2025年11月27日公開
土木業界のM&A動向!売却・買収事例10選とメリットを解説!【2025年最新】
土木業界では後継者問題や若者が入ってこないことでの人手不足問題などが深刻化しており、M&Aでの生き残りを考える会社が増加しています。この記事では、土木業界でM&Aを行うメリットや注意点、実際に行われたM&Aの事例について解説します。
1. 土木業界の概要と動向
土木業界は、社会全体のインフラを担うとても重要な業界ですが、近年、後継者問題や人手不足問題が深刻化しており、会社の将来的な存続に不安を感じている経営者が増加しています。
そのような中で、M&Aが大きな解決策として注目されていますが、土木会社がM&Aを行うメリットはどのような点にあるのでしょうか。
この記事では、土木業界の近年の動向とM&Aについて解説します。
土木業界とは
土木業界とは、インフラを設計して建設し、維持することを業務とする業界です。インフラとは、国民の生活を豊かにするために必要な公共施設のことで、土木業界では、道路、橋、ダム、発電所、上下水道や浄水施設、排水施設などの建設や運営が行われています。
建設業界と混同されがちですが、建設業では建物を作るのに対して、土木業では建物ではないインフラ整備を行います。
土木会社では、実際の建設工事の他に、建設計画の立案、現場調査、施工管理なども必要です。また、近年は工事での環境への配慮なども求められるようになり、高い技術力や行政からの許認可が求められます。
新規参入が難しい業界であることから、M&Aによる経営統合が近年注目されている業界です。
土木業界の市場規模と動向
業界動向サーチの分析によると、2022年から2023年にかけての土木業界の業界規模は2.2兆円でした。
高度経済成長期に建設されたインフラ設備の老朽化への対策工事や、近年増加している災害への対応や防災工事などの需要が増えていることから、他の業界とは異なり、新型コロナ禍の影響もそれほど大きく受けませんでした。
首都圏の再開発が活発に行われているので、土木関連工事の需要は今後も高い水準で維持されるものと思われます。しかし、国内の受注競争は厳しくなっており、価格競争からの採算性の低下が懸念されています。
参考:業界動向サーチ「土木業界の動向や現状、ランキングなどを研究」
2. 土木業界のM&A動向
土木業界では、経営者の高齢化による後継者問題と、少子化ときつい仕事というイメージからの若者離れによる人手不足が深刻化しており、業績は好調でも人手不足を原因とした倒産が相次いでいます。
そこで、人材確保を目的としたM&Aが活発化しています。同業者を買収することで、経験豊富な人材を確保できる上に、自社が持っていない技術を持つ会社の買収によるブランド力強化を図る動きもあるようです。
3. 土木会社をM&Aで売却するメリット
土木会社をM&Aで売却することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。主な4つのメリットについて解説します。
後継者問題の解決
土木会社をM&Aで売却するメリットの1つ目は、後継者問題を解決できるということです。
土木業界に限らず、現在、日本の会社の6割以上の会社の経営者が60歳以上と高齢化しており、約4割の会社が経営者の身内や従業員に適当な後継者がいない、後継者問題を抱えています。
業績が順調であっても、経営の後を引き継ぐ人がいなければ、現在の経営者が経営を続けられなくなったときに、その会社は廃業するしかなくなってしまいます。
そこで、親族承継や従業員承継以外のもう一つの手段として注目されているのが、第三者への会社売却であるM&Aです。後継者問題があっても、M&Aでの売却により、会社を継続できて、顧客や従業員を守ることが可能になります。
従業員の雇用維持
土木会社をM&Aで売却するメリットの2つ目は、従業員の雇用を維持できるということです。もしも、後継者問題などを理由に廃業することになると、従業員は全員解雇するしかありません。
現在、土木関連業界は人手不足が深刻なので、若くて資格や技術を持つ職人は簡単に再就職できるかもしれません。しかし、事務職員や高齢の職人は再就職できるかわかりません。失業保険が切れたあとで、路頭に迷う人が出てしまう可能性もあります。
M&Aでは、一般的に買収側が従業員の雇用も継続してくれるので、経営者が経営を続けられなくなっても、従業員の生活を守ることが可能です。
売却益の獲得
土木会社をM&Aで売却するメリットの3つ目は、経営者は売却益を手に入れることができるという点です。
廃業してしまえば不動産や設備を売却しなければお金は入ってきません。しかし、M&Aで会社を売却すれば、会社の規模や業績に応じた金額が買収側から売却側の株主に支払われます。
M&Aでの会社売却には、会社の不動産や設備の他にのれん代なども含まれるので、廃業時の不動産売却よりも高額な金額が期待できるでしょう。
売却金からM&Aの手数料と税金を支払った残りの売却益は、経営者や株主が自由に使えるものです。引退後の生活費に充てることも可能ですし、新しく事業を起こしたい場合には新規事業のための資金にすることもできます。
廃業にかかる費用の削減
土木会社をM&Aで売却するメリットの4つ目は、廃業時に必要なコストを負担しなくてすむという点です。
土木会社を廃業した場合には、従業員規則の記載に従って、解雇する従業員に退職金を支払う必要があります。また、設備や不動産の売却ができなければ、処分するのにコストがかかる場合もあるでしょう。更に、廃業するための手続きにも費用が必要です。
M&Aで会社を売却できれば、従業員の雇用も建物や設備もすべて買収側がそのまま引き取ってくれることが一般的です。
退職金や処分費用の負担がないばかりか、多額の売却益が入ってくるので、廃業ならマイナスの収支になるところが、M&Aならプラスで終えることが可能になります。
4. 土木会社のM&A・買収・売却事例10選
実際に土木業界で実施されたM&Aによる会社の売却、買収の事例を紹介します。
成友興業が木本建興を子会社化した事例
2024年1月29日に、成友興業株式会社から、木本建興株式会社の全株式を取得して子会社化したことが発表されました。
成友興業は東京都あきる野市に本社があり、建設事業と環境事業、プラント事業などを行っている会社です。木本建興は、神奈川県相模原市にある土木、建設工事会社で、神奈川県内での大型の水道工事などを多く手掛けています。
成友興業グループでは、マーケットの拡大を目的とした広域的な事業展開を進めており、このM&Aによって神奈川県内での事業展開が可能になり、成友興業の経営資源やリソースを投入することで、木本建興の事業基盤の盤石化とグループ全体の収益力向上、企業価値向上を目指せるとしています。
参考:木本建興株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
大末建設が神島組を子会社化した事例
2023年10月26日に、大末建設株式会社から、株式会社神島組の全株式を取得して子会社化することが発表されました。
大末建設は、大阪市中央区に本社がある建設会社で、マンション建設など幅広く手掛けています。神島組は、兵庫県西宮市にある土木工事会社で、環境に配慮した振動や騒音公害を抑えた割石工法での高い収益力と実績のある会社です。
大末建設としては、このM&Aによって土木事業への再進出を果たすとともに、神島組への経営資源の投入によって同社の経営基盤をより強固なものにして、グループ全体の収益力と企業価値向上を目指すとしています。
参考:株式会社神島組の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
コンセックが丸金建設を子会社化した事例
令和5(2023)年8月31日に、株式会社コンセックから、株式会社丸金建設の全株式を取得して、子会社化することが発表されました。
コンセックは、広島市西区にあり、建設・土木関連機器の開発製造販売と建設・土木工事を行う、建設・土木事業のメーカー、総合商社であり工事会社です。
丸金建設は、岡山県倉敷市にある一般土木建設業会社で、公共工事での土木工事、舗装工事、解体工事などを数多く手掛けています。
このM&Aによって、コンセックとしては、同社の工事部門とともに、地域密着の事業展開が可能になり、グループ全体での技術交流や相互支援などのシナジー効果が期待できるとしています。
参考:株式会社丸金建設の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
メイホーエクステックが三川土建を子会社化した事例
2022年12月23日に、株式会社メイホーホールディングスから、同社の子会社である株式会社メイホーエクステックが株式会社三川土建の全株式を取得して子会社化(メイホーホールディングスの孫会社化)することが発表されました。
メイホーホールディングスは、岐阜県岐阜市に本社のある建設関連サービスや人材派遣、介護、人材教育など幅広い事業を手掛けています。
三川土建は、新潟県東蒲原郡で70年以上の歴史を誇る建設会社で、とび、土工工事、舗装工事、鋼構造物工事、除雪作業など多岐に渡る工事の実績が豊富な会社です。
メイホーホールディングスとしては傘下の他の建設関連のグループ会社との強みを融合して、スケールメリットの追求だけでなく、人材交流や技術共有が可能になることによる経営資源の有効活用が可能になるとしています。
参考:当社子会社による株式会社三川土建の株式の取得(孫会社化)に関するお知らせ
イノベックスがエイゼンコーポレーションを子会社化した事例
2022年2月16日に、ウェーブロックホールディングス株式会社から、同社の子会社である株式会社イノベックスが、株式会社エイゼンコーポレーションの全株式を取得して子会社化(ウェーブロックホールディングスにとって孫会社化)することが発表されました。
ウェーブロックホールディングスは、壁紙や防虫網、食品包材などを幅広く手掛ける複合素材の加工会社です。エイゼンコーポレーションは、群馬県前橋市にある土木工事事業や水道施設施工工事などを手掛ける土木会社です。
ウェーブロックホールディングスでは、地中熱ビジネスを推進しており、土木や管工事、内装工事の許可や施工技術などを持つエイゼンコーポレーションをM&Aで傘下に収めることで、地中熱関連工事の元請けになることが可能になります。
参考:子会社による株式会社エイゼンコーポレーションの株式の取得(孫会社化)に関するお知らせ
大盛工業が港シビルを子会社化した事例
2021年3月30日に、株式会社大盛工業から、港シビル株式会社の全株式を取得して子会社化することが発表されました。
大盛工業は東京都千代田区にある建設会社で、上下水道工事を主力事業としています。港シビルは、東京都港区にある港湾、河川土木工事会社で、主に公共工事の土木工事を元請けとして受注しています。
大盛工業としては、このM&Aによって建設事業における施工分野と事業基盤を拡大することで、グループの企業価値向上が期待できるとしています。
参考:港シビル株式会社の株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
トライが小林工業を子会社化した事例
2021年2月26日に、株式会社ひかりホールディングスから、同社の子会社である株式会社トライが、小林工業株式会社の全株式を取得して子会社化(ひかりホールディングスにとっての孫会社化)したことが発表されました。
ひかりホールディングスは、岐阜県多治見市に本社のあるタイル加工事業、総合建材事業、電気通信工事事業、保険代理店事業などを傘下に持つ純粋持株会社です。その子会社のトライは、無線設備の建設工事事業を行っています。
小林工業は、岐阜県可児市にある建設工事会社で、可児市の指定建設工事業者として土木工事や建物改修工事などを手掛けてきました。
ひかりホールディングスとしては、このM&Aによってトライの総合建設業者としての成長を図ることができるとしています。
参考:子会社による株式取得(孫会社化)に関するお知らせ
コニシが山昇建設を子会社化した事例
2020年7月29日に、コニシ株式会社から、山昇建設株式会社の全株式のうち91%を取得して子会社化することが発表されました。
コニシは大阪市中央区に本社のある会社で、接着剤のボンド事業、化成品事業、土木建設工事事業を展開しています。山昇建設は、愛知県名古屋市にある土木工事会社で、東海地方を中心に高い技術力に定評のある会社です。
コニシでは、土木建設分野を成長戦略の柱と位置づけており、このM&Aによって山昇建設の技術力と、コニシが持つネットワークのシナジー効果が期待できるとしています。
参考:山昇建設株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
日本コンクリート工業がフリー工業を子会社化した事例
平成30(2018)年1月10日に、日本コンクリート工業株式会社から、フリー工業株式会社の全株式のうちの64.5%を取得して子会社化することが発表されました。
日本コンクリート工業は、東京都港区に本社のあるコンクリート製品の製造販売を行っている会社です。フリー工業は、東京都台東区にある土木工事会社で、法面工事、擁壁工事、道路拡張工事、建設資材の販売などを行っていて、高い技術力を有しています。
日本コンクリート工業では、このM&Aにより、同社のコンクリート製品に関する技術力と、フリー工業が持つ高い工事技術、開発力を融合することで、大きなシナジーを得ることが可能であるとのことです。
参考:フリー工業株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
ダイキアクシスが岸本設計工務を子会社化した事例
平成29(2017)年3月24日に、株式会社ダイキアクシスから、株式会社岸本設計工務の全株式を取得して子会社化することが発表されました。
ダイキアクシスは、愛媛県松山市に本社のある、浄化槽などの各種排水処理装置の総合プラントメーカーです。岸本設計工務は、松山市にあり土木工事事業と太陽光発電事業、不動産賃貸事業を行っていて、土木工事派で全国の工事を手掛けており、特に推進工法を得意としています。
ダイキアクシスとしては、このM&Aによって同社の国内外のグループシナジーに活かすことができるとしています。
参考:株式会社岸本設計工務の株式取得(子会社化)に関するお知らせ
5. 土木会社のM&Aにおける成功のポイント
M&Aは希望しても4割程度しか売却に成功できないといいます。M&Aを成功させるためにはどのような点に注意したらいいのでしょうか。M&Aを成功させるための注意点を解説します。
M&Aの専門家に相談をする
M&Aを成功させるための1つ目の注意点は、M&Aの検討を始めたらM&Aの専門家に相談することです。M&Aを成功させるためには、最適な相手選びと、法律や財務についての高度な知識が必要な手続きをスムーズに進めなければいけません。
近年は、M&A情報サイトが充実してきたので、自分で相手探しを始める経営者もいるようですが、条件や相性の合う売却先を見つけるのは難しいのが現実です。
M&Aの専門家なら、豊富なM&Aの経験と専門性に基づいて、最適なマッチングと難しい手続きをサポートしてくれます。まずは、M&Aの専門家への無料相談から始めましょう。
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早期に検討し、タイミングを逃さない
M&Aを成功させるための2つ目の注意点は、会社売却の準備は早めに始めることです。
M&Aに失敗する場合の原因で多いのが、短期間で売却しようとして、時間切れで売却できないことです。特に、経営者の年齢から来る健康問題の悪化で慌てて売却しようとしたときに、時間が足りなくて廃業するしかなくなることが多くみられます。
M&Aは準備を始めてから売却完了まで1年程度かかることが一般的です。できれば、まだ経営者が元気で判断力もしっかりしているうちから準備を始めて、最適な条件で売却できるタイミングを逃さないようにしましょう。
目的や戦略を明確に立てる
M&Aを成功させるための3つ目の注意点は、最初に目的を明確化することです。M&Aで会社を売却する場合、会社売却の目的によって、選ぶべき戦略、つまりM&Aのスキームが変わります。
経営者が引退するために経営から完全に身を引きたい場合には株式売却を選択するのが一般的です。一部の事業だけを売却して整理したい場合には事業譲渡を行います。
スキームが異なると、M&A後の会社のあり方や税額などが大きく代わってくるので、最初の目的と戦略構築が重要となります。
情報漏洩に注意する
M&Aを成功させるための4つ目の注意点は、情報漏洩を起こさないことです。M&Aの実施を公表できる段階に入る前に会社売却のうわさが流れてしまうと、不安になった従業員の退職や、取引先からの取引停止を招く恐れが高まります。
M&Aの実施を公表したあとであれば、しっかりと売却後についての話しをして遺留することもできますが、その前の段階ではM&Aの実施についてはっきりと話すことはできないので、引き止めは難しいでしょう。
M&Aについてのうわさは、経営者がM&Aの専門家と電話で話しているところを聞かれるなど、ちょっとしたことで広まります。M&Aについての会話や資料の扱い方は慎重にするようにしましょう。
シナジー効果が見込まれる相手先を選定する
M&Aを成功させるための5つ目の注意点は、シナジー効果を得られる売却先を選ぶことです。経営者はM&A後に引退するとしても、従業員は引き続き働き続けます。
もしも、売却する会社が買収側の会社の業績向上に寄与するものでなければ、買収側に引き取られた従業員は肩身の狭い思いをすることになるでしょう。
M&Aは進めているうちに、会社の売買が目的化してしまい、クロージング後にシナジー効果が薄い相手だったことがわかる、ということが頻繁に起きています。そうなると、働き続ける従業員は気持ちよく働き続けることはできません。
会社をM&Aで売却するのなら、お互いにシナジー効果を得られる相手かどうか、よく検討することが大切です。
6. 土木業界のM&A・事業譲渡まとめ
土木業界は、社会を支えるインフラを整備するためにとても重要なので、土木会社が後継者問題や人手不足で廃業してしまうことは、社会的な損失といってもいい大問題です。
M&Aは、会社の継続が難しい状況でも、第三者への承継によって会社を存続させることができる有効な手段となります。会社の将来に何らかの不安を感じているのであれば、まずはM&Aの専門家に相談するところから始めてみましょう。
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