯・米飯二次加工品の製造販売を行っています。

さらなる事業拡大を目的に、惣菜など多種の製品に関して、主に近畿・中四国・中部エリアで事業を行っている藤本食品に経営を委ねました。なお、本件M&Aにともない、明治ライスデリカは「藤本ライスデリカ」という商号に変更されています。

参考:連結子会社の異動を伴う株式譲渡に関するお知らせ

⑥スマイルダイニング

2020年2月、三春情報センターの子会社であるスマイルダイニングは、エイトから「パティスリー雪乃下」の事業を譲受しています。スマイルダイニングは弁当販売店、居酒屋などの運営を行う企業です。

エイトは、居酒屋や和食、洋食、洋菓子など飲食店を運営しています。本件M&Aにより、スマイルダイニングは、需要の最盛期に余裕を持ってケーキなどを製造販売できる体制を整えることで、売上増加や業容拡大などを見込んでいます。

参考:ミックの飲食事業部門が鎌倉の洋菓子店を事業譲受 “パティスリー雪乃下” 2020 年 2 月より新体制で運営開始

⑦あいネットグループ

2019(令和元)年12月、あいネットグループは、和田フードセンターの惣菜・仕出し事業「楽多厨房」を譲受すると発表しました。本件の取得価額は非公開です。あいネットグループは、互助会を基盤にした結婚式・葬儀などの冠婚葬祭サービス・ホテルサービスを提供しています。

和田フードセンターは、「楽多厨房」を通じて顧客に手作り惣菜とお弁当を提供してきました。本件M&Aにより、次代に向けたさらなる事業の強化・楽多厨房ブランドの確立・あいネットグループとのシナジーの獲得などを狙っています。

参考:惣菜・仕出し業「楽多厨房」の事業譲渡について

⑧日清製粉グループ本社

2019(平成31)年3月、日清製粉グループ本社は、トオカツフーズの株式51%を取得し連結子会社化すると発表しました。取得価額は非公開です。日清製粉グループ本社は日清製粉グループの持株会社であり、ニップン・昭和産業・日東富士製粉とで製粉大手4社を構成しています。

一方のトオカツフーズは総合中食サプライヤーであり、日清製粉グループ本社関連会社です。本件M&Aの目的は、中食・惣菜事業および冷凍食品事業のさらなる拡大にあります。

参考:トオカツフーズ株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

⑨ハークスレイ

2019年1月、「ほっかほっか亭」を運営するお弁当・惣菜屋関連業界大手のハークスレイは、創作おこわを販売するメイテンスを株式譲渡により子会社化しました。本件M&Aにより、ハークスレイでは、惣菜事業の拡大と高齢者向け事業への参入などを見込んでいます。

参考:株式会社メイテンス株式の一部取得(子会社化)に関する基本合意書締結のお知らせ

⑩ホットランド

2018(平成30)年10月、「築地銀だこ」を運営するお弁当・惣菜屋関連業界大手のホットランドは、お好み焼き店「ごっつい」を運営するアイテムを約5億円の株式譲渡により子会社化しました。

たこ焼きとお好み焼きにおける事業ノウハウの親和性が高いことから、ホットランドはアイテムの買収によってノウハウの共有や事業の拡大などを目指しています。

参考:株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

⑪オイシックス・ラ・大地

2018年8月、有機野菜など安全な食品の宅配サービスを行っているオイシックス・ラ・大地は、オーダーメイドケータリングサービスを行うCRAZY KITCHENを株式譲渡により子会社化しました。

オイシックス・ラ・大地では実店舗やイベントでの認知度向上を図っていますが、CRAZY KITCHENのクリエイティブ力を生かすことで、デザイン性の高い店舗やイベントでの企画を実現しています。

参考:オーダーメイドケータリング事業の「CRAZY KITCHEN」を子会社化 店舗やイベントでのクリエイティビィティ向上を目指す

⑫ユニー・ファミリーマートホールディングス

2017(平成29)年6月、ユニー・ファミリーマートホールディングス(現:ファミリーマート)は、中食業界大手のカネ美食品を株式譲渡により子会社化しています。本件の譲渡価額は約79億円です。

本件M&Aにより、ユニー・ファミリーマートホールディングスは、惣菜分野の強化を図っています。2019年には、保有するカネ美食品株式の一部をパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスに売却・譲渡しました。

参考:カネ美食品株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

⑬日本KFCホールディングス

2017年5月、「ケンタッキー・フライド・チキン」などのフランチャイズ展開を行っている日本KFCホールディングスは、子会社である日本ピザハットとピザハットのフランチャイズ運営会社であるフェニックス・フーズを株式譲渡により投資ファンドへ売却しました。

ピザハットは日本KFCホールディングスにとって主力事業の1つでしたが、競争の激化や人材不足などを理由に立て直しが困難であったため、子会社2社の売却に至っています。

参考:当社連結子会社2社の異動(株式譲渡)に関するお知らせ

⑭夢の街創造委員会

2017年4月、飲食デリバリーサイト「出前館」を運営する夢の街創造委員会(現:出前館)は、飲食デリバリー店の提案・指導業を行うデリズをデリズの代表取締役に1,000万円で株式譲渡しました。

2016(平成28)年に、夢の街創造委員会はデリズを子会社化し新市場の開拓を図っていましたが、シナジー効果が得られなかったことから売却・譲渡に至っています。

参考:当社連結子会社の株式譲渡に関するお知らせ

⑮T&Cメディカルサイエンス

2016年7月、先端医療や金融アドバイザリー事業を行うT&Cメディカルサイエンスは、お弁当フードコートの運営などを行うダイヤモンドムーンを取得価額約500万円の株式譲渡により持分法適用関連会社化しました。

ダイヤモンドムーンは、「大勝軒」ブランドの中華弁当を販売している会社です。本件M&Aにより、両社は健康志向の弁当開発に取り組んでいます。

参考:有限会社ダイヤモンドムーンの株式の取得(持分法適用関連会社化) に関するお知らせ

⑯小僧寿し

2016年6月、持ち帰り寿司チェーン店を展開する小僧寿しは、介護・福祉関連サイトの運営などを行う「けあらぶ」を1,500万円の株式譲渡により子会社化しました。本業で苦戦が続く小僧寿しは、けあらぶの買収によって介護食分野に新規参入しています。

参考:株式会社けあらぶの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

ドンキホーテホールディングスによるオリジン弁当の買収失敗事例

2005(平成17)年8月、ドンキホーテホールディングス(現:パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)は、「オリジン弁当」を運営するお弁当・惣菜屋関連業界大手のオリジン東秀に買収を仕掛けたことで大きな話題となりました。

当時のドンキホーテホールディングスは、自社のノウハウをコンビニエンスストア運営に応用する方法で新規参入を計画していました。そこで、これを実現するには弁当・惣菜が必要であるとの理由から、中食業界大手のオリジン東秀に買収を提案したのです。

しかし、オリジン東秀に拒否されたため、ドンキホーテホールディングスはTOB(Takeover Bid=株式公開買付)による敵対的買収に切り替えました。

このときに、オリジン東秀はイオンにホワイトナイトとして友好的買収を行ってもらう買収防衛策を取ったため、結果的にTOBはイオン側が勝利してオリジン東秀はイオングループ入りを果たしています。

【関連】買収防衛策の全種類を解説!買収防衛策の導入方法と事例・廃止企業一覧!

11. お弁当・惣菜屋のM&Aまとめ

お弁当・惣菜屋業界のM&Aによる売却・買収は、戦略の策定・価額の算定・法務や税務面の手続き・取引相手との交渉など、さまざまな手順を踏まなくてはなりません。

お弁当・惣菜屋の買収によるメリットを享受するには、M&A後の統合マネジメントも非常に重要です。スムーズかつ確実に手続きを進めるためにも、M&A仲介会社のサポートを得るとよいでしょう。

12. お弁当・惣菜屋業界の成約事例一覧

13. お弁当・惣菜屋業界のM&A案件一覧

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