M&Aにかかる税金とは?節税対策、知っておくべき注意点を徹底解説

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取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

この記事では会社売却・M&Aで発生する税金に関してまとめています。会社売却・M&Aで発生する税金とその内訳、具体的な金額や節税方法も解説します。M&Aで少しでも手元にお金が残るよう、かかる税金の種類と金額を把握して節税対策はしっかりと行いましょう。

目次

  1. M&Aにかかる税金と所得の仕組み
  2. M&Aにかかる税金(株式譲渡)
  3. M&Aにかかる税金(事業譲渡)
  4. M&Aにかかる税金(組織再編)
  5. M&Aにかかる税金(第三者割当増資)
  6. M&Aにかかる税金の比較表
  7. M&Aの節税対策で意識すべきポイント
  8. M&Aの節税対策を行う方法
  9. M&Aの節税対策における注意点
  10. M&Aにかかる税金の申告・支払時期
  11. M&Aにかかる税金の相談はM&A総合研究所へ
  12. M&Aにかかる税金まとめ
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1. M&Aにかかる税金と所得の仕組み

M&Aにかかる税金と所得の仕組み

個人、法人ともに、さまざまな種類の税金を納めており、税金の計算方法は、それぞれ違います。ここでは、個人と法人それぞれに生じる所得と税金を紹介します。

個人に生じる所得と税金

個人に生じる所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得といった10種類に分かれています。

このうち配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、譲渡所得(ゴルフ会員権などの売却)、一時所得、雑所得は、それぞれの所得を合算し、所得控除を引いてからその金額に課税所得の税率を乗じて税額を計算します。これを総合課税といいます。

10種類に分かれた所得のうち、利子所得、退職所得、山林所得、譲渡所得(土地・建物の売却、株式の売却)は、他の所得とは別にして税額が計算されます。これを分離課税といいます。

法人に生じる所得と税金

法人の所得は、上記の個人のように所得が分類されるといったケースはありません。法人税には、法人税(地方法人税を含む)、法人住民税(都道府県民税、市町村民税)の法人税割、法人事業税の所得割(地方法人特別税を含む)がかかります。

法人税を計算する際は、会計上の税引後当期純利益をはじめとして、加算調整(損金不算入・益金算入)と減算調整(益金不算入・損金算入)を行って法人税の所得金額が計算されます。

法人の所得金額に対して何%の税額がかかるかといったものは、法定実効税率といいます。これはM&Aを検討する際の企業評価や事業計画書を作成する場合に必要です。

【関連】会社売却における利益の計算方法や税金を解説!

2. M&Aにかかる税金(株式譲渡)

M&Aにかかる税金(株式譲渡)

まずは、M&A・会社売却で多く利用される手法である株式譲渡のケースを説明します。株式譲渡とは、その名のとおり株式を譲り渡す手法です。

株式を譲り渡すことで会社の所有者が変わり、事業承継が可能となります。株式売買して利益が出れば、それが譲渡所得として課税の対象です。株式を持っているのが個人の場合と法人の場合によって課税される税金が異なりますので、分けて解説します。

個人株主の株式譲渡にかかる税金

オーナー社長のように株主が個人の場合、事業承継の手段として株式を譲り渡すことで利益が出れば、その利益は税務上個人の譲渡所得となります。

譲渡所得は、売却価格(純資産+営業権)から、取得費(株式を取得した費用など)や譲渡費用(M&Aアドバイザーへの仲介手数料など)を控除した売却益です。

例えば、株式の売却価格(純資産+営業権)を3億円、株式取得費を1,000万円、譲渡費用を500万円とした場合、以下のとおり譲渡所得が計算されます。
 

  • 3億円-(1,000万円+500万円)=2億8,500万円

そして、個人株主のこの譲渡所得税は分離課税方式ですので、一般的な所得税とは別で一律の税率で課税されることとなり、売却益に所得税15.315%と住民税5%の合計20.315%が課税される形です。

オーナー経営者による株式譲渡のメリット

オーナー経営者がM&Aで株式譲渡をした場合、分離課税として株式譲渡所得に対して所得税、復興特別所得税、個人住民税がそれぞれかかります。現行の税率では、20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+個人住民税5%)です。

株式譲渡所得の計算は以下です。
 

  • 譲渡所得=譲渡収入金額 ―(取得費+譲渡費用)

総合課税の最高税率は約56%となっています。そのため役員報酬(給与所得)数年分、株式譲渡金額が例えば同じ価格であった場合、税率の差額分だけM&Aの方が多くの手取り金額を得られるといったメリットがあります。

株主である個人が役員であれば、株式譲渡と役員退職金を合わせると税負担を少なくできます。役員退職金は、売り手側の経営者だけでなく、買い手企業にもメリットがあります。株式譲渡をした場合、投資額の経費処理はできません。

しかし、株式譲渡代金の一部を役員退職金として買い手企業は経営者へ支給ができ、役員退職金の支給分を株式取得代金から圧縮できるといったメリットがあります。

ただし、適正水準を超えた役員退職金は税務調査で損金不算入となるケースもありますので、専門家に相談するのがベストです。

法人株主の株式譲渡にかかる税金

株主が法人の場合は、事業承継の手段として株式を譲り渡すことで利益が出れば、その利益は税務上会社の利益と計算されます。そのため、法人税として税金が発生し、それに連動して法人住民税や法人事業税の税金も課税されるのです。

会社利益の計算は個人株主の場合と同じですが、総合課税方式で法人の他の所得と同じように課税されることが違う点です。

そして、法人税は法人住民税や法人事業税を加えた税率がおおよそ30%〜40%です。この税率は実効税率と呼ばれ、法人の課税所得金額によって具体的な数値が異なるので注意しましょう。

個人と法人の株式譲渡における税金面の違い

個人と法人がM&Aで株式譲渡をした場合の税金面での違いがあります。税率、譲渡時の取得費、相続税の取得費加算の適用、他の所得との通算、繰越欠損金などが挙げられます。

税率は、個人の場合は20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+個人住民税5%)です。法人の場合は、資本金1億円以下の法人は約34%(法人税、地方法人税、都道府県民税、事業税、地方法人特別税)と大きく違います。

株式譲渡時の取得費は、個人の場合は、譲渡収入×5%が取得費として認められますが、法人の場合は、取得費が認められません。

相続税の取得費加算の適用を受けるためには、個人は株式譲渡所得の計算の際に、株式譲渡に関わる相続税を取得費に加算できるといった特例があります。これは、相続開始日の翌日から3年10カ月以内に売却した場合に限ります。

また個人では、非上場株式を発行会社に譲渡した場合、受け取った金額が譲渡株式に対応する部分の金額を超えるときであっても、全額が株式の譲渡所得に関わる収入金額として特例が使用できます。

しかし、法人の場合はこうした特例はありません。他の所得との通算は、個人の株式譲渡所得は分離課税のため、他の所得とは切り離して所得計算がされます。非上場株式同士の譲渡損益は、その年の1年のみ通算ができます。

法人は、譲渡損、譲渡益とともに他の所得と通算されます。繰越欠損金は、個人の場合は非上場株式の譲渡損失は繰越ができません。しかし法人の場合は、会社の規模によって欠損金の繰越控除を利用できるケースがあります。

資本金1億円以下の法人であれば全て充当できます。しかし、資本金1億円を超える法人や、資本金5億円以上の法人による100%子会社の場合は、一部しか充当ができません。

譲受側に贈与税・法人税がかかるケース

あまりにも低い価格で株式譲渡を行った場合、買い手側に贈与税・法人税がかかるケースがあります。贈与税が発生するケースとして、売り手と買い手ともに個人株主だった場合で、低価格での株式譲渡が行われると買い手側に贈与税がかかります

贈与税の計算方法は以下となっています。
 

  • (適正時価―取得価格)×贈与税率

贈与税率は、贈与の価格によって変わり、最低10%(200万円以下の場合)~最大55%(3,000万円超の場合)です。そのため、贈与する額が大きくなるほど税率が高くなってしまいます。

次に法人税が発生するケースを紹介します。売り手(個人・法人)から買い手の法人に対して、非常に安い価格で株式譲渡が行われた場合、買い手に法人税がかかります。法人税の計算方法は以下です。
 
  • (適正時価―取得価格)×法人税実効税率

このように、贈与税・法人税がかかるケースがあるため、注意が必要です。

【関連】株式譲渡とは?手続きからメリット・デメリット、税金に関して解説【成功事例あり】
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3. M&Aにかかる税金(事業譲渡)

M&Aにかかる税金(事業譲渡)

次に、事業譲渡のケースを説明します。事業譲渡は、会社の事業を譲り渡すことです。会社ではなく、会社で行ってきた事業そのものを譲り渡すことで事業承継を行います。

事業承継の手段として事業譲渡を選んだ場合も、売却益に対して課税されるといった考え方は株式譲渡と同じです。なお、事業とは棚卸資産や不動産などに限らず、営業権(のれん)や取引先などの財産も一体として捉えたものをいいます。

以下2つに分けてみていきましょう。

法人税等

買収側に譲り渡す事業を行っていたのは個人ではなく法人であり、その事業を売却した場合の利益も法人にあります。

そのため、事業譲渡で課税されるのは法人税等であり、個人に課税されることはありません。実効税率で約30%〜40%が課税されます。

譲渡利益の計算は、譲渡価格(純資産+営業権)から、譲り渡す資産の価格と負債の価格の差額(純資産)を控除し、事業譲渡の場合はおおよそ「営業権=譲渡利益」として考えることが可能です。

消費税

先ほど説明したとおり、事業譲渡では消費税が課税されます。

譲り渡す資産の価格に消費税が課税されますが、譲り渡すもののうち、土地や売掛金など消費税の課税されないものは除外し、営業権などの課税される資産のみが対象です。

そのため、例えば3億円で事業譲渡したからといって、必ずしも3,000万円の消費税が課税されるわけではありません。

譲渡対象に不動産が含まれるケースの税金

譲渡対象に不動産が含まれるケースの場合、買い手は登録免許税や不動産取得税が課税されます。登録免許税は、不動産や会社の登記や登録の際に課税される税金をいいます。譲渡対象に土地が含まれる場合、土地の所有権移転登記を行わなければなりません。土地の売買に伴う登録免許税は以下の計算方法です。
 

  • 「土地の価格×15/1000」

不動産取得税は、土地や建物といった不動産を取得した場合に、課税される税金をいいます。取得する際に、有償、無償、登記の有無に関わらず発生します。しかし、相続で引き継いだ際は課税されないケースもあります。不動産取得税は、以下の計算方法です。
 
  • 「取得された不動産の価格×3/100」

このように譲渡対象に不動産が含まれる場合は、注意が必要です。

【関連】事業譲渡とは?会社譲渡との違いや手続きの流れを分かりやすく解説!

4. M&Aにかかる税金(組織再編)

M&Aにかかる税金(組織再編)

M&Aを行う場合、税制適格かどうかで税金の支払いが決定します。税制適格要件を満たすM&Aの種類とは一体どのようなものでしょうか。また、6つの税制適格要件も詳しくご紹介しますので、事前に確認しましょう。

税制適格要件を満たせば税金はかからない

合併や会社分割など組織再編を行った場合、原則として当事者には課税関係が発生します。しかし一定の税制適格要件を満たした場合は、課税関係が生じず税金はかかりません。税制適格要件を満たすM&Aの種類は以下に挙げていきます。
 

  • 適格新設合併
  • 適格吸収合併
  • 適格吸収分割
  • 適格新設分割
  • 適格株式交換
  • 適格株式移転

税制適格要件を満たす場合、資産や負債を帳簿価格で引き継ぐ税務処理がなされるため、売却損益が発生せず課税されないのです。

税制適格要件とは

税制適格要件は、以下のとおりです。
 

  • 対価要件(対価は株式のみで、それ以外の資産が交付されていないこと)
  • 事業関連要件(合併する側と合併される側の事業が互いに関係するものである)
  • 事業規模または経営参画要件(合併する側と合併される側のそれぞれ資本金額、従業員数、事業規模の割合が5倍を超えない)
  • 従業者引継要件(合併前の従業員うち、8割以上が合併後に引き継がれる)
  • 移転事業継続要件(合併前に行われているメインとなる事業が合併後も継続されるのが見込まれている)
  • 株式継続保有要件(共同事業)(合併後、交付される全ての株式が継続して保有されると見込まれている)

このように、合併する側とされる側の関係が、100%完全支配関係であった場合、50%の支配関係の場合、共同事業を行う場合とで、パターンごとに要件がそれぞれ変わりますので注意が必要です。

5. M&Aにかかる税金(第三者割当増資)

M&Aにかかる税金(第三者割当増資)

第三者割当増資とは、売却側の企業が発行済の株式を譲り渡すのではなく、買収側の企業に対して新たに株式を発行するものです。

発行済の株式を譲り渡すのではないため、買収側の企業は100%の株式を取得できませんが、多くの株式を保有すると、会社の経営権を取得できます。

この第三者割当増資の場合は、新たな出資と新たな株式発行となりますので、税務上も単に増資が行われたと判断されることになるでしょう。

そのため、株式譲渡や事業譲渡とは違い、譲渡所得や利益といった話にはならず、譲渡所得税や法人税等の課税はありません。

贈与税に注意

第三者割当増資は基本的には課税されませんが、仮に第三者割当増資によって発行済株式の株価が上昇してしまうようなケースでは、上昇した金額が税務上贈与とみなされ、贈与税が発生する可能性があります

例えば、資本金5,000万円で発行済株式数5,000株の会社が、第三者割当増資の手法によって新たに1株2万円で5,000株発行したとしましょう。そのまま反映すると、この会社は資本金1億5,000万円で発行済株式数1万株となります。

もちろん新規発行した株もありますが、株価だけ見ると第三者割当増資前はもともと1株1万円だったのが、第三者割当増資後は1株1万5,000円となり、株式の価値が上がっていると考えられるのです。この差額が税務上買収側企業からの贈与とみなされ、課税の対象になることもあります。

第三者割当増資の場合、株式の時価で手続きをすれば贈与税の問題はありませんので、時価での取引かどうかは確認してみてください。

【関連】第三者割当増資の株価への影響の理由や事例を紹介!メリット・デメリット、算出方法も解説!

6. M&Aにかかる税金の比較表

M&Aにかかる税金の比較表

M&Aによる事業承継の方法はいくつか考えられますが、文字だけではわかりにくい部分もありますので、上記の内容を表にまとめた下記をご確認ください。
 

株式譲渡 個人株主 {株式の売却価格-(株式の取得費用+譲渡費用)}
×(所得税15.315%+住民税5%)
株式の譲渡所得×20.315%
法人株主 {株式の売却価格-(株式の取得費用+譲渡費用)}
×法人税等30%〜40%
株式の譲渡所得×(30%〜40%)
事業譲渡 ①法人税等
{事業の譲渡価格-(譲渡する資産+譲渡する負債)}
×法人税等30%〜40%
事業の譲渡所得×(30%〜40%)
②消費税
(譲渡価格-課税対象でない資産の価格)×消費税10%
課税対象の譲渡価格×10%
第三者割当増資 贈与税の問題を除いて課税されません。

事業承継では、どの手法が良いかは税務上の問題だけではなく、会社の状態なども考えて、総合的に判断する必要があります。また、どのくらいの税金がかかるのか、税務上のことも念頭に置く必要があるのです。

特に税金の支払時期はM&Aの成立後となりますので、M&A・会社売却でいくら入ってくるかだけでなく、税金を支払えるように注意しましょう。

7. M&Aの節税対策で意識すべきポイント

M&Aの節税対策で意識すべきポイント

次に、発生する税金に関する基本的なポイントも押さえておきましょう。会社売却・M&Aの節税に入る前にチェックすべきポイントは、以下の2つです。
 

  1. 節税の観点から売買価格を決める
  2. 複数の売却方法を検討する

ここからは、それぞれのポイントを解説します。

①節税の観点から売買価格を決める

課税される金額が少なければ、その分支払う税金は減ります。当然ではありますが、会社売却やM&Aの話し合いをしている間は、売買金額にだけ注目してしまい節税のことを忘れてしまいがちです。

会社売却を考える際は、公認会計士や税理士など専門家の意見を聞いてみましょう。早い段階から、できる限り節税したい意向を伝えておくのがおすすめです。

また、売却する会社に後継者がいないなどの問題がある場合に限り、登録免許税や不動産登録税の軽減措置を受けられる可能性もあります。

売買金額だけを見るのではなく、発生する税金に関しても早い段階で意識しましょう。

②複数の売却方法を検討する

ここまで説明したとおり、M&A・会社売却の方法によって発生する税金の種類や内訳は大きく変わってきます。そのため、可能であれば複数の売却方法を検討してから手法を決めるべきでしょう。

方法の違いで、かかる税金が2倍以上異なってくるケースもあります。売却方法別にシミュレーションを行い、最もかかる税金の少ない手法を選ぶのがおすすめです。

M&A総合研究所では豊富な経験・知識を持つアドバイザーが丁寧にサポートいたします。「M&Aをしたいがどの手法を選ぶのが良いかわからない」「税金負担の少ない方法を選びたい」などのお悩みがある場合は、ぜひ一度無料相談をご利用ください。

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8. M&Aの節税対策を行う方法

M&Aの節税対策を行う方法

ここまで、M&A・会社売却にかかる税金に関してまとめました。M&Aでは会社売却の売却益が大きくなりやすく、課税される税金も高額です。

M&A・会社売却で多額の売却益を勝ち取ったとしても、多額の税金を支払うとなると、なかなかM&Aに対して前向きになれません。

誰でも、できる限り手元に多くの金額を残したいと考えるのが自然です。それでは、M&A・会社売却に関して、少しでも多くの売却益を残すための節税方法はあるのでしょうか。

ここからは会社売却・M&Aの手法別に節税対策を紹介します。利益を少しでも多く残したい方はぜひチェックしましょう。

株式譲渡における節税対策

まずは株式譲渡の場合の節約方法から見ていきます。

個人にしても、法人にしても株式売却の売却益に税率を乗じて税額が計算されますので、売却益が小さければ小さいほど最終的に課税される税額は小さくなります。

先述のとおり、売却益は株式の売却価格(純資産+営業権)から取得費や譲渡費用を控除した金額なので、取得費や譲渡費用を大きくすれば売却益は小さくなるわけです。

もっとも、譲渡費用はM&A・会社売却にかかる仲介手数料などなので、支払額を増やしたところで、手元に残る金額が増えることにはなりません

そこで、取得費を大きくするのが節税のポイントです。

株式の取得費は売却価格の5%

原則、実際に売却をする株式の取得にかかった費用のことを取得費といいます。しかし、税務上その金額がわからないときには売却価格の5%を取得費として計算するのが可能です。

また、わからないときだけではなく、取得費が売却価格の5%を下回る場合も5%まで引き上げて計算できます。

1,000万円出資して設立した会社が、長年の成果により純資産5億円となることもあり得ることであり、そのような企業の営業権は高額で買収されて会社の売却価格がさらに高額になるケースもあるでしょう。

例えば、売却会社における純資産と営業権を合計すると10億円であれば、株式の取得費を1,000万円ではなく、10億円の5%である5,000万円とすれば、売却益を4,000万円も削減するのが可能です。

事業譲渡における節税対策

事業譲渡の場合は、おおよそ営業権が売却益となりますので、事業譲渡を選択するだけで節税効果がある場合があります。

一見、事業譲渡は法人税と消費税が課税されるため、株式譲渡に比べて不利なように見えます。しかし、取得費を大きくする方法でしか節税できない株式譲渡に比べて、営業権が売却益と計算される事業譲渡の方法は、売却益が小さくなるケースもあります。

例えば、1,000万円を出資して設立した会社の純資産が1億5,000万円として、営業権をプラスして2億円で売却する場合、オーナー社長の株式を譲り渡すのであれば1億9,000万円の売却益となるのに対し、事業譲渡は5,000万円の売却益となります。

計算式は割愛しますが、株式譲渡の場合は約3,800万円が課税されるのに対し、事業譲渡の場合は約2,000万円と計算されます。

このように、一見すると税務上不利にも思える事業譲渡でも、大幅な節税効果を期待できる場合があります。

第三者割当増資における節税対策

先述のとおり、第三者割当増資では課税されませんので、第三者割当増資にかかる税金を節税するといったことはありません。

ですが、のちに行われる事業承継の場面で第三者割当増資をすると、節税効果が期待できます。

第三者割当増資で新株を発行する際に、増資前の1株当たりの相続税評価額よりも少額で発行すれば、増資後の1株あたりの相続税評価額は小さくなるのです。

そのため、次の世代が株式を相続によって事業承継する際の相続税を節税できます。さらに、増資により会社に資金が投入されたり、経営に関して買収企業側の協力も期待できたりと、のちの事業承継の場面でメリットは多いでしょう。

退職金(役員退職慰労金)を用いた株式譲渡

事業承継をして引退するオーナー社長の場合は、受け取る金額の一部を退職金にすると節税が可能です。退職金には、退職所得税などが課税されることになり、その計算は以下のとおりです。
 

(退職金支給額-退職所得控除額)×0.5×税率-控除額

退職所得税は累進課税となっており、受け取る金額によって最低税率5%から45%の税率で変動します。

株式譲渡の譲渡所得であれば税率は一律でしたが、あまり大きい金額を退職金とすると、譲渡所得だけに比べて手元に残る金額が少なくなってしまうのです

例えば、事業譲渡で会社に入った金額の全額を一気に退職金にすると高い税率となり、税務上損をしかねません。節税効果を狙う場合は、時間をかけて少しずつ会社から受け取るようにしましょう。

分割型分割で株式譲渡益を圧縮

ヨコの会社分割(分割型分割)とは、いわゆる兄弟会社を作ることをいいます。

兄弟会社を設立すると、M&Aに不要な資産の移動が可能です。買い手企業が欲しがらない資産も一緒に買収したうえで、税金を支払う義務が発生する株式譲渡と比較すると、メリットの大きい手法です。

なお、会社売却で買い手が欲しがらない資産とは、銀行への預金・社長が住む社宅の土地や建物・社長の車などのように形式上会社が所有しており、買い手側からすると使い道がないものをいいます。

ですので、新設した兄弟会社へ不要な資産を移しておくことで、M&Aを行う際に移した資産分の税金が課税されずに済むでしょう

具体例を確認

例えば、1,000万円を出資して設立した会社の売却価格(純資産+営業権)が5億円として、その会社の1億円が買収側にとって不要な資産とすると、ヨコの会社分割をする場合としない場合で、以下のように違いができます。
(なお、計算しやすいように譲渡費用を0円とします。)
 

会社分割しない場合 株式の売却益は、
5億円-1,000万円=4億9,000万円
と計算されます。
オーナー社長の株式を譲り渡すとして、課税額は、
4億9,000万円×20.15%=約9,873万円
と計算されます。
会社分割した場合 1億円の資産を分割しますので、5億円-1億円=4億円が売却額です。
会社分割で譲り渡す株式の価格も同じように分割するため、株式の取得費は800万円です。
そして株式の売却益を計算すると、
4億円-800万円=3億9,200万円
同じくオーナー社長の株式を譲り渡すとして課税額は、
3億9,200万円×20.15%=約7,898万円
と計算されます。

このように、ヨコの会社分割で兄弟会社を作るだけで簡単に大幅な節税をするのが可能です。

売却益を経費で相殺する

法人が、子会社株式や投資有価証券などを売る場合、多額の経費を計上する時期に合わせて売却すると法人税を節税できます。例えば、5,000万円の株式売却益を計上した事業年度に、5,000万円の広告宣伝費に使用すると法人税がゼロになります。

しかし経費による節税を行う予定の場合、同時にキャッシュアウトを伴うため、最終的に手元に残る現金が少なくなります。そのため、経営上不可欠であり、効果的な経費に使うことが大切です。

また、以下の記事ではM&Aの手法である株式譲渡と事業譲渡のどちらが節税できるのかを紹介していますので、節税に関してより詳しく知りたい人は併せて確認してみてください。

【関連】会社譲渡の税金まとめ!株式譲渡と事業譲渡どちらが節税対策になる?

9. M&Aの節税対策における注意点

M&Aの節税対策における注意点

会社売却・M&Aを行うことで、後継者が見つけられない場合でも会社を残すことが可能です。しかし、会社売却・M&Aにおける節税には事前に意識しておくべき注意点もあります。

節税に関する注意点は、以下の3つです。
 

  1. 財産の移動で税金が発生することもある
  2. 印紙税が発生する
  3. 節税による税務リスクは避けられない

M&Aを成功させるため、ぜひチェックしておいてください。

①財産の移動で税金が発生することもある

ここまで説明してきた税金とは別に、会社の事業によっては財産の移動に伴い税金が発生する可能性もあります。

例えば不動産を買い手に渡す場合、不動産取得税が発生します。不動産取得税は原則評価額の4%で、土地や住宅の場合は3%です。

また、不動産に投機を行う場合は登録免許税が発生します。売買によって発生する登録免許税は2%ほどとなるでしょう。

これらは買い手が支払う税金ですが、M&Aをスムーズに進めるため売り手も税金の存在を意識してみてください。

②印紙税が発生する

会社売却・M&Aによって株式を売買するにあたり、その内容が記載された契約書の取り交わしを行います。契約書の取り交わしでは、印紙を貼付して発生する印紙税を納付するケースも多いのですが、株式の売買にかかる契約書は課税対象外となるため印紙税は発生しません。

しかし、株式の売買にあたって支払われた対価に対して発行する領収書は課税対象となり、金額に応じて領収書への印紙貼付が必要です。

会社売却・M&Aの取引額、つまりは領収書に記載される金額は高額になることも珍しいことではなく、貼付する印紙の額も高額になりやすいため、こちらも意識しておくのが良いでしょう。

③節税による税務リスクは避けられない

M&A・会社売却には税務リスクがつきものです。税務リスクとは、将来税務調査が行われた際に、否認されて追徴課税されるリスクをいいます。

株式譲渡で会社を買収する場合、買収側は売り手の会社を事業承継し、その会社を経営していくことになりますので、その会社の税務リスクを引き継ぐことになるのです。

そのため買収側は、事前に売り手側の税務リスクをしっかりと調査しておく必要があります。また、売り手としても円満なM&A・会社売却のために自社の税務リスクをしっかりと把握しておくべきでしょう。

これに対して事業譲渡や会社分割を利用した場合には、買収企業が税務リスクを引き継がないとするのも可能です。

そのため、買収企業が税務リスクを引き継がない場合、税務のデューデリジェンスの必要性はそれほど高くはないといえます。

税務リスクを減らすには

売却価格が数億円から数十億円にもなりうるM&Aでは、先述のとおり、大幅な節税も可能です。

ですが、この節税対策も税務リスクの観点から慎重に行わなくてはなりません。

万が一節税の方法を間違えてしまい税務調査で否認されてしまうと、節税したはずの数百万から数千万円の大金が後から追徴課税されます。

引退したオーナー社長にとっては、それほどの金額が追徴されればひとたまりもありません。事業承継でM&A・会社売却を利用する場合の節税対策は専門家に依頼するなどして、慎重に行うべきでしょう。

10. M&Aにかかる税金の申告・支払時期

M&Aにかかる税金の申告・支払時期

M&Aで発生した、個人や法人の税金支払時期を確認しましょう。M&A後に税金が課税されますので、多額の売却益を全て使ってしまうと、税金の支払いが不足してしまう可能性がありますので注意が必要です。

先ほど説明したとおり、株式譲渡や事業譲渡にかかる税金は、個人の譲渡所得にかかる税金、法人税、消費税などがあります。

税金を支払うタイミングとしては、個人か法人かで異なるだけです。そのため、譲渡所得を個人として受け取るのか、法人として受け取るのかには注意するようにしましょう。

個人の場合

個人の譲渡所得にかかる税金(所得税・住民税)は、個人に課税されますので、確定申告のタイミングで支払います。

その年の1月1日から12月31日までに生じた所得は、翌年の3月15日までに確定申告をするのです。例えば、年度末である3月に会社売却した場合、その譲渡所得の申告は約1年後です。

M&Aの実行からかなり時間がたってから課税が行われることもありますので、課税額をあらかじめ予測して必要なお金を確保しておく必要があります。

法人の場合

法人税の申告は会社によって異なりますが、原則としてその法人の決算期から2カ月以内に支払うことになっています

例えば、事業年度が3月末日までの会社であれば、税金の支払いは5月末日までです。個人の場合と同じく、株式譲渡や事業譲渡のタイミングによっては、1年ほど支払いまでのタイムラグがある場合があります。

法人の場合も、課税額を予測し税金の支払いに向け十分なお金を確保しておくことが必要です。

11. M&Aにかかる税金の相談はM&A総合研究所へ

M&Aにかかる税金の相談はM&A総合研究所へ

会社売却・M&Aを行いたいと考えても、買い手探しから契約までを自社で取りまとめるのは困難なことが多いです。M&Aに少しでも興味があるなら、まずM&A仲介会社に相談するのをおすすめします。M&A仲介会社は、買収相場や業界動向・手続きに関する知識も豊富です。

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12. M&Aにかかる税金まとめ

M&Aにかかる税金まとめ

M&A・会社売却に関する税金や節税対策の解説をしました。しかし、税金のことはよくわからない方が多いように、実際の税務はもっと複雑になることもあります。税理士や会計士であっても、M&A・会社売却の税務を専門に取り扱ってない、といったケースも多くあります。

売却価格が大きくなるM&Aですから、節税対策が可能な金額も大きくなります。節税対策をする場合は、M&Aアドバイザーや専門の税理士などに相談して慎重に手続きを進めていくのがおすすめです。

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