アプリの売却方法は?流れや相場・注意点を解説【事例17選】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&Aは会社や事業の売却方法ですが、アプリの売却に活用する事例も増えてきており注目が集まっています。本記事では、M&Aを活用したアプリの売却方法、手続きの流れや相場、高値で売るポイントや最新の売却事例などを解説します。

目次

  1. アプリも売却・M&Aができる
  2. M&Aを活用したアプリの売却方法
  3. アプリの売却・M&Aの流れ
  4. アプリの売却・M&A事例17選
  5. アプリ売却・M&Aを高値で行うポイント
  6. アプリ売却・M&Aを行う際の専門家の選び方・注意点
  7. アプリ売却・M&Aのご相談はM&A総合研究所へ
  8. アプリの売却・M&Aの方法まとめ
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1. アプリも売却・M&Aができる

M&Aというと会社や事業の売却というイメージが強いですが、アプリやWebサイトを売却することもできます。

具体的にいえば、M&A仲介会社やM&Aマッチングサイトでアプリの売却案件を出し、事業譲渡のスキームでアプリを売却するということです。

近年では、個人で開発したアプリが大手に高値で売却される事例がメディアで取り上げられる影響もあり、アプリ売却に興味を持つ人が増えています。本題に入る前に、この章ではアプリやアプリ市場の基礎的事項をみていきましょう。

アプリとは

アプリとは「アプリケーションソフトウェア」の略で、ユーザーのニーズを満たす特定の機能を持ったソフトウェアのことです。

動画サイト・ゲーム・メール・SNSなど、利用者が何らかのニーズを満たすために使用するソフトウェアは、基本的に全てアプリケーションソフトウェアに含まれます。

「Chrome」「Firefox」などの、インターネットを使うための「ブラウザ」もアプリケーションソフトウェアの一種です。

これに対して、パソコン・スマホなどのハードウェアの制御を目的とするソフトウェアを、「システムソフトウェア」といいます。

WindowsやAndroidなどの「OS」、周辺機器を使う時にインストールする「デバイスドライバ」などがシステムソフトウェアの例です。

システムソフトウェアはユーザーが直接使用するものではなく、コンピュータが適切な状態を維持するための裏方の役目を果たします。

アプリの種類

アプリには、インターネット上で使う「Webアプリ」と、パソコンやスマホにダウンロード・インストールして使う「ネイティブアプリ」があります。

【アプリの種類】

  1. Webアプリ
  2. ネイティブアプリ

①Webアプリ

Webアプリとはインターネット上で使うアプリのことで、ブラウザを使ってアプリのあるWebページにアクセスして使用します。「Gmail」や「Youtube」などは、Webアプリの代表的な例です。

Webアプリは、インターネット上で使うのでインストールする必要がないのが利点ですが、ネットに接続できる環境がないと利用できないデメリットがあります。

【関連】WEBサービス・WEBサイトの売却の流れやポイントとM&A事例22選!| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

②ネイティブアプリ

ネイティブアプリとは、スマホやパソコンにインストールして使うアプリのことです。スマホなら「App Store」「Google Play」などでインストールするのが一般的になっています。

ネイティブアプリはインターネットが必要ないので動作が早くネット環境がなくても使えるのがメリットです。

ただし、実際はネイティブアプリにはインターネットを使用するものも多く、これを「ハイブリッドアプリ」と呼んで区別することもあります。

デメリットとしては、ネイティブアプリはOSごとの対応になることです。例えばiOS対応アプリはiOSでしか使えず、Androidでは利用できないといった点があります。また、アップデートのたびに最新版をインストールする必要があるのもデメリットです。

「アプリ」という用語は本来はアプリケーションソフトウェア全般のことですが、一般にはApp storeなどからダウンロードしたスマホ用のネイティブアプリ、いわゆる「スマホアプリ」に限定した意味で使うことが多いです。

パソコンで使うネイティブアプリを「アプリ」と呼ぶことはあまり多くはなく、一般的には「ソフト」などと呼ばれます。

アプリ市場の動向

M&Aは市場動向が売却価格に影響するので、アプリを売却する際はアプリの市場動向を押さえておくことが大切です。

アプリ市場の主な動向としては、市場規模の拡大やオンライン会議アプリの急速拡大など、以下の4点が挙げられます。

【アプリ市場の動向】

  1. 市場規模は年々拡大
  2. オンライン会議アプリが急速に拡大
  3. 日本はゲームのシェアが大きい
  4. サブスクリプションのシェアが拡大

①市場規模は年々拡大

令和3年版情報通信白書によると、「世界のモバイル向けアプリ市場規模」は、2020年は全世界で1,924億ドル、日本で259億ドルです。

2016年には全世界が757億ドル、日本が126億ドルだったので、4年間で2倍以上に拡大していることになります。

2021年から2023年もこのまま伸びていくと予測されており、2023年で全世界が2,647億ドル、日本が365億ドルになると試算されています。

②オンライン会議アプリが急速に拡大

アプリ市場はコロナによる打撃というのは少なく、むしろ巣ごもり需要で好調です。特に「Zoom」などのオンライン会議アプリは、コロナを機会に大きく市場規模を拡大しています

③日本はゲームのシェアが大きい

日本のアプリ市場は全世界と比較して、ゲームのシェアが高いのが特徴です。全売上に占めるゲームアプリの割合は、全世界が約57%なのに対して、日本は約78%となっています。

【関連】ゲーム会社のM&A・買収・売却の完全マニュアル!業界動向や相場・成功事例も解説

④サブスクリプションのシェアが拡大

動画や音楽配信のアプリでは、定額制のいわゆる「サブスクリプション」のシェアが拡大しており、非常に好調です。

情報通信白書によると、今後はダウンロード課金型はほぼ横ばいになっていくのに対して、サブスクリプションは大きく伸びていくと予測されています

【関連】アプリのM&A・売却!M&A手法や流れ、相場、事例を解説!株式譲渡と事業譲渡どちらが良い?

2. M&Aを活用したアプリの売却方法

M&Aを活用してアプリを売却するには、まずM&Aの基本的なスキームを理解しておく必要があります。

アプリをどういう形で売却したいかによって適切なM&Aスキームが変わってくるので、いくつかの基本的なM&Aスキームの特徴を把握しておきましょう。

利用されるのは主に事業譲渡か株式譲渡

M&Aにはさまざまな方法がありますが、ほとんどの場合事業譲渡か株式譲渡が使われます。アプリ市場も同様で、利用されるのは主に事業譲渡か株式譲渡です

1.株式譲渡によるアプリの売却

株式譲渡はM&Aの最も一般的な売却方法で、会社の株式を売却することで経営権を譲渡します。アプリの場合は、アプリ開発をしている会社を売却したい時に使うスキームです。会社が発行している株式の売却なので、アプリ単体の売却や事業単位での売却はできません

株式譲渡は必ずしも全株式を取得する必要はなく、過半数の株式を取得すれば事実上の経営権を得られます。また、経営権は取得せずに半数以下の株式だけを取得する、「資本提携」という方法も可能です。

メリット

株式譲渡のメリットは、会社の資産や権利を包括的に承継できることです。株式譲渡は株主が変わるだけなので、会社が持っている資産や権利、取引先との関係や従業員の雇用などは全てそのまま引き継がれます。

アプリ会社を買収して事業成長させるには、人気アプリの権利や優秀なエンジニアの雇用などを引き継ぐことが重要です。株式譲渡を用いる場合ははこれらを比較的簡便に実現できます。

また、株式の売却益の税率は約20%なので、30%以上かかる法人税に比べると若干節税になることもメリットです。そのほかには、個別に資産を移転する事業譲渡に比べると、株式を譲渡するだけなので手続きが簡単になるというメリットもあります。

デメリット

株式譲渡は資産や権利を包括的に承継できるのがメリットですが、逆に負債などの不要な部分も引き継がなければならないのがデメリットとなります。

例えば、売却される会社が複数のアプリを運営していて、人気アプリと不採算アプリがある場合、株式譲渡では不採算アプリもまとめて承継しなければなりません。

また、簿外債務などの予期しない債務を引き継ぐ可能性があるのも注意点です。簿外債務を避けるにはデューデリジェンスの徹底が不可欠ですが、デューデリジェンスをいくら徹底しても、予期しない債務を引き継ぐ可能性を100%排除することはできません。

さらに、小規模なアプリ会社の買収では、そもそもデューデリジェンスにあまりコストをかけられないことも多いです。

株式譲渡が適しているケース

アプリの売却において株式譲渡が適しているのは、開発スタッフや取引先などの関係性を維持したまま、それらを包括的に獲得して今後の事業成長を目指したいといったケースです。

例えば、新規にアプリ事業に参入する場合は、買い手はアプリ事業のノウハウや優秀なエンジニアなどを持っていないため、株式譲渡でアプリ会社を包括的に買収するのが適しています。

売り手の視点では、大手の傘下に入って経営を安定させたい場合や、スタッフの雇用や取引先との関係などを維持したい場合などに適した手法です。

ほかにも、経営者の立場から退きたい、自社の保有株式を売却してイグジットしたいといった時などにも、株式譲渡を選択することになります。

【関連】株式譲渡とは?適切な活用方法・目的からケースに合わせた対応方法まで解説

2.事業譲渡によるアプリの売却

事業譲渡とは、株式を売却するのではなく、事業に必要な資産を売却するM&Aスキームです。

アプリだけを単体で売却することもできますし、アプリ開発に関連する設備などを売却、従業員や取引先との契約を買い手側が新たに締結し直すこともできます。

メリット

株式譲渡と比較した時の事業譲渡の主なメリットは、売却・買収する資産を選択できるです。買い手側の視点だと、例えば売り手が複数運営しているアプリのなかから、必要なものだけ買収することができます。また、アプリ事業と別な事業を営んでいる売り手から、アプリ事業だけを買収することも可能です。

ほかにも、簿外債務などを引き継ぐリスクが少ないのは買い手のメリットの一つであり、簿外債務が発生しそうな資産を引き継がないことで、ある程度リスクを回避できます。

売り手目線では、例えば採算がとれないアプリだけを売却して主力アプリに集中することもできますし、逆に主力のアプリを高値で売却して資金を得ることもできます。

また、買い手の子会社にならず会社の独立性を維持できるのは、傘下に入りたくない売り手にとってはメリットといえるでしょう。

デメリット

事業譲渡は資産を個別に移転しなければならないので、株式譲渡に比べると手続きが煩雑になるのがデメリットです。

取引先との契約や従業員の雇用契約なども、取引先や従業員に個別に合意を得たうえで、一つずつ承継手続きを行わなければなりません。

また、事業譲渡は従業員にとっては別会社への転籍になるので、株式譲渡に比べると従業員から売却を反対されるリスクが大きいのもデメリットです。

アプリ事業の買収でエンジニアを転籍できないとなると、事業運営に大きな支障が出てしまうので、事業譲渡では転籍する従業員の合意を得るための慎重な配慮が必要になります。

【関連】事業譲渡のメリット・デメリット30選!手続きの流れ・方法、税務リスクも解説

競業避止義務に注意

そのほかm事業譲渡では、競業避止義務について注意が必要です。会社法の規定では、事業譲渡を行った場合、同一・隣接する市町村内で同一事業を20年間行ってはならないという、競業避止義務を負うと定められています。

実際、過去にはECサイトの事業譲渡後に売却側が同一事業を行ったことに対して、競業避止義務違反とされた事例もありました。

ただし、20年間の義務が課されるのは契約書に競業について特に記載がなかった場合であり、契約書に記載すれば競業避止義務の内容を変えることができます

例えば、期間をもっと長くまたは短くしたり、禁止するエリアを広げるまたは狭めることも可能です。売り手と買い手が合意するならば、競業避止義務を全く課さない契約内容にすることもできます。

【関連】M&Aの競業避止義務とは?該当事例と注意点を解説!

事業譲渡が適しているケース

不採算事業の売却事業の選択と集中をしたい時は、株式譲渡より事業譲渡が適しています。売り手の視点では、アプリを買い手側のスタッフに開発・運営してもらいたい場合は、事業譲渡でアプリを買い手企業に保有してもらうのがよい選択肢となるでしょう。

買い手の視点では、売り手が運営する複数のアプリから、いくつかだけを選択して獲得したい場合に事業譲渡は適した手法です。

もちろん、アプリ単体の売却個人で運営しているアプリの売却では株式譲渡は使えないので、必然的に事業譲渡を使うことになります。

【関連】M&Aスキームの事業譲渡と株式譲渡の違い|メリットとデメリット・選択ポイント・税務面も解説

3. アプリの売却・M&Aの流れ

アプリの売却の流れは、基本的には他の業種の株式譲渡・事業譲渡と同じで、以下のように手続きが進んでいきます。


【アプリの売却・M&Aの流れ】

  1. M&A仲介会社などの専門家に相談・依頼
  2. 希望売却価格の設定、資料作成
  3. 相手先の選定、マッチング
  4. トップ面談、交渉
  5. 基本合意契約の締結
  6. 買い手によるデューデリジェンス実施
  7. 最終契約の締結
  8. クロージング

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1.M&A仲介会社などの専門家に相談・依頼

アプリの売却は自分だけで行うことも不可能ではありませんが、M&A仲介会社などの専門家に相談・依頼するのが一般的です。

個人で売却先を探すというのは非常に難しく、また、本業と並行して自分だけでアプリ売却の手続きを行うのは時間的・精神的に厳しいでしょう。

相談する専門家はM&A仲介会社が一般的ですが、中小企業なら事業承継・引継ぎセンターなどの、国が設置している支援機関を利用する方法もあります。

また、自社の顧問税理士や顧問弁護士にM&Aに詳しい人がいるなら、まず相談してみるのもよいでしょう。マッチングサイトを利用する場合でも、M&A仲介会社のサポートを受けながら行うことができます。

どの仲介会社に依頼するか決めたら、アドバイザリー契約を締結して本格的なアプリ売却手続きのスタートです。仲介会社によっては、この時点で「着手金」という手数料がかかることもあります。

2.希望売却価格の設定、資料作成

アプリを売却する場合、まず売却側の希望売却価格を設定します。売却価格の設定方法は後の章でも詳しく解説しますが、アプリ単体の売却ならアクティブユーザー数やユーザーあたりの売上単価など、会社の売却なら純資産や将来の予想収益などから算定することが多いです。

売却価格を設定したら、次は買い手候補に自社の情報と案件内容を伝えるための資料を作成します。社名が特定されない範囲で概要を記した「ノンネームシート」と、社名を明かして詳細を記載する「企業概要書」の2種類を作成するのが一般的です。

買い手はまずノンネームシートを見て買収したい企業を大まかに絞り、次に企業概要書を見て交渉する売り手を選定していきます。

3.相手先の選定、マッチング

売却側が買い手候補を選定するには、まず仲介会社に希望や条件を伝え、仲介会社がそれに合う候補企業を大まかに選定した「ロングリスト」を作成します。

そして、ロングリストからさらに数社程度に絞った「ショートリスト」を作成し、この中から交渉する買い手候補を決定していきます。

できるだけ良い条件で売却するためには、複数の買い手企業に打診して、天秤にかけるなどの交渉術も必要です。

アプリの売却先は一般にはIT企業になることが多いですが、仲介会社はさまざまな業種の買い手候補のリストを持っているので、全く違う業種の買い手がみつかることもあり、同業種ではできないようなシナジー効果が得られることもあります。

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4.トップ面談、交渉

買い手候補が2,3社程度に絞れたら、相手企業の経営者とトップ面談を行います。トップ面談は、売却側の会社の会議室や仲介会社のオフィスなどで行うことが多いです。

トップ面談に参加するのは、経営者と役員数名、場合によっては筆頭株主などが出席することもあります。あまり大人数になると情報漏洩の原因になるのに加えて、相手企業に威圧感を与える恐れもあるので、相手企業の参加人数と同程度にするのがよいでしょう。

面談では売却価格などの具体的な条件交渉よりも、相手の人柄や経営理念といった、資料だけでは見えない部分を見極めていきます

トップ面談では、相手からの質問には正直に答え、不利な情報を隠さないことが大切です。不利な情報を隠して基本合意を締結して、後で発覚するのは最もよくないパターンなので注意しましょう。

5.基本合意契約の締結

トップ面談でアプリ売却の意志が固まったら、ここまでの合意内容を基本合意書として締結します。基本合意書に記載するのは、スキームや売却価格、従業員や役員の処遇など、現時点で決まっている事項です。

基本合意書は最終決定ではないので、この後のデューデリジェンスの結果などによって最終的な契約内容は変わることがあります。

最終決定ではないのにこの時点で契約を締結するのは、認識のすり合わせのためというのもありますが、これからデューデリジェンスを行うにあたって、独占交渉権や秘密保持契約を付与しておきたい意味が大きいです。

デューデリジェンスは買い手がコストを負担するので、売却側に複数の買い手と交渉するのを禁止しなければ、コストが無駄になる恐れがあります。

また、デューデリジェンスでは多くの内部情報をやりとりするので、秘密保持契約を締結しないと情報漏洩のリスクが高くなります。

基本合意書は原則として法的拘束力を持たせませんが、独占交渉権と秘密保持は例外的に拘束力を持たせるのが一般的です。

【関連】M&Aの基本合意書(MOU)とは?記載事項、締結のタイミング、目的、注意点を解説

6.買い手によるデューデリジェンス実施

基本合意書を締結したら、買い手による売却側企業のデューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスとは、簡単にいうと、対象企業についての事前調査です。

デューデリジェンスは財務・法務・税務について行うのが一般的で、簿外債務・偶発債務や法令・コンプライアンス違反がないかなどを調査します。さらに、アプリの売却では、売却側企業のITシステムを調査する「ITデューデリジェンス」を行うのも有効です。

どのジャンルのデューデリジェンスを行うかは、デューデリジェンスを行うコストと、デューデリジェンスを行わなかった時のリスクとの兼ね合いで判断します。小規模なM&Aでは、コスト面の問題からデューデリジェンスを全く行わないこともあります。

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7.最終契約の締結

デューデリジェンスの結果をもとに最終交渉を行い、契約内容が固まったら最終契約を締結してアプリの売却が成立します

最終契約書は株式譲渡なら「株式譲渡契約書」、事業譲渡なら「事業譲渡契約書」となります。売却方法によって契約書の種類や記載事項が変わるので注意しましょう。

例えば、株式譲渡契約書なら売却する株式数と対価の額など、事業譲渡契約書なら譲渡する資産の範囲や取引先・従業員の処遇などを記載します。

最終契約は、買い手と売り手で齟齬があると訴訟や損害賠償に発展する恐れもあるので、弁護士のチェックも入れて内容をしっかり確認しておかなければなりません。

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8.クロージング

クロージングとは、実際にアプリや株式などを売買して、最終契約書の内容を実行することです。クロージングをもってアプリの売却は完了となります。

クロージングは、株式譲渡やアプリ単体の売却ならあまり期間はかかりませんが、事業譲渡は期間が長くなる傾向があり、クロージング完了日をはっきり決められないことも多いです。

また、最終契約書には、一定の誓約事項を履行しないとクロージングを行わないという「前提条件」が課されているのが一般的なので、最終契約締結日からクロージング開始日の間に、これを速やかに履行する必要があります。

クロージングをもって売却自体は完了となりますが、この後は売り手と買い手がスムーズに協働するための「統合プロセス(PMI)」という作業が必要です。

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4. アプリの売却・M&A事例17選

アプリおよびその運営会社の売却事例として、最近の事例や有名な事例を17選をピックアップして紹介します。
 

  1. ピースユーがいつもへ株式譲渡
  2. GreenSnapが豊明花きから第三者割当増資による資金調達を実施
  3. エムスリーがスペインの医療アプリ会社を子会社化
  4. gambaがrakumoへ株式譲渡
  5. DeMiAがSHIFTへ株式譲渡
  6. GINKANが西部ガスグループと資本業務提携を締結
  7. shabellがホリプロと資本業務提携
  8. ゴルフリサーチがワイヤードパッケージと資本業務提携
  9. C2がCYBERDYNEへ株式譲渡
  10. COMBOがテクノモバイルへ株式譲渡
  11. コウイクスがSDアドバイザーズへ株式譲渡
  12. アクセルマークがオルトプラスへスマホゲームアプリ事業を譲渡
  13. Origamiがメルペイへ株式譲渡
  14. オーテがアイモバイルへ株式譲渡
  15. フリーがアイフリークモバイルへ株式譲渡
  16. トライフォートがユナイテッドへ株式譲渡
  17. PoliPoliが毎日新聞へ「俳句てふてふ」アプリ事業を譲渡

1.ピースユーがいつもへ株式譲渡

2022年12月、ピースユーは、いつもへ株式譲渡を行いました。

ピースユーは、日本で有数の流通額を誇るライブコマース特化のアプリサービスを運営している合同会社です。一方、いつもは、ブランドメーカーに向けてD2C・ECの総合支援、M&A・成長支援を行う会社です。

今回のM&Aにより、今後大きな成長が見込まれるライブコマース市場に参入し、デジタル接客による購買体験の向上を目指す予定です。双方が保有しているノウハウや人材を融合させ、さらなるライブコマースサービスの成長を図ります。

合同会社ピースユーのグループインのお知らせ

2.GreenSnapが豊明花きから第三者割当増資による資金調達を実施

2022年11月、GreenSnapは、豊明花きから第三者割当増資による2億円の資金調達を行いました。

GreenSnapは、植物コミュニティアプリ「GreenSnap」を運営する会社です。豊明花きは、花の専門商社で地方卸売市場の運営や植物の仲卸業者、ホームセンター・園芸専門店への販売、資材の販売、日本の植物を輸出する国際取引など幅広い事業を展開しています。

今回の第三者割当増資により、月間1,200万人の消費者データを保有するGreenSnapと、豊明花きのデータ・物流の仕組みを融合させることで、事業拡大を目指します。

GreenSnap、豊明花き株式会社を引き受けとする第三者割当増資を実施、2億円の資金調達

3.エムスリーがスペインの医療アプリ会社を子会社化

2022年6月に、エムスリー株式会社がスペインのeDoctores Soluciones S.L.(iDoctus社)を子会社化しました。エムスリーは医療従事者向けのポータルサイト「m3.com」の運営を始め、医療関連のサービスを幅広く展開している企業です。

iDoctus社は、医療従事者がさまざまな医療関連情報を取得できるアプリ「iDoctus」を運営する企業で、ラテンアメリカを中心に多くの利用者がいます。

iDoctusの価値提供の拡大、およびエムスリーのラテンアメリカにおける事業基盤拡大が本M&Aの目的となっています。

医療従事者向け診療現場モバイルアプリのリーディングカンパニーiDoctus を子会社化 ~スペイン医師のカバー率は 80%以上に~

4.gambaがrakumoへ株式譲渡

2022年3月に、rakumo株式会社が株式会社gambaの完全子会社化を決定しました。譲渡実行日は2022年6月30日の予定となっています。

rakumoは、Googleドキュメントなどのオンラインアプリのセットである「Google Workspace」に、勤怠管理などの拡張機能をつけるツール「rakumo」を販売する企業です。譲渡側のgambaは、社内で日報を共有するアプリ「gamba!」を販売しています。

両製品の共通性や相互補完性を生かしたサービス拡大、およびクロスセルによる販売拡大などが本M&Aの目的となっています。

株式譲渡(完全子会社化)のお知らせ

5.DeMiAがSHIFTへ株式譲渡

2022年5月に、株式会社SHIFTが株式会社DeMiAの全株式を取得し、完全子会社化することを決定しました。譲渡実行日は2022年6月下旬の予定です。

SHIFTは、ソフトウェアの品質テストやDXに関するコンサルティングなどを手がけています。譲渡側のDeMiAは、さまざまなジャンルのアプリ開発や、ITエンジニアの育成などを手がける企業です。

エンジニア育成プログラムのSHIFT内での活用および学生・企業向けの展開DeMiAが持つ優秀な学生の採用能力の活用などが本M&Aの目的となっています。

株式会社DeMiAの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

6.GINKANが西部ガスグループと資本業務提携を締結

2022年3月に、株式会社GINKANと西部ガスグループが、GINKANが運営するグルメアプリ「シンクロライフ」を活用した飲食店集客に関する資本業務提携を締結しました。

西部ガスグループは西部ガスホールディングスとその子会社で構成され、ガス事業以外にもさまざまな事業を展開しています。

シンクロライフは飲食店のレビュー投稿などができるアプリで、レビューの信頼性など従来のグルメアプリの問題点を改善したシステムが特徴です。

西部ガスの取引先飲食店に対してシンクロライフの導入を促進し、集客効果を高めることなどが本M&Aの目的となっています。

グルメSNSアプリを活用した飲食店集客支援に関する業務提携の締結について

7.shabellがホリプロと資本業務提携

2022年1月に、株式会社shabellが株式会社ホリプロと資本業務提携を締結しました。shabellはキャリアシェアアプリ「shabell」を運営する企業で、ホリプロはタレントのマネジメントを始めとするエンターテイメント事業を手がけています。

shabellは、就職やキャリアに関する悩みを先駆者や著名人に相談したり、アドバイスがもらえるアプリです。shabellとホリプロの経営資源を活用し、地域産業のブランディングを促進することなどが本M&Aの目的となっています。

株式会社ホリプロとの資本業務提携のお知らせ

8.ゴルフリサーチがワイヤードパッケージと資本業務提携

2021年12月に、株式会社ワイヤードパッケージとゴルフリサーチ株式会社が資本業務提携を締結しました。

ワイヤードパッケージは、人工知能・ブロックチェーン・SES事業などを手がける企業です。ゴルフリサーチは、ゴルフマッチングアプリ「ゴルフ免許証」の運営を中心に、ゴルフ関連の事業を手がけています。

ワイヤードパッケージの資本参加により、ゴルフリサーチの財務改善や事業展開を行い、ワイヤードパッケージの子会社が運営する「大人のゴルフ学校」との連携してゴルフ事業の展開も目指します。

ワイヤードパッケージ、ゴルフリサーチ社と資本業務提携。スポーツDX「ゴルフ免許証」推進へ

9.C2がCYBERDYNEへ株式譲渡

2021年8月に、CYBERDYNE株式会社が株式会社C2の全株式を取得し完全子会社化しました。

CYBERDYNEは、身体機能をサポートする装着型サイボーグの開発・販売、およびそれを活用したサイバニクス治療などを手がける企業です。

C2は、睡眠計測アプリ「熟睡アラーム」を始めとするさまざまなアプリ開発・販売、および医療関連のソリューション事業などを手がけています。

C2のヘルスケアアプリとの連携により、事業拡大・企業価値の向上を目指すことが本M&Aの主な目的です。

スマホアプリ『熟睡アラーム』を開発するC2社の買収(子会社化)に関するお知らせ

10.COMBOがテクノモバイルへ株式譲渡

2021年3月に、株式会社テクノモバイル(現:テクノデジタル)が、株式会社COMBOの株式の90%を取得して子会社化しました。

テクノデジタルはアプリ開発やWEBサイト作成などを手がける企業で、COMBOはVRを始めとするシステム開発やアプリ開発を手がける企業です。

テクノデジタルの傘下に入ることによるCOMBOの経営基盤の獲得、および両社の協働による事業拡大が本M&Aの目的となっています。

VR/AR開発に強みをもつIT企業をテクノモバイルに譲渡

11.コウイクスがSDアドバイザーズへ株式譲渡

2020年7月に、株式会社SDアドバイザーズが、株式会社コウイクスの全株式を取得し完全子会社化しました。

SDアドバイザーズは、FXや仮想通貨の取引システムや、FXの情報提供サービスなどを手がけています。対して、コウイクスはDX推進事業・システム開発事業を手がける企業です。

コウイクス社長の高齢による引退にともなう事業承継、およびグループのさらなる成長が本M&Aの理由となっています。

株式会社コウイクスの事業承継及び資本業務提携のお知らせ

12.アクセルマークがオルトプラスへスマホゲームアプリ事業を譲渡

2020年7月に、株式会社オルトプラスがアクセルマーク株式会社のゲーム事業を譲受しました。

オルトプラスはソーシャルゲームの開発・運営を手がける企業で、アクセルマークはインターネット広告やブロックチェーンゲームなどを手がける企業です。

オルトプラスの事業の選択と集中、およびブロックチェーンゲーム開発などにおけるシナジー効果の獲得などが、本M&Aの目的となっています。

13.Origamiがメルペイへ株式譲渡

2020年2月に、株式会社メルペイが株式会社Origamiの全株式を取得し完全子会社化しました。

メルペイはメルカリの子会社で、スマホ決済サービス「メルペイ」を運営しています。Origamiはスマホ決済サービス「Origami Pay」を運営していた企業です。

本M&Aにより、Origami Payはメルペイに統合され、今後はスケールメリットの獲得およびキャッシュレス社会実現への寄与を目指します。

株式会社Origamiのメルカリグループ参画に関するお知らせ

14.オーテがアイモバイルへ株式譲渡

2019年8月に、株式会社アイモバイルがオーテ株式会社の全株式を取得し完全子会社化しました。

アイモバイルは、広告配信・アフィリエイトサービスの「i-mobile」や、ふるさと納税サイト「ふるなび」などを手がけています。子会社となったオーテは、「パズルde懸賞」などのスマホゲームアプリを手がける企業です。

アイモバイルの広告事業のノウハウを生かして、オーテが提供するアプリの収益を高めることなどが本M&Aの目的となっています。

15.フリーがアイフリークモバイルへ株式譲渡

2018年12月に、株式会社アイフリークモバイルが、株式会社フリー(現:アイフリークスマイルズ)と他1社の全株式を取得して完全子会社化しました。

アイフリークモバイルは、クリエイター支援や絵本のアプリの提供、およびITエンジニアの派遣事業を手がけています。子会社となったフリーは、「赤ちゃんタッチ」などの子供向け知育アプリを手がけていた企業です。

フリーの知育アプリを取り込むことで、ファミリーコンテンツの収益改善を図ることが本M&Aの目的となっています。

16.トライフォートがユナイテッドへ株式譲渡

2018年10月に、ユナイテッド株式会社が、株式会社トライフォート(現:Trys)の株式の75%を取得して子会社化しました。

ユナイテッドはゲームアプリやDXプラットフォームなどを手がける企業で、トライフォートはスマホゲームアプリを手がけていた企業です。

ユナイテッドのゲーム事業の収益の安定化、およびトライフォートの優秀な人材の獲得などが本M&Aの目的となっています。

株式会社トライフォートの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

17.PoliPoliが毎日新聞へ「俳句てふてふ」アプリ事業を譲渡

2018年6月に、株式会社PoliPoliが、俳句アプリ「俳句てふてふ」の事業を毎日新聞社へ譲渡しました。

俳句てふてふは俳句を投稿して楽しむSNS型のアプリで、コメントやいいねなど普通のSNSの機能に加えて、季語の検索や著名俳人による選句などの機能があります。

毎日新聞は、紙上で俳句コーナーを持ち俳句雑誌を発刊するなどしており、ノウハウを生かして俳句てふてふを展開できるとの判断で譲受に至りました。

PoliPoliは政治プラットフォーム事業に力を入れており、事業の選択と集中のためのM&Aとなっています。

PoliPoliが俳句のSNSアプリ「俳句てふてふ」を毎日新聞社に事業譲渡

5. アプリ売却・M&Aを高値で行うポイント

M&Aの売却価格は買い手と売り手の交渉で決まるので、アプリを売却する際は高値で売るポイントを押さえることが重要になります。

また、株式譲渡では企業価値評価が売却価格のベースになるので、企業価値評価の仕組みの基礎を把握しておくことも重要です。

アプリの売却・M&Aの相場

アプリの売却・M&Aの相場は、アプリ単体の売却、株式譲渡、事業譲渡の場合に分けて考えていくことになります。

まずアプリ単体の売却の場合は、似たジャンルのアプリで、しかもアクティブユーザー数や平均購入単価が似ている売却事例があれば、その売却額を基準にすることは考えられます。

株式譲渡では、一般に中小企業の場合は、純資産に数年分の営業利益を足すなどして求めることが多いです。

事業譲渡も同様に、譲渡する事業資産の価値にその事業の利益の数年分を加えたものを、一応の相場だと考えることができます。

企業価値の算出方法

非上場企業の株式譲渡では株価を算定しなければなりませんが、そのための企業価値評価方法として、インカムアプローチ・マーケットアプローチ・コストアプローチの3種類があります。これらの手法はそれぞれ一長一短あるので、適切な方法を選ぶことが重要です。

【企業価値の算出方法】

  1. インカムアプローチ
  2. マーケットアプローチ
  3. コストアプローチ

【関連】M&Aのバリュエーションとは?企業価値評価の算定方法やメリット・デメリットを解説【事例・動画あり】

①インカムアプローチ

インカムアプローチでは、事業計画などから将来の収益を予想して、それをもとに企業価値を算定します。大企業のM&Aでよく使われる「DCF法」や、「配当還元法」「残余利益法」などはインカムアプローチの一種です。

インカムアプローチは将来性を考慮できるのが利点ですが、予想をもとにした算定なので客観性に劣るのがデメリットです。そのため、アプリが今後大きく伸びる見込みがある時などは、インカムアプローチが適しているといえるでしょう。

【関連】インカムアプローチとは?企業仮評価法としての特徴・種類やメリット・デメリットまで解説!

②マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、上場企業などから売却する会社と似た会社を選んで、その会社の財務指標(PBR・PER・EBITDAなど)を参考に企業価値を算定する方法です。

マーケットアプローチは、数値をもとに算定するという意味で客観性があるのが利点ですが、必ずしも似た企業が存在するとは限らないのがデメリットだといえます。

また、たとえ表面上の指標が似ていてもビジネスモデルなどの詳細が全く違うこともあるので、本当に比較対象として妥当かどうかを慎重な見極めが必要です。

【関連】マーケットアプローチとは?企業価値評価の方法をわかりやすく解説【実例あり】

③コストアプローチ

コストアプローチとは、売却する会社の純資産をもとに企業価値を算定する方法です。企業価値評価のなかでは、もっともシンプルでよく使われている方法だといえ、特に中小企業の企業価値算定では、多くの場合コストアプローチが使われます。

もっとも単純なコストアプローチは、資産と負債の簿価をそのまま差し引きする方法です。ただし、簿価と時価が大きく乖離している資産については、ほとんどの場合、時価評価してから計算すします。

純資産だけでは企業の将来性が全く反映されないので、営業利益の数年分を足して将来性を大まかに考慮するのが一般的です。さらに、無形資産の価値が高い場合や、高いシナジーが期待できる場合などは、「のれん」としてその価値を加えます。

【関連】コストアプローチとは?メリットとデメリットから計算方法までを解説

高い評価が得られやすいアプリの特徴

アプリの売却は、買い手に高く評価されるかどうかで売却価格が大きく変わってきます。

高い評価が得られやすいアプリの特徴として挙げられるのは、利用者やダウンロード数が多い複数のOSに対応している事業運営に活用できる経営資源があるといった点などです。

アプリを売却する前にこれらの点を確認し、短期間で改善可能な部分があれば改善してから売却することで、売却価格を効率的に上げることができます。

【高い評価が得られやすいアプリの特徴】

  1. 利用者やダウンロード数が多い
  2. 複数のOSに対応している
  3. 事業運営に活用できる経営資源がある
  4. 複数の買い手と交渉

①利用者やダウンロード数が多い

アプリはどのような収益モデルにしろ、利用者数やダウンロード数が多くないとどうにもなりません。特に、アクティブユーザー数は重視されることが多いです。

ただし、ニッチなジャンルでユーザーあたりの売上単価が高いアプリでは、利用者数やダウンロード数自体が少なくても高値になる可能性も考えられます。

また、買い手がシナジー効果など単純な売上以外の利益を求めている場合は、利用者数やダウンロード数以外の要素が重視される可能性もあります。一部このような例外もありますが、原則としては利用者数やダウンロード数が重要です。

②複数のOSに対応している

パソコンやスマホは機種によってOSが違うので、複数OSに対応しているほうが使えるユーザーが増え、アプリの価値が高くなります。

例えば、パソコンならWindowsとmacOS、スマホアプリならiOSとAndroidの両方に対応しているほうが有利です。

将来的な売却を想定してアプリを開発する場合は、開発環境や言語の選択段階から、複数OSに対応できるクロスプラットフォームを意識しておくことよいでしょう。

③事業運営に活用できる経営資源がある

株式譲渡や事業譲渡での売却の場合、アプリ本体以外にもさまざまな経営資源を売却することになります。買い手によっては、アプリ自体の獲得よりも、それ以外の経営資源の獲得をメインに考えていることもあるでしょう。

よって、アプリ自体の価値だけでなく、それ以外の経営資源が事業運営に活用できるかどうかも重要な点です。

例えば、優秀なエンジニアが在籍しているか、アプリやその運営会社に知名度やブランド力があるか、開発や収益化に関して独自のノウハウがあるかなどが売却価格に影響してきます。

④複数の買い手と交渉

アプリの売却において最終的な売却金額は、企業価値やデューデリジェンスの結果だけでなく、買い手企業の資産状況やM&Aを行う緊急度合いによっても異なります。売り手と買い手が統合することで期待できるシナジー効果によっても変動するでしょう。

したがって、交渉する買い手によって評価額は変動する可能性があるのです。そのため、複数の買い手と交渉し、自社のアプリを高く評価してくれる相手を見つけるのが有効となります。

6. アプリ売却・M&Aを行う際の専門家の選び方・注意点

アプリ売却はM&A仲介会社などの専門家に相談することが不可欠ですが、たくさんある仲介会社の中から、どこを選べばいいか迷う方も多いのではないでしょうか。

アプリ売却では、基本的には手数料体系の分かりやすさや、アプリ売却の実績・専門知識があるかなどを基準に仲介会社を選んでいくことになります。

【アプリ売却・M&Aを行う際の専門家の選び方・注意点】

  1. わかりやすい手数料を設定している
  2. アプリ売却・M&Aの実績や専門知識がある

1.わかりやすい手数料を設定している

M&A仲介会社の手数料体系は、初めての方にとってやや分かりにくい部分があります。

後で思わぬ手数料を請求されるといったトラブルを避けるためにも、できるだけ分かりやすい手数料体系の仲介会社を選ぶことが大切です。

以下で一般的な手数料の仕組みについて解説するので、それを踏まえて手数料体系を判断しましょう。

手数料体系の仕組み

仲介会社の手数料の基本となるのは、アドバイザリー契約を締結する時に数十万円程度を支払う「着手金」、基本合意時に成功報酬の1割程度を前払いする「中間報酬」、そして最終契約締結時に支払う「成功報酬」です。

この3つを全て請求する仲介会社もありますが、たいていの仲介会社では「成功報酬のみ」「成功報酬と中間報酬」「成功報酬と着手金」のどれかを採用しています。

まれにこれ以外にも、「月額報酬」や「初期相談料」が発生する仲介会社もあります。成功報酬以外は、一度支払うとアプリ売却が成約しなくても返金されないのが注意点です。

【関連】M&A手数料の相場はいくら?計算方法や仲介会社に支払う報酬について解説!

成功報酬の仕組み

M&A仲介会社の手数料の中で、最も分かりにくいのが成功報酬です。しかし、成功報酬は全ての仲介会社で発生する基本的な手数料なので、この仕組みを理解しておくことが大切です。

成功報酬は「レーマン方式」という、取引金額の一部を報酬とするシステムで計算します。取引金額によって料率が変わるのがポイントで、取引金額が高いほど料率が下がります

成功報酬の注意点は、最低報酬が設定されている場合があることと、何をもって取引金額とみなすかの基準が仲介会社によって違うことです。

M&A仲介会社では、成功報酬の最低金額を300万円から1,000万円程度に設定していることが多いので、小規模なアプリ売却では最低金額を必ずチェックしておく必要があります。

また、取引金額については、売却価格をそのまま取引金額とするシステム(譲渡価額ベース)と、移動した資産と負債の総額を取引金額とするシステム(移動総資産ベース)があるので、負債の多い会社を売却する時はこちらも確認しておく必要があります。

【一般的なレーマン方式の手数料率】

取引金額 手数料率
5億円以下の部分 5%
5億円超から10億円以下の部分 4%
10億円超から50億円以下の部分 3%
50億円超から100億円以下の部分 2%
100億円超の部分 1%

2.アプリ売却・M&Aの実績や専門知識がある

M&A仲介会社はそれぞれ得意分野を持っているので、アプリやIT業界に詳しい仲介会社、またはアプリやIT関連のM&A実績がある仲介会社を選ぶようにしましょう。

仲介会社自体がアプリやITに強いかはもちろん重要ですが、担当するアドバイザーがアプリ売却に詳しいかも重要なポイントです。

例えば、IT業界に強い仲介会社でも、アプリ売却の経験がないアドバイザーがついてしまうケースもあり得ます。逆に、アプリ売却の強みを押し出していない仲介会社でも、アドバイザーの中にアプリ売却に詳しい人がいる可能性もあるでしょう。

知識と経験のあるアドバイザーを探すためには、仲介会社のHPに記載されているアドバイザーの経歴を参照したり、無料相談で実際にいろいろなアドバイザーと話してみるのがおすすめです。

7. アプリ売却・M&Aのご相談はM&A総合研究所へ

アプリやその運営会社の売却・M&Aをご検討中の方は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。多数の成約実績を持つアドバイザーが、親身になってクロージングまでフルサポートさせていただきます。

アプリを売却して利益を得たいという方だけでなく、大手の傘下に入って経営を安定させたい企業様や、M&Aで優秀なエンジニアを獲得したい企業様なども、ぜひお気軽にご相談ください。御社にとって最適なプランをご提案いたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。成功報酬の算定方法は譲渡価額ベースで、負債は含まないので分かりやすい料金体系となっています。

アプリ売却・M&Aに関して、無料相談をお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。

【関連】システム開発会社のM&A・事業承継ならM&A総合研究所
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8. アプリの売却・M&Aの方法まとめ

M&Aを活用したアプリ売却には、株式譲渡による運営会社の売却、事業譲渡によるアプリ単体またはアプリ事業の売却の3つがあります。

それぞれの仕組みやメリットを理解して、最も適したスキームを選ぶことが大切です。

【アプリの種類】

  1. Webアプリ
  2. ネイティブアプリ

【アプリ市場の動向】
  1. 市場規模は年々拡大
  2. オンライン会議アプリが急速に拡大
  3. 日本はゲームのシェアが大きい
  4. サブスクリプションのシェアが拡大

【アプリの売却・M&Aの流れ】
  1. M&A仲介会社などの専門家に相談・依頼
  2. 希望売却価格の設定、資料作成
  3. 相手先の選定、マッチング
  4. トップ面談、交渉
  5. 基本合意契約の締結
  6. 買い手によるデューデリジェンス実施
  7. 最終契約の締結
  8. クロージング

【企業価値の算出方法】
  1. インカムアプローチ
  2. マーケットアプローチ
  3. コストアプローチ

【高い評価が得られやすいアプリの特徴】
  1. 利用者やダウンロード数が多い
  2. 複数のOSに対応している
  3. 事業運営に活用できる経営資源がある

【アプリ売却・M&Aを行う際の専門家の選び方・注意点】
  1. わかりやすい手数料を設定している
  2. アプリ売却・M&Aの実績や専門知識がある

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