2022年08月10日更新
国内M&A市場の展望・トレンドまとめ【2022年最新版】
事業拡大や事業承継の手段として検討されるM&Aですが、国内のM&Aの件数はどのように推移しているのでしょうか。どの業界が国内M&Aを伸ばしているのか気になるところです。国内M&Aの市場動向や、展望、今後のトレンドについてランキングなどを用いて解説します。
1. 国内M&Aの市場動向
日本国内のM&Aは、2018年度まで景気回復を背景に企業統合が進んだ結果、件数で前年を上回りました。しかし、足元のトレンドとして、国内M&Aはどのような市場で増加しているのでしょうか。
ここでは、国内企業同士のM&A(IN-IN)、国内から海外のM&A(IN-OUT)、海外から国内のM&A(OUT-IN)のそれぞれのトレンドを解説します。
国内企業同士(IN-IN)のM&A件数はやや増加
足元では、国内企業同士(IN-IN)のM&A件数はやや増加傾向です。実際の中身は、これとはやや異なるトレンドとなっています。
以前は同業他社が合併する水平統合が中心でした。独禁法の抵触も懸念されるため、大型水平統合形式のM&Aは一服し、中小企業同士のM&Aが増加しています。これには、経営者の高齢化や事業承継の問題など、さまざまな要因があります。
ここからは、その詳細を解説しましょう。
IN-INのM&Aが増加している理由
IN-INのM&A、特に中小企業のM&Aが増加しているのはなぜなのでしょうか。背景にあるのは、中小企業の経営者の高齢化とそれに伴う事業承継問題の深刻化です。この解決策の一つとして、M&Aでしょう。
実際に、M&Aを利用した事業承継のサポート業務を事業とする「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」の2019年の発表を見ると、事業承継・事業譲渡に関連する相談は、900件を超えています。
将来の展望としては、事業承継に対する課題が依然残っていることから、中小企業のM&Aは今後も増加の余地があると考えられます。
国内から海外(IN-OUT)へのM&A件数は平行線
国内から海外(IN-OUT)へのM&Aの件数は、ほぼ変わらずの水準で推移しています。海外企業のM&Aを通じ、事業の成長を実現することを狙って行われるケースが多いです。
成長戦略として位置づける企業もあることから、一定の件数で推移しています。一方、業種によっては海外進出に向けたM&Aを積極化している業種もあります。
例えば、近年では食品業界などでIN-OUT型のM&Aの事例が顕著です。最近では、味の素が中期経営計画で、海外食品メーカーなどを中心に資金を投じる計画があると明らかにしています。それ以外にも、日本ハムもウルグアイの食肉処理会社の子会社化を進めるなどの事例があります。
今後も、展望としては平行線で推移していくとの予測です。業界によっては積極的に実行していく企業もあるでしょう。
海外から国内(OUT-IN)へのM&A件数はやや増加
海外から国内(OUT-IN)のM&Aは、トレンドとしてやや増加しています。国内の大企業が業績不振に陥ったことなどを背景として、中国企業を中心に国内企業の買収が行われています。これには、M&Aによって日本企業の高い技術力を得ることで、事業拡大を狙う意図があるようです。
代表例は、2016年の台湾の鴻海によるシャープの買収です。それ以外には、2017年の米国投資ファンドによる東芝メモリの買収などが挙げられます。
国内の敵対的買収件数は少ないがTOBは増加
国内企業同士(IN-IN)のM&Aでは、敵対的買収の件数がほとんどない状態に変化はありません。敵対的買収の場合、買収対象企業の従業員による同意が得られないケースが多いためです。
従業員が反対している中で無理に買収を実行したとしても、従業員の士気の低下や、優秀な人材の離反などにより、企業価値が損なわれることになります。結果として、M&Aがうまくいかない可能性が高くなるでしょう。
国内企業同士(IN-IN)のM&Aでは敵対的買収は実行されず、今後も増える可能性は低いといえます。一方、敵対的買収でも用いられるTOB(株式公開買付け)手法そのものは活用が進んでいます。
特に上場企業によるグループの再編や、子会社の完全子会社化を実行する場合に、よく使われる手法です。今後の展望としても、TOBを用いたグループの再編は実行される可能性が高いでしょう。
DX目的のM&Aも増加
昨今、日本国内のあらゆる業界でDXの推進が叫ばれています。インターネットの急激な発達やIT系巨大企業によるサービスの出現により、さらにDXの必要性は高まっているといえるでしょう。
とはいえ、日本のDX戦略はまだ後れを取っている現状です。なかなか進まないDXの推進を図るために、企業では、ITやテクノロジー関連の人材を確保することが重要であるとの認識が広がってきています。
総合商社などでは、ITの人材を各部署の配置する動きが見られます。このように、DXを推進するうえで、IT企業を買収し、IT関連のスキルや技術を獲得するM&Aが増加しているでしょう。
業界再編に向けたM&Aも盛ん
国内企業のM&A動向として、業界再編に向けたM&Aが増加しています。特に顕著なのは、この後のトレンドランキングで詳述しますが、調剤薬局業界です。大手グループ企業の傘下に入ることで業務の効率化が図られることや、事業拡大のための再編が進んでいます。
物流業界のM&Aも盛んです。特にインターネットショッピングなどの急成長により、運送会社の競争は激化しています。運送業は新規参入が増加しており、1990年からの10年間に、約2万社増えて、その数は62,000社です。
ドライバーの運転時間が規制される働き方改革関連法、いわゆる「2024年問題」の対応が迫られる中、拠点を増やすことが経営課題です。M&Aがこの問題解決のための一手段として、ますます注目されています。
このように、業界再編に向けたM&Aは今後もしばらく続くといえるでしょう。
上場企業、スタートアップ、クロスボーダーM&Aは伸び悩む
国内企業のM&Aは、2021年に過去最多の件数を記録しました。しかし、一方では、上場企業や、スタートアップ企業、海外とのクロスボーダーのM&Aは伸び悩んでいます。
上場企業のM&A価格相場は、もともとPERの目安が平均で15倍と高くなっています。このコストを回収するには時間がかかるとの指摘もあるでしょう。
スタートアップ企業の場合、投資目的のM&Aが多く見られます。創業者利益を早期に確定させることが大きな理由として挙げられ、EXIT戦略としての要素が強いM&Aです。事業継続が難しくなるケースもあります。
クロスボーダーのM&Aは、海外との手続きの違いなどさまざまなリスクがあるため、日本企業にとっては、いまだハードルが高いといえるでしょう。これまでは、欧米が主流と考えられていましたが、中小企業などによる東南アジアのM&Aは増加傾向です。
このスタートアップとクロスボーダーのM&Aが、今後の日本のM&Aのカギを握っているといっても過言ではありません。
M&Aだけでなく上場も積極的に行われる
近年のM&Aは活発に推移しています。M&A件数は、新規上場件数と相対的に似通った動きをしているとの見方があります。コロナ禍で減少したIPOは、2020年の102件から、2021年には前年から34件増の136件と増加しました(日本取引所グループ「新規上場基本情報」より)。2007年以来の100件を超える数字です。
これは、コロナの影響で新規上場を見送った企業が、2021年に上場を果たしたことも影響していると見られます。
2. 国内M&Aの市場展望
国内M&Aは、国内企業同士(IN-IN)のM&Aを中心に緩やかに増加のトレンドにあります。現在の景気の動向や今後の社会の変化などを踏まえ、国内M&Aはどのような推移をたどるのでしょうか。将来の展望を解説します。
M&Aが必須の時代になる
結論からいうと、今後は経営にとってM&Aが必須の時代になるのではないかと考えられます。理由としては、大きく「経営者の高齢化」「コスト削減」「時間短縮」「人材不足」があげられます。
それぞれの理由の詳細を、解説しましょう。
経営者の高齢化
国内企業にとってM&Aが必須になる要因のひとつは、経営者の高齢化です。中小企業の経営者の引退年齢は、平均して約70歳といわれる中、東京商工リサーチによる2019年全国社長の年齢調査では、社長の平均年齢は59.9歳です。事業承継問題は非常に重要な課題となっています。
一方、後継者の育成には5~10年必要ともいわれています。自社内での育成には時間を要するでしょう。後継者の育成をしている間にビジネス環境が変化することで、企業価値が下がってしまうことも考えられます。事業承継の手段としてのM&Aの検討が重要といえるでしょう。
コスト削減
事業を拡大する手段としてM&Aを実行する場合にも、コストはかかります。新規マーケットに参入する際、習慣や文化などさまざまな面で違いが存在する中で事業を育てていくには、大きなコストがかかります。こうしたコストを削減する手段としてもM&Aは有効です。
特に国内市場が縮小する展望にある中、海外市場に進出していく際にも、M&Aは有効となります。例えば、情報収集や事業所の開設、人材の採用・育成などには、さまざまな費用が必要です。M&Aを通じて現地の企業を買収すれば、それらのコストをかけることなく、事業拡大できるでしょう。
時間短縮
コストと同様に、時間短縮の意味でもM&Aは役立ちます。例えば、文化面で違いの大きい新規の地域で信頼を得ようとするには長い時間を要します。
変化の多い現代にあっては、将来の展望として、成長するための新規事業が必要な場合、それをゼロから育てていくと、その間に時代遅れになってしまう可能性もあり得るでしょう。こうしたリスクを軽減し、事業を拡大していく手段の一つとして、M&Aの検討は有効となります。
それ以外にも、例えば海外進出をする場合、現地の文化や商習慣に習熟した現地の企業をM&Aにより買収することで、自力で進出するよりも効率的に早く事業を拡大できると考えられます。
人材不足
特に現在活況なIT関連企業などで顕著ですが、成長トレンドにある事業を拡大しようとしても、人材が不足している場合があります。その際にも、M&Aは有効な解決策となります。
M&Aで競合他社の人材を獲得することで、すでに必要なスキルを保有している優秀な人材が確保できる可能性は高まるでしょう。特に変化の激しい業態の企業では、長期の育成の必要がない、即戦力の人材を獲得できる点で、M&Aは非常に有効な手段です。
この観点でM&Aを実行する場合には、求めている優秀人材が確実に残ることを確認する必要があります。今後のキャリアプランの展望などを憂慮し、優秀人材が流出してしまう可能性もあるため、買収・M&Aの際の前提条件として織り込んでおくことが重要です。
3. 国内M&Aのトレンド
今後も国内M&Aは事業継続・拡大の両方の観点から必要な手段として、緩やかな拡大が見込まれます。どのような業界でM&Aが特に伸びて、どのような業界ではM&Aが伸び悩むと考えられるでしょうか。
現状のマーケットトレンドや、勢い、将来の展望を踏まえ、M&Aの動向を予測します。
国内でのM&A件数が伸びそうな業界ランキング
まずは、将来の展望および足元のトレンドから、国内でのM&Aが伸びそうな業界について、ランキング形式で理由とともに解説します。
国内でのM&A件数が伸びそうな業界ランキング第1位
国内でのM&A件数が伸びそうな業界のランキング1位は、IT・ソフトウェア業界です。IT・ソフトウェア業界は比較的新しい業種で、IoTやAI(人工知能)の普及から、産業として大きく拡大しています。それに伴い、M&Aをはじめとする業界再編が行われています。
IT・ソフトウェア業界のM&A件数は、近年増加のトレンドで、M&Aが非常に盛り上がりを見せている業界です。今後の展望としても、IT・ソフトウェア業界のM&Aは、増加傾向で推移するのではないかと予想されます。
要因には、主に下記の3点が挙げられます。
- IT・ソフトウェア業界の事業構造
- 技術者不足
- 業界の動向の速さ
「IT・ソフトウェア業界の事業構造」は、大型の設備投資は不要で、小資本で起業できる点です。企業数が非常に多く、開発面で多くのビジネスパートナーを有しています。M&Aが起きる可能性が高い構造にあるといえるでしょう。
中には、すでにアライアンスなどの形で業務提携を行っている企業同士もあります。ここから一歩踏み込んで資本関係を結ぶことは、十分あり得る業界です。
IT・ソフトウェア業界は多重下請け構造になっています。小さいパーツや半導体などを、中小企業が労働集約型で生産していることが多くある現状です。こうした下請け企業は非常に多くありますが、より高い付加価値を生むために、将来有望な他社と戦略的な提携・M&Aを行う傾向もあります。
2点目の要因は「技術者不足」です。国内企業にとってM&Aが必須になる要因の一つに、人材不足を解消できる点を挙げました。まさにIT・ソフトウェア業界では、業界全体が成長トレンドにある中で、人材不足が課題です。人材確保のためにM&Aが伸びやすいと考えられるでしょう。
情報処理推進機構(IPA)が年に一度発行する「IT人材白書」の中に、ユーザー企業の増加が、IT人材の増加を上回るペースであることが触れられています。それ以外にも、IT企業・ユーザー企業がともに求める質の人材がいない点を問題視しているとの記述もあります。
つまり、ITへのニーズの伸びに対して、人材は慢性的に不足している状況です。そうした中で、自社に対するユーザー企業からのニーズを満たすために、M&Aという手段で人材を確保することが選択肢として挙げられます。将来の展望として、伸びるビジネスに人材を投じ、さらなる事業拡大を狙う考えです。
3つ目に、「業界の動向の速さ」もM&Aを加速する要因の一つです。IT・ソフトウェア業界では、特に近年、AI・IoTの普及により、非常に速い速度で開発が進み、技術が頻繁にアップデートされています。将来の展望も見通しが難しい業界といえるでしょう。
こうした新しい技術を得るためには、自社開発では間に合わない場合もあります。M&Aを実行することで、早期に技術を得ることが可能です。このように、M&Aの実行により、事業拡大のチャンスを得られる機会が多くなる点もM&Aを加速する要因の一つです。
国内でのM&A件数が伸びそうな業界ランキング第2位
国内でのM&A件数が伸びそうな業界ランキング2位は人材派遣業界です。景気動向に左右される業界といえます。2021年の東京オリンピックにかけて、引き続き好景気が予想され、M&Aによる事業拡大を狙う企業が出やすいのではないかと考えられます。
2008年のリーマン・ショック後の景気後退で人材需要が激減し、事業拡大が進まない時期が継続していました。特にIT業界を中心に、さまざまな企業にとって、人材不足が深刻な課題となっています。人材派遣業界にとっては事業拡大の格好のチャンスといえる景況感です。
一方、業界のビジネスモデルが非常にシンプルなだけに、企業としては、事業を展開する地域や、顧客層、派遣人員などの拡大を通じて、売上の拡大が見込みやすい業界でもあります。
今後は、M&Aの実行を通じて、事業拡大していくことを試みる企業が増加していくのではないかとも見込まれます。
国内でのM&A件数が伸びそうな業界ランキング第3位
国内でのM&A件数が伸びそうな業界ランキング第3位は調剤薬局業界です。調剤薬局は、医師の出す処方箋に基づき医薬品を提供します。少子高齢化に伴い、医療全般のニーズが高まる中で薬局需要も高まり、調剤薬局の数も増加傾向です。
将来の展望としても、少子高齢化が進むにつれニーズが高まることが予想されています。それに伴い、事業拡大に向けたM&Aが活発になることが予想されます。
調剤薬局は、2009年の薬事法改訂で、コンビニやスーパーなどが参入した結果、大企業が非常に多くなりました。しかし、まだまだ中堅の薬局などが残っています。ニーズが拡大する中で、さらに事業を拡大していく観点から、業界の再編が行われていくのではないかと考えられます。
広義にM&Aを定義した場合、業務提携も非常に多く実施されている業界です。例えば、大手企業がインフルエンサーやデザイナーなどとコラボして商品を開発・販売する例が挙げられます。
今後も消費者のニーズをとらえ、事業を拡大していくための提携・連携を含めたM&Aが拡大するとの見込みです。調剤薬局業界のM&Aの動向は、下記のリンクのまとめも参照ください。
国内でのM&A件数が伸びそうな業界ランキング第4位
国内でのM&A件数が伸びそうな業界ランキングの第4位は小売業界です。近年では、H2Oリテイリングとイズミヤの経営統合など、大きなM&Aが一巡した印象もあります。しかし、引き続き業界の再編の観点から、M&Aの件数が伸びることが考えられます。
特に個人事業に近いような形のビジネスでも、店舗を複数展開していくために、同じような業種の会社を買収していく例が複数の業種で顕著です。デパートなどを中心に経営環境が厳しいところも多く、コスト削減の観点からM&Aが加速していくことも予測されます。
過去の動向を見ると、消費税導入や増税の前にも、小売業界のM&Aが増加した経緯があります。その際にも、規模の拡大と、それによるコスト削減・効率化に伴う競争力の強化を狙って、M&Aを実施したのではないかとの見方がありました。
国内でのM&A件数が伸びそうな業界ランキング第5位
国内でのM&A件数が伸びそうな業界ランキング第5位は保険代理店業界です。保険業界そのものは、国内の人口の減少に伴い、縮小傾向にあるほか、新しい販売チャネルの増加などにより競争が激化しています。そうした業界全体の動向を背景に、コスト削減や人員確保に向けたM&Aは増加すると予想されます。
近年の保険代理店業界は、銀行窓販やネット販売、来店型保険ショップなどの新しいチャネルが増加傾向です。それに伴い、競争が激化しています。特に来店型保険ショップの台頭が著しく、「保険の窓口」や「保険市場」を経営するグループは年々新規契約を伸ばしています。
こうした業界動向の中、事業を拡大し競争力を高めていくための施策の一つとして、M&Aが増加していくでしょう。特に保険代理店で事業拡大を目指そうとすると、店舗の経営などの費用がかかります。コストを抑制しながら事業を拡大する観点から、活発にM&Aが行われていくのではないでしょうか。
スタートアップ、クロスボーダー、スモールM&Aもトレンド
国内のM&A件数は、新型コロナウイルス拡大の影響でいったんは減少を見せたものの、緩やかな増加傾向です。今後の展望として大きく期待ができるのは、現状も伸びつつあるスタートアップ・クロスボーダー・スモールM&Aといえるでしょう。
スタートアップのM&A件数は、2020年までは90件前後と微増でしたが、2021年は前年比58%増の143件と飛躍的に増加しています。今後も、EXIT戦略としてのM&Aは引き続き進み、既存事業強化を目的としたM&Aが増えるであろうとの予測です。
クロスボーダー(IN-OUT、OUT-IN)のM&Aは、中堅・中小企業による東南アジアをターゲットとした案件が急増しています。2021年3月には、日立製作所が米国のGlobalLogicを買収しました。このような大型の案件も影響し、2021年の日本と世界各地域とのM&Aは過去最多です。
後継者不足や承継問題を背景に、小規模事業によるM&Aも増加しています。マッチングサイトなどの普及で、個人でも容易に相手先を選択できるようになりました。マッチングサイトを活用し、年商数百万円~1億円以下の小規模・個人店舗などが、事業拡大や事業承継を行っているケースが増えています。
国としてもM&Aを推奨し、経済産業省・中小企業庁などは支援に積極的な姿勢を見せています。上記3つのトレンドが、2022年以降のM&Aにも大きく影響すると予想されるでしょう。
国内でのM&A件数が伸びなさそうな業界
逆に、国内でのM&Aの件数が伸びなさそうな業界としては、どのような業界があるのでしょうか。主に、証券会社・鉄鋼業・食品業界などが挙げられます。それぞれの要因を解説します。
証券会社
国内でのM&A件数が伸びなさそうな業界の一つに、証券会社が挙げられます。2008年のリーマン・ショックから、規制緩和や景気低迷を背景として、すでに業界の再編が進んでいる業界です。今後の業界再編を目的としたM&Aの件数が伸びる可能性は低いと考えられます。
一方、規制緩和に伴い、新規参入が増加したインターネット専業の証券会社があります。競争激化に伴い、委託売買手数料が非常に低迷していることから、コスト削減・競争力強化の観点で、再編が行われる可能性はあるでしょう。
銀行系の証券会社は、個人の投資行動の変化に伴い、メガバンクが傘下の証券会社を再編している動きもあることから、引き続き証券部門の強化に向け、こうした動きが行われる可能性はあります。
鉄鋼業
鉄鋼業もM&Aが伸びにくいであろうと予想される業界の一つです。業界の動向としては、新興国を中心に世界的に鉄鋼需要が増大している一方で、中国・韓国などを中心に、新鋭製鉄所の稼働に伴う供給の増加、鉄鋼価格の下落など、事業環境は大きく変動しています。
原料価格の動向や価格決定サイクルも短期化しており、将来の動向が見通しがたい状況です。こうした中で、国内鉄鋼業界は、新日鐵住金、JFEホールディングスの二つを中心とした事業統合がすでに進んでいます。さらなるM&Aなどによる事業統合は進みにくい状況といえるでしょう。
一方、下請けにある中小企業が大企業の傘下に入る形でM&A・経営統合を行うことはあります。引き続きこのような形のM&Aが行われていく可能性はあるでしょう。
食品業界
食品業界では、国内のM&Aは伸びにくいものの、海外に向けたIN-OUTのM&Aが伸びると考えられる業界です。以前は人口減少に伴う国内市場の縮小、原材料の価格高騰などビジネス環境が厳しい中、コストを抑制しながら、規模拡大を目的としたM&Aが活発に行われていました。
このように、国内での業界再編はすでにある程度進んでいます。一方、人口が減少する国内市場から脱却し、規模拡大のため海外市場へ進出する手段として、M&Aを加速していくことは考えられます。
ミツカンホールディングスがユニリーバ子会社のコノプコからパスタソース事業を買い取った例がありました。そのほか、味の素が経営戦略として、2020年までに海外食品メーカーなどを中心に1,500億円の買収を検討しているプレスリリースもあります。
今後も、事業拡大に向けたM&Aは加速していくと予想されます。
4. これからの時代にM&Aを成功させるには
M&Aが必須の時代でありながら、ランキングで述べた通り、業種ごとのトレンドはさまざまです。市場の変化が激しい中で、M&Aを成功させるために必要なこととして、どのようなことがあるのでしょうか。
外部機関を積極的に活用すべき
現代は、AI・IoTの普及を含めて、外部環境の変化が非常に速い時代です。今後もますます市場の動きは早くなり、先行きが読めない時代と考えられます。
そうした中で、事業拡大に向けたM&Aを検討されることも多くなっていくのではないかと推察されます。M&Aを実行するための市場の分析なども非常に複雑になり、容易ではありません。
市場の変化が速い現代でM&Aを成功させるためには、外部機関を積極的に活用していく必要があります。M&A関連の分析を専門家以外の方が行うのには限界があるためです。
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M&Aを進めていくうえでは、会計だけではなく法務面などさまざまな専門知識が必要になります。より希望に沿った形での成約を目指すためには、経験や交渉力も欠かせません。
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5. 国内M&Aの市場展望・トレンドまとめ
ランキングで紹介した通り、国内M&Aは業界別に動向は異なるものの、IT企業などを中心に活発に推移するのではないかと推察されます。
しかし、現代の事業環境の変化は激しく、ランキングで紹介した動向もすぐに変化してしまうことも考えられます。その中でM&Aを成功に導くためには、外部機関の活用が重要です。
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