2026年02月23日更新
会社譲渡の税金はいくらかかる?計算シミュレーションと最新の節税対策を専門家が解説
2026年現在、M&Aは経営戦略の主要な選択肢となりました。会社譲渡の税金負担を正確に把握することは、最終的な手残り金額を最大化するために不可欠です。本記事では最新の税制に基づき、株式譲渡や事業譲渡の計算方法から実効性のある節税手法まで詳しく解説します。
目次
1. 会社譲渡とは
会社譲渡とは、「株式譲渡」のことです。会社譲渡企業の株主が第三者に株式譲渡をすることで、経営権を譲受側に引き渡します。中小企業の場合、オーナー経営者が全株式を保有しているケースが多く、譲受側は全株式取得が可能です。
株式譲渡では、対価は現金と決まっています。合併などのように、対価に株式は用いられません。
事業譲渡との違い
会社譲渡(株式譲渡)では株主が変わるだけなので、会社名や会社の保有する債権債務、取引先契約や許認可などの資産は全て包括承継されます。対外的に目に見える部分の変化は、ほとんどありません。
事業譲渡は、売り手企業の事業とそれに関連する資産、権利義務などを個別に選別して売買するM&A取引です。譲渡対象を個別に引き継ぐため「特定承継」と呼ばれます。
資産や契約などを個別に移転させる手続きが必要で、従業員の再雇用や取引先との契約再締結など、株式譲渡に比べて手続きが煩雑になる点が特徴です。仮に全事業を売却しても法人格は売り手に残ります。
2. 会社譲渡(株式譲渡)における税金の種類と最新の税率
会社譲渡(株式譲渡)の場合、譲渡側に税金が発生します。譲渡側は、個人の場合と法人の場合があり、それぞれ異なる課税内容です。個人の場合は所得税と住民税、法人の場合は法人税が発生します。
①所得税
所得税は、会社譲渡をする側が個人の場合にかかります。会社譲渡の所得税は株式を売却したときに得た譲渡所得(=利益分)に対して課税され、株式売却額から取得代金とM&A手数料などを引いたものが譲渡所得です。
- 譲渡所得=株式譲渡額-(株式取得代金+M&A手数料)
譲渡所得に対する所得税の税率は15%です。これに加えて、2037(令和19)年まで復興特別所得税(所得税額の2.1%)が課されるため、実質的な税率は15.315%となります。
②住民税
住民税も所得税と同様で、会社譲渡側が個人の場合にかかる税金です。住民税は、譲渡所得に対し税率5%となっています。
③法人税
法人税は、会社譲渡の株主が法人の場合にのみ課税される税金です。
法人税と総称されるものには、法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税が含まれます。これらを合算した実効税率は、企業の規模や所在地によって多少の変動はありますが、2026年現在においても標準税率を基にすると約29.74%(資本金1億円超の法人の場合)程度となるのが一般的です。現在の税務環境では、これらの地方税を含めたトータルの税負担率を前提として、譲渡スキームを検討することが重要です。
法人の株式譲渡益(法人の場合は譲渡所得と言わない)の計算方法は、個人の場合と変わりません。ただし、法人税は、株式譲渡益への分離課税ではなく、他の損益と通算した利益額に課税されます。仮に損金額の方が大きく決算が赤字であれば、その年度は課税を受けません。
3. 【シミュレーション】会社譲渡でかかる税金の計算方法
実際に会社譲渡したときにかかる税金の計算例は、以下のとおりです。会社譲渡の際に、どの程度の税金がかかりどの程度、手元に残るのか、会社譲渡額が2億5,000万円という前提条件で計算しています。
【会社譲渡側が個人の場合】
| 会社譲渡額 | 2億5,000万円 |
| 株式取得費用 | 1,100万円 |
| M&A仲介手数料 | 2,000万円 |
| 譲渡所得 | 2億1,900万円 |
| 所得税(譲渡所得の15%) | 3,285万円 |
| 住民税(譲渡所得の5%) | 1,095万円 |
| 残額 | 1億7,520万円 |
譲渡所得は「会社譲渡額-(株式取得費用+M&A仲介手数料)」で算出します。このケースでは、2億5,000万円 - (1,100万円 + 2,000万円) = 2億1,900万円です。
個人株主の場合、所得税・復興特別所得税(合計15.315%)と住民税(5%)が課税されます。
・所得税等:2億1,900万円 × 15.315% = 33,539,850円
・住民税:2億1,900万円 × 5% = 10,950,000円
・合計税額:44,489,850円
手元に残る金額は、譲渡額からM&A仲介手数料と税金を差し引いた「1億8,551万150円」となります。
【会社譲渡側が法人の場合】
| 会社譲渡金額 | 2億5,000万円 |
| 株式取得費用 | 1,100万円 |
| M&A仲介手数料 | 2,000万円 |
| 会社譲渡益 | 2億1,900万円 |
| 法人税(30%) | 6,570万円 |
| 残額 | 1億5,330万円 |
会社譲渡益は個人の譲渡所得と同様に「会社譲渡額-(株式取得費用+M&A仲介手数料)」で求めることが可能です。
事例のケースで計算をすると、会社譲渡益は2億1,900万円となります。
そして、法人の場合にかかる税金は、法人税のみです。法人税は会社譲渡益に法人税率を乗じて導き出すことができます。
事例のケースでは法人税率を30%として計算しているため、「6,570万円(法人税)」が会社譲渡にかかる税金となるでしょう。
4. 株式譲渡と事業譲渡の比較:会社譲渡の税金面で有利な手法の選び方
まず、株式譲渡は譲渡側が個人の場合と法人の場合がありますが、事業譲渡は譲渡側は法人です。法人の場合、株式譲渡でも事業譲渡でも課税内容は同じ(=法人税)で税率も変わりません。
単純比較ができる問題ではありませんが、税率だけを比較するならば、個人が株式譲渡するケースが一番、税率が低いのは、前章の計算例でも明らかです。
5. 会社譲渡(株式譲渡)の際に行うべき3つの節税対策
会社譲渡(株式譲渡)にかかる税金の概要を理解したところで、節税対策を解説します。節税は度を過ぎてしまうと脱税となるため、一般的な税金対策の方法を活用しましょう。
①退職金を活用した節税対策
オーナー経営者が会社を譲渡する際、譲渡対価の一部を役員退職金として受け取る方法です。
株式の譲渡所得は所得税・住民税を合わせて約20%の分離課税となりますが、役員退職金として受け取る分は「退職所得」に該当します。退職所得は、勤続年数に基づいた「退職所得控除」が受けられるほか、控除後の金額を1/2にした上で課税されるため、会社譲渡の税金を抑制する非常に強力な手段となります。ただし、2026年現在の税務調査においても、過大すぎる退職金は損金算入を否認されるリスクが継続して高いため、適正額の算定には注意が必要です。
②第三者割当増資を使った節税対策
第三者割当増資は、株主であるかどうかにかかわらず、特定の第三者に新株を受けられる権利を与えて増資をすることです。新株を交付して増資することで、税金をかけずに持ち株比率を下げて経営権を引き渡せます。
③会社分割を併用した節税対策
会社分割は、会社の一部あるいは全事業を切り離し他の会社に引き渡すM&A手法です。会社を売却するときに、買収側が必要としない資産が含まれることもあります。例を挙げると、社宅の土地や社長の車など、オーナー経営者のもので会社名義のものです。
買収側にはほとんど使い道がないといえます。そこで、会社分割を併用すれば、これらの資産を他のグループ会社へ移すことが可能です。オーナー経営者は必要な資産を保有でき、買収側も要らない資産を買収せずにすみます。
6. 2026年現在のM&A市場における税務上のトレンドと注意点
現在のM&A実務において、税務面で特に留意すべきポイントを整理します。
事業承継税制の特例措置に関する期限の再確認
2027年3月に期限を迎える事業承継税制の特例措置(贈与税・相続税の納税猶予)を念頭に置いた駆け込み的な会社譲渡が増加しています。免除要件の維持など、譲渡後の継続的な税務コンプライアンスがこれまで以上に重要視されています。
非上場株式の評価方法に関する最新の動向
会社譲渡の税金を計算する基礎となる「株式価値」の評価について、純資産価額方式や類似業種比準方式の適用が厳格化されています。特に親族内承継と第三者承継を組み合わせる場合、適正な時価との乖離が寄附金課税を招く恐れがあるため、精緻な株価算定が求められます。
海外法人への会社譲渡における源泉徴収の注意点
グローバル展開を進める企業によるクロスボーダーM&Aも活発です。譲受側が海外法人である場合、対価の支払いに際して日本国内での源泉徴収が必要になるケースや、租税条約の適用届出が必要になるケースがあるため、国際税務の視点が欠かせません。
7. 会社譲渡における税金の申告・納税手続きと注意点
会社譲渡に伴う税金は、手続きや注意点を押さえておかなければ、思わぬトラブルにつながる可能性があります。ここでは、申告のタイミングや事前に知っておくべきポイントを解説します。
①税金の申告と納税のタイミング
税金の申告と納税には期限が定められています。
個人の株主が株式を売却した場合、譲渡を実行した年の翌年2月16日から3月15日までの確定申告期間中に申告・納税を完了させる義務があります。現在はe-Taxによる電子申告が一般的となっており、譲渡所得の計算明細書などの添付書類もデジタルデータでの提出が定着しています。申告期限を過ぎると延滞税が発生するため、譲渡後は速やかに資料を整理しておくことが肝要です。
一方、法人株主の場合は、株式を譲渡した日が属する事業年度の法人税申告時に、他の損益と合算して申告します。申告・納税の期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内です。
②株式取得費が不明な場合の対処法
創業者オーナーの場合など、会社の設立時から株式を保有していて取得費を証明する書類(契約書など)が見つからないケースは少なくありません。
このように取得費が不明な場合、税法上「売却代金の5%」を概算取得費として計上することが認められています。ただし、これはあくまで実際の取得費が不明で、かつ売却代金の5%を下回る場合にのみ適用できる救済措置です。実際の取得費が5%を上回る場合は、その事実を証明できる資料を探すことが節税につながります。
③専門家への相談の重要性
会社譲渡の税金計算や節税対策は非常に専門的で、個々の状況によって最適な手法は異なります。特に、退職金の金額設定や会社分割の活用などは、税務上のリスクを伴う可能性があります。
申告漏れや計算ミスによる追徴課税といったリスクを避けるためにも、M&Aや税務に精通した税理士や専門アドバイザーに事前に相談し、万全の体制で手続きを進めることが重要です。
8. 自己株式取得(自社株買い)における税金の特例
ここでは、発行会社に株式譲渡を行う際の税金について見ていきましょう。
税務上配当(みなし配当)の処理方法
個人・法人が持つ株式を、株式の発行会社に売却する取引は、発行会社にとって自己株式の取得です。支払われる対価は、利益剰余金を原資とするので税務上配当(みなし配当)として扱われます。
みなし配当は、簡単にいうと、会社から株主が配当金を受け取っていないのに、受け取ったとみなされて課税されることです。
法人株主が株式譲渡を行うケース
みなし配当は、受取配当金として営業外利益に計上されます。しかし、税務では、一定金額を所得から引くことが可能です。発行会社側で配当金から徴収された源泉所得税額は、法人税額から控除できます。
個人株主が株式譲渡を行うケース
個人が株式を発行法人に売却しても、みなし配当です。所得税法で、みなし配当は配当所得に区分され、総合課税として確定申告しなければなりません。確定申告で、所得税から一定額が控除を受けられます。
ただし、株式を発行会社以外に売却するときの譲渡所得(分離課税)とは違うことを知っておきましょう。
9. 事業譲渡における税金と消費税の仕組み
事業譲渡は、会社が保有する特定の事業資産を売却する取引であるため、譲渡側が法人であれば、譲渡益に対して法人税等が課税されます。また、株式譲渡との大きな違いとして、課税資産(土地を除く有形固定資産、無形固定資産、営業権など)の譲渡に対して「消費税」が課される点が挙げられます。2026年現在の取引においては、インボイス制度が完全に定着しており、適格請求書の発行や保存要件を満たすことが、譲受側の仕入税額控除を成立させるために極めて重要です。事業譲渡を選択する場合は、譲渡価額に消費税分を含めて資金繰りを計画する必要があります。
①法人税
事業譲渡では、譲渡側に法人税(法人税、法人住民税、法人事業税、地方法人税、特別法人事業税)が課されます。課税内容は、会社譲渡の場合と同様です。実効税率(2024年度時点で約29.74%)も変わりません。
②消費税
事業譲渡では、譲渡対象となる資産のうち、消費税の課税対象となる資産について消費税が発生します。買い手は譲渡対価に消費税を上乗せして支払い、売り手が国に納付します。
主な課税資産は以下の通りです。
- 建物や機械などの有形固定資産(土地は非課税)
- ソフトウェア、特許権、商標権などの無形固定資産
- 棚卸資産(商品や原材料など)
- のれん(営業権)
一方、消費税非課税資産の具体例は以下のとおりです。
- 土地
- 有価証券
- 売掛金、貸付金などの債権
③不動産取得税
不動産の売買を実施した際、一定要件のもとで不動産の購入者に課される税金が、不動産取得税です。
事業譲渡で不動産が譲渡対象となる場合、買い手側に不動産取得税が課されます。税率は原則として固定資産税評価額に対し、土地および住宅は3%、住宅以外の家屋は4%です。なお、宅地の場合は2027年3月31日まで、課税標準額が評価額の2分の1に軽減される特例措置が適用されます。
④登録免許税
事業譲渡で不動産を取得した場合、登記の書き換えを行う必要が生じます。その際に発生するのが登録免許税です。
登録免許税は、固定資産税評価額に対して課されます。土地の売買による所有権移転登記の場合、税率は原則2.0%ですが、2026年3月31日までは軽減措置により1.5%が適用されます。
10. 事業譲渡の節税対策
ここでは、事業譲渡を実施する際に可能な節税対策を考えます。譲渡側・譲受側に分けて見てみましょう。
譲渡側の税金対策
事業譲渡で譲渡側に課される税金は法人税です。法人税は、年度内の損益を通算した利益分に課される税金ですから、利益額を減らせばそれだけ課税額が減りますし、赤字決算であれば課税自体を受けません。そこで取り得る節税対策としては、以下のようなものがあります。
- 多額の特別損失を計上する
- 大規模な設備投資などを実施し支出を増やす
- 譲渡価額を譲渡資産の簿価と同額程度にして事業譲渡益自体をゼロにする
これらの手段はいずれも付帯条件があるため、必ず実施できるものではありません。特別損失は該当するものが存在しなければ計上しようがありませんし、設備投資をするためには現金が必要であり、その調達をどうするか、また、調達できたとしても返済の負担が発生します。
節税だけにこだわって事業譲渡益を減らした価額設定にするのは、本末転倒といえるでしょう。
譲受側の税金対策
事業譲渡で譲受側に発生する税金は消費税です。譲受対象に消費税課税資産があれば消費税は必ず発生しますので、消費税に対する節税対策は難しいでしょう。消費税課税資産とは、土地以外の有形固定資産、ソフトウェア、商標、特許権、意匠権、棚卸資産、のれんなどです。
この中で着目したいのが、のれんになります。のれんは、減価償却の対象となるので、最大20年間(実際には5年程度が多い)にわたって、均等償却ができるため、その間、節税効果を得られるでしょう。
11. 会社譲渡の税金に関するおすすめの相談先
会社譲渡における税金や節税方法を解説しました。数%とはいえ、会社譲渡の場合は数百万円の差が生まれることもあります。節税などに関することは専門家に相談しましょう。ここでは、会社譲渡(株式譲渡)・事業譲渡などの税金に詳しいM&A仲介会社を紹介します。
M&A総合研究所
中小企業のM&Aに数多く携わっているM&A総合研究所では、税務はもちろんのこと、M&Aの経験や知識が豊富なM&Aアドバイザーが案件をフルサポートします。
M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談を受け付けていますので、会社譲渡をご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
12. 会社譲渡の税金まとめ
会社譲渡にかかる税金は、手法などにより100万円以上の差が生まれることもあり、しっかり理解して会社譲渡をどのように行うのか考えなければなりません。
税率だけを見れば、事業譲渡よりも個人の会社譲渡(株式譲渡)の方が低いでしょう。しかし、会社譲渡を行って全て引き渡すのか、会社を残して事業の一部を引き渡すのかは、金銭以外の要素も関係するので、一概に会社譲渡を選択した方がよいとは言い切れません。
できるだけお金を手元に残したいのであれば税金に注意して、会社譲渡をするべきか事業譲渡をするべきか専門家に相談しましょう。
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